ブーバーに学ぶ

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  • 日本教文社
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784531063895

作品紹介・あらすじ

ユダヤ人でありながらもイスラエルとアラブの和解のために生涯を捧げ、両民族から等しく尊敬された、偉大なる「平和の哲学者」マルティン・ブーバー(一八七八‐一九六五)。他者と自己のうちに等しく「神」を見出す「我と汝」の思想は、アインシュタインをはじめ多くの偉人からの共感を得た。本書は波乱に満ちた彼の生涯をたどりながら、私たちが日々の生活の中で「他者」と本当にわかり合い、争いの人間関係から自由になるための知恵の数々を紹介する。

感想・レビュー・書評

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  • 人と人なぜ争うのか。これほど人間の歴史の中で様々な理由でお互いが分かり合えないがために色んな争いが今まで起こってきた。人間の心のそこからの底からの平和のヒントになる一冊。 偉大なる「平和の哲学者」と言われたマルティン・ブーバーの波乱に満ちた生涯に関する一冊。
    日々の生活の中で"自他"と本当にわかり合い、争いの人間関係から人生の知恵の数々を紹介されている。
    【目次より】
    1・・・・・ 苦しみは人生の真理が姿を変えたものであり、神があなたと一緒にいるという合図である。
     《ブーバー哲学の核心〈我―汝〉の関係》

    2・・・・・ 真の人間性は、利害関係のない人や、立場が下の人に対して、どのような態度を取るかでわかる。
     《人間を孤独にし社会を殺伐とさせる〈我―それ〉の関係》

    3・・・・・ 人は成長するほど孤独になっていく。しかし、孤独になるほど真の出会いは近づいている。
     《ブーバーの思想形成に大きな影響を与えた母親喪失の体験》

    4・・・・・ 真理をつかむには、権威ではなく魂の声に従え。真理を伝えるには、単純素朴な事実のみを語れ。
     《父と祖父母からの影響。少年時代の出来事》

    5・・・・・ 秩序も生きる意味も存在するという信念が、苦難を乗り越える際の大きな原動力となる。
     《ブーバーの頭を悩ませた時間と空間の問題》

    6・・・・・ 救世主を待っている限り救世主はやってこない。私たちひとりひとりが救世主なのだから。
     《ブーバー哲学の母体となったハシディズムとカバラの教え》

    7・・・・・ 優しくなければ厳しく愛せない。厳しくなければ優しく愛せない。
     《生涯の伴侶との出会い》

    8・・・・・ 自分の不幸を癒す最強の祈りの言葉「世界の不幸が癒えますように」
     《シオニズム運動への参加》

    9・・・・・ 荒々しい波に乗ったサーファーほど遠くまで進むように、荒々しい運命に乗った人ほど進歩していく。
     《神秘主義と老子の教え》

    10・・・・・ 人生にひそむ最高の価値をつかむためには、危険に満ちた冒険に旅立たねばならない。
     《「聖なる不安定」と「狭い尾根」》

    11・・・・・ 人生で出会うのは、「悪の仮面をつけた善」、「苦悩の仮面をつけた喜び」、「俗の仮面をつけた聖」である。仮面を剥がせ。
     《ハシディズムの本質に迫る》

    12・・・・・ 絶望した人間を救うのは、「こんな人が世の中にいる。それだけでも人生には生きる意味がある!」と思わせる人物との出会いである。
     《第一次世界大戦と神秘主義との決別》

    13・・・・・ 人の欠点を改めるには、自分の欠点を改めればよい。相手は欠点を改めることを学ぶだろうから。
     《ブーバーに理想社会の本質を教えた社会運動家ランダウアー》

    14・・・・・ 生々しい感覚が感じられないようでは、人は真に生きていることにならない。
     《ランダウアーの非業の死、そしてイスラエル国家建設の苦悩》

    15・・・・・ 真実の愛は、一方的に与えるだけでなく、相手の愛を必要とし、求めるときに生まれる。
     《戦場で書き留められたローゼンツヴァイクの『救済の星』》

    16・・・・・ 観察のまなざしは冷たく、見つめるまなざしは暖かい。見つめ合う関係の中で人間の魂は癒されていく。
     《ブーバーの最高傑作『我と汝』が警告する〈我―それ〉の狂気》

    17・・・・・ あなたのことを待っている人が必ずいる。その人と出会い、意味ある何かをするために、人は地上に派遣されてきたのだから。
     《真実の愛の関係性=〈我―汝〉の思想》

    18・・・・・ すぐれた作品は、自分を生み出すのにもっともふさわしい人間を選んで地上に生まれてくる。
     《神の属性が凍結された〈それ〉としての芸術》

    19・・・・・ 人間は問う。「世界には何の意味があるのか」世界も問う。「あなたには何の意味があるのか」
     《〈永遠の汝〉である神と人間による世界秩序の創造》

