現代中国の父トウ小平 上

  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (621ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532168841

作品紹介・あらすじ

三度の失脚から復活し、改革開放へと突き進む-〓(とう)小平と数多くの登場人物のストーリーを織り交ぜながら、あたかも大河小説のように、中国の現代化への道のりを描く。政府要人、党史研究者、国内外の専門家、家族、関係者への聞き取りのほか、日米中の公文書など膨大な文献を駆使し、10年もの歳月をかけて完成した超大作。ライオネル・ゲルバー賞、全米出版社協会PROSE賞特別賞受賞。

感想・レビュー・書評

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  • 尊敬する先生が薦めてくださった本。
    毛沢東の決めたルールをいかに解釈するか、
    奮闘するところが面白かった。

  • 鄧小平の軌跡を追いながらアジア近代史を深く理解できる名書。毛沢東という気分屋で言ってることが変わる、被害妄想気味で大変な指導者にうまく仕えてきた立ち振舞はサラリーマンとしても参考になるものがある。江青を始めとする4人組や、周恩来、華国鋒、趙紫陽、胡耀邦、陳雲など、関連人物のキャラもたっていて読み物としても面白い。毛沢東は晩年、死後の自身の評価について最も危惧していたようだが、大躍進、文化大革命、集団農業…政策のほとんどが国民に大損害を与えた結果でも、党のメンツが最重要となるため今でも英雄視されているのか… そもそも装備でも軍規模でも上手である国民党が何故国共内戦に敗れたのかよく分かってなかったが、政治の基盤を作れず、腐敗が国民を幻滅させていたことが原因だったとしても疑問に残った。大混乱状態の広大な中国を短期間で立て直した指導力や実行力を目の当たりにすると、さすが9億人の頂点に上り詰めた人物だと関心させられる。子供の頃から記憶力がよく、フランスやソビエトへの渡航経験から国際感覚もあり、生まれ持った素質があったと感じた。日本とアメリカの国交正常化についても詳細に扱われているが、今の感覚からすると中国の安全保障においてソ連とベトナムが大きな問題となっていた点は新鮮に感じた。西側諸国は開放路線の鄧小平に率いられて中国が専制国家色を薄めていくと感じたかもしれないが、三権分立が中国では成立しえないと鄧小平は考えていた模様で、広大で多すぎる人口をうまく統制するには一党独裁の基盤を固める必要があるとの固い決意はその後の中国の政治を決定付けた感もある。葉剣英元帥は鄧小平への権力集中を懸念して華国鋒を推し出したとの分析だが、この頃の中国は実力者が出世し、党内民主主義の有効性が色んな意見や立場の人に議論を深めていた良い建設的な時代だったように映った。ただ政策に失敗した場合の失脚は恐ろしいが… 開放路線を進めるにあたって毛沢東主義との矛盾をいかにうまく政治的にこなしていくかという手腕がすごい。モスクワ留学時代に蔣介石の息子蔣経国と友人になっていたとはすごい逸話だが、なぜ彼はソビエトを選んだのだろう。日中、米中の国交正常化の時代には、台湾が中国に近々統一される見込みだとの予想が普遍的だったことに驚かされる。

  • ☆中国の指導者も命がけだな。つかず離れず。

  • [皇帝ならぬ皇帝]改革開放政策を強調し,中国の現代化に多大な影響を与えた鄧小平の生涯をまとめ上げた超大作。著者は,『ジャパン・アズ・ナンバーワン』を世に送り出したことでも知られるエズラ・F・ヴォーゲル。訳者は,著者の研究助手を務めた経験を有する益尾知佐子と東アジアの経済に関する著作を自身でも発表している杉本孝。原題は,『Deng Xiaoping and the Transformation of China』。


    尋常ではない分量に読む前から圧倒させられてしまいますが,内容の濃さに読後は更に圧倒させられました。鄧小平の歩みを知るためにはもちろんですが,彼がその人生を捧げた中国,そして中国共産党の歩みを知る上でも欠かすことのできない一冊かと。それにしても,鄧小平の堅実かつ冷静な思考と行動力には恐れ入りました。

    〜鄧小平はむしろ,移行期に総合的なリーダーシップを発揮した総支配人だった。彼は考えを一つのパッケージにして,それを同僚チームと大衆に,彼らが受け入れ可能なペースと方法で提案した。〜

