感染症まるごと この一冊

著者 :
  • 南山堂
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本棚登録 : 59
感想 : 4
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  • Amazon.co.jp ・本 (262ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784525231613

感想・レビュー・書評

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  • 著者・出版社から献本。ありがとうございました。

    名は体を表すという言葉がある。野比のび太は見るからにのび太だし、骨皮スネ夫は見たまんまスネ夫である。「感染症まるごとこの一冊」は、感染症丸ごと一冊にまとめたと、それが特徴の本である。

    最初は感染管理から始まる。ここはよい。驚くのは次に「臨床医学の基本」と続き、医療面接と身体所見のとり方を丁寧に説明しているところであり、臨床感染症のプロである著者の矜恃とスタンドポイントがかいま見れる。昨日ぼくも診断学の講義で痛みの話をしたんだけど、この本にも痛みのアプローチ(SIQORAAA)が紹介されている。シンクロニシティを感じるとともに、感染症であっても基本は同じという臨床医学の土台を理解できる。ここから臨床感染症学の基本、そして微生物とくる。これだけ基本的な教科書なのにS. bovisみたいなややマニアックなネタも織り交ぜている。そして抗菌薬学、基本的な感染症マネジメント、予防接種、最後にチャレンジクイズとケーススタディーである。これだけ盛りだくさんで、索引含めて260ページほどしかない。このことがすごい。

    いつもの折り目正しい著者の口調とややシニカルな日本事情への言及はこれまで通りだが、「感染性心内膜炎とは”いつでも、どこでも菌血症”」といったキャッチーなティーチング・リマークも入っており、新しさを感じる。

    本書は「総合的な」本である。僕は総合的に学ぶのが大好きで、心から偏見を込めて本書を良書だと断言したい。青木先生の「マニュアル」に続く一種のスタンダードができたのだと思いたい。青木先生のマニュアルも総合的な教科書で、その膨大な、そして総合的なコンテンツは、そう、例えて言うならば「カラマーゾフの兄弟」を想起させる。本書は、「十三夜」、、と言いたいところだが、むしろその総合性とオムニバス性を考えると、そう「象の消滅」といったところだろうか。平易な文章だが内容は一切割引しない点も、そうなのではないかと思う。

    これまで、僕は「教科書何買えば良いですか」という初学者の質問にいろいろに答え、「一冊だけ選ぶなら青木先生のマニュアル」と答えてきた。これからはーーそれが初学者であればーー本書を迷わず奨めるだろう。ようやく「初学者に特化した総合的なテキスト」が出現したのである。こういう選択肢は多いほうが良い。(なんでもそうだけど)語り口も多様なほうが良い。良い時代になったものだ。

  • 配架:2階閲覧室 WC100/2012

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著者プロフィール

筑波大学医学医療系 水戸協同病院グローバルヘルスセンター

「2018年 『ICTのためのまるっと感染症レクチャー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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