    20・・・・・ 神はユーモアを愛する。苦しいときほど笑いの種を探せ。思わぬ救いがもたらされるだろう。
     《ローゼンツヴァイクとの旧約聖書の新訳》

    21・・・・・ 神は苦難で人間を鋭い矢にする。ふさわしい時期がきたとき世界に向けて放つために。
     《人間の苦難の意味とは》

    22・・・・・ 他者の開かれた心を通らなければ、人間は本当に世界に生まれてくることはできない。
     《忍び寄るナチスの迫害。子供たちへのメッセージ》

    23・・・・・ 悪人はいない。発展途上の善人がいる。敗者はいない。成功に向け学んでいる者がいる。
     《ナチスへの抵抗。人類の悪の起源》

    24・・・・・ 悪を滅ぼすことが救済ではなく、悪を救うことが真の救済である。
     《神の蝕―神はどこに隠れてしまったのか?》

    25・・・・・ 暴力が人と人を結び付けることはない。敵対状態か、奴隷状態をもたらすだけである。
     《ユダヤとアラブの和解に向けて不屈の戦いに挑む》

    26・・・・・ 規則を受け入れる前に自らに問いかけよ。それは今この場の私に求められているのか?
     《宗教や民族間の争いを終結させるために》

    27・・・・・ 人間にとって致命的なのは宿命を信じることだ。宿命を否定することで人間は自由になる。
     《ブーバー思想の精神療法への応用》

    28・・・・・ 教師に欠点があることは問題ではない。欠点を克服する勇気を生徒に示せないのが問題なのだ。
     《ブーバー思想に基づく真の教育への導き》

    29・・・・・ 現代人は、他人の言行が嘘ではないか、何かたくらんでいるのではないかと疑い、相手の仮面を剥ぐほうが、話を聞くよりも大切になっている。
     《世界平和の樹立に向けて》

    30・・・・・ 新しく始めることを忘れてしまわないならば、老年というのは一つのすばらしい事柄である。
     《最晩年の活動と死》










  • 我と汝の関係性。あなたを独立した個性を持って生きている1人の人間として接すること。あなたの一部を観察した結果で判断しないこと。関係性は両極を包摂の力を持って統合していく。そのための視点を得るための問い「今ここで何が為されるべきか?」

  • 2017.1.2
    うーん。ブーバーは対話の哲学者として有名である。根源的な関係として我ーそれ関係と我ー汝関係をあげ、現代は科学技術の発達により、すなわち自然を客体化しものとして利用、改造、消費するということにより、他者に対してもそのように、つまり他者とも我ーそれ関係を結んでいる。しかし我々の関係とはより本質的には我ー汝関係であり、この関係をより思い出す必要があるのではないか、という趣旨だろうか。
    しかし私はいつも困惑してしまうのであるが、神を根拠に哲学されるとどう解釈していけば良いかがわからなくなるのである。なぜなら私は無神論者だから。その点でどうしてもしっくりくることはできなかった。他者を通して神に出会うといわれても、私が出会うのではなく私の中の神が出会うと言われてもなーと。
    非常に優しくわかりやすい本だったので、きれいごとの甘さに多少我慢ができれば、ブーバー入門としては悪くはないとは思う。あくまで取っ掛かりとしては。

  • ブーバーの思想がとても分かりやすく書かれていると思います。

    「我-汝」「我ーそれ」の関係について、説明されていることはほんの表面かもしれませんが、なるほどと納得。そして現代文明が「我ーそれ」の上に築き上げられているという著者の指摘にも納得。

    「我-汝」の関係になれたら、世の中は変わるのだろうなって思います。

    また、ブーバーの考えが受け入れられていたら、今のパレスチナ問題も起こらなかったのではないかと思えます。

  • ブーバーの思想は、ブーバーの著作を読まないと真に理解したことにはならないのだろうけど、本書はその理解の一助にはなるかもしれない。ブーバーの生涯についてまとめられていて読みやすい。
    我と汝の関係を構築することで、世界創造はまだ続いているという思想は新鮮だった。

  • 090914mama

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著者プロフィール

1960年、東京都生まれ。意識の覚醒をメインテーマに、哲学・神秘思想の研究と著作に励む。主な著書に『フランクルに学ぶ――生きる意味を発見する30章』(日本教文社)『よくわかるギリシア哲学――知を愛し真理を求めた人々』(同文書院) などの著書を著し、雑誌へも多数寄稿。また、講演やセミナーにも数多く出演している。

「2003年 『ブーバーに学ぶ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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