この世にたやすい仕事はない

著者 :
  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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本棚登録 : 1940
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  • Amazon.co.jp ・本 (347ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532171360

作品紹介・あらすじ

「コラーゲンの抽出を見守るような仕事はありますか?」燃え尽き症候群のようになって前職を辞めた30代半ばの女性が、職業安定所でそんなふざけた条件を相談員に出すと、ある、という。そして、どんな仕事にも外からははかりしれない、ちょっと不思議な未知の世界があって-1年で、5つの異なる仕事を、まるで惑星を旅するように巡っていく連作小説。

感想・レビュー・書評

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  • あなたは、『簡単な仕事』という言葉にどんなイメージを思い浮かべるでしょうか?

    この世には数多くの仕事があります。2011年の厚生労働省の職業分類によると、この国にはなんと17,209もの職業があるというから驚きです。そんな調査から10年以上の年月が流れ、恐らくはその数も増えていると思われる昨今。一方で終身雇用制が崩壊し、転職する人も数多いる状況にあっては、それぞれがそれぞれにとってのベストな仕事に就きたいと考えるのは当然のことだと思います。

    では、あなたが転職をしたいと思った時、そこにはどんな優先順位をつけるでしょうか?給与額でしょうか?勤務地でしょうか?それとも仕事内容でしょうか?人によってそんな職業選択の中での優先順位は千差万別です。だからこそ、この世には数多くの職業があり、またそれぞれに就く人がいるのだと思います。

    一方で転職をする人には、その前に前職を辞める決断をした理由というものが存在するはずです。職業選択の理由が千差万別であるのと同じように、退職理由だって千差万別だと思います。それは、給与額への不満だったかもしれません。仕事の内容だったかもしれません。そして、人間関係だったかもしれません。会社を辞めるという大きな決断に至る背景にはそれ相応の大きな理由が存在したはずです。

    さてここに、そんな風に会社を辞める決断をした一人の女性に光を当てる物語があります。その女性は『大学卒業以来十数年続けた』仕事を『燃え尽き症候群のような状態になって』辞めた過去を持ちます。そして、短い期間にさまざまな理由で転職を繰り返していきます。この作品はそんな転職理由に光を当てる物語。そんな決断をするに至った女性の心の動きに光を当てる物語。そしてそれは、そんな女性の決断の先に「この世にたやすい仕事はない」という書名がふっと浮かび上がるのを感じる物語です。
    
    『左右のモニターには同じ人物が映っている。左が昨日の二十二時台の映像で、右がおとといの二十時台のものである』と、二つのモニターの画面を見るのは主人公の『私』。そんな『私』は、『在宅で仕事をしている一人暮らしの小説家の生活を監視する』仕事をしています。『監視は同時ではなく、前日までに録画したものを確認す』れば良いものの、『対象者の在宅時の映像は、すべて確認』しなければなりません。『明け方の六時に寝て、昼の二時に起きる対象者』を『一倍速』で確認するため、『一日のほとんどを、このブースで過ごしている』という『私』。『燃え尽き症候群のような状態になって』辞めた前職の後、『療養のため実家に帰っ』ていたものの、失業保険が切れてやむなく職探しを始めた『私』は、『家からできるだけ近いところで、一日スキンケア用品のコラーゲンの抽出を見守るような仕事』を相談員にリクエストしたところ、『あなたにぴったりな仕事があります』と紹介されたのがこの仕事でした。『小説を書くことを生業にして』いるという監視対象者の山本山江(やまもと やまえ)は、『知人からそれとは知らずに密輸品の「何か」を預かっている』とされています。『非公式なガサ入れ』で見つけることが出来なかったために『カメラを仕掛けて、知人が受け取りに来るのを見張っている』という状況。そんな山本山江を長時間監視する仕事を『家には帰れないわ座りっぱなしだわ退屈だわと、悪いところを挙げればきりがない』と思う『私』ですが、一方で『同僚と話すのは最低限』で良いなど『人間関係が単純である』ことにメリットを感じています。そんな『私』は、『だんだん、自分が山本山江と生活をともにしているような気分になってき』たのを感じています。そんな中、山本山江が『カメラの方を妙に見るようになってきた』ことに気付きます。『見張られていることに気が付いたのだろうか?』と『モニター越しに目が合う』状況を不気味に感じる『私』。そして、山本山江はある行動に動き出しました…という〈第1話 みはりのしごと〉。ただひたすらに他人の生活を監視するという一見『簡単な仕事』に隠されたその仕事の真実に、「この世にたやすい仕事はない」という書名をなるほどね、と感じさせてくれた好編でした。

