水力発電が日本を救うー今あるダムで年間2兆円超の電力を増やせる
- 東洋経済新報社 (2016年8月19日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (190ページ)
- / ISBN・EAN: 9784492762288
作品紹介・あらすじ
ベストセラー『日本史の謎は「地形」で解ける』の著者、待望の書き下ろし。
日本のエネルギー問題は、
世界でもまれな「地形」と「気象」と「既存ダム」で解決できる!
未来に希望が持てる、目からウロコの新経済論。
新規のダム建設は不要!
発電施設のないダムにも発電機を付けるなど、既存ダムを徹底活用せよ
――持続可能な日本のための秘策。
☆著者の言葉
「日本のダムは、ちょっと手を加えるだけで、現在の水力発電の何倍もの潜在力を簡単に引き出せる――。
この事実を、今、日本の人々に伝えることが、数少なくなった「水力のプロ」としての私の義務であると考えています」
感想・レビュー・書評
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水力発電というよりも、ダムについてよくわかったような気がします。
ダムはほぼ永久に壊れないということは知りませんでした。鉄筋がないことも、基礎と岩盤が一体化していることも、壁の厚さが100Mあることも知りませんでした。
そもそもダムの建設費用のうち本体工事にかかる費用は3分の1程度ということも知りませんでした。
肝心の、水力発電量の増やし方ですが、①多目的ダムの運用を変更して貯水量を多くする。②堤防のかさ上げ、③逆調整池の活用、④小水力発電(砂防ダムなど)といったところです。行政や地元との調整が大変そうですが、是非とも水力発電量を増やして、再生可能エネルギーを増やしてもらいたいものです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
とても分かりやすい主張で理解しやすかった。
既存水力発電の運用面の課題や、ダムの改修を加える事で、化石燃料に頼らない世の中を作り上げることが出来る気がしたが、再エネが普及しない今の電力業界の根本の課題が薄い。ダムの活用促進だけでなく、系統の増強などもセットで考えないといけないと思う。 -
なんだろう、このいらいらする感じ。
「私はダム(水力)の専門家、3つも作ったような人は珍しい」とか「私たちダム技術者にはこれぐらいわかる(簡単なこと)」とかいった、パターナリズムが強い。
まさに昔の官僚ってこんな感じだったのであろうか?(笑)
河川法の目的に「最大限発電」と書くだなんて、バランス感覚のかけらもない。
ましてや「それが今求められている」とまで言うとは。
そんなに言うなら、なぜ自分がしなかった(外野になってから評論されてもねぇ…)。
事前放流を(予測のしやすい)「台風上陸」でしか説明しなかったり、
電力ダムでなく多目的なら堆砂は排砂できるから問題ないと言ってみたり、
イタリアのアーチダムより日本のダム(重力)は分厚いと言ったりしていて、論理もひどい。。
「位置エネルギー」への視点は妥当、だが、それのみを繰り返し、紙幅がもたなくなると人口や文明をエネルギーとの関係の歴史でのみ語る章が突然登場するのみ強烈な違和感。
なんというか、こんな人が局長がやったんだなぁ、、やったとはなぁ、、 -
これからは再生可能エネルギーの時代だが、その中でも「水力発電」が最も有望であることが非常によくわかった。
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◯ダムを増やさず水力発電を2倍にする
・家庭や工場、農業、発電に水を使うのが「利水」、川の堤防の決壊から守るのご「治水」、双方の目的を果たそうとするのが多目的ダム。
・国土の小さい日本のダムは2つの矛盾した目的を持つ多目的ダムが多く、これは河川法で半分しか貯められない。雨量の多い時期は放水してわざと貯めない。
◯日本は資源大国
・多雨で山岳地帯のため雨を集めやすく、河川の高低差があるため水力発電の適国
・既に過去に作った大量のダムがある。
