原子炉の暴走 SL‐1からチェルノブイリまで

  • 日刊工業新聞社
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  • 本 ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784526038457

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  • 「事故は突如として音もなくやって来た。原子炉が破壊され、化学爆発が生じ、建物が壊れ、火災が発生した」ゴルバチョフ大統領がチェルノブイリ事故直後にテレビで行った発表の一節。
    「原子炉に何かが起きている。だが、それが何であるかは分からない」

    原発事故の特徴は、とまどいを感じさせるような素早さで次々と進んでいくことだ。

    原子力技術は、人間の意のままに完全に制御を行えるわけではない。

    「原子炉なんてサモワール(湯沸かし器)みたいなものさ」と教えていたという、旧ソ連の安全教育に問題の根があったのは歴然としている。確かに、チェルノブイリの事故を調べれば調べるほど、旧ソ連の安全教育に問題の根があったのは歴然としている。確かに、チェルノブイリの事故を調べれば調べるほど、旧ソ連の原子力関係者が持つ安全思想の欠落に出会い、やりきれない思いが募ってくる。IAEAが安全カルチャーという新語を造りその欠点を指摘したのもうなずける。

    今の世の中、科学技術を歪曲して伝えるほど罪深い話はない。今日我々の生きている社会は科学技術の力に支えられて作りあげられている。その使い方が悪いのは人間であって、科学技術にあるのではない。

    チェルノブイリの石棺の実体は、名前のイメージとはかけ離れている。放射性物質が最もたくさん堆積した原子炉建屋北側の地面こそ、放射性物質を埋め殺すため分厚いコンクリートで固められているが、その他の場所にはコンクリートは使われておらず、頑丈に見える石棺の壁は薄い、鉄板で作った衝立を並べただけだし、屋根は太いパイプを並べた上に鉄板を敷いてあるのみだ。石棺はほとんど鉄の覆いだ。その上放射性レベルが強いので時間の掛かる現場溶接はできない。鉄板と鉄板の間には完成当初から隙間があり、日の光も差し込めば雨も降り込んでくる。隙間の総面積は1000㎡にもなる。ところどころ傷んでいるのでウクライナ政府は立て替えを考えているが、資金不足で実現していない。

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著者プロフィール

(いしかわ・みちお)
1934年生まれ。東京大学工学部機械工学科卒業。光学博士。1957年、日本
原子力研究所入所。安全性試験センター長、溶解研究所副所長、北海道大学教授、日本原子力技術協会理事長を経て、現在同顧問。

「2011年 『新装版 原子炉解体 廃炉への道』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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