最相葉月 仕事の手帳

著者 :
  • 日本経済新聞出版社
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本棚登録 : 230
レビュー : 38
  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532169275

感想・レビュー・書評

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  • 「絶対音感」で話題になった頃から、最相さんのことはずっと気になっていた。ようやく初めて著書を手に取ったが、ノンフィクションライターという仕事のきめ細やかさ、幅広さ、辛抱強さ、胆の太さを存分に知ることが出来た。「仕事の心得」「聞くこと」「書くこと」「読むこと」の四章に分かれており、様々な媒体で発表された文章を一冊にまとめているが、本書を貫いているのは最相さんの仕事に対する真摯さ。するすると最相ワールドに引き込まれていく。
    「仕事の心得」で語られる、駆け出しの編集者時代のエピソード。誠実に「人」と向き合うことがいかに大事なことかと気付かされる。「聞くこと」は単なる対談かと思いきや、最相さんがインタビュアーをつとめたFM番組の語り起こし。通常のインタビューとはどういうところが違うのか、客観的に自分のインタビューを分析し、反省する最相さんの自分ツッコミで色々考えさせられる。ひとつひとつが「なるほどなぁ!」と目からうろこでした。「書くこと」は、最相さんのノンフィクションの作法を垣間見ることができ、「読むこと」はノンフィクションの名作がずらり。心揺さぶる作品多数!何より、最相さんの書評が素晴らしい。編集者から「サイショウさんは時々、著者に憑依してますね」と指摘されたというのも納得。
    ノンフィクションを読む機会があまりない故、どのようにしてノンフィクションの作品が世に出るかということを今までよく知らなかった。本書を読んで、自分の視野も広がったように思う。まだまだ、知らない世界がたくさんあるなぁ。
    そして、仕事に向き合う姿勢についても学ぶことが多かった。「追いつめられたり解放されたり、しがみついたり投げ出したり」を繰り返しつつの日々から、得られるものがある。しっかり足元見つめ直したいなと思えました。まさに「仕事の手帳」といえる一冊。

  • ☆2(付箋6枚/P232→割合2.59%)

    次はビヨンド・エジソンを読むだろう。興味をもって探究する研究者の孤独と、やりたい事が見つからない若者の言葉の、どちらが光でどちらが影か。

    ・震災当時、火災で多くの犠牲者を出した長田区の小学校に通っていた少女がいた。文集で彼女の作文を読み、感受性の豊かさに引かれて会いに行った。震災のときは「生きるって絶対に死ぬことがあるからこわい」と思ったという彼女もいまは中学の部活動で忙しく、震災の記憶は薄れつつあり、そんな自分に気づいてハッとすることがあるようだった。
    別れ際、彼女から思いがけない質問を受けた。なぜ私がこの職業を選んだのかというのである。咄嗟に、なりたかったからだと答えると彼女はいった。
    「私、自分のやりたいこと、楽しいと思えることが見つかったら、自殺したり人を殺したりすることなんか考えなくなると思う。だから、そんなことをみんなで話し合い、見つけられる社会や学校であってほしいと思います」
    12歳の少女の言葉はいまも胸に刺さる。彼女は被災者の話に耳を傾ける心理カウンセラーの姿を見て、将来、人の話を聞く仕事に就きたいといっていた。夢は叶っただろうか。

    ・「真実がわかったとき、自分はもう生きていないかもしれないけれど、その日のためにデータを出していきたい」
    世界を舞台に厳しい闘いを続ける研究者がこぼれる涙をぬぐいもせずにそういったとき、私は彼らの孤独の深さを知った。科学論文には複数の執筆者の名前が並ぶことが多いためわかりにくいが、発見とは本来、一人の頭の中で起こる事件だ。助けてくれる人はいても、発見によって切り開かれる新しい世界を最初に見渡すことができるのはたった一人の人間なのである。

    ・「不可能(青いバラの花ことば)という意味をもったのは、それを可能にしようとした歴史があるからです」

    ・いったい誰に取材すればいいのか。前回の講義でも質問が出ましたが、とりあえずわかる範囲で取材すべき人をリストアップしたらいいと思います。家族はもちろんです。親きょうだい、親戚、同級生、もし会社勤めをしていたら、同僚。星新一の場合、星製薬という、全盛期のソニーぐらいの規模の会社だったと誰かが教えてくださいましたが、当時の大変大きな企業の創業者の息子でした。五反田にあるTOCビル、あそこが星製薬の敷地だったところです。そんな大会社の御曹司でしたので、会社関係の人も当たりたい。作家になってからは作家仲間、編集者など、とにかく思い当たるだけの人物を挙げていく。
    …星新一の評伝では、実際に取材をさせていただいたのは134人になりました。

