ゼミナール日本経済入門 第25版

著者 :
  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (550ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532134204

作品紹介・あらすじ

東日本大震災からの復興を模索し、ユーロ危機、超円高不況の克服に挑戦する日本経済の姿を明快かつていねいに解説する。日経・経済図書文化賞。

感想・レビュー・書評

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  • 日本経済の現状・理解するための基礎理論(主にマクロ経済学)・統計から読み取れること,の3つに分けて,9つのテーマから日本経済を見ていく教科書。

  • 【版元】
    http://www.nikkeibook.com/book_detail/13420/
    著者:三橋規宏(みつはし・ただひろ)(1940-)
    著者:内田茂男(うちだ・しげお)(1941-)
    著者:池田吉紀(いけだ・よしき)(1943-)

    【メモ】
    ・本文は二段組み。各章は内容面で三つ(現状・理論・統計)に分けられている。
    ・新聞記事のような文章・文体なので、好みは分かれる。
    ・終章と序章は、著者の意見表明に近い。
    ・この25版を最後に「ゼミナール」という名称は廃されて、今後の書名は『新・日本経済入門』(2015)と刷新されたらしい。(http://www.nikkeibook.com/book_detail/13457/
     書店で実際に確認したが、一段組でフォントサイズも大きめに変更されていた。 


    【目次】
    はしがき(二〇一二年三月 著者を代表して 三橋規宏) [i-ii]
    目次 [iii-vii]

    序章 日本経済TODAY 001
    1 大震災後の将来展望 
    2 戦略国家に必要な条件 
    3 人口減少と二〇三〇年の日本 
    4 新たな国家目標と戦略 
    5 新目標を考える 
    練習問題 032

    2 景気の謎を解く 033
    I 日本経済TODAY 
    1 海外減速下の復興景気 
    2 小泉景気の真実 
    3 行き詰まった景気政策 
    4 バブル不況の謎を解く 
    5 変わる景気パターン 
    II 歴史・理論を学ぶ 
    1 戦後日本の景気循環 
    2 景気の波いろいろ 
    3 景気循環をめぐる 
    III 統計を読む 
    1 景気指標の分析 
    2 景気予測 
    練習問題 090

    3 新成長の設計 091
    I 日本経済TODAY 
    1 成長戦略の再設計 
    2 失われた二○年 
    3 BRICU連動型成長 
    4 経済計画と経済成長 
    5 民間内需主導型成長の設計
    II 歴史・理論を学ぶ 
    1 経済成長の起源 
    2 戦後日本の経済成長 
    3 経済成長の理論 
    4 国民所得の決定 
    III 統計を読む 
    1 GDP 
    2 GDEとNI 
    練習問題 134

    4 物価と市場経済 135
    I 日本経済TODAY 
    1 日本的デフレ病からの脱却 
    2 二極化する物価 
    3 日本的物価問題 
    4 デフレ・インフレの経済学 
    5 価格政策の再構築 
    II 歴史・理論を学ぶ 
    1 物価の歴史 
    2 価格の理論
    III 統計を読む 
    1 物価指数の分析 
    2 諸物価の関係 
    練習問題 180

    5 人口減少時代の財政 181
    I 日本経済TODAY 
    1 変わる政府の役割 
    2 財政改革の構図 
    3 高齢社会の重圧 
    4 迫られる税制改革 
    5 財投制度・特別会計の変革 
    II 歴史・理論を学ぶ 
    1 財政の役割としくみ 
    2 財政の歴史 
    3 主要な財政理論 
    4 公共財の理論 
    III 統計を読む 
    1 国と地方 
    2 国の歳出構造 
    3 国の歳入構造 
    練習問題 234

    6 金融システムの再構築 235
    I 日本経済TODAY 
    1 金融市場揺らぐ 
    2 変わる資金の流れ 
    3 不良債権はなぜ問題なのか 
    4 金融ビッグバン 
    II 歴史・理論を学ぶ 
    1 金融政策の誘導目標 
    2 ケインズの経済政策論 
    3 マンデル=フレミングの理論 
    III 統計を読む 
    1 個人金融資産 
    2 金利・通貨統計 
    練習問題 279

    7 国際経済と日本の貿易 281
    I 日本経済TODAY 
    1 変わる世界経済のダイナミズム 
    2 アジアの成長・挫折・回復 
    3 自由貿易と経済摩擦の相克 
    4 中国の加盟とWTO体制 
    5 急増する地域貿易協定 
    II 歴史・理論を学ぶ 
    1 比較生産費の理論 
    2 貿易構造の現実的要素 
    III 統計を読む 
    1 日本の貿易構造 
    2 総合的な国際収支表 
    3 通関統計――輸出入統計室台 
    練習問題 328

    8 グローバリゼーション下の円 329
    I 日本経済TODAY 
    1 ユーロ危機できしむ通貨体制 
    2 ドル支配の終わり 
    3 円はダメな通貨なのか 
    4 内に弱い円 
    5 通貨新秩序への胎動 
    II 歴史・理論を学ぶ 
    1 国際通貨制度 
    2 円の歴史 
    3 為替レート決定モデル 
    III 統計を読む 
    1 外国為替 
    2 為替レート指標 
    3 為替レートの予測 
    練習問題 376

