おしいれのぼうけん (絵本・ぼくたちこどもだ)

  • 童心社
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  • Amazon.co.jp ・本 (80ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784494006069

感想・レビュー・書評

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  •  「ロボットカミイ」の古田足日さんと、元気いっぱいの子どもたちを鉛筆画で微笑ましく描いた、田畑精一さんのコンビによる、1974年作の、子どもたちの素敵な想像力が生み出した冒険の面白さは、今読んでも変わらないワクワク感でいっぱいである。

     タイトルは記憶にあったので、おそらく私も幼い頃に読んでいるはずが、全く覚えておらず、改めて読んでみると、教育上の問題として、今の時代には引っかかりそうな可能性もあるとは思うが、それでも、表紙裏のカバーの折り返しに、著者二人の当時の住所が掲載されていたりと、プライバシー権の侵害として、今ならばまずあり得ない、当時は平和な世の中だったんだなと思う。

     だから、そうした当時の雰囲気を加味してというのもあると感じ、確かに押し入れに閉じ込めるというのは、いくら悪いことをしたとしても、ちょっとやり過ぎなのではと思うのだが、問題はそれに対して、実際に子どもがどう感じたかだと私は思うし、先生も決してやりたくてやっているわけでは無いのは、本書の文章からも分かるように、昼寝中に走り回れば、子どものお腹を踏んづけて破裂させてしまうような重大事故の可能性もあるし、『ごめんねと言ってくれて良かった』という、先生の本音からもそれを感じられて、改めて先生って大変な仕事だと思う。

     そして、ここでの冒険者となる、「さとちゃん」と「あーくん」は、そんな押し入れの暗闇や、その後の冒険に於いて、何度も挫けそうになるが、そうした諦めが訪れそうになる度に対抗できたのは、暗闇の中でもしっかりと感じ取れるお互いの存在で、それを具現化したのが手を握ることであり、この手を握るという行為自体にも、勇気や安心感、一人で出来ないことも二人ならば、といった様々な意味が感じ取れて、これを実感することで初めて、押し入れが上の段と下の段に分けられている設定にも、納得するわけである。

     更に、二人を励ますきっかけとなったのが、あーくんのミニカーとデゴイチであり、最初、さとちゃんが勝手にミニカーを持ち出したときこそ、腹を立てたものの、その後、押し入れの中で「さっきはごめんね」と、さとちゃんが返してくれたとき、初めてお互いに手と手が触れた、これがあーくんには、とても救いになったのであろうことは、上記の内容からも分かるように、あーくんにとっては、それだけ、さとちゃんが同じ押し入れにいてくれることが、とても心強く感じられた。だから、デゴイチをさとちゃんに貸したのである。

     そして、本書最大の読み所である、子どもたちの想像力の世界は、そのミニカーとデゴイチと押し入れの暗闇があれば十分なのであり、それらが生み出した世界が、どれだけ素晴らしいのかは、田畑精一さんの数少ないカラーの絵が証明しており、それまで、ずっとモノクロの絵が続いてきたから、その鮮やかさは尚更であるし、しかもその泣きたくなるような、ハッとさせられる夜の切なさと美しさには、全く子どもに媚びていない理屈では無く感覚で捉えられる、ありのままの輝きがあり、そこには、それだけ子どもの想像力は素晴らしいのだと、田畑さんが言っているようにも思われたのが、私にとって、何よりも印象深かった。

     また、その印象は、大人になって読んだことで、初めて感じ取れたことから、子どもの頃に読むことと、大人になってから絵本を読むことでは、全く感じ取れるものが異なることに気付くことが出来たことにより、大人になって絵本を読む意義を、改めて実感出来た喜びも、私の中ではとても大きかったし、世代毎に異なる印象を抱ける作品というのは、それだけ、作品に深みがある裏返しでもあるのだと思う。

     それから、気になる冒険の展開であるが、これがまた、現実味に富んだ臨場感溢れる舞台(田畑さんの、精密な高速道路の絵が雰囲気抜群)でありながら、何をしてくるか分からないキャラクターとの、先の読めない展開に、却って、ハラハラドキドキさせられて、いったい二人はどうなるんだとページを捲る手が止まらなかった、その面白さには、冒険を通して、人間としても一回り成長した二人の姿があり、それを讃えるような田畑さんのやわらかいカラーの星の絵に癒され、更には、苦手なものも好きなものに変わるかもしれない素敵な可能性も教えてくれた、物語としてのまとまりも素晴らしく、本書が今でも読み続けられている普遍的名作であることにも納得の、子どもが自分たちだけで道を切り開いていく爽やかさも魅力の、希望の絵本である。

