日本の食料戦略と商社

著者 :
  • 東洋経済新報社
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (294ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784492780312

作品紹介・あらすじ

グローバル調達の時代、「食の安定供給」は商社が導く。

感想・レビュー・書評

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  • 日本の商社の横断研究会から誕生した本。世界の食糧事情について、遠い先はわからないが、少なくとも最近までは供給量不足に陥るようなことはなく、危惧された【人口爆発。食料不足】みたいな話はないと説く。一方、単位面積当たりの生産量は技術向上で拡大しており、世界の作地面積も増えており、さらにマルサスなどが予想したほど人口も増えず人口増加率は逓減していることから、供給面はさして問題ない。一方、マネー不足から調達ができなくなるという恐れはあり、安定供給を求めて商社が原料を抑えにかかっていることを強調する。発見は、日本の原料供給元がアメリカなど先進国中心である、アメリカなどに直接エレベーターと呼ばれる貯蔵施設を直接・間接保有している、ブラジルなどで農地事業にも参入しているということ。中韓政府が世界の農地を抑えにかかり日本政府が出遅れているという話もあるが、むしろ日本では商社が調達の川上を抑える役割を果たしてきており、言うほど問題では無いように感じた。

  • 日本の食料戦略というか、食料事情についての分析について分量を割いていたような気がする。常々問題視されている自給率の低下によって食の多様化というメリットがもたらされたこと、日本の土地構造的に大量生産は難しく、経済発展に伴う自給率低下は免れえなかったことなどの点は初耳でした。輸入大国であり、自給率はどうしようもないということを前提にして食料戦略を組んでいくしかないような気がします。その実行部隊として商社が重要になってくるわけですね。なるほど。

  • ・就活で使えた。
    ・そもそも食料がかなりの量輸入されており、そこにはかなり商社が関わる所が多いという事がわかった。しかし、7大商社に全落ちした今となってはもはやあんま関係ない。

  • 前半は①食料価格変動のメカニズムとリアルケースの分析、②近未来の食料需給予測、③日本の農業と食料安保、といった題名からは予想出来ない学問的な内容。
    一般的な教科書との差別化を図ったポイントとして、歴史や事例に商社の視点が織り交ざっていることが面白い。

    後半は、商社が日本の食糧戦略に与えてきた影響について考察している。
    総合、専門問わず、9商社の戦略も個別に紹介、ありきたりな会社紹介ではなく、各社の食料部門担当者が自ら筆を執っているため、各々の熱意と独創性が感じられる。
    各社ほぼ似たり寄ったりの内容なのは否めないが、各社の生い立ちや現在の立ち位置から、戦略に微妙な差異が生じている点が面白い。
    ただやはり、商社視点で書かれているためか、食料自給率や南北問題への影響に関しては非常にデリケートに扱われているのが残念。
    正直に書いちゃえばもっと面白いのに(笑)と思った。
    とはいえ、予備知識を持って臨めば、得られるものも多い一冊。

    比較的ヘビーな内容だが、読む価値はある。

  • まぁ、知りたいことはしれたかなって感じ。後半はそれぞれの商社が自分たちを宣伝してる感じ笑 いいと思う。

  • 直近の食料価格高騰の背景と日本の食糧供給における各商社の戦略(川下戦略、バリューチェーン、穀物エレベーター、トレーサビリティー)等をまとめたもの。2008年の食料価格高騰の背景には、①天候不順による供給不安、②過剰マネーがあり、1973年と共通する事項が見られたという説明は非常に面白い。(なお、1973年は旧ソ連の大量解決が需給を引き締めた)。供給問題に関しては、人口上昇の頭打ち(社会衛生の工場と合計特殊出生率の低下、特にアジア)、緑の革命以降も土地生産性は上昇しており、2050年の穀物需要=25億~27億Tは過去の上昇率から達成可能という意見は明快。カロリーベースと金額ベースでの食料自給率の説明も、日本の食料自給率が低い、と言われる言葉のマジックが分かって面白い。日本は元来土地利用型農業ではなく、高付加価値商品でもって、世界に挑戦する選択肢を、は自給1400円とも言われる農業の実態からしても現実的な提案だと思った。

  • 商社の必要性と重要性の宣伝。73年と08年の食料高騰の酷似している点は面白いが、個人的には目新しさはない。食の安全への商社ごとの取り組みの中で、三井物産のみがトレーサビリティに多くを割いていたことは印象に残った。

  • いろいろメモ。

  • 日本の商社の役割が描かれている。各商社の戦略的な所をさらに詳しく描かれているというさらにお得感がある。食料=食品、飼料、食糧など複数のジャンルがあり、それらのバリューチェーンを構築することの強みが書かれていると便利かも。まだ読み中。

    「科学的な議論だけでは割り切れない、国民感情があることは否めず、商社は国民感情に沿った形での食料輸入先の確保が必要」
    という表現はどこかで使えるなと思いつつも、根拠のないGMO批判がいつまで続くのか、考えてしまう。

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著者プロフィール

川島博之(かわしま・ひろゆき)
ベトナム・ビングループ主席経済顧問、Martial Research & Management Co. Ltd., Chief Economic Advisor。1953 年生まれ。1983年東京大学大学院工学系研究科博士課程単位取得退学。東京大学生産技術研究所助手、農林水産省農業環境技術研究所主任研究官、東京大学大学院農学生命科学研究科准教授を経て現職。工学博士。専門は開発経済学。著書に『日本人が誤解している東南アジア近現代史』(扶桑社新書)、『戸籍アパルトヘイト国家・中国の崩壊』『習近平のデジタル文化大革命』(いずれも講談社+α新書)、『「食糧危機」をあおってはいけない』(文藝春秋)、『「作りすぎ」が日本の農業をダメにする』(日本経済新聞出版社)等多数。

「2021年 『中国、朝鮮、ベトナム、日本――極東アジアの地政学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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