    9 変わる産業構造 377
    I 日本経済TODAY 
    1 経済のグローバル化と日本の産業 
    2 製造業の進むべき道 
    3 伸びる産業、沈む産業 
    II 歴史・理論を学ぶ 
    1 産業構造の移り変わり 
    2 工業化の歴史 
    3 産業構造の理論 
    III 統計を読む 
    1 日本標準産業分類 
    2 工業統計 
    3 商業統計 
    練習問題 425

    10 経営革新と雇用問題 427
    I 日本経済TODAY 
    1 変革期を迎えた企業経営 
    2 動き出したM&A 
    3 構造変化する労働市場 
    II 歴史・理論を学ぶ 
    1 企業の労働需要 
    2 企業行動の理論 
    III 統計を読む 
    1 企業経営を読む 
    2 経営分析 
    練習問題 464

    11 地球環境問題を考える 465
    I 日本経済TODAY 
    1 地球の限界と環境問題 
    2 原発事故と新たな環境問題 
    3 地球温暖化と京都議定書 
    4 ポスト京都議定書の温暖化対策 
    5 生物多様性を守る 
    6 循環型社会へ動き出す 
    II 歴史・理論を学ぶ 
    1 公害防止先進国への道 
    2 外部不経済と公害 
    3 公共財としての地球環境 
    4 経済的手段による環境対策 
    III 統計を読む 
    1 世界人口七○億人突破 
    2 地球温暖化対策 
    練習問題 514

    終章 環境立国への道 515
    1 新しい日本人の登場 
    2 ストック活用社会への転換 
    3 グリーン成長への道 
    練習問題 537

    参考文献 [539-545]
    索引 [546-550]



    【抜き書き】
    ・インフレ・ターゲット論について(pp. 155-157)。

     調整インフレ論の理屈と日本での議論のおこり。
    ――――――――――――――――――
     九八年夏、マスコミはこぞって「調整インフレ論」を取り上げた。有力エコノミストがデフレ脱却の処方茎として調整インフレのすすめを説き始めたからだ。
     海外から熱心に調整インフレ政策の採用を勧めているのはプリンストン大学のクルーグマン教授。クルーグマン教授はまず、日本経済は流動性の罠に落ちている、という認識から出発する。流動性の罠というのは、マネーサプライ(通貨供給)を増やしても金利が下がらない状態を指している。日本経済は〔……〕金利はゼロに近い状態にある。マイナス金利も理論的にはありうる〔……〕が、下限にあるのは確かだ。金利が下がらなければ投資も増えない、ということで、金融面からは動きのとれない状態になる。まさに罠に落ちた状態といえる。
     しかも物価は下がっているわけだから、物価上昇分を差し引いた実質金利は、名目金利が低いにもかかわらず、高止まりしたままになる。不況というのは、見方を変えれば貯蓄が投資を上回る貯蓄超過状態。これをバランスするにはもっと実質金利を下げてやらなくてはいけないのに、このままではそれができない。
     そこでクルーグマン教授は物価を押し上げて実質金利を引き下げる方法が有効と考えた。物価が上がれば実質金利が下がり、貯蓄と投資のバランスが回復するという理屈だ。
    〔……〕クルーグマン教授の推奨策は、日本銀行が一定のインフレ率の目標を立て、これが実現するまで思い切ってマネーを増やせばいい、というもの。「一定のインフレ率」として例えば四%といった数字を念頭に置いている。
     政界では当時自民党の政調会長だった山崎拓氏が飛びついた。経済学界でも、東京大学の伊藤元重教授などがクルーグマン支持の論陣を張った。
     日本経済新聞とのインタビューの中で、伊藤教授は「中長期の進路を考えるポイント」として調整インフレの採用を訴えた。「年二%程度の消費者物価上昇率を実現できれば、財政赤字削減や不良債権処理も楽になるのではないか」とも述べている。

    ――――――――――――――――――



     つづいて、調整インフレ論に対する反対論。
    ――――――――――――――――――
     これに対して、「調整インフレなんてとんでもない」という否定的な見解も多く出されている。
     反対論は三つくらいの論点に大別できる。
     まず、オーソドックスで保守的な反対論は「インフレ悪説」。「九八年版物価リポート」はわざわざ「調整インフレ論」の項を設けてはいるが、採用するかどうかとなると否定的。「仮に、インフレ率が高まった場合にはそのコントロールが難しく、収束のためのコストが膨大なものとなる」と、インフレはやっぱり困る、との立場だ〔……〕。
     二つ目の反対論は、政策的にインフレをつくり出すことが難しい、という実行面からの否定論。日本総合研究所の若月三喜雄理事長(当時)もそのひとり。「経済が冷え込んだ状態でインフレを起こすのは難しい」と言う。
     もともとクルーグマン流の調整インフレ論は流動性の罠という認識から出発している。それでいていざ具体的にインフレを起こす手だてとなると、マネーの大増発というのは、現状認識と手段との間にやや行き違いがみえるのは事実。
    ――――――――――――――――――