・大都市は難しいが、地方は水力を中心として太陽光や風力を組み合わせて発電するかたちが良い。
◯日本のダムは200兆円の資産
・ダムは壊れない、震災でも本体が壊れたダムは皆無だった。
・鉄筋なしで、セメントと砂と石だせでできているため錆びない。これは石灰岩で、天然の岩と同じ。
・風化している表層の岩盤を取り除いた上で直接頑丈な岩盤と固定するため、揺れが非常に小さい。
・ダムの壁が極めて厚い。
・新設ダムの工事費は総工費数千億円の1/3以下、大半は水没村の補填費用。
・嵩上げすると、発電量を倍に増やしても、新設の工事費用分でまかなえる。
・日本に降る雨や雪の位置エネルギーを全て電力に変えられると70%賄える。現実的には潜在力を発揮すれば総需要の30%を賄えると試算。
・落差10mクラスの小さな砂防ダムでも100〜300kw程度は発電できる。
・30MW未満の開発可能箇所は2万箇所以上あり。その合計は14000MW。
◯地形からわかるエネルギーの将来
・昔からエネルギー(木材)が政治を左右してきた。奈良から京都への遷都、家康が江戸を選んだのも木材の確保のためだと考えられる。
・ペリーの蒸気船をきっかけに石炭が使われるようになる。当時国内で産出できた。
・石油へ移って問題は輸入せざるを得なかったこと。当時ほぼアメリカが産出していた。石油が無くて戦争し、石油がなくて負けた。
・人口もエネルギーの変遷とともに急拡大している。
◯水力発電のオーナー
・水力発電の建設には小型であっても流域地域の住民の合意が重要。
・川は基本的に国のもの。
・持続可能な発展のための公共的プロジェクトと割り切り、水源地域の利益のために。 -
全力でおススメ
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多目的ダムの矛盾=利水と治水。半分くらいしか水を貯められない仕組み。
グラハムベルはナショナルジオグラフィックの編集責任者だった。
ダムは半永久的に壊れない。鉄筋を使っていない。岩盤と一体化。コンクリートは100m。
多目的ダムは砂が溜まりにくい。砂を流す穴がある。電力ダムはない。
水路式発電ならダムはいらない。ただし減水区間が生じる。
逆調整池ダム=下に30mくらいの貯水ダムを作って、余った電気で揚水する。
かさ上げ工事をすれば、容量が増える。
奈良盆地から京都への遷都はエネルギー不足。
江戸幕府は関東のエネルギーが魅力だった。
幕末は文明の限界。石炭がエネルギーであることを知らされた。太平洋戦争は、インドネシアの石油が目的。
文明あるところ環境破壊あり。メソポタミア文明による砂漠化、黄河の砂漠化=黄砂の原因。
今回の人口減は、エネルギーの限界からくる?という仮説。 -
東2法経図・6F開架 543A/Ta63s//K
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本書で詳しく紹介されている小水力発電の取り組みは、水源地域の地元自治体に活力を与える良いモデルプランだと思う。
池井戸潤さんに小説で取り上げてもらえば、さらに全国の注目を集めそう。
少しダム技術者の就職斡旋的な面も感じないわけではないが、先日の新潟での観光放流での事故のニュースを聞くと、こうしたOB人材のノウハウや経験がうまく次世代に継承されていくことは愁眉の急だと感じた。
ダムは壊れず半永久的に使えると太鼓判を押していたり、人口はエネルギーによって決まるといった少し強引な仮説など、鵜呑みには出来ない面もある。
治水と利水という2つの矛盾する目的から、多くのダムで発電に適した満水の半分くらいしか水を貯めておけないのは、次世代のエネルギー活用を考えると理不尽で、それなら河川法の条文を変えればよいというのは、いかにも元建設官僚らしい発想だ。
昨今はダムを観光資源として見直す動きが進んでいるが、そうした中で新潟のような放水事故が起きてしまうのだから、よくよく自治体の職員は注意してかからなければならない。
単純に資源開発だ、これだけ儲かると前のめりになっても、地域の人々の「我々の川」という意識の前では、慎重な配慮が必要だ。