組織サバイバルの教科書韓非子

著者 :
  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (337ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532169978

作品紹介・あらすじ

「経営者が愛読しているにもかかわらず、ほとんど口外されない名著」

◇『韓非子』は、戦国時代の思想家韓非子の著作。西のマキアベリ、東の韓非子という言葉があるが、『韓非子』全編を貫いているのは、人間不信(性悪説)の哲学です。中国の古代において『論語』の理想とするような組織は、時代が下るにつれてその批判や改革への試みが徐々になされていきました。その解決策として誕生したのが『韓非子』です。その意図は
「ムラ社会のような目的意識の強くない組織を、成果の出せる引き締まった組織に変えたい」ということ。
強敵が外部に多数ひしめく過酷な状況でも生き残れる、筋肉質な組織を『韓非子』は作ろうとしました。

◇また『韓非子』は、組織にいる人間がその中で生き残るための教科書という一面も持っています。
どんな名経営者であっても、組織の頂点に立ち、それを維持するためには、ライバルや派閥間の抗争、権力闘争を乗り越えなければならない状況に直面します。当然そんな状況で用いられるノウハウは、きれいごとばかりではありません。他人に堂々とはいえないような手段も駆使せざるを得なくなります。こうしたノウハウは、下にいる人間にとっても多々必要になります。どうしようもない上司や同僚に対抗するため、巻き添えになって責任をとらされないため……そういった状況での権力の握り方や、権力闘争のコツといった知恵を学ぶ糧として『韓非子』はあるのです。

◇本書では『論語』的な立場(徳治)、『韓非子』的な立場(法治)の二つを対比させながら――それぞれの考え方の特徴とその強み、弱み、さらには現代的にどのような意味や活かし方があるのか、について解説します。前著『最高の戦略教科書 孫子』と同様に、親しみやすい文体をこころがけ、現代の事例を全体に散りばめて読者の理解を深めていきます。

感想・レビュー・書評

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  • 韓非子と論語の比較をベースに日本企業の組織・統治の在り方に切り込んでいる。対比が明確なので分かりやすいのだが、読了まですごく時間がかかった。
    レイアウトやフォントがなじまなかったというのが一つ、論理展開が冗長で、展開が頭に入ってきにくかったというのも理由。さらに、古代中国の歴史の基礎をすっかり忘れていることも理由に挙げられそう。自分の教養が足りないと感じた一冊。(本に対する直接の感想とは違うが。)

  • あ〜、私にはこんな戦略ムリゲー。

    本当に日本の経営陣が読んでいたら引くけど、韓非子的なものを経営陣に感じることは多々あり。

    気魄(きはく)と言う言葉は今では完全に忘れられているが、かつての陸軍の中では、その人を評価する最も大きな基準であった。

    跋扈(ばっこ)
    精神主義が跋扈すると帳尻合わせが横行する
    ・会計報告やスペックの偽装が現代の「帳尻合わせ」だとすれば、太平洋戦争時代のそれは「員数合わせ」と呼ばれていた。員数とは単に物品のことなのだがー。

    韓非子が卓越した権力論を内包している。
    「経営者が愛読しているにもかかわらず、それがほとんど口外されない名著」

    韓非は、韓の領土が削り取られて弱体化していくのを見て、たびたび書面で韓王を諌めた(いさめた)。しかし韓王はそれを用いることができなかった。この時、韓非子は国を治める際の問題として、
    ・法制を明確にしようとしない
    ・権力で臣下をコントロールしようとしない
    ・富国強兵に努め、人材を求めて賢者を登用しようとしない
    ・うわべを取り繕って国を蝕む人物を、本当に功績ある者の上に置いてしまう
    →儒者は文化を重視して法を混乱させるし、任侠者は私的な武勇によって禁令を破る。余裕があるときには、儒者や任侠者のような名声の高い人を寵愛するが、事があれば結局甲冑(かっちゅう)の士に頼る。

    孤憤(こふん)、五蠹 (ごと) ・内儲説 (ちょぜい) ・外儲説・説林 (ぜいりん) ・説難(ぜいなん)など十余万言を作った。

    危急(ききゅう)