    “面白いけれども、きつい仕事に燃え尽きてしまった36歳の女性主人公が、1年で異なる5つの仕事を経て、自分と仕事との健全な関係を取り戻すまでを描く連作短篇”と紹介されるこの作品。五つの短編が連作短編の形式を取りながら、五つの仕事に就いては辞めを繰り返す主人公の『私』視点で展開していきます。そんな作品に登場する仕事は多種多彩です。現実にもあるだろうなと思う仕事からファンタジーをまたぐような仕事までが登場する物語。では、そんな五つの短編を、登場するお仕事とともにまとめてみたいと思います。

    ・〈第1話 みはりのしごと〉: 『左が昨日』、『右がおととい』という二つのモニターに映るのは山本山江という小説家の暮らし。主人公の『私』は『一倍速で』そんな山本山江の生活を監視し、彼女が『それとは知らずに』知人から預かっている『密輸品の「何か」を』知人が取りに来る瞬間を待ちます。

    ・〈第2話 バスのアナウンスのしごと〉: 廃線の危機にあった『循環バス「アホウドリ号」を存続させる』ために、停留所近辺の店の広告を車内で流すためのアナウンスを作成するという仕事に就いた主人公の『私』。そんな『私』は、『片方は不動産屋で、もう片方は耳鼻科』と、アナウンス原稿の作成を次々行っていきます。

    ・〈第3話 おかきの袋のしごと〉: 『創業四十年』のおかきの会社で『おかきの袋の話題を考える仕事』に就いた『私』。『鬱病で休職中』という前任者に代わって、『製品を袋まで楽しめるものにしたい』という社長の意向を受けて、おかきの袋の裏側に『国際ニュース豆ちしき』、『あのことばの由来』などの豆知識を作っていきます。

    ・〈第4話 路地を訪ねるしごと〉: 『店舗や民家などを訪ねて、ポスターの貼り換えをする』という仕事に就いた『私』。『営利目的』でもなく『新規開拓』も不要という一方で、『住民についての簡単な調査も兼ねている』という仕事で街に出た『私』は、『さびしくない』と書かれたもう一枚のポスターが貼られているのに気付きます。

    ・〈第5話 大きな森の小屋での簡単なしごと〉: 『公園の管理事務所からの求人』という『簡単なしごと』に就いた主人公の『私』は、『西の端から東の端』まで三時間という巨大な公園の中に立てられた小屋で1日を過ごします。『小屋の周りをうろちょろ』するという基本的に暇な仕事の日々の中で、『私』はある異変に気付きます。

    以上ご紹介させていただいた仕事の内容を見てあなたはそこにどんなイメージを思い浮かべるでしょうか?第2話や第3話、そして第4話の仕事は現実世界に間違いなく存在する仕事です。一方でどこかスパイを思い浮かべる第1話や、『西の端から東の端』まで三時間という巨大な公園の中の小屋に実質いるだけという第5話の仕事はどこかファンタジーの世界に片足を突っ込んだ印象も受けます。しかし、間違いなく言えるのはそれらが”お仕事”であり、主人公の『私』は、そんな”お仕事”に従事していく姿が描かれるものであるということです。そんな風に”お仕事”を物語の中心に配するのが”お仕事小説”であり、私がこの上なく愛する小説の分野でもあります。しかし、ひと言で”お仕事小説”と言っても描かれる内容は多岐に渡ります。分類すると以下のような感じでしょうか?

