人はお金をつかわずにはいられない

  • 日本経済新聞出版社
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本棚登録 : 130
レビュー : 29
  • Amazon.co.jp ・本 (249ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532171100

作品紹介・あらすじ

欲望を満たすため、社会に活かすため、生活のため…ただ、つかうため?日経新聞「電子版」小説シリーズ、第二弾。

感想・レビュー・書評

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  • 「人はお金をつかわずにはいられない」

    うん。
    お金をつかわなくちゃ何にも出来ない。
    餓死に一直線だ。

    いきなりサラ金の話から始まって、オンラインゲームにお金をつぎ込んだり、「人間バンク」なるものからお金を借りてみたり、遺産が三万だと言われてみたり‥。
    お金について考えさせられるアンソロジー。

    楽しいわけではないのに真剣に読んでしまうのは、何か教訓を得ようとしてしまっているからだろうか?
    お金の話はいつの間にか体温を奪っている。

    山崎ナオコーラさんの「誇りに関して」に描かれているお金を使うことの罪悪感が、なんとなく分かる気がする。
    親からおこづかいを貰っていた時は無駄遣いをしていると怒られるのでは‥と気にしていた。
    自分で働くようになった今はいったい何を恐れているのだろうか?
    「誇りに関して」の主人公のように「社会から許されたい」なんて感覚が自分にあるとは思えない。

    「老後に差し掛かったとき、七千万円くらいの貯金がないといけないらしいんですよ。」
    というセリフがあったけれど、では七千万円あれば安心なのか。
    たぶん違うだろう。
    七千万円あれば七万円の買い物に罪悪感がなくなるのか。
    なくならない気がする。
    何に対する罪悪感なのか分からないから断定は出来ないけれど。

    お金をつかうことによって生じるストレスもあれば、お金をつかう快感もある。
    手元のお金がなくなる不安もあれば、買った宝くじが当たるかもなんて夢を見ることもある。

    「お金がほしい!お金のために働いてます」と言い切ることは出来なくて、「じゃあ要らないのか」と言われたら「要ります」とうなだれるしかない。
    お金は無ければ無いなりに、あればあっただけ、使い道が見えてくるからいつまで経っても満足出来ないのではないか。
    それがこわい。
    それがあの罪悪感の根っこにあるのかもしれない。

  • 『グレーゾーンの人』 久間十義
    『おめでとうを伝えよう!』 朝倉かすみ
    『誇りに関して』 山崎ナオコーラ
    『人間バンク』 星野智幸
    『バスと遺産』 平田俊子
    の5作品が収録されていた。

    『グレーゾーンの人』以外はおもしろかった。
    『おめでとうを伝えよう!』ゲームにはまったことがないからよくわからないけれど、ま急に夢中になるということはあるんだろうな。
    『誇りに関して』今どきの働く女性にある悩みのような? 両親から先の心配をされないというのもまた問題か!?
    『人間バンク』なんか恐ろしいような? これでやり直せる人が出てくるか?
    『バスと遺産』兄さんから貰った遺産額に愕然。いい兄嫁さんだね。バスでおばあちゃんの荷物に入れてしまうところはなんとも爽快。

  • 読み終わってすぐの感想は「100万円もったいない」でした。
    最後の平田さんのお話でなんですけど。

    お金ってやっぱり生きていくうえで必要なもので、
    多く持ってる人と持ってない人では価値観が絶対違ってきちゃいますよね。
    お金に左右される人生って・・・って思ってたところだったので、図書館で目について借りてみました。

  • お金
    文学

  • ナオコーラさんが良かった。

  • 山崎ナオコーラさんの『誇りに関して』おもしろかった。
    お金を使う時の罪悪感。
    自分の為に使っていいのか。
    使っちゃうんだけど、その時に感じるゾワゾワとする感じ。わかる気がする!

  • そこそこ。そこそこ楽しめるアンソロジー。
    朝倉かすみさんのバーチャルな世界でしかないアプリに課金してまでハマる一般家庭を築く中年男と、同じく課金しいるが桁違いの課金率で社長息子でいわば御曹司の中年男との比がうまい具合に皮肉ってて面白かった。
    山崎ナオコーラさんのニートの弟と年収二千万の自分との比も、ありそう、や、あるあるなのかもーと思いながら読みました。
    お金って大事だよね、ほんと。

  • お金に関する短編集。

    サラ金を職業とする男のお金を貸し借りすることについての話の矛盾。
    SNSの有料アプリにはまってしまった家庭を持つサラリーマン。

    30代の独身女の、自分でお金を稼いで一人で生活して行くことへの満足感と不安。
    お金にたいして執着がない代わりに社会から離脱してしまった男が出会ったお金と人が一体になった組織。

    亡くなった両親の遺産を兄にほとんどとられ、義妹からのお金に途方にくれるとき。

    朝倉かすみさんの話って、短編だと面白いのに長編になると途端に読みづらくて脱落してしまうのはどうしてだろう。
    texiっておもいっきりmixiのパクリじゃんw

    星野智幸さんの人間バンクが一番お金とはなんぞやって感じで面白かったかも〜)^o^(

  • 平田俊子の『スバらしきバス』を読んだあと、図書館の所蔵検索をあれこれやっていて、これに平田の「バスと遺産」が入ってるのをみつけて借りてくる。もとは日経の電子版で連載されていた小説群で、同じようなつくりの本は『そういうものだろ、仕事っていうのは』を前に読んでいる。

    本の装丁には全く見覚えがないのだが、平田の小説「バスと遺産」は読んだ覚えがあった。私はいつどこで読んだんやろ?

