遊星ハグルマ装置

  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (329ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532171063

作品紹介・あらすじ

同じ「惑星」からインスピレーションを受けた直木賞作家の短篇小説と"念力"短歌が交感!?空想と科学と、昭和の薫りと…懐かしく不思議な物語が紡がれる。

感想・レビュー・書評

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  • 遊星歯車機構(ゆうせいはぐるまきこう、英: planetary gear mechanism)とは太陽歯車(英: sun gear)を中心として、複数の遊星歯車(英: planetary gear)が自転しつつ公転する構造を持った歯車機構である。「遊星」は、planet(惑星)の別の訳語で、その構造を惑星系に見立てたことに由来する―――Wikipediaより

    いやあ、満足、満足。
    お腹いっぱいで、良いものを読んだ幸せの余韻に浸っております。

    短歌×ショートショートのスペシャルコラボ。
    堪能いたしました。

    はじめに登場するのは歌人の笹公人さんの短歌5首。
    次に続くのは小説家の朱川湊人さんのショートショート。
    それが交互に続く。
    朱川さんのショートショートと笹さんの短歌は、明らかに関係ありそうなものと、そうでもなさそうなものとある。
    各自独立していながら、ふたりの作品は、絶妙な距離感をもって、関係してゆく。

    装画の諸星大二郎さんのイラストが表すように、どこか懐かしく、SFちっくで、不思議な作品が多い。

    笹さんの短歌はクスッと笑えるものから、怖いもの、切なくなるものまで、多様。
    リア・ディゾン、アンドレ・ザ・ジャイアントなど、今では誰でも知ってるか微妙な人物名を短歌に取り入れるという、力業を多用する。

    笹さんとは四歳違いなので、彼の作品に出るサブカルチャー類は、ほぼほぼ懐かしく、記憶の底からほこりをかぶった姿で出てきたものを、綺麗に拭いてくれた気分。ピカピカ。

    朱川さんは『花まんま』を、遠い昔に読んだっきりだが、醸し出すイメージが変わらない作品ばかりなので安心しつつ、驚いた。確固とした世界観をお持ちなのですね。

    また第二弾を作ってほしいレベルで気に入りました。
    他の歌人、他の小説家でシリーズ化するのもいいな。

    • 111108さん
      5552さん、こんにちは。

      わぁ‥以前言ってた笹さん朱川さん諸星さんのコラボ、これなんですね!
      表紙からして力強い感じですね。クスッと笑え...
      5552さん、こんにちは。

      わぁ‥以前言ってた笹さん朱川さん諸星さんのコラボ、これなんですね!
      表紙からして力強い感じですね。クスッと笑えるけど、読者の世代でギリギリ通じるかという人を詠んだりというのも笹さんの挑戦なんでしょうか?私も通じる世代だから問題ないですけど‥

      以前「今日は誰にも愛されたかった」で連歌(短歌と短歌と詩)を読んだ時も、何だかわからない所ありつつ三つ巴の世界感を感じましたが、今回のはもっと強めに感じそうですね!読んでみたいです♪
      2022/07/22
    • 5552さん
      111108さん、こんにちは

      笹さんの短歌、面白かったです♪

      爆音はアンドレ・ザ・ジャイアントの放屁にて機内の赤子呆然とせり 笹...
      111108さん、こんにちは

      笹さんの短歌、面白かったです♪

      爆音はアンドレ・ザ・ジャイアントの放屁にて機内の赤子呆然とせり 笹公人
      野口五郎の傾けているヘッドフォンにCIAの暗号届く 笹公人

      とか、すっとぼけた味わいが癖になります。まるでコントのような 笑
      短歌に登場する人物が絶妙なんです。
      こういう短歌もお茶目でスマートで素敵です。

      「今日は誰にも愛されたかった」も、素敵なコラボでしたね。
      短歌界というのは、伝統を重んじ、旧態依然としているイメージが何故かあったのですが、新鮮な試みもたくさんしているのですね。
      『遊星ハグルマ装置』は、濃い三人ですが、ぶつかりあうこともなく、ひとつの世界観を作り上げているような気がします。



      2022/07/22
    • 111108さん
      5552さん お返事ありがとうございます!