    • たださん
      傍らに珈琲を。さん、こんばんは~
      コメントありがとうございます(^^)

      私も、せいぜい押し入れの中を探検するくらいの印象だったのが、読んで...
      傍らに珈琲を。さん、こんばんは~
      コメントありがとうございます(^^)

      私も、せいぜい押し入れの中を探検するくらいの印象だったのが、読んでみたらびっくりの、その和製ファンタジーは、海外でも充分通用するような面白さでしたが、そこには、古田足日さんと田畑精一さんの、1970年代当時から、子どもの想像力の素晴らしさを信じていた、その真剣さが見事に形となって表れたようで、改めて、こんな素敵な作品だったのだなと、感動いたしました。

      それから『ワードに惹かれたのかも』、分かるような気がします。
      確かに、“おしいれ”、“ぼうけん”の、「その二つが合わさると、どうなるのかな?」って、ワクワクさせるものがありますし、何度も借りられたのも、きっと、それだけの魅力があったからだと思いますよ。
      2024/01/25
    • Manideさん
      たださん、こんにちは。

      この作品は、ほんと懐かしいです。
      イラストにインパクトあって、忘れられないです。

      とうじ、お化けとか怖くて、押し...
      たださん、こんにちは。

      この作品は、ほんと懐かしいです。
      イラストにインパクトあって、忘れられないです。

      とうじ、お化けとか怖くて、押し入れをとても恐れていたのを覚えています。
      懐かしいな〜(^^)
      2024/02/03
    • たださん
      Manideさん、おはようございます。
      コメントありがとうございます(^^)

      押し入れの印象、私の子どもの頃もそんな感じでしたが、一度だけ...
      Manideさん、おはようございます。
      コメントありがとうございます(^^)

      押し入れの印象、私の子どもの頃もそんな感じでしたが、一度だけ試しに中に入ってみたことがありまして、当然昼間ですが、その時、何を感じたのかまでは覚えてなくて、怖いもの見たさというのもあったのだと思います。

      本書の場合、子どもたちや先生の絵に昭和の雰囲気があり、モノクロなのが却って、怖さを醸し出しているようですし、先生が演じたあれの存在もあって、忘れられないものも分かるような気がいたします。
      その中でも、カラーの絵があれだけ美しかったのには衝撃を受けまして、おそらく大人になって読んだことで、見えないものが見えてきたのか、子どもたちの頭に描く想像の世界の素晴らしさを、改めて教えてくれた気がした、そんな大人が本気になって描いた緻密な世界観も、インパクトを与えたのかもしれませんね。
      2024/02/04
  • 娘はこの本が大好きで、保育園にお迎えに行くと「今日も、『おしいれのぼうけん』読んでもらった!」と嬉しそうによく言っていました。

    そんなことを、ふと思い出したのは、先日読んだ『まなの本棚』でこの本が紹介されていたからです。

    ブログにて詳しいレビューしています*
    https://happybooks.fun/entry/2021/03/21/170000

    • アールグレイさん
      お邪魔をいたします。
      お許し下さいませ。
      こんばんは、ゆうママと申します。
      懐かしい本の題名を見て、つい、呟きたくなってしまいました。
      図書...
      お邪魔をいたします。
      お許し下さいませ。
      こんばんは、ゆうママと申します。
      懐かしい本の題名を見て、つい、呟きたくなってしまいました。
      図書館で沢山の絵本を息子が幼稚園に行っている間に借りていました。
      夜、読み聞かせをしないと絶対に寝てくれない子になって・・・・懐かしいとしか言えません。今は、2度とやって来ない・・・・お子さんを可愛いがってあげて下さい。
      ・・・・失礼を申し上げましたら、お許し下さい。
      ゆうママの呟きでした。
      m(__)m
      2021/05/29
    • kazuhikoandoさん
      ゆうママさん
      ありがとうございます。おしいれの冒険、くまのコールテンくんと懐かしく、少しどきどきして最後にほっこりする話が良いですね。
      ゆうママさん
      ありがとうございます。おしいれの冒険、くまのコールテンくんと懐かしく、少しどきどきして最後にほっこりする話が良いですね。
      2021/05/29
    • スティンキー*さん
      ゆうママさん、コメントありがとうございます。