    ① 一つの仕事に真摯に向き合う人に光を当てるもの: 三浦しをんさん「舟を編む」- 辞書の編集者、宮下奈津さん「羊と鋼の森」- ピアノ調律師、原田マハさん「本日はお日柄もよく」- スピーチライター

    ② 一つの施設内に働く複数の人たちに光を当てるもの: 寺地はるなさん「ほたるいしマジカルランド」- 遊園地のスタッフ、畑野智美さん「シネマコンプレックス」- 映画館のスタッフ、村山早紀さん「百貨の魔法」- 百貨店のスタッフ

    ③ 国際貢献の舞台で働く人に光を当てるもの(短編): 森絵都さん「風に舞いあがるビニールシート」: - UNCHR、湊かなえさん「絶唱」- 青年海外協力隊

    ④ 多種多彩な職業に光を当てる短編集: 山本文緒さん「絶対泣かない」- 15の職業、三浦しをんさん「ふむふむーおしえて、お仕事!(ノンフィクション)」- 15の職業

    ⑤ 不本意な人事異動にあった主人公に光を当てるもの: 大崎梢さん「プリティが多すぎる」

    ⑥ 就職活動に光を当てるもの: 三浦しをんさん「格闘する者に○」

    ⑦ 転職をサポートする側に光を当てるもの: 瀧羽麻子さん「あなたのご希望の条件は」

    以上のようにひと口に”お仕事小説”と言っても切り口が違うと読者が心惹かれる内容も随分と変化していきます。ここに”お仕事小説”という分野の懐の深さが伺えます。そして、そんな”お仕事小説”に分類できるこの作品は上記のいずれにも属さない一つの新たな視点を取り入れています。それが、

    ⑧ さまざまな理由で転職を繰り返す主人公に光を当てるもの: 津村記久子さん「この世にたやすい仕事はない」- 5つの仕事に転職を繰り返す

    この作品では、5つの仕事の現場が垣間見れるという魅力がある一方で、そんな仕事に主人公が就き、業務を行い、そして契約を継続しないという選択に至る過程が描かれていくのが何よりもの特徴です。仕事を辞める決断を繰り返していく主人公には、当然に理由があります。昨今、終身雇用制が崩壊し、この国でも転職をする人は決して珍しくなくなりました。そんな人たちには、やはりそれぞれに、それぞれの転職理由があるのだと思います。この作品では、主人公の『私』が意図しない中、不本意な中、そしてはっきりとした意思の元、短期間で仕事を辞めるという決断を繰り返していく姿が描かれていました。そんな主人公の『私』は、『大学卒業以来十数年続けた』仕事を『燃え尽き症候群のような状態になってやめ、療養』を経た後の身でもありました。そんな『私』は前職で受けたダメージから、『簡単な仕事』という言葉でイメージされる仕事を求めていきます。あなたは、『簡単な仕事』という言葉にどんな仕事のイメージを思い浮かべるでしょうか?それは、仕事の内容自体が単純であることでしょうか?ノルマを課されるようなことがないということでしょうか?それとも、煩わしい人間関係から無縁であることでしょうか?人によってそこに思い浮かべるイメージは当然に異なるでしょう。だからこそ、この世にはさまざまな仕事があり、それぞれに就く人がいるということなのかもしれません。この作品の主人公の『私』が就いた仕事はなかなかに幅の広さを感じさせるものです。そして、退職を決意する理由も異なります。ある時は『悪い仕事ではないのだが、業が深くて、自分の器ではそれを受け入れられない』と感じ、またある時は『苦手なタイプの人に仕事を奪われる恐怖感に勝てず、逃げ出した』といったように、異なります。仕事は人が生きていく中では大きな位置を占めるものです。しっくりこないと感じる仕事は心身に不調を招きかねません。主人公の『私』は、かつてそんな不調に悩まされた経験があるからこそ、仕事選びに慎重になっているとも言えます。しかし一方で、『簡単な仕事』と探し求める先に答えはないのではないか?そんな思いも抱きます。そう、そこに浮かび上がるのが