    膾炙(かいしゃ)

    古今の学者の解釈
    ・韓愈(かんゆ)ー博愛
    ・朱熹(しゅき)ー愛の理
    ・伊藤仁斎(いとうじんさい)ー性情の美徳、人の本心
    ・荻生徂徠(おぎゅうそらい)ー生まれ、成長させ、養い、育むこと
    ・加藤常賢(かとうじょうけん)ー己に忍耐し、他人を愛する
    ・安岡正篤(やすおかまさひろ)ー天地・自然の生成化育の人間に現れた徳
    ・宮崎市定(みやざきいちさだ)ー人の道、人道主義、ヒューマニズムのこと
    ・吉川幸次郎(よしかわこうじろう)ー人間の人間に対する愛情、それを意思を伴って、拡充し、実践する能力
    ・本田濟(ほんだわたる)ー思いやりの心で万人を愛するとともに、利己的欲望を抑え礼儀を履行すること。ただし万人を愛するといっても、出発点は肉親への愛にある

    会社が大きくなると、どうしてもセクショナリズムが生まれてしまう。

    鼎(かなえ)に鑄(い)させて

    ■徳の高い人物はそうそういない。たとえ今はいたとしても、後々続かなくなる。
    ■徳を持った人物自体、変節してしまうことがある。

    権力必腐

    具申

    人というのは往々にして、好悪の同じ人を認めるし、好悪の異なる人を認めない。
    →これを同取(どうしゅ)の仲。・好きなものが一緒/同舎(どうしゃ)・嫌いなものが一緒

    「貴様を推薦したのは、おおやけのこと。それだけの能力があると見込んだからだ。貴様を憎んでいるのは、私ごとの怨みだ。私ごとの怨みで、貴様の登用を邪魔するわけにはいかない。’私怨は公門に入らず’というではないか

    合目的的(ごうもくてきてき)

    過ちに気がついても改めない、これが本当の過ちだ。

    大昔は道徳を競い合ったものだが、少したつと智謀(ちぼう)が求められ、今では気と力を削り合う争いになっている。

    アンチテーゼ・・・理論・主張を否定するために提出される反対の理論・主張である。

    俠客(きょうかく)・やくざもの

    焇気返る(しょげかえる)

    唯才(ゆいさい)主義・道徳的か否かなど関係ない、この乱世を勝ち抜くためにとにかく結果の出せるやつが欲しい。

    「君主と臣下とは、一日に百回も戦っている。(上下は一日に百戦す)」
    面従腹背(めんじゅうふくはい)

    掣肘(せいちゅう)・・・わきから干渉して人の自由な行動を妨げること。

    キャノン時代の上司だった故・山路敬三、鈴川博は、悪い報告を持っていくと、「よく報告してくれた」と怒るどころか褒めてくれた

    コーチングVS中小企業などでは、整備が行き届いておらず、社長自身が暴君だったり、その下の管理職でも「社長の親族だから」「重要な取引先の縁故入社だから」などと言った理由で、周囲も及び腰で手がつけられないといったことが起こってしまう。

  •  日本の会社組織は、論語的な価値観でできている。そのために評価として、情意考課が行われている。なので、忠誠心や頑張っているや様子を見せて、権力を持っているもののお気に入りになることが良い戦略となる。
     ただし、これからの時代はますます、韓非子的な価値観が強くなっていくと思われる。韓非子的な価値観では、結果で評価される。その場合は、競争に巻き込まれるため、自身の能力を磨いていくしかない。

  • 韓非子を知るよりは、どいう組織づくりをするのか、そのために韓非子の教えがどう役立つのかを書いてくれた本。
    組織をよくするという目的別に読むと良いと思う。
    韓非子を知ろうとすると期待外れになるだろう。

  • 性善説で育ってきたけど、性悪説で対抗しなければと思うようになってきて読んだ。
    参考になったのは、賞罰を握る。権限委譲をしない、部下が外部の力を借りる時は権力の衰退に繋がるなど。