      分かる!分かりますとも!私の子供ももう高校生になりました。
      毎晩読み聞かせをしていたあ...
      ゆうママさん、コメントありがとうございます。

      分かる!分かりますとも!私の子供ももう高校生になりました。
      毎晩読み聞かせをしていたあの頃の記憶は、私にとっても宝物です。(高校生になった今も、読書好きな子供のままです。)
      なので、この本を読んだとき何とも言えないキュンとした気持ちになりました。

      とっても素敵なお話ありがとうございました♪
      2021/05/29
  • 【あらすじ】
    お昼寝前に、ミニカーのとりっこでけんかをしたさとしとあきらは、先生に叱られておしいれに入れられてしまいます。そこで出会ったのは、地下の世界に住む恐ろしいねずみばあさんでした。ふたりをやっつけようと、追いかけてくるねずみばあさん。でも、さとしとあきらは決してあきらめません。手をつないで走りつづけます―。

    ・‥…━━━☆・‥…━━━☆・‥…━━━☆

    私も子どもの頃大好きだった名作絵本。今朝、息子から読んでほしいと突然せがまれて読みました。「こんな話だったっけ?」と記憶が定かでない部分もありましたが、押入れのトンネルを抜けて夜の高速道路に出るシーンは、私の心の片隅に残っていたイメージそのままでした。
    少し前に読んだ絵本でも思ったことですが、仲間と一緒に困難に立ち向かうことの大切さを伝えてくれる絵本はとても好きです。臆病なところがある息子の心にも刺さってくれたのではないかと思います。

  • 自分が幼稚園の先生に読んでもらって好きだった本。
    詳しい内容は全然覚えてなかったけど

  • 「さくら保育園にはこわいものが二つあります。一つは押し入れ、もう一つはねずみばあさんです。」というお話のはじまりは、何ともいえないわくわく感と興味を誘います。みずの先生の言うことをなかなかきかない子は押し入れへ。それから、みずの先生が人形劇で演じるこわ~いねずみばあさん。このお話で何といってもはらはらドキドキさせるのは、押し入れの中に出てくるねずみばあさんに追われるシーン。
    あるとき、ミニカーの取り合いをしていたあきらとさとしの二人。先生の言うことをきかなかったため、押し入れへ。しばらくすると、押し入れの中には、ねずみばあさんの姿が・・・。ねずみばあさんの脅かしや心細さで泣き出しそうになるが、仲直りして二人は励まし合い・・・。
    臨場感があり、お話の長さをもろともしないお話の展開に引きこまれてみてはいかがでしょう?ともだちがいる心強さを感じる一冊です。
    【5歳位~】《12月テーマ:ともだち》

  • いやぁ、ワクワク、ドキドキ!時代を感じさせない面白さに脱帽&感動♫

  • こどものころから大好きで、よく押入れに入って遊んだり、押し入れで寝たりしていました!
    永遠に不滅の本ですね(o^^o)

  • I love it!!

  • 子どもの頃、とにかく怖かった。
    暗がりの中での幻想的な冒険と、ねずみばあさんの印象が強かった。
    でも久々に読んだら、言うことを聞かない子どもをおしいれに閉じ込める先生にまずぞっとした。
    今読んでみると、理不尽な大人/権力に子ども/弱者が抵抗する話なんだな…!
    これぞ古田足日。
    子どもをおしいれに閉じ込めるというのは、書かれた当時にはさほど非難される行為ではなかったのでは。
    それをきっちり、無意味だと描いているのにも感服。
    今でも子どもに人気があるのは、怖いもの見たさもあるけれど、その辺りの本質的な部分に惹きつけられるところもあるのでは。

  • 幼稚園卒園の際、大好きだった当時の担任の先生にいただいた絵本。大人になった今でも大切な一冊。

  • あったあった!と、子供の頃を思い出した。
    当時、親に叱られ押し入れに入れられる子供も多かったのでは?笑
    昼間だと隙間からうっすら外の明かりが入ってきて目が慣れると案外暗くないんだよね。押し入れ結構好きだったな。

    大人からしてみたら「反省しなさい!もう一度よく考えてみなさい」と押し入れに閉じ込めるのだろうけど、あんな暗い場所で悲しくなることを子供が考えるわけがない。

    子供は常にワクワクを求めている。
    だから冒険(妄想)が捗るんだろうな。

  • 幼稚園年長の次女が借りてきた。私も子どもの頃、保育園の先生に読んでもらった記憶がありました。長いお話だけど、子どもが飽きない展開が次から次へと。読み聞かせしている私も展開が気になり楽しかったです。

  • 本当に題名の通り、『おしいれのぼうけん』だった。
    最後はハッピーエンドで嬉しかった!