      あげていただいた二首とも、出てくる人も読まれてる内容も微妙に笑い誘いますね。どんな状況なの?っ...
      5552さん お返事ありがとうございます!

      あげていただいた二首とも、出てくる人も読まれてる内容も微妙に笑い誘いますね。どんな状況なの?って感じ。やっぱり笹さん面白いわ〜

      「今日は〜」も意外性ありましてけど、こちらも特にそうですね。笹さんに対抗しうる作家・朱川湊人さん未読なので探してみますね♪
      2022/07/22
  • 笹公人さん(歌人)と朱川さんの共著。
    笹さん→朱川さんと繰り返される構成。
    笹さんは歌、朱川さんはショートショート。
    歌と言っても、50代の僕が教科書でよく目にしたようなものでなく、
    「窓辺にて消された夢の数々をマーライオンはきらきら吐けり」
    みたいな現代風刺や捻った作品が多かった。
    朱川さんの32作の中では、
    ⑨暗号あそび 文節の頭の文字を繋げて単語を作る遊びを保育園児たちに教える話(ホラー系)と、⑪⑯㉗のラビラビというウサギに似たスポンジのぬいぐるみが意思を持ち話したりする一連の話がほっこりしたかな。

    ショートショートは星新一さん以来でしたが、全体的に満足できました。 

  • 笹短歌+朱川ショートショート。怪しくて懐かしくて可笑しくてちょっぴり怖い。連想ゲームのように短歌と掌編小説が繋がっていく。
    恐竜図鑑の「あなたの、古い友だち」と汽車を待つ話の「赤い月」が好き。そうね、あなたは帽子がなくちゃね。
    ラビラビってぶたぶたの仲間?

  • 長い英国出張から帰ってきてまづ最初に行った所は・・・。
    そう,なじみの図書館でした。

    そこで,2ヶ月のブランクの間になにか面白い本が並んでいないかなぁ,と贔屓の作家の棚をブラブラと。

    朱川湊人のところで,この本に出会う。
    なになに,笹公人って誰?
    でパラパラ。ま,いっか と借りていく。あれ?なんだか文体が・・・。

    そしてほぼ一気に読んでしまった。
    これわもうわたしのイタイところずばりの本でした。
    ウルトラマンに仮面ライダー,そして吉田拓郎の「春だったね」まで登場するんだから。

    久々に,文庫が出たら買おう,と思った本でした。
    但し,個人的こだわりが99パセントだから参考にはしないでくらさい。

    すまんこってす。すごすご。

    • jyunko6822さん
      ryoukentoさんのレビュー、どしてこんな文体なのよとおもっていたのでしたが。英国帰りでしたか。フオローします。また読ませてくださいね。
      ryoukentoさんのレビュー、どしてこんな文体なのよとおもっていたのでしたが。英国帰りでしたか。フオローします。また読ませてくださいね。
      2012/02/11
    • ryoukentさん
      じyゅんこ6822さま、コメントどうもありがと御座ます。いや特に英国とは関係なくてシーナ兄いやバクおぢさん、浅田せんせいなんかを足して割ると...
      じyゅんこ6822さま、コメントどうもありがと御座ます。いや特に英国とは関係なくてシーナ兄いやバクおぢさん、浅田せんせいなんかを足して割ると自然にこういう文体になったす。すまんこってす。
      2012/02/21
  • 短編集。
    たまに、シリーズもの?か同登場人物たちのお話もあり。

    例えば子供に(でも小学生高学年は読み聞かせしないか、
    学校で先生が一話ずつ紹介とか??)
    寝る前に1話ずつ読んであげたら、余計寝られなくなるだろうか。。
    後ろにセットである短歌?がまた独特なので。

    この単語の後にこの単語??!と本当予想外の言葉並び。

    お話を読んで、短歌を読んだら
    布団の中でグルグルしてしまいそう。

  • ★2015年6月3日読了「遊星ハグルマ装置」朱川湊人/笹公人著 評価B+
    朱川の短編を32、その間に見開きページに笹氏の短歌を挟み構成されている。昭和の色濃くちょっとふしぎな短編が並ぶ。ちょうど昔大ブレイクしていたSF短編作家の星新一氏の作品をレトロにして、サイエンス味を抜いて、三丁目の夕日風と申し上げれば、作風はご理解いただけるでしょうか?