    今年中に読めて良かった☆5つ

    ※本レビューは上下巻を通してのものです。

  • 「マルクス主義は不変の思想枠組みではなく、むしろ経験を踏まえながら再解釈され続けるものである。」

    毛沢東時代からアメリカとの国交正常化までが描かれている。ボリュームはあるが読みにくくはない。

    毛沢東時代に3度失脚したが、最終的には華を退け実質的権力者になった。個人崇拝を嫌った点は毛沢東時代からの反省だろう。

    中国の近代化を強く推し進めた、まさに中国中興の祖だ。

  • 22歳の鄧小平がモスクワ留学中に書いた作文がある。「中央に集約された力は、トップダウンで流れる。上からの指示には絶対的に従わなければならない。民主主義がどの程度許されるかは、周囲の環境次第である。」改革開放を押し進めながらも自由が行き過ぎたと見るや押さえつけた鄧小平。「実事求是(現実から学んで理論を立てる)」という毛沢東の言葉を借りて実利主義者。三度失脚し三度返り咲いたが肩書きとしては共産党軍事委員会主席で初代の総書記は胡耀邦につかせた。上巻は毛沢東〜周恩来の下で実力を認められながら失脚し、毛沢東の死後復権し実権を握るあたりまで。

    まだ10代の頃フランス留学中に周恩来の下で頭角を現した鄧小平は長征にも参加し、抗日戦では八路軍の主力の政治委員となり続いて国共内戦でも前線で戦った。1948年国民党軍60万、共産党解放軍50万が対戦した一大決戦の淮海戦役では開戦8日目に毛沢東の命で設立された総前線委員会の書記として全軍を率いた。兵力でも火力でもおとり、後に犠牲の大きさを批判されたが国民党軍を圧倒し揚子江渡河にも成功しこれがターニングポイントになり49年に中華人民共和国が成立した。後に鄧小平はこの勝利を一生で一番うれしかったことと語っている。

    1956年の第8回党大会で中央書記所総書記に昇進し、政治局常務委員となり共産党最高指導者の一人となった。毛沢東、劉少奇、周恩来、朱徳、陳雲につぎ日常業務仁責任を持つ指導者になった。このころ毛は鄧のことを次代の最も優秀な指導者と見なしていた様だ。一方で毛沢東は自分の権力を盤石にするため絶対的なナンバー2を作らないように部下を争わせ続け、劉少奇を失脚させ周恩来は死ぬまで屈服させ続けた、後に鄧が頭一つ抜け出そうとするとやはり失脚させている。

    1958年から始まる恐らく史上最大の人災、大躍進政策(中国では飢饉が原因で16〜700万人が餓死したとされているがフランク・ディケーターの毛沢東の大飢饉ー中国では発禁書ーによると4500万人)では鄧も当初は計画を推進した。しかし59年夏にはビリヤードをしていて転倒し大腿骨を骨折し数ヶ月療養している。復帰後は毛の指示を実行しながらも現実的な調整を実行した。計画より事実を重視する鄧と思いつきで事を進める毛のすれ違いがこうして始まる。(毛はどうやらどれだけの死者が出ようが全く気にしていない。この間にも東欧に食料を輸出し自分のメンツを優先している)それでもソ連に対して厳しく批判する鄧を歓待するなどまだ亀裂は大きくはなっていない。

    文化大革命は大躍進の失敗に対する毛への批判を押さえ込むために使われた部分もある。劉少奇を獄死させ、鄧小平も1967年には自宅軟禁になった。息子の僕方は紅衛兵からいたぶられ、転落して脊髄損傷を負っても一生下半身不随を負った。鄧は40年間忠実に毛に仕え続けて来たが江西省に追放されたこの時期にいつか来る復活の日のために中国をどうするかを考え続けていた様だ。罪を毛一人にかぶせるのではなく、毛沢東という怪物を生み出したシステム自体を問題視したのだ。これが後にチャイナナインの多数決による合議制を生んだのだろう。

    1973年の老幹部復活にあわせ鄧は毛により周恩来の下に呼び戻された。すでに69歳、現在なら引退間近だ。この時には38歳の王洪文がNo3に取り立てられている。そして周や鄧と言った実力者を攻撃するためには相変わらず江青をけしかけ、やりすぎると止めるを繰り返す毛沢東、ユン・チアンのマオなどにこの辺りは詳しく書かれている。75年1月には鄧は第一副総理に就任し、王とともに毛ー周の後継者候補筆頭に戻った。2月に周が公式の会議からの引退を表明すると鄧は実行役として文化大革命でぼろぼろになった組織の立て直しを次々進めた。先ずはセクト化した軍を解体し規模を縮小した、ついで産業を立て直す生涯になっている鉄道がまともに動くように徐州鉄道分局を立て直し、成功モデルを別の地域や産業に移植した。鉄道=石炭が動かないと産業は離陸しないのでこれが一里塚だった。また文化大革命中に取り立てられた役立たずを放り出し、実績のある幹部を呼び戻した。75年には王が失脚し鄧が事実上の総理となる。そして工業化をすすめ、文化大革命の誤りを鄧が指摘しようと疑う毛はまた鄧批判を復活させ周の死後、華国鋒を鄧に換えて総理代行とし、失脚した鄧は77年夏まで公的には姿を消した。しかしこの時鄧はいくつかの手続き状のミスについて自己批判したのみで、工業化や教育の強化など自分が進めて来たことは間違っていたとは一切認めていない。結局それが毛の死後、鄧が権力を握るのに有利に働いた。毛は鄧を失脚させる力はあったが部下に対する支配力は亡くしつつあった。

