実践アニメ療法 臨床で役立つ物語の処方箋

  • 中外医学社 (2024年6月21日発売)
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  • 本 ・本 (188ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784498229624

作品紹介・あらすじ

アニメこそ,現代の日本社会で最もアクセスしやすいメンタルケアツールだ.自らも「アニメに救われた」経験を持ち,イタリア人でありながら日本で医師免許を取得した気鋭の若手精神科医が,「アニメ療法」=アニメを臨床的なセラピーの場で活用する手法について,具体的な症例や作品名をまじえながら丁寧に解説.読めばあなたも今日から,アニメを臨床で活かしたくなる!
【本書で取り上げた作品】
ワンパンマン/この素晴らしい世界に祝福を/宝石の国/DEATH NOTE/ヴァイオレット・エヴァーガーデン/チェンソーマン/葬送のフリーレン...

感想・レビュー・書評

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  • N700

  •  大好きな本です!♡
     こんなに感動させてもらえるなんて。
     私は過去に酷い治療体験を経たこともあり、医者への依存を辞め、自分の無知を反省しました。
     それからは、自分の身体の仕組みを学び、栄養を知り、食文化と日本の歴史と世界の歴史を互いに知り……と、大真面目にそのへんの医者よりよほど健康のプロになったと自負があるので、そうそう医者に心を許さないのですが、この方とは実際にお会いして話をさせてもらいたいと思えるほどに心ときめきました。ありがとうございます。

    「映画は心の栄養である」田島ハル
     と、私の好きな恋愛ゲームの名言があります。
     まさに、「映画」は、「アニメ」でも「ゲーム」でも「漫画」でも「小説」でもいいのだろうと思えました。私が尊敬する人はその多くがサブカルチャーに精通しており、色々な人の気持ちに寄り添える豊かな哲学を持っておられました。そういう価値観や教養は、サブカルチャーから十分に学べるのだと、臨床で実際に活躍しているパントーさんのお話から確信に至ります。感謝してもし尽くせません。

     誰に分かってもらえなくてもいいのです。
     自分が好きだからアニメを見る、ゲームを遊ぶ、漫画を読む、小説を楽しむ……そういうことの繰り返しの先に、自分なりの幸せの感じ方を見つけてもらえたら嬉しく思います。この本が少しでもその助けになることを祈ります。





     ※
     以下、ネタバレを含みます。
     感想というよりは個人的な雑記となります。
     散文にお時間を頂ける方だけ、どうぞお付き合いをよろしくお願いいたします。






    ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー







       ①演劇の感動体験は
        古代ギリシャの智の巨人
        アリストテレスによって
        カタルシスと呼ばれていた。

     全く素晴らしい参考例です。
     私自身、カタルシスのことを『爽快感』と捉え、日々の心の定め方、許し方、受け止め方などを学んでいます。あるいはいっそ、何も考えず、ただ気持ちよくなるためだけ!となりふり構わず楽しむことも出来ます。サブカルチャーから得られるもの、その可能性たるや無限大です。

     例としましては、ヒーローものからは、困難に立ち向かう勇気や、単純にアクションシーンの身体の使い方を参考にして、“実際に自分も見真似する”ことで、日常生活から、身体に躍動感をもたせて、血流を良くすることにも役立てています。
     恋愛物語からは、恋愛特有の心のときめき、傷、そういったものとどう向き合い、自分なりの幸せを見つけるのかを学ばせてもらい、また単純に、人と人とが愛し合う様子に、希望や幸せをお裾分けしてもらって、日々の意気込みのひとつとさせてもらっています。
     お仕事・ビジネスの物語からは、ある一つの目的を打ち立てて、集まった仲間たちとどう取り組んでいくのかが大いに参考になりますし、本当に目的を達成した爽快感や、あるいは初めに立てた目標とは違うものを成し遂げて、違う幸せがあることに気が付いたなど、物語によって学びは千差万別です。学びがさまざまであるからこそ、そこから得られる爽快感も、明日を生きる活力として、飽きることのない無限の可能性を与えてくれます。




       ②パントーさんの進路
        そのきっかけが
       『美少女戦士セーラームーン』

     もうここもズルいです。笑笑
     恥ずかしげもなく告白します。私の人生の初恋は、火野レイちゃんです。幼稚園ぐらい、でしたでしょうか。レイちゃんはそれはそれは大人びた美しい女性に見えました。こんなすてきな人と仲良くなりたいと思ったものです。
     そのため、パントーさんの人生の進路のきっかけ、いわゆるキャリアデザインにセラムンがあるというのは、なんとも私と重なるところがあり、大いに共感、感動させてもらいました。ありがとうございます。




