食糧と人類: 飢餓を克服した大増産の文明史

  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (332ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532169817

作品紹介・あらすじ

科学力と創意工夫で生産力を飛躍的に向上させ、度重なる食糧危機を回避し、増加してきた人類。数百万年にわたる食糧大増産の軌跡を解明し、21世紀の食糧危機を見通す壮大なドラマ。地球誕生から現代まで、試行錯誤の軌跡を追う。

感想・レビュー・書評

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  • 獲得経済から生産経済となった人類の変遷について、歴史を紐解き解説している一冊。
    著者は獲得と生産のどちらが正しい又は優れているかを語るつもりはなく、ただ実際を紹介したいだけであることを断っています。
    狩猟生活の人間は消費されるエネルギーよりも摂取するエネルギーのほうが上回り、木の実などから得られるミネラルが健康に役立つことがわかっているそうです。
    農業生産を行うコミュニティの人間は生産に莫大なエネルギーを消費され、環境をどうしても破壊する必要があり、似た食材による栄養素の偏りが生じることになります。
    しかし、生産経済を行わないと国家と呼べる社会まで集団を拡大することは不可能であることも事実です。
    人類文明を動かす第一のエネルギーは石油でも電気でもなく食糧であり、これを得るための試行錯誤の歴史は未来へ続きます。
    飢餓の撲滅と環境破壊の無い農業を目標に、人類は頑張っていく必要があると思いました。

  • ルース・ドフリース「食糧と人類」書評 革命と繁栄の歩み、その表と裏|好書好日
    https://book.asahi.com/article/11607365

    食糧と人類 | 日経の本 日本経済新聞出版
    https://nikkeibook.nikkeibp.co.jp/item-detail/16981

  • 人類にとってリンと窒素の循環を支配することこそ繁栄の絶対条件だったと分かる。いささか話が単調だったので何度も眠くなった。

  • 人類と食糧不足との戦いを、地球誕生から現代まで紐解いていく壮大な物語。

    考えてみたら、人類の歴史って常に飢餓、飢饉との戦いだったし、そのために知恵を働かせて、工夫をして、技術と科学が進歩したんだなって当たり前ながら、今までちゃんと目をやらなかったようなことに目を向けさせてくれたナイスな本書。

    結構だるい話かなって思ったけど、普通に面白くて夢中で読んでもうた。

    小説以外では久しぶりの高評価。

  • 1.タイトルにつられて購入しました。

    2.地球に存在する種の1つでしかない人類がなぜ食糧を確保することができたのかについての歴史を世界規模で解説した一冊です。人類が食糧難をどのように克服していくか、移動生活から定住生活へ、生産性を高めるために数多の科学者が生み出してきた方法などが歴史で学べます。しかし、その一方で、自然破壊をしてきたという一面も見逃せません。焼き畑農業では、畑のサイクルが追いつかずに荒地にしてしまったり、今までは出てこなかったバッタなどの害虫が壊滅的な被害を及ぼしたりしています。つまり、人間の創意工夫には、自然破壊という代償がつきものとなっています。これからを生きていくためには、これらの反省を活かしていく必要があるのではないかと疑問を投げかけてくれています。

    3.人間の繁栄には自然破壊がつきもの、ということは常々思っています。都市化が進んだ影響によって進む温暖化が最たる例だと思います。人間の繁栄によって自然のサイクルが歪み、さらに住みにくい世界を作ってしまっているといういたちごっこをやめることはできません。
    正直なところ、このような問題は答えが出せるわけではないですが、子ども達に伝える時にはなんて答えたらいいのか、考えてしまいます。
    とりあえずの安易な考えですが、森林の絶対量を増やすほかないのかなと思います。

  • もうちょっと専門的なものをイメージしてたけど広く浅かった。歴史も地域も広くて、もう倍の量でもう少し掘り下げが欲しかった

  • [評価]
    ★★★★☆ 星4つ

    [感想]
    この本では人類の文明が発展したのは常に前進し続ける事と壁にぶつかった際の創意工夫による方向転換で数々の障害を乗り越えてきたのだということがよく分かる内容だった。
    人類の歴史を農業から解説しているが、この本を読むとその道は楽な道ではなかったことがよくわかる。狩猟から農業への転換は安定した食料を得た代わりに栄養の偏りを生み出し、肥料を使用した農業は肥料を使わずには農業が出来ないようになってしまった。
    障害にぶつかるたびに方向転換し、乗り越えてきたがこれからも継続していることを考えると障害にぶつからないようにする工夫が必要なのかもしれない。

  • 『食糧と人類――飢餓を克服した大増産の文明史』
    原題:The Big Ratchet: How Humanity Thrives in the Face of Natural Crisis (2014)
    著者:Ruth S. DeFries(1957-) 環境地理学。
    訳者:小川 敏子
    装幀:間村俊一
    本文デザイン:アーティザンカンパニー

    【版元】
    定価:本体2,400円 +税
    版型:四六判 上製
    頁数:336
    ISBN:978-4-532-16981-7
    2016年1月発売

     なぜ人類だけが繁栄しているのか? 科学力と創意工夫で食料生産力を向上させてきた歴史を解明し、21世紀の食料危機を見通す。
     『銃・病原菌・鉄』『昨日までの世界』と同様のユニークな観点からの歴史ドラマ。食糧問題との格闘の軌跡を解明した知的興奮の書です。
    http://www.nikkeibook.com/book_detail/16981/
    https://bookplus.nikkei.com/atcl/catalog/2016/9784532169817/