    1976年中国国民に愛され、外国首脳からの評価も高かった周恩来が死去した。清明節の4月5日にあわせ天安門広場で周恩来を偲ぶデモが行われた。4月4日の日曜日には200万を超える人が集まり4人組への批判と鄧への支持を表明した。毛は大衆の支持を失い、周が英雄となり鄧小平が最高指導者として支持されたのだ。毛は鄧を追放したが9月には毛が死去、10月には4人組が逮捕された。ここから改革開放が始まる。

    華国鋒は中央委員会主席となったが権力基盤が薄く長老からの支持を獲得したとは言えず、毛沢東の威光を借りた政権運営を行い後に鄧の復活とともにじわじわと実権を失い81年に辞任した。しかし、4人組を逮捕し文化大革命を終わらせ、改革開放路線へと舵を切ったのも華だったので鄧を批判していなければもう少し評価が高かったのかも知れない。金銭や権力にはあまり執着しない人ではあった様だ。

    1977年鄧小平の復活とともに中国は近代化へ大きく舵を切った。大学入試を復活し、海外視察を増やし1978年には日中平和友好条約を批准し多くの企業を中国へ呼び込んだ。1979年には中米国交を正式に樹立した。これには米ソの冷戦とソ連がベトナムに肩入れし中国包囲網を引こうとしたことが大きく影響している。永らく中国の仮想敵国はソ連だったため日米との関係を強めソ連に対抗するのが鄧小平の考えだった。ベトナムが東南アジアでの影響力を増すと軍事的に対抗しようとし、東南アジア各国との関係改善を図った。

    天安門広場に近い西単と呼ばれる巨大な壁に取り付けられた告知板は1978年の秋中央工作会議を受けてどれだけの自由が許されるかの実験場になっていた。林彪と4人組ならず、毛沢東への批判も現れ「民主の壁」には自由な発言が書き込まれた。しかし、政治的メッセージが増え乱闘事件なども起こり始めると秩序を乱す怖れが出だした。ついには共産党や鄧小平自身への批判も現れ始めた。鄧小平を新たな独裁と批判した魏京生は逮捕され西単の民主の壁は終わりを告げた。鄧小平は共産党体制への批判には厳しく対処した。自由の希望を与え、それが混乱につながるようなら断固として許さないあたりは後の天安門事件を思わせる。大躍進や文化大革命を起こす様な個人崇拝は否定したが、同時に中国が分裂する様な自由に対しては厳しく弾圧した。毛沢東になろうとした薄煕来を切り捨てながらも毛沢東そのものは否定せず、大躍進や文化大革命など一部誤りがあったとしているのも鄧小平が築いた路線に乗っている。国内の派閥争いを外国に見せるのは避けたいのだろう。民主の壁は微博に生まれ変わったがやりすぎるとつながらなくなるのは今も同じだ。

    この本は一部検閲を受けながらも中国で60万部のベストセラーになっているらしい。とは言え2千人に一人しか読んでない様だが。カットされたのがどこなのかが気になる所。著者のエズラ・ヴォーゲルも毛沢東を手加減しながらも批判しているし、腹黒いとまで書いている。
    下巻は改革開放と天安門事件へと続く。

  • 書いてある事はそそられるのだけれど、読みにくい。。、

  • ジャパン・アズ・ナンバーワンを書いたハーバード大のエズラ・ヴォーゲル教授が書いた鄧小平の一生をまとめた本。膨大な資料とインタビューをもとに書かれており、史実が緻密に描かれている。鄧小平の三回の左遷と、1970年代の改革開放、及び1979年に最高指導者となってからの改革開放の様子はとりわけ詳述されている。最期の左遷をされる前は、資本主義や科学技術に対する先進的な考えはありつつも、毛沢東および党古参幹部の前では立場の保全を図り、左遷時にも耐え、反省を認めた書面を何度も党中央に送っている。文化大革命から復権したあとは、より自分の考えを押し出すようになり、3回目の左遷を毛沢東に迫られるも固辞。毛沢東の死後復権してからは、華国鋒、胡耀邦、趙紫陽という3人の党主席を、実質の最高指導者として指導し、ときには利用し、ときには改革開放を強く押しすすめた。各国との関係改善、既存の社会主義と「社会主義市場経済」との理論的(理屈的)接合、中央集権から分権への推進、イデオロギー主義から専門家主義への移行、膨張した人民解放軍の規模縮小など難題を次々と解決。今の中国の発展の礎を築いている。彼の死後の、江沢民、胡錦濤は鄧小平のやり方を踏襲しているだけと言えるかもしれない。深圳や広州、珠海という経済特区の発展、上海の発展の流れもよくわかり、今の中国の地理的経済を知る上でも勉強になる。その意味で、今の中国の状況を知るには欠かせない本。

  • 【配置場所】工大選書フェア【請求記号】289.2||T||上【資料ID】11301234

  • (チラ見!)

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