    朱川の作品は数多く読んできているので、その流れをくんでいる短編であることは、作者の名前が無くても分かるくらい明らかなものばかり。

    ただ、笹さんという短歌の歌人の作品は、今回初めてで、その変わった作風も興味深かったです。
    一番気に入ったのは、
    「走りきて不幸の手紙をだす少女 赤いポストに呑み込まれたり」
    「四回転ジャンプに挑む信成の額に浮かぶ織田家の家紋」「マスターの心の奥に揺れている浅間山荘の錆びた鉄球」
    変わった短歌ですよね。

    短編で気に入ったのは、「あなたの古い友だち」お父さんが幼い頃に大好きで見ていた恐竜図鑑にあるブロントサウルスが語り手となり、久しぶりに図鑑を開いてくれたお父さんに感激するのですが、そこのその息子が現れて、その後の研究でブロントザウルスは間違いでいなかったんだよ!と否定してかかるのです。しかし、お父さんは頑として譲りません。だって、お父さんの思い出にはちゃんと当時のブロントザウルスがいるのですから! というあらすじ。

    このような幼き頃、若き頃の思い出を大切にする、想い起す物語が数多く収められていました。何か懐かしい気分になるんです。

  • 蚊帳の外…わかる気がする。イヤなことは知りたくない。
    ラブラビ…こんなヤツがいたらいいな。自分のヌイグルミにも!
    魔術師団の天国…じいちゃん、イキだね。
    僕らの移動教室…ぎゃあぁ

    朱川さんの短編はそれぞれ味があってよかったけど長編がすきかな。
    笹さんの短歌は飛ばし読みしました

  • 2011 6/16

  •  人間にはわかんねぇだろうが、俺たちヌイグルミには、あげる愛情はあっても、もらう愛情はないんだよ。どうしてって聞かれても、それは俺にもわからない。とにかくヌイグルミってのは、そういうもんなんだよ。俺たちを可愛がることで、誰かの寂しさを埋めることができるんなら、それでいいんだ。
    (P.272)

  • 朱川湊人さんのショートストーリーと笹公人さんの短歌のコラボ。
    短歌はちょっとよくわからないのが多かったけど、朱川さんのショートストーリーはさすが、面白かったです。ぞわっとくるものやSFチックなもの、笑えるものから幻想的なものまで多種多様、どの話も共通してノスタルジックな雰囲気が漂っているのがまたいい。
    保育園児たちが恐ろしい「暗号あそび」幻想的な雰囲気が素敵な「赤い月」じんわり泣けるいい話「あなたの、古い友達」がお気に入りです。あとしゃべるうさぎのぬいぐるみのラビラビシリーズも面白かった。
    色んなタイプのお話が詰まっていて、なんだか駄菓子屋で安いお菓子をいっぱい買ってきてぎゅっと詰め込んだような楽しさがあった。
    分厚いわりには軽い(重量的な意味で)のも読んでて手が疲れないので嬉しかった。

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著者プロフィール

朱川湊人
昭和38年1月7日生まれ。出版社勤務をへて著述業。平成14年「フクロウ男」でオール読物推理小説新人賞。15年「白い部屋で月の歌を」で日本ホラー小説大賞短編賞。17年大阪の少年を主人公にした短編集「花まんま」で直木賞を受賞。大阪出身。慶大卒。作品はほかに「都市伝説セピア」「さよならの空」「いっぺんさん」など多数。

「2021年 『時間色のリリィ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

朱川湊人の作品

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