- Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
- / ISBN・EAN: 9784532132958
作品紹介・あらすじ
なぜ、所得格差は拡大したのか。技術革新、グローバル化、それとも高齢化が要因か。日本の所得格差を、データを駆使して実証分析。再分配政策、世代サイズ、成果主義、年功賃金など注目のトピックにも幅広くアプローチする、不平等問題研究の決定版。
感想・レビュー・書評
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数式は難解なので、文章だけ読みました。肌感覚と近い部分が多かったですね。経済学は卵が先か鳥が先か、は必ず議論になるので、因果関係は証明できても、見立てが出てしまう部分はあります。
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0円購入2008-10-01
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【版元】
装丁:渡辺弘之
書籍 A5判 並製 324 ページ
ISBN-13 978-4-532-13295-8
発売日 2005年05月発売
長期不況を経て拡大したようにみえる日本の経済格差の実態を分析。賃金構造や再分配政策に対する人々の意識を明らかにし、IT化、世代サイズ、成果主義など話題のトピックにも言及する、不平等問題研究の決定版。
http://www.nikkeibook.com/book_detail/13295/
【目次】
はしがき [i-viii]
謝辞 [ix-x]
目次 [xi-xv]
第1章 所得格差は拡大したのか 001
1 日本は不平等化が進んでいるのか 002
2 所得格差は拡大したのか 003
3 日本はアメリカよりも不平等か 008
4 生活保護世帯は増えているのか 009
5 世帯構造の変化による見せかけの不平等 011
6 女性の社会進出が不平等をもたらす? 013
7 生涯所得の格差を測る 016
8 不平等度上昇は人口高齢化によって引き起こされたのか 020
所得獲得のタイミングが不平等度を変える
年齢が高いほど同一年齢内の所得格差は大きい
不平等度の変化の要因を探る
9 資産格差は拡大したのか 029
資産格差の推移
金融資産格差は拡大した
資産格差は相続が原因か
第2章 誰が所得格差拡大を感じているのか 037
1 高まる不平等論 038
2 所得格差に関する意識調査 041
3 所得格差に関する人々の認識の決定要因 043
4 回帰分析の推定結果 049
過去5年間の所得格差拡大を誰が認識しているのか
今後5年間の所得格差拡大を予想しているのは誰か
所得格差拡大を問題だと考えるのは誰か
5 解釈と今後の課題 053
第3章 人口高齢化と消費の不平等 061
1 消費で不平等を測る 062
2 消費の不平等度を世代効果と年齢効果に分析する064
3 世代効果と年令効果の計測 067
データ
世代効果と年齢効果の推計結果
4 国際比較:アメリカ、イギリス、台湾、そして日本 074
5 人口高齢化の不平等度への影響 078
1980年代の消費不平等度の上昇の半分は高齢者の影響
高度成長期は世代効果が不平等度を引き下げた
6 結果の解釈 083
補論 推定モデルの導出 086
第4章 所得不平等化と再分配効果 089
1 所得の不平等化を引き起こす要因 090
2 データと分析的フレームワーク091
『所得再分配調査』について
分析的フレームワーク
3 分析結果 097
1980年代の不平等化の20%~40%は人口高齢化効果
再分配効果は年齢内ではなく年齢間の重要性が増した
4 政策的なインプリケーション 104
第5章 誰が所得再分配政策を支持するのか? 107
1 所得再分配に対する意識 108
2 所得再分配政策に対する支持・不支持の決定要因 110
(1)所得水準
(2)予想将来所得と階層間移動性
(3)所得不平等度と所得不確実性
(4)機会の平等についての認識
(5)所得、消費、階層移動の履歴および失業体験
(6)リスク回避度
(7)年齢
(8)失業の可能性
(9)利他主義
(10)外部性
(11)政治的要因、行動的要因
3 推定モデルとデータ 114
モデルと推定方法
データと記述統計
4 推定結果 120
基本モデル
リスク態度
失業
年齢と失業
消費・所得水準の変化
消費階層間の流動性
所得階層別推定
格差の認識
失業の理由、利他主義
機会の平等と階層上昇性
5 結果とインプリケーション 133
変数の説明 134
第6章 賃金格差は拡大したのか 139
1 先進諸国の賃金格差 140
格差拡がる英米
デジタル・デバイドは本当に起きたのか
大陸ヨーロッパと日本
2 グループ間賃金格差は拡大したのか 145
若年層で拡大する学歴間賃金格差
縮小する年齢(勤続年数)間賃金格差
縮小した男女間賃金格差
グループ間賃金格差の変動はなぜ生じたのか