    「この世にたやすい仕事はない」

    この作品の書名です。生きていく中で欠かせない仕事、そんな仕事に苦労はつきものです。たやすく高給取りになれるのであれば誰も苦労はしません。この作品では、”お仕事小説”として描かれる作品の中で、退職を決意した理由に光を当てた物語が描かれていました。人が退職を決意するということは人生の中での大きな決断です。それでもその先に進みたいと決意する瞬間、そんな決意に秘められた思い、この作品では、転職を繰り返す主人公の『私』視点で仕事に対する違和感がどこに芽生えるのかという視点が描かれていました。主人公の『私』が感じるとても納得感のある転職理由の一方で、「この世にたやすい仕事はない」という書名が頭の片隅をよぎる、そんな作品でした。

    • さてさてさん
      みたらし娘さん、ありがとうございます。

      夏って夏休みがある分、仕事はかえって忙しかったりしますよね。もちろん、会社によっても部門によっ...
      みたらし娘さん、ありがとうございます。

      夏って夏休みがある分、仕事はかえって忙しかったりしますよね。もちろん、会社によっても部門によっても違うのでしょうが。まだまだ暑いのでお身体ご自愛ください。

      最近、良い作品に急に巡り合う確率が高くなっていて楽しい読書をさせていただいています。新しい作家さんを開拓するのも楽しいです。津村さんもそうですが、芥川賞の作家さんはクセが強いですが、上手くあうと楽しい読書の度合いがぐんと上がる気がします。まだまだ未踏峰がたくさんあるので楽しみです。

      一方で「源氏物語」はご無理なさりませぬよう。かく言う私も、この先、下巻をいつ読むか思案中です。気合がいるんですよね。読み始めの。読み始めると夢中になれるのですが…。

      みたらし娘さんにはいつもお世話になっております…ってお仕事みたいですか(笑)。

      こちらこそ引き続きよろしくお願いいたします!

      2022/08/24
    • みたらし娘さん
      さてさてさん こんにちは☆
      返信ありがとうございます(^^)

      お気遣いありがとうございます!
      当方、昼は激暑夜はちょっと寒い…
      くらいの寒...
      さてさてさん こんにちは☆
      返信ありがとうございます(^^)

      お気遣いありがとうございます!
      当方、昼は激暑夜はちょっと寒い…
      くらいの寒暖差が出てきました(´・ω・`;)
      季節の変わり目は体調崩しやすいですし、さてさてさんもお身体ご自愛ください(*´ω`*)

      読書ってやっぱり良いですよね♪
      私も読みたい本がどんどん増える一方…

      読み始めの気合い、その気持ちわかります!!!笑
      "源氏物語"ほどの大作は読んだことありませんが、読み始めると夢中になるけど、とっかかりに気合いいれるとき時々あります笑
      下巻のレビューもまた楽しみにしています!

      いえ、こちらこそいつも本当にお世話になっております┏○ペコッ 笑
      お仕事モードで返してみましたが、そんなことはなく、いつも本当に丁寧にご返信くださって、とても嬉しいです!
      いつもありがとうございます(*´ω`*)

      読書楽しみましょう\( ´ω` )/
      2022/08/25
    • さてさてさん
      みたらし娘さん、ありがとうございました。
      少し長めにやりとりさせていただいてとても楽しかったです。ありがとうございます。
      「この世にたやすい...
      みたらし娘さん、ありがとうございました。
      少し長めにやりとりさせていただいてとても楽しかったです。ありがとうございます。
      「この世にたやすい仕事はない」、まあそーだよなあと思いつつ、そんな苦労もあるから、読書&レビュー、そしてブクログの場も気持ちの切り替え場として楽しめるのかなあと思いました。

      こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします!
      ありがとうございました。
      2022/08/26
  • ストレスに耐えかね前職を辞めた36歳の女性が転職を繰り返す。
    その仕事場での短編集。
    こんな仕事ある?笑 から、実際ある仕事。
    ちょっとミステリアスなとこもあって面白かった。

    そして、共感できまくる"辞める理由"。
    結論"この世にたやすい仕事はない"
    そうだよね。と思った(´・ω・`)笑

    でも主人公の女性みたいに色んな職を転々とできるのがちょっと楽しそうとか思ってしまった笑

    自分自身で仕事へのモチベーション上げるのって大切だなと思う。
    熱入れすぎて燃え尽きちゃう主人公の気持ちもよくわかるけど(´・ω・`)