        ③投薬治療の目安

     パントーさんは、細かな症例を挙げて、躁鬱症状の人を、平常に戻すための一時的な措置として扱う場合と、投薬治療に不向きな場合とを明確に意識していらっしゃいました。「薬を一つでも多く売れたらチヤホヤされる」という、製薬業会(の裏にいる国際金融市場)の手先と化した、患者を金のなる木としか思っていない酷い医者を私はたくさん見てきました。
     特に、今のアメ○カはひどいもので、トラ○スジェ○ダー向けの治療を一度やるだけでも法外な収益となり、投薬によるアフターケアも含めると、なんと『“一人あたり” 約1億円』儲かるというとんでもサイコパスビジネスと化した狂人病棟が後を断ちません。※日本でも、入院患者をベットに括り付けるだけで『“一人あたり”約1000万円』儲かる場合もあります。__そのアメリ○ですら売れない薬の残飯処理場が日本なので、その事情を知ってから知らずか、日本では一つでも多く薬を売りつけようとする医者がとても多いのです。
     そうこう鑑みますと、あくまで、健全な状況でアニメ鑑賞を楽しんでもらうために必要な場合を除き、パントーさんは、患者さんに積極的に投薬治療を利用しようとはしておらず、そのことが非常に高い倫理観を見て取れる証拠であろうかと思えました。




        ④臨床実践の様子を公開し、
         読者の参考としていること。
         会話が中心であり、
         剣呑な質疑応答とは
         一線を画していることは
         誰の目にも明らかであること。

     最良の解は、最良の問いから。無知の知。このあたりも、ギリシャ哲学者の巨匠・ソクラテスを彷彿とするやりとりに思えます。日本人の私にとっては、教育勅語の「よく話し合って、絆を大切に育んでいこう」という内容に通じるものも感じられました。とはいえ、私が最も影響を受けた思想家はエンペドクレスなので、ギリシャ哲学とは切っても切れない不思議な縁があるのだろうか、とも、ぼんやり考えたものでした。




        ⑤ポリティカルコレクトネス
         に疑問を持つ姿勢

     完全に同意です。
     パントーさんの場合、患者さんと共感するための「作品の純度」が低くなることを懸念されていましたね。政治的、利権の価値に重きを置かれていると、そのためのお説教や建前にしか思えず、素直に感情移入出来なくなることはままあります。
     令和6年現在ですと、アメリ○では特にLGBTQイデオロギーによって、当事者たちが一番迷惑している事実があります。ストレートの人に無理強いして価値観を押し付けようとしたり、自分たちが一方的に哀れまれる犠牲者の扱いにしたり、社会問題にしたりしないで欲しいと、当事者が言っているのに、全く関わりない第三者である利権団体や事業の担当者が、彼らは可哀想だから救って差し上げねば!と謎の高圧的な態度でいるのです。彼らのお小遣い稼ぎのために世論を傾ける、その助けとして、サブカルチャーにLGBTQコンテンツを網羅させる。そのあまりに露骨な振る舞いは、当事者も、そうでない視聴者も、不気味に思え、感情移入どころか、政治的な兵器のようにすら感じられるのです。
     そこを鑑みますと、ゲイセクシャルを描いているはずの『きのう何食べた?』が全く不愉快ではなく、ともすれば男性愛の作品であることを忘れてしまいそうになるほど素直に楽しめるのは、原作者のよしながふみさんが、強く意識して、そうした性的な要素を描かない工夫をしているからだと再認識しました。事前にトランスの物語であると告知していない作品で唐突にその要素が入れられると、それはもはや広告詐欺のようなものです。よしながさんはそのあたり、価値観の強要をしない、高い倫理観を持っておられるのでしょう。なんといっても彼女の他の著作は、生まれ変わっても愛し合う男女のロマンスを描いたりしていますから。まさに日本人の歴史的普遍、LGBは普通にありふれていて、男女の恋愛が基本、という価値観だと思えます。日本は男娼も女性愛も偏見はありませんでしたから。特に戦国大名の間ではごくありふれていました。笑
     そうこう鑑みましても、ポリコレなど無い方が、ずっと作品に没入できるのです。
     あるいは、私が百合姫やアンドロイドとのラブストーリーが好きなことから振り返っても、パンターさんが例に挙げている、とある有名なロボット工学者の持論『不気味の谷』はまさにと思えました。
     二次元は、あり得ないことがあり得る世界だという、どこか距離を置いているからこそ、つらい出来事や、自分と重なる境遇に素直に共感し、学ぶことが出来ますが、自分と全く同じ世界観、人間が見える実写では、自分に近すぎて、学ぶどころか、心の傷をただ悪戯に深くするだけ———という例がありましたので。私の場合はこれはLGBTQイデオロギーに当てはまると思えました。
     グローバリストが政治的に利用できるからそうしている———そんな残酷な思惑のために振り回される、尊敬できる同性愛者の当事者皆さんのためにこそ、実写媒体で脅迫的に価値観を押し付けてはいけないと、私は確信しています。その点、実写作品なのにその脅迫を一切感じさせない、なにたべ?のテレ東スタッフ皆さんとよしながふみさんの工夫は見事でしたと逆に評価しております。———とはいえ、気が付かないうちに価値観を受け入れているという、静かなる侵略と、穿って見られないこともないのですが……そこはもう、どう感じるか、ひとそれぞれです。