    ・さて、ノンフィクションを書いていてよく受ける質問なのですが、会話をどう書くかという問題があります。個人を書くときには重要なテーマです。本人はもういないわけですから、あたかも書き手がそこにいて見てきたかのようには書けません。
    ではどういうふうに書くかというと、まず本人の手記なり日記なりに書かれていたことは重要な証拠になります。それからエッセイで、「お父さんとこんな会話をした」といったものがあればそれは使えます。あと第三者のエッセイで「星さんがこういうふうにいった」というようなことが書かれていたらチェックしておきます。取材中に相手の方から「実はあのとき、星さん、こういっていたよ」と教えてもらったら、それもメモしておきます。いろいろな状況証拠を集めて確かにそれは正しいだろうと思えれば、その人がそのように語ったという形で書きます。

    ・取材者、被取材者の関係性であれ、人と人の関係なので、誠実であること、謙虚であることはとても大事だと思います。自分自身が曲がっていたら、相手が曲がっていても、あまりわからないです。こちらが謙虚であれば、相手がねじれているとすぐにわかります。なぜこの人はねじれたことをいうんだろうと気がつきますから。それは取材において、とても大事な姿勢だと思います。

  • 自己啓発
    本の本

  • 創作論

  •  「ひとつのテーマを何年も追い続ける徹底した取材で知られるノンフィクションライターによる初の仕事論」という惹句を目にして、反射的に手を伸ばしたもの。

     本書のパート1「仕事の心得」(全体の5分の2程度に当たる)は、たしかにその惹句のとおりの内容。エッセイとしても質が高いし、ライターの1人として参考になる。『日本経済新聞』の連載をまとめたものだ。

     パート2は、著者が「InterFM」で行った三浦しをん(作家)と野町和嘉(写真家)へのインタビューの文字起こしに、少し加筆しただけ。こんなのいらないと思う。ページ数稼ぎとしか思えない。

     パート3は、「科学を書く」という書き下ろしと、早稲田大学大学院のジャーナリズムコースで著者が行った講義「私のノンフィクション作法」をベースにした「人間を書く」からなる。

     そのうち「人間を書く」は、著者が『星新一 一〇〇一話をつくった人』をどのように書き進めていったかの舞台裏をつぶさに明かしたもの。緻密な仕事ぶりがうかがえて興味深い。1人の人物に的を絞ったノンフィクションを書こうとしている人にとっては、この文章自体が最高のお手本になるだろう。

     最後のパート4は、著者がブック・アサヒ・コムに連載していた、ノンフィクションの名作を紹介する書評を集めている。内容は悪くないが、べつにこの本に入れなくてもよかったと思う。

     私が本書の編集者なら、パート2、パート4はすべてカットし、パート1とパート3をふくらませて1冊にする。そうすれば、立花隆の『「知」のソフトウエア』や、野村進の『調べる技術・書く技術』に匹敵する、「ノンフィクション作家の知的生産術」のスタンダードになり得ただろう。
     中途半端な“寄せ集め感”があって、そこが残念な本だ。

     とはいえ、パート1とパート3は面白い。普遍的なライター入門というより、著者個人の仕事を振り返った内容だが、それでも物書きなら教えられるところ大である。

     共感するくだりも多い。たとえば――。

    《締め切りに遅れることはあっても、締め切りを忘れることはない。あ、忘れてた、なんていう人がいたら、それは文筆が本業ではない人だろう。文筆専業の人間の体内時計は締め切りを中心に時を刻む。体がもう、そのようにできている。》

  • 2018/7/22

    2014/05/08

  • 最相さんが書いた仕事に関する本。この方の本を読むのはこれがはじめてだけど、オイラと似たような感性を勝手に感じたため、非常に楽しく読めた。この方のノンフィクション(絶対音感や星新一)や過去エッセイも面白そうなので、未読の山が減ったタイミングで買ってみたいな、と思った。

  • 170716*読了

    最相さんの著作を読んだのは、これが初めて。初めてがこの本でよかったと思う。これから、最相さんの本をいろいろと読んでいく中で、ここに書かれてあった彼女の思いや信念を思い出しながら読めるから。

  • 編集やインタビューの仕事における相手との折衝、心配り、仕事の進め方が参考になる。仕事の心得として汎用性あり。

  • 「セラピスト」に次ぐ最相葉月2冊目の本。真摯にひたむきに、私にしてみれば絶望して投げてしまいそうな目標に向かって進むさまに敬服。こういう人がライターならば、自分はそのはしくれでもないと思える。
    青いバラについて書くときに、まだ未知の世界なのだから、自分も間に合うはずと思う場面など、背筋が伸びる。次は星新一の本と、エッセイを読んでみたい。

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著者プロフィール

1963年生まれ。兵庫県神戸市出身。関西学院大学法学部卒業。著書に、『絶対音感』(小学館ノンフィクション大賞)、『青いバラ』『星新一 一〇〇一話をつくった人』(大佛次郎賞、講談社ノンフィクション賞ほか)、『れるられる』『セラピスト』『未来への周遊券』(瀬名秀明との共著)など。近刊に『ナグネ 中国朝鮮族の友と日本』『東工大講義 生涯を賭けるテーマをいかに選ぶか』。読売新聞紙上にて「人生案内」の回答者を7年以上つとめている。

「2015年 『辛口サイショーの人生案内』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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