    こちらの1冊と出会わせてくださったブクトモ様に感謝\( ´ω` )/

  • 「この世にたやすい仕事はない」、何ていいタイトルだろう!と思い、発売直後からずっと読みたいと思い続けていたがなかなか図書館で出会えず。思い切って購入したら既に5刷とは、驚きました。
    これまでの津村さんのお仕事小説のように、リアルなお仕事あるあるが詰まった内容かと思ったら、予想の斜め上を行くものだった。「お仕事ファンタジー」との帯文句に納得の、ありそうななさそうなちょっと不思議な仕事がいっぱい。そして、主人公がその仕事を通じて体験するいくつかの不思議な出来事もまたありそうななさそうな…で、若干非現実的ではあるけども、そのオチにほっこりしたりぞわっとしたり切なくなったりとこれまた独特な読後感であった。
    前職をオーバーワークで燃え尽きて辞めた主人公がまず就いた「みはりのしごと」は、少しおそるおそるな雰囲気での仕事ぶりだったが、「バスのアナウンスのしごと」「おかきの袋のしごと」あたりからじわじわと仕事にのめり込み始める。おいおい、ハローワークの相談員の正門さんに「今のあなたには、仕事と愛憎関係に陥ることはおすすめしません」と言われてたんじゃなかったの、と半ばひやひやしながら読んでいたが…元来真面目なんだな彼女、仕事で達成感を得たいという気持ちはよくわかるし、アナウンスもおかきの袋の仕事も、個人的にそそられる内容ではあったし。
    意外な展開であった「路地を訪ねるしごと」、津村さんの他の著作を少し彷彿とさせる内容でちょっと考えさせられた。だんだんに主人公の心持ちも変わってきてるなと気付かされる。そして最終話の「大きな森の小屋での簡単なしごと」、ユーモラスながらこういう結末になるとはお見事、であった。
    淡々とした語り口が心地よく、それぞれの職場で出会う同僚たちのキャラクターも皆、飄々としていてよい。何気にフード描写もよかった。登場する食べ物、お店にことごとくそそられた。ファンタジーのような雰囲気であるからこそ、働くことの意味がよりはっきりと伝わってくるような気がする。そして、読み返すほど、巧妙な仕掛けに唸らされる。ああ、やっぱり買ってよかったな。どこか自分に重なるところもあり、主人公が色々と経験してきたことの意味が、すごく理解できるのだ。伊坂幸太郎氏の推薦文「津村版ガリバー旅行記」とは、言い得て妙。
    読了直後に知ったが、BSプレミアムでドラマ化するんだね!この世界観をどこまで映像化できるのかドキドキだが、BSプレミアムなら期待しちゃおうか。

  • 実は私の仕事もたやすいのかも?
    みんなの安心安全の為に役に立つ、とっても大事な仕事…でも暇を持て余すことがほとんど。
    これで良いのか?グルグル悩む中、題名に惹かれて読んでみた。

    どんな仕事も真剣に取り組めばおもしろい。
    そして、手答えがあればやりがいも感じる。
    何より主人公の真面目さ正義感が好き。そうそう、真剣にやればやるほど燃え尽きちゃう気持ちもわかる。自分に重ねて、うんうん。と共感しながら読んだ。

    私がやるならば「おかきの袋」の仕事かな。
    おばあちゃんと孫の団欒のお役に立てるなんて素敵だと思う。

    ちょっとした経験もムダな事は一つもない。
    でも…今日もヒマだな。まだ悩みのループは続きそう。



  • 前職を燃え尽き症候群のような状態になって辞めた”私”。

    職業紹介所で、次の職種の希望を問われ、
    そんなお仕事はありません!と怒られそうなふざけた条件提示にも、
    担当者・正門(とてもいい味♪)はきっちり対応し、どこからか見つけてきてくれる。