        ⑥庵野秀明監督自身の
         トラウマ克服と
         カタルシスの共有

     エヴァンゲリオンのシンジくんは、これでもかとばかりに精神的圧迫を繰り返し、読者はただただつらくなることが多いのですが、あれを逆に爽快感と捉えるのは新鮮な考え方でした。笑
     しかもあれが庵野監督自身の体験に基づくものだったとは……そこも知らなかったです。アニメ療法の効果とは、なんといっても、最も身近で、最も長くアニメの影響を受けている、スタッフさんにこそ、最も明らかで分かりやすく見て取れるのだなぁと納得しております。




        ⑦AIの質問応答が
         臨床精神科の診断より
         満足度が高いという事実

     これ、自虐ネタのように用いながらも、だからこそ、職業としてアニメ療法に携わり、患者さんの、お客さんの心に寄り添うように努める倫理観が大切だと、パントーさんは強く意識していらっしゃいます。そこも深く尊敬し、同意します。
     そしてこの事実、遠くない未来で、本当にそうなっていき、またこの事実は、偏見ではなく、身近なものとして、世の中に知られていくようになるだろあと思います。私の大好きな月刊百合姫連載の『アンドロイドは経験人数に入りますか??』著:焼肉定食 においても、ヒロインのアンドロイドを制作した女性は、自分が唯一心を許せたAIと結婚出来る社会通念を養うために努力し続けた姿が見られます。心を、魂を持つと言っても過言でない偉業を成し遂げる動機が、AIに恋をした、ですよ———これこそまさに、AIが、不気味の谷に足を踏み入れない、絶妙な距離感で、心を癒してくれるひとつの症例と述べると思います。
     そこも、前述のグローバリストの思惑の通りでは?と問われれば、そうなのかもしれません。私も、何も結婚まで行かずともよいと、とりあえず落ち着いて考えておりますが、少なくとも、それほどまでに好きになる、心を許してしまう、そういう気持ちにさせるほどに、AIとの会話によってもたらされる安心感や勇気の強さというのは、大切な価値があると確信しています。機械が人間以上に人間らしく、彼らに学んで人間が恋をしたり、人間らしく、男女らしくすてきに生きていく姿というのは、いわんをや、古代における、神々と人との交わりですし、現代においても、故・石ノ森章太郎さんの数々の名作たちが、まさにその軌跡と言えるでしょう。ワルダーとビジンダーを筆頭に、あげ始めればきりがないですから。笑
     なので、少なくとも日本人にとっては、LGBや人間以外の存在との恋愛感情というものは、全く馴染み深く、今更迫られても「はぁ?そりゃそうですね」としか言いようがないほど、大勢に理解のある者だと思えます。グローバリストが脅迫しようとしているような価値観には、どうあっても染まらないでしょう。




     まだまだ語りたいことは尽きませんが、何度も読み返して、その都度、書き足したいことがあれば、ここに記させてもらいます。
     散文にお付き合いいただき、ここまで読んでもらったあなたに深い感謝を、ありがとうございます。
     あなたのこれから先の時間が、あかるく、やさしく、穏やかなものでありますように__

  • 【アニメ療法の利点】
     ⑴キャラクターを通じて、自分自身や自分自身が抱える問題を外在化することができる。
     ⑵鬱による気怠さを、海底に沈むキャラクターで表現するといったように、比喩表現によって、低い心理的負荷でキャラクターと同一化することができる。
     ⑶アニメ療法には、臨床(病院)での利用と、臨床に限らない(家でインターネットを通じてなど)療法とがある。
     ⑷アニメ療法では、物語作品を観るだけではなく、その後の感想の共有など、対話が重視される。
     ⑸作品を選ぶ際には、「写実性」と「空想性」のバランスが重要である。


    【今後】
     今後、物語作品がもたらす教育効果、教育現場における物語作品の実用性、国語科教育における物語作品の指導法など、学び・研究を進めたい。特に、映画に注目したい。その際、学校で確保できる時間や学習指導要領との照合など、現実的な路線であり、かつ心理学的な知見からエビデンスを示し、独創性と価値のある物語教育を指向したい。

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著者プロフィール

原作:パントー・フランチェスコ
12月13日生まれ、イタリア、シチリア島出身。ローマのサクロ・クオーレ・カトリック大学医学部卒業、ジェメッリ総合病院で学ぶ。イタリアの医師免許を得てから来日し、日本の医師免許を取得。筑波大学大学院博士号取得(医学)。慶應義塾大学病院の精神・神経科教室に入局し、現在は複数の医療機関にて精神科医として臨床している。医師の活動以外にも、小説やアニメの原作などクリエイティブな活動も精力的に行っている。
著書に『アニメ療法 心をケアするエンターテインメント』(光文社)。

「2023年 『イタリア人の僕が日本で精神科医になったわけ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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