    平田の「バスと遺産」を読んで、てっぺんの久間十義のから順に読む。どこか「お金」がらみの5つの話。

    山崎ナオコーラの「誇りに関して」がおもしろかった。親から何も言われない、結婚とか出産とかのプレッシャーをかけてくる人が近くに全くいない31歳の依里(より)。医師として働いていて、年収は2000万。きっとすごく恵まれた場所にいるんだろうと思いながら、同世代の友人たちと会うとき、自分の生活ぶりを話すのを依里はためらってしまう。

    ▼引かれるだろうな、とびくびくして、できるだけ、そのとき集まる他の女性と同じような服を着て、にこにこ笑って、現状に満足して生活しているの、あとは、彼氏欲しいな、という話題に徹する。(p.125)

    収入の多さや、自分のために遣うお金がちょっと多いということが知れたところで、「自慢しているように受け取られる」ということはない。女性の収入が多いことは、決してステイタスにはならない。そう依里は思う。

    ▼旦那がいるわけでもないし、税金を払って市政に協力しているし、親にも送金しているし、自分で身を削って稼いだお金なのだから、理屈としては気兼ねしなくていいような気もするのだが、私は自分のために金を遣うとき、どうしても「いけないことをしている」という気分になってしまうのだった。(p.139)

    なぜなのか。子どもを育てるのにものすごくお金が要るとか、家を建てるのに大きな金を遣ったという話なら、気兼ねなく話せるはずなのに、自分のために服を買ったとかそういう話は他人に言いたくない、と依里は思う。「毎月何十万円税金を払っていても、社会参加できている自信がない」(p.143)と思うのだ。

    さばけた親に、いろんな人生が認められる時代になったのよねー、多様化よねーと言われ、依里もフリーターの弟も自由にさせてもらっている。それなのに、依里は、勝手に社会からのプレッシャーを感じてしまう。

    「私はちゃんとやっている」と思う、思いたい。仕事をすることで上の世代を支えている、税金を子育て支援に遣ってもらって下の世代を助けている、そういう自負もある。だけど依里の心にうかぶモヤモヤ。何をすれば「社会に認められた」と自分は思えるのだろう?

    2000万という年収はちょっと想像がつかないが、依里の感じるモヤモヤは、なんか分かる気がした。

    星野智幸という人の作品は初めて読んだ。「人間バンク」という、読んでいるとフシギな気持ちになる話だった。お金の価値って何やろう?と頭がぐるぐるしてくるのだ。

    この話で書かれるのは、人命を貨幣とする「人貨」、そして電子マネー「人円」、人間が貨幣の価値を担保する、いわば人本位制のコミュニティ。人間、即、金。100万人円で、1人貨、つまり人間一人と兌換できる。ありえない設定のようでいて、読んでいると、今の世の中はこの通貨がまわっているような気がしてくる。実際そうなのかもしれないと思えてくる。

    ▼「…100万人円は人間1人分の重さに匹敵する、と、そういう意味よ」「命が100万ぽっち、と考えるのは、お金中心主義の価値観です。そうじゃなくて逆。人間の命を基準にして、お金の価値を計れば、100万は人の命に等しい、ってなるんですよ」
     「詭弁ですよ、そんなの。言葉では何とでも言いようがあるのだろうけど、実態は100万円で人を買っているようなもんじゃないですか!」(p.185)

    たとえば、年収2000万の人と年収200万の人とを、お金中心主義の価値観でみれば、2000万の人は200万の人の10倍稼いでいて、それで…ということか? じゃあ人本位制でみると、どういうことになるのか? 

    以前に編集した『ベーシックインカムは希望の原理か』(http://femixwe.cart.fc2.com/ca9/63/p-r1-s/)で、西川正さんが語っていたのを思いだす。

    「ベーシックインカムは労働の価値をお金だけで測るのは止めようよ、っていう問題提起でもあると思うんです。」
    「さっき白崎さんが、所得と労働を分離する、つまり、働くこととその人がお金を得ることを分けたほうがいいんじゃないかって言ってましたけど、「働かなくても月10万円入ってくるとしたら、どう?」って知り合いに言うと、めちゃくちゃ怒る人とか、怠け者になっちゃうからダメだとか、いろんな反応があって、やっぱり金の話は人間の気持ちをざわざわさせるもんだなあ(笑)と思ったりもしました。」

    お金の話は、たしかに気持ちをざわざわさせる。そのざわざわを、共有しつつ、ぼちぼち話すときのとっかかりに、この『人はお金をつかわずにはいられない』とか『ベーシックインカムは希望の原理か』が、なるかなあと思う。

    (9/19了)

  • へへへ、面白かった。

    一番面白かったのは、山崎ナオコーラ、かな。
    高収入独身子ども無しの女性の世間に対する居心地悪さ、がすんごく伝わってきた。
    弟に費やすことで、気持ちをごまかす、って感じ。

    いろんな人が居ていいんだよ、ってうのは、ていのいい世間の言葉であってさ、あんたら、違うこと考えてるだろ、ってね。

    低所得で生活することだけで精一杯な私がこんなこというのもなんだけどさw

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著者プロフィール

1953年北海道生まれ。早稲田大学第一文学部仏文科卒業。87年豊田商事事件を扱った『マネーゲーム』で第24回文藝賞佳作。『世紀末鯨鯢記』で第3回三島由紀夫賞受賞。『刑事たちの夏』では警察小説ブームに火をつけ、警察小説の金字塔となる。主な著書に『放火(アカイヌ)』『刑事たちの聖戦』『ダブルフェイス』『禁断のスカルペル』など多数。

「2017年 『笑う執行人 女検事・秋月さやか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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