    【目次】 
    献辞 [002]
    目次 [003-006]

    プロローグ 人類が歩んできた道 007
    第1章 鳥瞰図――人類の旅路のとらえかた 012
    第2章 地球の始まり 031
    第3章 創意工夫の能力を発揮する 052
    第4章 定住生活につきものの難題 081
    第5章 海を越えてきた貴重な資源 113
    第6章 何千年来の難題の解消 138
    第7章 モノカルチャーが農業を変える 166
    第8章 実りの争奪戦 189
    第9章 飢餓の撲滅をめざして――グローバル規模の革命 222
    第10章 農耕生活から都市生活へ 245

    謝辞 [267-268]
    訳者あとがき(二〇一五年一二月 小川敏子) [269-271]
    参考文献 [272-309]
    原註 [310-332]
    著訳者紹介 [334]

  • 人類が狩猟採集生活から農耕生活へ移行して1万2千年。それから現代までに人類は何度かの大規模な飢餓を経験しています。場所によっては今なお食糧不足に苦しむところがありますが、巨視的に言って今人類が繁栄しているのはこれらの飢餓を乗り越えてきた結果です。しかしここに至るまでの経緯は決して順調なものではなく、克服したかに見えては、自然からのしっぺ返しをくらい、また克服して…の繰り返しでした。この人類と地球の力比べの歴史を、食糧をテーマに見ていく内容となっています。最初のイメージは、食糧問題を大きく扱う内容だと思っていましたが、問題提起というよりも淡々と食糧と人間のかかわりが述べられているという内容なので、問題提起と解決策を提示するような内容でありません。
    本書の歴史は地球の誕生から始まります。特に水の重要性を強調するためですが、この循環が植物を、そして人類は育むことになります。それから農耕生活、大航海時代におけるグローバル化の始まり、工業の発展、都市化、遺伝子組み換え技術の発明へと物語は進み、各段階で起こった病害、虫害と飢饉、それに対抗する人間の試み、殺虫剤の問題、戦争、肥満、格差問題など食糧から派生する様々な問題にも言及されています。
    特に遺伝子組み換え技術は歴史でいうところの「最近」に発明された技術で、植物が持つ弱点を、ほかの植物の遺伝子を組み込むことで補う画期的な方法で、本書でも度々、人類の飢餓を救ったものとして触れられていますが(著者の考えというよりも一般的な考えとして)、遺伝子を短期間で変えてしまうこの方法が人体に及ぼす影響を知るには実験期間があまりに短すぎるため誰にも答えは出せていません。
    以上のように食糧に関する大きな流れを知る概説書としてはいいですが、それにまつわる問題点や対策、そして著者自身の主張があまり語られることはないため、個人的には他の本も合わせて読むほうが問題意識は高まるように思います。個人的に勧める本は ↓ に挙げています。

  • 人類が技術の発展を持っていかに食料供給の制限を打ち破ってきたかを膨大な数の文献からまとめた良書。英語のタイトルである" Big Ratchet"とは人類が常に技術革新を起こすたびに歯車(Ratchet)を回すように食料供給のプロセスを回すたびに、そのプロセスが新たな問題(手斧: Hatchet)によって破壊され、またそれ技術革新によって乗り越えていくという繰り返しを例えている。

    人間が食料を補給するというプロセスは、自然界の循環の一部に過ぎず、そのプロセスにおいて人間はほぼすべての資源・エネルギーを投入して食料を確保しなければならないという問題が本質的な食料供給の問題である。本書における前半の主要な内容はこの循環を変化させていかに効率的に食料を供給するか人類が悪戦苦闘してきたかが描かれている。窒素やリンといった栄養素をどう効率的に畑に返すか、そこで起こった窒素固定のマメ科利用やハーバー・ボッシュ法、リン供給のためのグアノやリン鉱石などの発見、普及過程などの歴史が描かれる。

    そして後半は栄養素の循環から、疫病や虫害とそれとの戦いに関して話題がシフトしていく。効率的な食料供給のために発展した化石燃料頼みのモノカルチャーや緑の革命が結果的に疫病に対するリスクを大幅に上げてしまうという新たな問題や害虫を駆逐するための殺虫剤、特にDDTの功罪、また食料供給における技術革新によって実現した都市化によって引き起こされる肥満といった問題が述べられている。

    冒頭での衝撃的な環境破壊の描写とは裏腹に、結論では決して人間のこの営みを批判するわけでも賞賛するわけでもない。ただ破綻の危機とそれに対応する技術革新による方向転換を繰り返していく人類の歴史を俯瞰的に見ることが、現実に起こっている問題が未来にどうつながるのかを考える礎になる。

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著者プロフィール

コロンビア大学教授
地理学者として、地球表面が農業やそのほかの人間の土地利用によっていかに変化してきたかを衛星写真を用いて研究。研究は高く評価されており、2006年には米国科学アカデミー会員に、2007年にはマッカーサー・フェローシップに選出(各分野で年1名だけ選出される)。セントルイスのワシントン大学を優等学位で卒業後、ジョンズ・ホプキンス大学で博士号を取得。コロンビア大学では持続可能な開発を教えている。

「2021年 『食糧と人類』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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