昨日までの世界 上: 文明の源流と人類の未来
- 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版 (2013年2月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (414ページ)
- / ISBN・EAN: 9784532168605
感想・レビュー・書評
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今まで読んだダイアモンドの作品とは一線を画している様な気がする。
この作者がずっと研究してきた伝統的社会との比較を通じて、現代社会への問題提起をしている。
どれが正しいとか間違っているとかの判断を下そうというものではなく、哲学的な色が強いかな。
恐らく晩年に達している作者は、自分の研究から得た考えを集大成的する意味合いで作ったと思う。それだけに作者の強い思いが伝わってくる。
自分と他者とを区別する境界線から始まって、「平和と戦争」・「子育てと高齢者」についての考察が上巻の内容。
作者のいうところの工業化社会に属している自分にとって、全く別の価値観(伝統的社会の価値観)を提示することで、自分たちの考えを俯瞰して冷静に見ることができる。
こういう風に自分の価値観をひっくり返す作業は、頭を柔らかくするには一番な気がする。
個人的に面白かったのは終盤の高齢者の位置づけと価値の話。
特に高齢化社会が今後も進んでいく日本としては、作者が提示する高齢者の価値(子育て・経験の共有・高齢だからこそできる仕事)は暗い問題に対する希望になり得るんじゃないだろうか。
下巻への期待も込めて星四つで。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
伝統的な社会(西欧的の反対)と、我々の社会(西欧的)を、その良いところ悪いところを比較しています。伝統的な社会も、我々が通ってきた世界で、タイトル通り「昨日までの世界」。現代の我々が、何を得て、何を失ったのか、冷静に見ることができます。
上巻は、自分以外の他人への対応、戦争、子育て、高齢者への対応について。
今までの著作よりも、冷静な視点から書かれているのを感じました。 -
著者の細かい事例の積み上げで論を組み立てるやり方は変わらないし、読んでいて面白くためになる。
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ダイアモンド氏 3編目。
伝統的社会と現代社会を比較しながら、様々な考察を行う。相変わらず膨大な知識に基く検証は凄いの一言。
上巻では語られるのは商売などに代表される取引の実情、戦争、子育て、高齢者など。
取引と言っても現代では通貨があるが、伝統的社会では主に物々交換。地域や民族によって生産される物も違い、暗黙の了解で助け合っている。そんな人達が争いを起こしたりと、規模こそ違えども現代も変わらないなと感じた。
高齢者の章は初版から10年経っておりさらに深刻。価値が下がっている、というのは凄く納得出来た。 -
ダイアモンド博士の本業だったニューギニアでのフィールドワークを多く読ませてくれる。伝統的社会と比較することで、現代社会がどういうものか、我々が常識としている価値観がどういうものか、客観的に考えさせてくれる点が最も有意義な点となっている。ほんの数万年前までは誰しもがこういった生活を送っていたと想像させてくれる。
伝統的社会では幼児が母親と一緒にいる時間が高割合との記述があったが、その後、祖父母や親戚などコミュニティで子育てして両親は食物採取に行ける、という記述もあり、内容的に混乱してしまった… -
[評価]
★★★★☆ 星4つ
[感想]
伝統的社会と国家社会を比較し、様々な分野で比較を行い、解説を行っている。上巻では人言関係、戦争、子育て、高齢者のテーマに比較を行っているが、伝統的社会と国家社会にも共通点もあり、伝統的社会のほうが優れているなと感じることもあり、国家社会のほうが優れていると感じることもあり、一概に一方が優れているとは言えないことがよく分かった。
しかし、社用車で子供を轢いてしまったときの伝統的社会の決まりに従った解決方法は非常に興味深い内容だった。特に伝統的社会の決まりで和解が成立した後でも国家社会の司法では有罪とされていたことも驚いた部分だ。 -
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狩猟採取社会や首長部族社会などの伝統的社会と現代の国家的社会を比較する。狩猟採取社会は人間が現代のような社会を形作る以前の何万年と進化してきたものだ。その社会で採用されている風習は進化の波に洗われてきたものといえる。伝統的社会との比較による知見をこれからのわれわれの政策に生かすことを目的にしたという。
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数百万年の人類史において、国家や文字が出現したのは、たかだか5000年ほど前のことに過ぎない。それ以前の人類は、何を行ってきたのか。それは意外に現代と紙一重の世界であるか、優れていた社会を構成していた可能性もある。有史以来つねにつきまとう、戦争や教育、階層社会、高齢者の社会的位置づけなどを振り返り、今日的社会のアドバンテージと課題は何かを考えさせる。日本版には、日本の高齢化社会に対する提言もあって興味深い。