アメリカのパイを買って帰ろう: 沖縄58号線の向こうへ

著者 :
  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
4.13
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本棚登録 : 109
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (286ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532166960

作品紹介・あらすじ

憧れのアップルパイ、胸躍るラジオステーション、初めて英語を耳にしたあの日の入道雲…日本兵がいなくなった島に、違う青空が広がる気がした。1945〜1972追憶の「アメリカの沖縄」確かに輝いていたあの頃の9つの物語。

感想・レビュー・書評

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  • アップルパイから始まった、沖縄が日本になるまでの歴史を辿る旅。
    教科書読んで覚えようとするよりも、こうして市井の人々の視点が書かれたものが一番頭に残る。

    読み終わって早速AFNのアプリをスマホに入れた。

    追記2019.11.25
    同僚の沖縄出身の人にこの本の話をしたら、本人はアップルパイの話を聞いたことはないとのことだったが、沖縄に寄った時にいくつものお店で聞いて回ってくれ、お土産で買ってきてくれた。
    感無量。本の中の、遠い土地のご馳走を目の前にできるなんて!
    嬉しくてあの世の著者に報告したい。きっと見てくれてるだろう(家族でもなんでもないけど)

    ちなみに味は素朴だった。リンゴとトロッとしたジャムが半々くらいで、シナモンはかかっておらず、パイ生地はしっとり硬めでパラパラ溢れない。あっさりしていくらでも食べれる。

  • 1950年代を中心とした
    アメリカの沖縄統治の文化的側面

  • ふむ

  • かりゆしウェアの男が迷いもせずにいそいそと十個も手にした商品は、箱詰めのアップルパイだった。(「アメリカのパイを買って帰ろう」)。大手のスーパーやチェーン型の飲食店などが新興住宅地と立ち並ぶ光景は、東京や横浜の郊外を不器用に模倣したかのようだ。那覇に通勤する若い世代の夫婦には好評とのことだが、米軍が返還した広い土地をなぜこうも凡庸な光景につくりかえてしまったのか、僕にはその意図がよくわからない。(「アメリカのパイを買って帰ろう」)。「いまはどうなのか知らないが、沖縄の基地に配置が決まるとアメリカ兵は家族で喜ぶ、とぼくはアメリカ人からじかに聞いたよ」(「きみは小さいからショーリと呼ばれたんだよ」)。オースター「ナショナル・ストーリー・プロジェクト」で、沖縄駐在経験のある帰還兵が、だいじな万年筆を盗まれたとかんちがいし、日本人から奪ったことを語った一節。/なぜか米軍兵でいっぱいのCoCo壱番館・北谷国体道路店の謎。「うちの社で繁盛店と言われているところでも、チキンカツの売上げは月に七〇〇食から一二〇〇食くらいの間です。なのにこの店では、月に一万食以上出ていくんです」。「『アメリカンズ・ラヴ・チョイセズ』ってことだろうな。選ぶ自由がある。これがないと、アメリカ人は生きている気がしないんだよ」(「嘉手納軍人のソウルフード」)/ものを混ぜ合わせたときにこそ、沖縄はらしさを発揮する。混ぜれば混ぜるほど、もともとそこにあったものが、やがて内部からじわりと屹立してくる。コンクリート・ブロックもまた見よう見まねから始まり、見事な造形物へと進化・増殖していった。素人の積んだブロックの不揃い加減には沖縄の魂があり、アメリカの軍隊がもたらしたほんの小さな物資のひとつにも、その息遣いは否応なく現れているのだった。(「石の箱でおうちをつくる」)「上向きになったとはいえ、実際はいつも緊張状態です。ですからストのときも、音楽は使いまわしでもいいから、とにかく広告だけは流さないと、と思っていました」(「幻のラジオステーションKSBK」)

  • 著者は沖縄の人ではないのにこれだけアメリカ世の沖縄を書けるのかと驚いた。この人はいったい58号線をどれだけ往復したのだろうか。観光地への道路としてしか捉えていなければ絶対に書けないのはもちろん、アメリカ世の沖縄を知らない地元の若い人だって、知らない話が多いのではないだろうか。
    取材対象が的確でインタビュー内容が面白く、どの章も時間を忘れて読みふけってしまった。とくに、最後の「幻のラジオステーション KSBK」は圧巻である。いい本に巡り会えた。

  • 戦後の沖縄の生活をアメリカとの接点を中心に描いたもの。取材をベースに執筆されたノンフィクション。沖縄人の考え方がよくあらわれており、良い面悪い面ともにとても共感できる。
    沖縄に生まれた、育った方、とくに40代以後の人はとても面白く読めると思う。基地はそうそう、、とかジミーはパイもいいけど肉がうまいとか、私のとって良著でした。

  •  否定的に語られる事の多いアメリカによる沖縄統治。本土人が思っている以上に適応し、反抗し、格闘し、奮闘していた実情を、沖縄の土産屋で売られている何の変哲も無いように見えるパイを買って帰る本土在住の沖縄人の姿を見かけた事から始まり、語っていく。
     昨今、日中で行われた過去の歴史に対しての相互の歴史感の摺り合わせが行われ、その中身において日本側が沖縄についてかつては両国に属していたが、日本に併合され、結果的には沖縄県民にしてみれば幸いであった。などといけしゃあしゃあと言っている日本側に心底あきれ返った事を思い出す。
     第二次世界大戦で本土の捨石にしようとした挙句、日米安保の為に、と基地を置き、騒音問題やその他の問題で今なお苦しめられ続けている沖縄県民の姿がどうやら見えないらしい。或いはそれでも県民は結果的には幸せだったし、今も幸せだと思っていると思っているのか。

     などと言う様な事を書くと怒る人はいるかもしれないが。

  • 2009/10/14読了

  • ここいち 見るたびにアメリカ人は カレーがと思ったり。

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著者プロフィール

1961年東京都生まれ。雑誌『SWITCH』の編集者を経て、作家・翻訳家に。主な著書は、小説に『人生は彼女の腹筋』(小学館)、『夜はもう明けている』(角川書店)、ノンフィクションに『語るに足る、ささやかな人生』(NHK出版/小学館文庫)、『地球を抱いて眠る』(NTT出版/小学館文庫)、『アメリカのパイを買って帰ろう』(日本経済新聞出版)、翻訳に『空から光が降りてくる』(著:ジェイ・マキナニー/講談社)、『魔空の森 ヘックスウッド』(著:ダイアナ・ウィン・ジョーンズ/小学館)、『スカルダガリー』(著:デレク・ランディ/小学館)など。2012年逝去。

「2022年 『ボイジャーに伝えて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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