デジタル・ジャーナリズムは稼げるか

  • 東洋経済新報社
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レビュー : 11
  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492762257

作品紹介・あらすじ

本書は、起業ジャーナリズムを主導してきたジェフ・ジャービスが、近年の思索と実践をまとめたものだ。その場限りのつじつま合わせではなく、長期的な視点にたって本質的なジャーナリズムを発展させたいとい願う読者にとって、本書は多くの知恵を得ることができる必読の書といえるだろう。
 本書の第Ⅰ部では、今後の社会でメディアが果たす役割をいくつか提案している。たとえば、サービスの提供者、プラットフォーム構築者、社会のまとめ役、意見の提唱者、教師、プロジェクト立ち上げの支援者といったものだ。また、ジャーナリズムが今後、「人間関係ビジネス」になって行くべきであるとも提唱されていえる。そうなることが、新時代のメディアのビジネス戦略の基礎になる、という。
 第Ⅱ部では、記事には、従来の物語の形式以外にも様々な形があることが示されている。たとえば、単純にデータを提示するだけの記事、何らかの機能を果たす記事、プラットフォームとなる記事などだ。ひとまとまりの情報が提示されているが、読み方は何通りもある記事、多数の記事から情報を抜き出してまとめた記事、皆で対話をするための記事などもありえる、という。
 そして第Ⅲ部では、新しい時代のニュース・サービスのあり方が考察されている。ジャーナリズムと人々との関係が従来とは変わるとしたら、具体的にどのようなサービスがあり得るのか。まず言えるのは、「記事」が従来とは違ったものになるということ。ただ記事を作って読んでもらえばそれで終わりということではない。記事は、サービスを提供するための手段となるのだ。記事の構造も変わらざるを得ない。全員に必要ではない部分は、別ページにしてリンクを張る。過去の記事はデータとして活用できるようにする。1つのニュースについての記事を順を追って読めるようにし、ニュースの「流れ」を見せる。ニュースを提供する、あるいはニュースを受け取るためのツールを工夫する。あるいはニュースそのものをツールとして使うことも必要となるだろう。
 重要なことは、ニュースの内容だけでなく、提供する際の形式にもそれ自体、価値があるということだ。また、受け手との間に以前より緊密な関係を気づくことで、個々の人のニーズや状況に合ったニュースを、より適切な形式で提供することもできる。ジャーナリストに求められるスキルも以前とは変わる。新たなスキルを磨き、より質の高い仕事をすべきだ。新たな使命を果たすために、どのような手段が使えるか、それを模索していく必要がある。ユーザーを知らずして新時代を語る無かれ。
 メディアで働く人間は、老弱男女をとわず、編集者も、記者も、そして営業も広告も、人事も総務も、全員が起業家になる必要がある、という。

感想・レビュー・書評

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  • ちょうどこの本を読んでいる最中、医療と健康を扱うサイト、WELQに端を発するDENAのウェブメディアの問題が発生、展開している10メディアのうち9つを非公開という騒ぎに発展している。そこで行われていることは、ネットに上がっている大量の情報をコピーし改変した「オリジナル記事」を1日約百件という大量にアップし、SEO対策で検索キーワードを多数用いることでGoogleの検索上位を占める、というやり方である。もちろん著作権的にグレーというよりクロで、何よりプロ野球球団を持つ上場企業が組織的、システム的にこの盗作行為を大々的に行っていたという事実である。
    大量の記事は廉価にて外注され、主婦など「プロ」とは言えない人たちも多く、DeNAの具体的な指示を受けて「執筆」という盗作リライトを行っていたようだ。おそらくこの外注スタッフは特に何かグレーなことをしているという自覚はなく、マニュアルに沿ってこなし、さらには編集部にダメ出しを喰らい、一生懸命励んでいたと思われる。

    ここでDeNAが主眼としていたのは如何にSEOによって検索の上位を占めるかということであり、次に炎上以前にも大小のトラブルも発生していた著作権の目をくぐり抜けること。メディアとして重要視されるコンテンツのクオリティや、読み手にどう受け取るかということは関心の埒外であった模様だ。
    それは本書のタイトルである「稼げるか」ということに血眼になっるあまり、法律的にクロであることを無視して突っ走った稀な事件であり、エネルギー界のエンロンのようなものだと行って言い過ぎではない。

    著者はアメリカのレガシーメディアからデジタルメディアへと渡り歩いている重鎮のようで、アメリカ・デジタルジャーナリズムの現状(といっても2014年)を概説している。
    正直内容はそれほど新鮮味はなく、レガシーメディアは日本と同じように試行錯誤し、ほとんどは失敗している。またその失敗の仕方も似ている部分も多い。
    アメリカのベンチーキャピタルは「コンテンツには投資しない」そうだ。コンテンツのクオリティは金はかかるがお金産まず、お金を呼び込むものとしてのプラットフォームに関心が向くのはDeNAのケースとも似ている。

    IT時代、ニュースの数も以前の数十倍にもなっているだろう。この情報の洪水で、大メディア時代のように評価やルールを誘導するトップダウンはもはや不可能であり、全体の巨大な流れに巻き込まれるしかない。そこからボトムアップ型に大きな渦が巻き起こり、新しい枠組みが自然に発生していき、または淘汰されていく。そのために焼け野原を受け入れ、荒野から出発することも必要だ。と著者。

    「最後にビジネスからいえばレガシーメディアは過去をきっぱり捨て去り、デジタルメディアを根本から作り直すしかない。…メディア企業は大小、新旧、営利非営利を問わず、人間関係を基礎にした戦略によって収益を得られると信じている。これまでのように量や数ばかりに目を向けずユーザー、広告主にいかに価値ある存在になれるかを考えれば成功の可能性は高まる」この言はDeNAメディアの姿勢とは正反対だ。

    本書はいままでのレガシーメディアの試みを含めた現状までの整理として読むなら、新しい視点は少なくても有益といえると思う。いささかページ数は多かったが。

  • 東2法経図・6F開架:070.4A/J25d//K

  • 要約ダイジェスト版
    興味深くはある

  • とてもいい本だったので、ブログで内容をまとめました。
    http://highjamp.hatenablog.com/entry/2017/12/11/221815

  • マスなど存在しない、個人を見ろ。メディアはコンテンツではなくサービス、コミュニティを作れ。

  • マスメディアは死に、古いジャーナリズムは終わった。
    コンテンツを作って一方的に流すモデルは崩壊している。
    一人ひとりを見たジャーナリズムになるべきで、コンテンツを元にしたサービス業になるべきだ。
    この提案、レガシーなメディアは既存の価値観に縛られているから混乱するだろう。
    メディアのビジネスモデルは情報の希少性を利用していたが、ネット時代になって希少性がなくなってしまったというのは頷ける。

  • 世界経済フォーラム年次総会で登壇のザッカーバーグにおじさん社長が質問。コミュニティはどう作るのか?
    ザッカーバーグ曰く、質問が違う、コミュニティなど作れない。そこにある混沌を整理し、知識を体系化し、いる人をどうしたら応援できるかを考えるのみ。

  • 大崎Lib

  • レビューはブログにて
    http://ameblo.jp/w92-3/entry-12185776681.html

  • 160531読了

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