    次々紹介されたお仕事は…
    #みはりのしごと。
    #バスのアナウンスのしごと。
    #おかきの袋のしごと。
    #路地を訪ねるしごと。
    #大きな森の小屋での簡単なしごと。

    ありそうでなさそうな不思議なお仕事ばかりで、
    自分だったら、「バス」と「おかき」がいいかな。
    あ、でも「みはり」もちょっと捨てがたい。
    好きな作家さんなら興味あるし…なんて、
    ”私”と一緒に働いた気分で読みました。
    でもそんなに甘くはなくて、
    まさに『世の中にたやすい仕事はない』でしたね。

    そしてこれだけ、順応性があって成果を上げられる人が、
    消耗しきって辞めた前職がなんだったのか、すごく気になっていました。
    最後に判明して納得です。(知り合いに同じ職業の方がいるので)

    彼女にとってこの経験が、いいリハビリになり、
    新たなスタートが切れそうで良かったです。

    随所にユーモアがあって楽しく、
    厳しさとゆるさが絶妙なバランスで面白かったです。

    • koshoujiさん
      「よほど、この本がお気に入りなんだわ~」←たしかに。何回読むんだろう?? と思われるでしょうね。
      実はまだ読んでいないのに。(:_;)
      「よほど、この本がお気に入りなんだわ~」←たしかに。何回読むんだろう?? と思われるでしょうね。
      実はまだ読んでいないのに。(:_;)
      2016/03/13
    • 杜のうさこさん
      koshoujiさん、こんばんは~♪

      なんか今度借りに行かれた時のkoshoujiさんを想像したら、
      むふふってなりました。
      なぜ...
      koshoujiさん、こんばんは~♪

      なんか今度借りに行かれた時のkoshoujiさんを想像したら、
      むふふってなりました。
      なぜだか急に”カンチョウさん”を思い出してしまって~(#^^#)
      2016/03/13
    • koshoujiさん
      なぜだか急に”カンチョウさん”を思い出してしまって~(#^^#)

      何故にこれを思い出しました?? そうです、私が蝋人形館の館長です(笑...
      なぜだか急に”カンチョウさん”を思い出してしまって~(#^^#)

      何故にこれを思い出しました?? そうです、私が蝋人形館の館長です(笑)。

      別コメの話に変わりますが震災関連の小説の中で私が涙した重松清氏の二作品があります。
      お暇なときにでも読んでみてください。
      http://booklog.jp/users/koshouji/archives/1/4344021487

      http://booklog.jp/users/koshouji/archives/1/4594067867
      です。
      2016/03/14
  • どの職場にも小さな謎があってだいたい解決されるんだけど、バスのアナウンスの話だけは謎のままだった。

  • ものすごくおもしろかったし、ものすごくよかった。津村さん、ほんとうにはずれがない! 大好きだ。
    好きな仕事だったのにいろいろ疲れ果てて辞めたらしい主人公が、紹介してもらうちょっと変わった仕事を次々と体験する話。紹介される仕事がちょっと変わっていてファンタジーめいているのだけれど、嘘っぽくなくて、いやいや現実にありそうだ!と思えるところ、いやいややってみたいかも!と思えるところがすばらしい。(わたしがとても心惹かれたのは、おせんべいの袋の裏のひとことうんちくみたいなのを書く仕事。わたしは甘党なんだけどおせんべいが食べたくなった。わたしは甘党だからわたしがやるならクッキーの袋とかがいい(どうでもいい))。

    恋愛はないし、深い友情で結ばれるとか、つながりとかもないんだけど、職場やひととき顔を合わせるだけで一見表面的な出会いでも、なにかちょっと温かい交流があったり、理解があったり、というのが素敵。こういうのが津村さんの特徴にも思える。主人公が、臆病と思えるくらい人々をすごく観察している、っていうのもなんか共感できて。