3 グループ内賃金格差は拡大したのか 151
産業間賃金格差
企業規模間賃金格差
産業間・規模間格差はなぜ発生するのか
労働者構成と賃金格差
企業間で賃金格差は拡大しているのか
企業内賃金格差
4 なぜ格差拡大を実感するのか 158
大卒中高年での賃金格差は拡大
パートタイム・フルタイム格差
5 1990年代の年間賃金格差 163
年間賃金の賃金格差は拡大したのか
同じ属性を持った労働者における年間賃金格差
1990年代における男性の実質賃金は全階層で低下
6 賃金格差拡大の幻想と未来 173
第7章 ITは賃金格差を拡大するか 175
1 ITが労働市場に与える影響 176
2 ITと賃金格差 177
3 ITは職業紹介をどう変えるか 182
4 コンピューター使用は賃金を高めるか 184
推定モデル
データ
推定結果
学歴とコンピューター・プレミアム
コンピューター・トレーニングの効果
結果の解釈
5 技術変化への対応力の有無が格差を生む 205
第8章 労働市場における世代効果 209
1 世代効果 210
2 世代の違いが賃金に与える影響 211
(1) 世代のトレンド的な質の変化
(2) 世代のサイズが賃金に与える影響
(3) 世代による学卒就業時点での採用動向が賃金に与える影響
(4) 賃金以外の世代効果
3 推定方法とデータ 216
データ
世代効果の推定
世代効果の要因分析
4 推定結果 220
(1) 世代効果の時系列的推移
(2) 世代サイズと採用動向が賃金に与える影響
(3) 賃金プロファイルの傾きと世代効果
5 就職時点の景気が生涯賃金を左右する 230
第9章 成果主義的賃金制度と労働意欲 233
1 成果主義的な賃金制度 234
2 モデル 236
成果主義的賃金制度のもとでの労働者の労働意欲決定
3 データと変数の作成 238
「職場に関するアンケート」データ
労働意欲をどうやって測るか
4 順序プロビット・モデルによる推定 243
推定モデル
全サンプルおよび賃金制度導入の有無別推定
ホワイトカラーの上位・中下位別推定
職種別・職位別・年齢階層別・企業規模別分析
5 成果主義的賃金制度に対する労働者の認識 257
成果主義的賃金制度の認識の決定要因
賃金制度、人事制度についての労働者の認識の違いと労働意欲
6 成果主義的賃金制度を機能させるための条件 263
第10章 年功賃金の選好とワークシェアリング 265
1 名目賃金の下方硬直性 266
2 年功賃金の経済学的説明 268
人的資本仮説・供託金仮説・生計費仮説
年功賃金の行動経済学的説明
シカゴ科学産業博物館見学者へのアンケート
3 賃金カットか人員整理か 272
一律賃金カットのメリット
一律賃金カットのデメリット
4 アンケートの結果 275
賃金プロファイルの選択
危険度回避
賃金カット
5 年功賃金を選好するのは誰か 281
6 賃金カットに賛成するのは誰か 283
7 心理学的要因が名目賃金の下方硬直性をもたらす 286
参考文献 [288-299]
初出一覧 [300]
事項索引 [301-303]
人名索引 [304-306] -
もろ統計学の世界。難しかった。ヤバい経済学的な読みやすさ・わかりやすい話にしてほしい感じ。
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パッと見は、計量経済学のアプローチをとっているため、数式やデータが多く難解な印象を与えるが、一つ一つの結果について非常に分かりやすい分析が加えられている。
他誌論文を集大成したものであるので、統一テーマはあるものの若干総花的になっていることは否めないが、日本における格差について考察するにあたっての重要な一冊になると思われる。
リファレンスも充実している。
第7章「ITは賃金格差を拡大するか」について、もう少し突っ込んでもらうと更に良かった。 -
著者は労働経済が専門で、格差の問題をデータを駆使して実証的に論じてい。最近、所得格差・格差社会という言葉を目にしない日はないほど問題視されているが、本当に所得格差は存在するのか。本書では著者が行ったアンケート調査や厚生省の行った調査などのデータをもとに、綿密に格差を実証分析する。
方法は非常に緻密で、表面的な数字に表れにくい要因やデータにバイアスがかかりそうな部分も注意深く扱っている。たとえば現在格差が広がっていると言われるが、高齢化によって所得の低い世代人口が増えたことも所得格差として数字に現れてしまうため、世代ごとの所得を分析する必要がある。また所得の再分配(高所得者から高い税金を取り、低所得者に補助する)を指示するかどうかということは、必ずしも所得の多寡によるだけではなく、個人の危険回避傾向が高いか低いか(つまり自分が低所得に陥る危険を強く感じるかどうか)にも左右される。
このように、体験や印象だけでは実証できない格差を分析している。 -
所得格差は統計的には確認されなかった。傾向は見られるので、国民の危惧が現れた?
年代格差は年代の大きさで格差が見られた。団塊ジュニア層では2−3%他の世代より低い。