  • ドキドキした!

  • 7歳の子供が何度も読み直してました。

  • 幼稚園のころに初めて読んでからずっと好きな本。悪いことをして母に、怒られて押し入れに閉じ込められていたこともあったけど、この本を読んでからは怖くなくなった。

  • 昔何回も読んだことを思い出した。昔はとても怖かったのを覚えている。

  • 6歳小1の息子、これを読み「ママもこれを読んで」
    と推薦頂きました。
    図書館で目について引っ掴んで借りて来たというだけの出会い。
    面白かったり気になったりすると私にも勧めてくるのだけど、今回は別の意味もあるのかな、と読了後に邪推。
    怒ると怖いママに、息子はきっと何か大事な事を教えようとしている??

    本は友達って言うけど、こんなしっかり子供目線の本が息子の味方になってくれるのかなと思います。
    大人にも考えさせる、子供には多分すーっと入る。
    ワクワクする事と、大事な事が、丁寧に書かれた本です。

  • 4歳の次男が保育園で読んでもらっておもしろかった!とオススメしてくれた本。小1の長男も一緒にドキドキしながら読んだ。
    本をオススメしてくれるなんて、大きくなったなぁ〜本好きになってくれて嬉しいなぁ〜
    今日は次男の5歳の誕生日。そのままでいい。元気に大きくなってね。

  • なんだこの先生は、と思った上をいく子どもたちの、押し入れの冒険!
    ベテラン先生の温かさ、子どもたちの冒険、最後も良い名作。

  • 想像力を肯定してくれる絵本って、嬉しい。これを読んでワクワクした子どもが何人いることでしょう!

  • 子どもの頃、ドキドキしながら母に読んでもらった事が忘れられない、怖~い本。
    そろそろいいかな?と、満を持して7歳と5歳の息子たちに読んであげました。
    反応は・・・「おしいれのぼうけんは、もうぜったい読まないで!」
    でもきっと、また読みたくなるんだよ、怖いものみたさでね。

  • ご存知1974年以来、子供たちに読み継がれて150万部を超えるミリオンセラー。黒色の表紙の本は売れないとジンクスがあったようだが、この黒は押入れの中で始まる怖い世界を表したもの。悪い事をして押入れに入れられてしまう、さとしとあきらが自分なりの価値観を貫く姿勢、そして彼らの態度を通して、本来「先生が絶対なのだ」という立場の先生の意識が彼らによって、だんだんと移り変わる様が何とも共感を呼ぶ。これを読むと自分自身「母だから絶対なのよ」とやみくもに権力を振りかざしていないか・・・どうかを振り返らずにはいられない。さとしとあきらの自分を信じる力は素晴らしい。

  • 園児の頃から好きでしたが、久しぶりにまた読みました。ドキドキ

  • 記録用

  • 5歳0ヶ月
    保育園にもある本だそう
    長いけど最後までしっかり聞いてくれたし何回も読んだ

  • 4才の息子と読む。

    きまって「とばして!」と言うページがある。押し入れの中でねずみばあさんが出てくるページから、ねずみばあさんが逃げていくところまで。

    ある日、「ぜんぶよんで」と言うので、よんでみた。よんでいると、息子はおもむろにライオンの折り紙を取りに行って、また戻ってきた。

    お話をきいていて怖いときには、ライオンの折り紙を手にもったまま「ガオー」「ガオー」と言っている。そうすると、こわい場面もなんとか乗り越えられるらしい。

    『ラチとライオン』に描かれている男の子のようだった。

  • コロナが流行ってなかったときに病院に置いてあった本。最初は怖かったけど何回も読んでいたら面白くなってきた‼️

  • 題名に違わず。まさに冒険。でも、今の時代、これは虐待になるんだろうな。コンプライアンスなんて…。

  • 時代に合わないという人もいるけど、名作だと思う。子どもたちも夢中になって聞いていた。この人の書く話は自分が主人公になったみたいな、一緒にドキドキハラハラしてしまうね。

著者プロフィール

ふるたたるひ

「1970年 『ロボット・カミイ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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