    ごく普通に書かれているのに、なんだかものすごくおかしくて吹き出しそうになることもあって。津村さんのユーモアの深さみたいなのを感じる。

  • ちょっとおかしな、変わった仕事に対する人間模様を描いた作品。題材は悪くないはずなのに、文字数の多い地噺っぽい語り口に疲弊してしまう。合う合わないが非常にはっきりした作家さんだろうなというのが率直な感想である。人物の描写は素晴らしく、このキャラクターはこんな姿だろうなと絵がなくても想像できるので人物観察眼が鋭いのだろう。お仕事の内容の奇妙さが面白いと思うので、そのあたりについてもう少しオチのようなものがあればもっと良かった。

  • 燃え尽き症候群のようになって前職を辞めた30代半ばの女性。失業保険も切れる頃、職業安定所で求めたのは「コラーゲンの抽出を見守るような仕事」

    偶然にも主人公の前職は私と同業で、まあ確かに燃え尽きそうになることもあるよね。頭も気も遣わないような楽な仕事っていいなーって思っちゃったりするよね。と、共感の嵐。

    私はバイトも仕事もいろいろと変えてきましたが、本書のタイトルどおり、たやすい仕事なんてないんですよね。
    大変さの種類が違うだけで、どんな仕事だって大変な部分はある。もちろん、それぞれ楽しさややりがいだって見つけられるだろうけど、仕事である以上責任が伴うわけだから、大変でないわけがない。
    大変さが欠片もないなら、それは単に収益がある遊びに過ぎない。というのは、言い過ぎだろうか。

    それはさておき、最初に紹介された仕事は、とある小説家をモニター越しに監視する仕事。生中継じゃないから停止もできるし、相手が目の前にいるわけでもない個室だから、どんな格好だっていい。
    なかなか楽そうなお仕事だ。
    と思いきや、こんな仕事にも適正があるらしい。
    それはそうですよね。ずっと画面を見続けるだけ、なんて、絶対無理だという人だって一定数いるでしょう。

    そんなへんてこりんな仕事をはじめ、さまざまな仕事を主人公は重ねていくけれど、仕事をする上で鍵になるのは人間関係と適正、ではないでしょうか。
    大変な仕事だって、人間関係が良ければ乗り越えられるし、どんなに楽しい仕事だって、ものすごく嫌いな人とやらないといけないとしたら、しんどい。
    それに、天職という言葉があるけれど、誰にとっても楽で簡単なんて仕事はなくて、合うか、合わないか。合わせられるか、合わせられないか。

    たやすい仕事はないかもしれないけど、やっていてよかった、と思える仕事を、できるだけ長く続けられたらいいな、と静かに思った1冊でした。

    最後の1文もまた、共感。
    私たちにできるのは、ただ祈り、全力を尽くすだけ。
    どうかうまくいきますように、と。
    だいたい、何をしていたって、何が起こるかなんて、どんな穴が待ちかまえているかなんて、わからないのだから。

  • とっかかりの第1話は、淡々と進む話に自分の好みではないのかな?と思いましたが、じわりじわりと面白さが分かってきた第2話からは、読了まであっという間でした^_^

    しかし、作者が変わった仕事の内容をよく思い付くなぁと思ったし笑(おかきの袋のしごとの時は、袋裏の変わったネタが面白くて何回クスッとなったことか笑
    普段から色んなことに目を向けて生きてないと思いつかない気がします。小説に独特の雰囲気があり、著者の他の作品もぜひ読んでみたくなりました。

    世の中には仕事は本当に数えきれないほどある。そして題名にもなってるようにどれも「たやすい仕事はない。」
    今度は主人公『私』が本当にやりたい仕事がうまくいきますように。もちろん、心や身体が壊れてしまわないように。。。

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著者プロフィール

1978年大阪市生まれ。2005年「マンイーター」(のちに『君は永遠にそいつらより若い』に改題)で第21回太宰治賞。2009年「ポトスライムの舟」で第140回芥川賞、2016年『この世にたやすい仕事はない』で芸術選奨新人賞、2019年『ディス・イズ・ザ・デイ』でサッカー本大賞など。他著作に『ミュージック・ブレス・ユー!!』『ワーカーズ・ダイジェスト』『サキの忘れ物』『つまらない住宅地のすべての家』『現代生活独習ノート』『やりなおし世界文学』『水車小屋のネネ』などがある。

「2023年 『うどん陣営の受難』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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