  • 期待値100に対して60点

    論語と韓非子を対称軸に据えて、それぞれの立場から人や組織の姿を論じる構造は良いと思うが、ぜんたいてきに冗長でダラダラ感を感じる。

    性悪説を前提とした韓非子の内容の性質上、論語に比べて、心が晴れるような爽快感を感じるには至らなかった。

    とは言え、韓非子的なものの見方・考え方は必要。本の表紙を明るいデザインにして、もっと親しみやすい内容にすると良いのではないかと思った。

  • 孔子(徳治)と対比しつつ韓非子(法治)の思想を紹介。思想の紹介に留まらず、現在のビジネスに頻繁な言及があり、退屈せずに読み切れる。
    骨子としては、①徳治=優しい統治の問題点(徳を持つ人材の希少性、情に逆らえない)、②法治の有効性と限界(最後は徳を持った人材が必要)、③組織、及び経営陣においては法治と徳治のミックスが必要、というもの。韓非子の思想を持ち上げるばかりでは無い。
    現役の中間管理職として、健全な組織運営のため「どんなに情があって人望があっても、問題や禍根が残っていれば、人が変わったように処断」(282ページ)することが必要とする点について全く同感。

  • 春秋戦国時代に優秀な思想家として登場した孔子と韓非子。同時代に生きながら真逆なそれぞれの思想は現在の世相と通じるところがあり大変興味深い。

    ①「論語的考え方」
    人の成長する力(年功序列の基本)
    、信頼を重視
    徳知
    水の政治
    →問題点 徳をもった人はそうはいない
    組織が大きくなると現場は暴走する
    お世話になった人に逆らいにくい
    ブラック企業になりうる

    ②「韓非子的考え方」
    法治
    法(賞罰)、勢(権力)、術(家臣の操縦)
    愛や情けはねじれがちで徳知を改善する
    為に生まれた
    結果主義
    火の政治
    →問題点 利の源泉調達に限界あり
    公平な評価制度設定の難しさ
    後継者をどうやって選ぶべきか

    1つの解決方法は制度は「性悪説」、運用は「性善説」でハイブリッド型で運用する
    筆者は上にたつ人の「覚悟」と「二重人格性」にあるとしている

  • 「論語」と「韓非子」という対極の思想を比べることで、成果の出る組織とは?について考える一冊。また、組織にいる人間がその中で生き残っていくための教科書という面も持っている。

    「論語」は、ひどい戦乱の中、下剋上が常態化していた時代を、人と人の信頼関係をもって治めようとする考え方。(「ひとまず人を信用してかからないと、よき組織など作れるはずがない」)

    「韓非子」は戦乱の時代状況が加速し、ライバルから激しく浸食されているにもかかわらず、内部の権力闘争などにより自壊しつつある中で、権力や法をもって国を治めようとした。(「人は信用できないから、人を裏切らせない仕組みを作らないと機能する組織など作れない」)

    権力の強力さゆえに制約を感じると人は自由を欲し、逆に権力の弱さゆえに混乱状態が続くと強い権力を欲してしまう。この狭間で人は歴史的に振り子のように触れ続けている。

    人事権という強力な権力を持たない現在の日本企業の上司は、信頼関係をもって組織を治めなければならず、日本に「論語」の考え方が驚くほど浸透していることが理解できる。

    対極にある2つの思想についての知識を深めるために参考となった。

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著者プロフィール

1965年東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。現在は、作家として『孫子』『論語』『韓非子』『老子』『荘子』などの中国古典や、渋沢栄一など近代の実業家についての著作を刊行するかたわら、グロービス経営大学院アルムナイスクールにおいて教鞭をとる。2018年4~9月トロント大学倫理研究センター客員研究員。主な著訳書に『現代語訳 論語と算盤』(渋沢栄一著、ちくま新書)、『孫子・戦略・クラウゼヴィッツ』(日経ビジネス人文庫)、『最高の戦略教科書 孫子』『組織サバイバルの教科書 韓非子』(以上、日本経済新聞出版社)、『中国古典 名著の読みどころ、使いどころ』(PHP研究所)、『アミオ訳 孫子[漢文・和訳完全対照版]』(監訳・注解、ちくま学芸文庫) など。

「2020年 『『論語』がわかれば日本がわかる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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