国富論 国の豊かさの本質と原因についての研究(上)

制作 : 山岡 洋一 
  • 日本経済新聞社出版局
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レビュー : 12
  • Amazon.co.jp ・本 (432ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532133269

作品紹介・あらすじ

市場とは、労働とは、豊かさとは-。経済と社会のしくみ、本質を、わかりやすい例と平易な言葉で解き明かした政治経済学の金字塔。画期的新訳で甦る不朽の名著。

感想・レビュー・書評

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  • 大学時代は一応「経済学」をかじっていたのだが、「国富論」は読んでいなかった。

    「国富論」といえば、
    古典経済学の嚆矢
    神の見えざる手=価格メカニズムによる需給の調整
    分業=生産の効率化による富の蓄積
    労働価値説
    経済的な自由主義
    というくらいのイメージしかなかったのだが、読んでみるとなんだかとてもモダーンな感じがしたな。

    18世紀後半の社会・経済の問題への言及も多くて、ピンとこないところもあるし、その後の経済理論の発達からみると混乱しているところもあるし、この本のなかのロジックだけで考えても整合性があってないように思えるところもある。だけど、それでも全体としては、かなり面白いし、今でも通用するところも多い。

    もちろん、経済分析のツールというより、基本的な思想の部分として。

    上にあげたキーワードについても、実際に読んでみると、事前の理解が間違っていた、とまではいかなくても、かなり印象は変わる。

    特に、スミス=労働価値説というほど単純なものではないのはよくわかった。

    スミスは労働による価値創造だけでなく、土地とか、資本から生まれる利益だとか、天然資源などそれ自体が価値であるものについてもしっかり言及していて、その分析はある意味今のスタンダードな議論に近いものだと思う。

    ここまで分析していて、なぜに労働価値説という立場にたっているのかは、今ひとつわからなかったが。。。

    多分、価値というときに付加価値を生産要素ごとに数量的に分解するという観点ではなくて、「いろいろな資産を組み合わせて、価値をつくりだしているのは、人間である」というようなメタレベルというか、哲学的なレベルで言っているのかもしれない。

    あと、市場メカニズムみたいなものについても、「国富論」には、「見えざる手」は1回しかでてこないし、「神の」という表現はない。たしかに価格の変化による需給調整という概念もあることはあるが、より人と人とのインターアクションを通じた自然な秩序形成というニュアンスが強いと思う。価格による需給調整というより、短期的な変動はあっても「自然価格」に落ち着いていくという感じかな?(今となっては、「自然価格」という概念もよくわからないのだが。。。)

    あと、経済政策として、ミニマムな国家という自由主義的な考えはいろいろなところにある。これも市場メカニズムで基本決定するというニュアンスより、もっとゆるやかな自然な秩序形成を尊重するという感じで、必要に応じてとるべき経済政策についてもいろいろ記載してある。つまり、自由放任ではないと思う。

    あと、印象的だったのは、植民地政策について。イギリスのインドやアメリカの植民地政策をかなり厳しく批判していて、こんなことを18世紀末に堂々と言っていたんだというのは、慧眼だし、勇気ある行動だと思った。

    一般的には、「国富論」は利己的な人間観が前提になっていて、「道徳感情論」は利他的な人間観と矛盾するみたいな評価もあるが、そんな単純なものではなく、スミスの人間観は、この2冊では連続していると思う。

    ただし、「国富論」のほうが、やや利己的というか、自己利益を重視する人間という側面が、「道徳感情論」より強めにでているかな?