    ・当時の議論はともかく、現状。あと著者のコメント。
    ――――――――――――――――――
       新価格政策
     金融政策のグローバル・スタンダード(世界標準)はインフレ・ターゲット制になった感がある。社会的厚生が最大になる物価上昇率に金融政策のターゲットを定めるというのは理にかなっているからだ。
     一九九〇年代初頭にイギリス、ニュージーランド、カナダ、スウェーデン、スペインなどが採用、その後もタイ、ブラジルなどアジア、南米などにも広がってきている。
     二〇一二年一月二十五日、遂にアメリカも動いた。FRBが長期的な物価上昇率の目標(ゴール)を二%に設定したのだ。もともとバーナンキFRB議長はインフレ・ターゲット制に理解があると言われながらも採用には「ノー」を繰り返していた。
     FRBの決定を受けてコメントを求められた白川日銀総裁は当初、「日銀とFRBの考え方に大きな違いはない」と煮え切らない態度を採っていた。それが二月十四日になって一%を「物価安定の目途」とする、と宣言した。日本もグローバル・スタンダードの金融政策を受け入れることになったのだ。
     この欄で九〇年代からインフレ・ターゲット制の採用を訴えてきた。感無量の想いだ。
     日銀にはさらなる斬新な日本的金融政策を期待したい。
     その際、第1節「日本的デフレ病からの脱却」で紹介したように、アメリカの思い切った金融の量的緩和(QE IとQE II)は是非参考にしてほしい。
     「量的緩和は日本の方が先、もう実験済みだ」
     そんな声が日銀から聞こえてきそうだが、手段そのものではなく、政策姿勢を参考にしてほしい、という意味だ。

       「異常時には異常な対応を」
     筆者が大蔵省(現財務省)担当記者をしていたとき、アメリカのバーグステン財務次官補(当時)が強い口調で日本に迫ったのをいまでもよく覚えている。当時のアメリカの対日要求は貿易黒字減らしだった。いま、日本のデフレ脱却策を聞いたら同じ答えが返ってくるのではなかろうか。アメリカのFRB(米連邦準備理事会)が二〇〇九年三月十八日に決めた量的緩和がQE I。まず長期国債の三〇〇〇億ドル(約二八兆円)購入を決めた。これを含め一年間の追加資金供給は一兆七五〇〇億ドル(約一六〇兆円)にも上った。続いて二〇一〇年十一月三日に六〇〇〇億ドル(約四九兆円)の長期国債購入を含む量的緩和第二弾(QE II)を発表している。
     日銀ももっと大胆な政策をとるべしとする声は多い。
    ――――――――――――――――――

  • 332.107||Z2||2012

  • 日本経済について、一気に学べる本。理論的なことや過去のできごとが網羅されているのが良い。分量があって読み切るには時間がかかるが、文章としては読みやすかった。

  • 一人の人が書いたものを読んだほうが良い。教科書としても読み物としても中途半端。

  • 大学のゼミでも使用した本。
    一通りの理論や経済史がわかり、しかも読み易い。
    内容が内容だけに、読み終えるためにはそれなりのモチベーションが必要。

  • 2012年に発刊された第25版の『ゼミナール日本経済入門』は、最新の統計情報、東日本大震災の影響等を取り入れ、とても濃い内容に仕上がっています。

    章ごとに「Ⅰ 日本経済TODAY」、「Ⅱ 歴史・理論を学ぶ」、「Ⅲ 統計を読む」という構成になっており、現状の日本経済を手っ取り早く理解したいかた、もう少し踏み込んで理論まで理解したいかた、自分で統計を読んで分析したいかた、それぞれのニーズに合った読み方ができるように配慮されています。

    統計も多く掲載されていますので、本文を読むのと同時に、自分ならどう仮説を立てられるだろうと読んでいくとさらに理解が進むように思います。

    なお、経済関係に苦手意識のあるかたは、小宮一慶『ハニカム式 日経新聞1週間ワークブック』http://booklog.jp/users/u-lev2/archives/1/4822248674のあとに読むとよいかもしれません。

  • マルクスの資本論のマンガをよんでちょっと興味を持った部分
    理系で経済学を学んだことがなかったけど
    けっこう楽しく読めました。

    さっと読める工夫とじっくり読む箇所があってよかった

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著者プロフィール

経済・環境ジャーナリスト、千葉商科大学名誉教授

1964年日本経済新聞社入社。ロンドン支局長、日経ビジネス編集長、論絶副主幹などを経て千葉商科大学政策情報学部教授。2010年から名誉教授。専門は日本経済論、環境経済学。主な著書に「ゼミナール日本経済入門」(編著、日本経済新聞社)、「新・日本経済入門」(同)、「環境が大学を元気にする」(海象社)、「サステナビリティ経営」(講談社)、「環境再生と日本経済」(岩波新書)、「日本経済復活、最後のチャンス」(朝日新書)、「日本経済グリーン国富論」(東洋経済)など。

「2021年 『改訂版 石橋をたたいて渡るネット株投資術 コロナ下でもしっかり利益』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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