    もちろん「道徳感情論」も、利他的というわけではなくて、他者への共感性をもつとともに、自己利益もしっかり追求する普通の人間が前提になっていると思う。

    その後の経済学が陥った合理的な経済人みたいな無理のある仮説にもとづく精緻な議論より、普通の人間をよく観察してうまれてきた「国富論」のほうが、「行動経済学」とか、最近の経済学に接続可能なものが多いように思う。

    やっぱ、古典って、大事だな〜。

    あと、もともと道徳哲学の先生だったスミスが、現実世界を観察することで、ここまで体系的な著作を創り上げたことに感嘆するな。

    カバーしている領域は、今でいうなら、ミクロ経済学、マクロ経済学、経済史、経済学史、経済政策論、財政論に相当するわけですからね〜。

    「道徳感情論」を先に読んで、「国富論」を読んだわたしとしては、目の前の世界が急激に広がった印象をもった。

  • 『人口論』と同様。
    経済と人口は相関関係がとても強い。

  • 1700年代のイギリスを基準に話が進む。
    この本の価値を正しく気づくには、
    その「時代感覚」が必要だろうと思えた。
    私はこのあたりの感覚が弱いため、
    そういう感動は味わえなかったが・・・

    著者の主張は、シンプルかつロジカル。
    とても理解しやすいし納得できる。

    本の構成も、
    ・Aはa,b,cの3つに分類されます。
    ・aについては・・・
    のような流れが多くとても読みやすい。

    詳細の説明も具体的でよかった。
    通貨や時代背景がピンとこない私には少し辛かったが、
    ここを理解できなくても「大筋」は理解できる。

    読むのにそれなりに時間がかかるし疲れるが、
    下巻も読もうと思える。

  • 経済学部の学生に(山岡 洋一氏による)新訳がでたので、アダムスミスでも読んだら、と進める。 250年ほど前に、アダムスミスが、どのように自分の頭で考えて市場経済の原理を見つけ出したのか、という点に目を向けて、ああ、なるほど、物事はこういうプロセスで考えていくのだな、とアダムスミスの思考過程を追体験することが大切なのです(出口治明「本の使い方」P95)

  • 岩波のものを1冊読んだが、今一つ訳がしっくりこなかったので、こちらを読んでみたところ、読みやすかった。

    分業が社会の富を増加させる、豊かにさせるというのが印象的深いが、強く印象に残ったのは3点。
    1.労働こそが、ものの価値を図る真の尺度
    2.貨幣や紙幣といった通貨の、唯一の利用価値は、交換の手段であること。
    3.資本は倹約によって増加し、浪費と無駄な支出によって減少する。生産的労働によってではなく、倹約が資本の増加をもたらす直接の要因である。
    第二編の銀行や、流動資本、固定資本の話も興味深かった。
    誰かが述べているように、「資本」は「資産」と読みかえた方が、読みやすいと思う。
    経済の話もさることながら、この本を読んだ副次的な効果として、歴史についても相当勉強になった。
    お固い本と思ったが、読んでて素直に面白いと感じることができた。ボリュームは確かに多く、難しい箇所もあって、読むのに時間がかかったけれど、本当に読んで良かったと思いました。

  • いしざわ500冊プロジェクトの1札目!

  • 歴史的な名著です
    そしてこれからもアダムスミスの国富論は語り継がれる名著であり続けるでしょう。
    小麦の相場のデータとして西暦1200年以前からあるけれど日本で言えば鎌倉幕府時代なわけでここに残されていること自体が貴重な資料と言えるし
    アダムスミスの時代の現代(1700年代)で経済学はかなり確立されているのがわかる。

    気になる部分では国富論は時代と共に修正されていると思うが
    資本の使われた先を大きく「流動資本」と「固定資本」に大別しているが資本の行き先は資産にしたほうが読みやすく感じる
    そこが翻訳のミスかどうかはわからないけれど・・・。

    全5編あるが第1編あたりは案外退屈な感もあるが2編以降は次第に面白くなっていきます。

  • 結構ためになります。

  • この手の訳本では、訳が大変わかりやすく、しっかり読めた。

  • 経済学の射程は思ったより広い。
    人間学としてのアダム・スミスの本。

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著者プロフィール

(1723-1790)近代経済学の父ともいわれる英国スコットランドの経済学者・哲学者。主著に『国富論』『道徳情操論』

「2014年 『道徳感情論』 で使われていた紹介文から引用しています。」

アダム・スミスの作品

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