三鬼 三島屋変調百物語四之続

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  • 日本経済新聞出版社
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レビュー : 187
  • Amazon.co.jp ・本 (572ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532171414

作品紹介・あらすじ

待望の最新作は冬に贈る怪談語り、変わり百物語。
鬼は人から真実を引き出す。人は罪を犯すものだから。不思議な話に心がふるえ、身が浄められる。

江戸の洒落者たちに人気の袋物屋、神田の三島屋は“お嬢さん"のおちかが一度に一人の語り手を招き入れての変わり百物語も評判だ。訪れる客は、村でただ一人お化けを見たという百姓の娘に、夏場はそっくり休業する絶品の弁当屋、山陰の小藩の元江戸家老、心の時を十四歳で止めた老婆。亡者、憑き神、家の守り神、とあの世やあやかしの者を通して、せつない話、こわい話、悲しい話を語りだす。
「もう、胸を塞ぐものはない」それぞれの客の身の処し方に感じ入る、聞き手のおちかの身にもやがて心ゆれる出来事が……

第一話 迷いの旅籠
第二話 食客ひだる神
第三話 三鬼
第四話 おくらさま

感想・レビュー・書評

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  • 三島屋変調百物語の4冊目。
    中編が4本入った充実した内容です。

    神田の人気ある袋物屋「三島屋」では、変わり百物語も評判となっていました。
    不思議な経験を語りたい人を一度に一人ずつ迎え、姪のおちかが一人で話を聞き、おちかが叔父に一通り話した後は、「話して話し捨て、聞いて聞き捨て」というお約束。

    第一話 迷いの旅籠
    名主と共に村から出てきた百姓の女の子が語ったのは、幽霊を見た話。
    先祖を迎える行灯祭りが禁じられてしまったため、村外れの空き家を行灯に見立てて飾る行事が行われました。
    ところがそこへ、亡くなった人が姿を見せてしかも留まり‥?

    第二話 食客ひだる神
    箱根の七湯巡りをした夫婦に、ひだる神が取り憑いた?
    商売は繁盛するが‥
    気のいい夫婦はついに?
    微笑ましい成り行き。

    第三話 三鬼
    お武家のしかもとある藩の江戸家老という大人の男性の訪問。
    若い頃に左遷されて北部の寒村へ赴任した。
    閑職のようだが、逃散もあったり獣害の危険もある土地で、腕が立つ侍がいる必要があったのだ‥
    貧しい郷の悲惨な現実を思わせます。

    第四話 おくらさま
    島田髷を結い、娘のような振り袖を着た老女が登場。
    生家では「おくらさま」に毎日捧げ物をしていたと。
    だがそのために、犠牲になり‥?
    姿の消えた老女が何者だったか、探し始めるおちか達。

    おちかの身の上にも変化が起きるかもしれない、という思わぬ出会いがあります。
    素直な若い娘には辛すぎる過去を抱えたおちか。
    作品も中編にしておくにはもったいないような重みがありますが、これぐらい世間の広さ深さを感じることでやっと、おちかも少しは気持ちを立て直せるのでしょうか。
    幸せを祈ります。

  • シリーズ物、初めて読んだので4の巻きから 笑。大部な本だけど中編4本立てで皆よく出来ていて厭きないですね。さすがにずっと続いているシリーズだけのことはあります♪
    話し捨て聞き捨て がお約束の百物語、聞き役の おちか そもそもが曰く付きらしいけど、初めから読んでいないので後日判るのだろうけど。
    さて4編それぞれが面白いけど、なかではタイトルになっている「三鬼」と「おくらさま」が印象的だった。これは初めから読まなくては(^^)
    さすがの宮部みゆき ですね♪

  • 三島屋シリーズ四 それぞれの話が重く辛く でも温かく心に染みいる物語だった。「人の世は思うに任せぬ。悲しい悔しい腹が立つ。..でも後ろばかり向いていたら後ずさりで生きる事になっちまう」宮部さんの現代物は同じように重く辛いものが多いけれど 時代物はその辛さのあとに 救いやぬくもりが残って 好ましい。そして やはり日本語 大和言葉は優しく綺麗だと心から思う。

  • 【ネタばれ感想注意】

    シリーズ四冊目で、今作は四話入っています。

    第一話「迷いの旅籠」
    『三島屋』シリーズによく出てくるような生者と亡者のお話だと思いました。

    第二話「食客ひだる神」
    このシリーズには珍しい人と妖しの持ちつ持たれつの共存のお話で、読み終わった時に温かい気持ちになりました。
    『あんじゅう』を彷彿とさせるお話です。
    この世に未練を残して亡くなったひだる神だったので、弁当屋の夫婦の情の深さと腹いっぱい食べられた満足感に成仏したのだろうと思います。

    第三話「三鬼」
    表題になった物語です。
    シリーズ三冊目『泣き童子』の中にあった「まぐる笛」のような正体不明な妖しの話かと思ったら、貧しい山村の口減らしという哀しい風習の話でした。
    国を治めるお殿様がしっかりしてないと、貧しい人達がより一層辛い目に遭うという戒めの話でもあると思いました。
    しかし、題名にもなった『三鬼』。
    初めは「三人の鬼」を予想してたのですが、読み終えて「三人『目』の鬼(の正体)」という意味だと分かりました。
    四話の中でもかなり重い話だと思いますが、やはり一番強く心に残りました。

    第四話「おくらさま」
    別れと出会いのお話でした。
    人の良い叔父夫婦に似て、二人の従兄弟も性格の良い兄弟でおちかを妹のように可愛がってくれているのがほっとします。
    結局、「おくらさま」は生け贄で成り立っていたのでしょう。
    そして、お梅さんは「おくらさま」の良心だったのかなと思いました。

  • 全体的に長く、やや冗長に感じる。
    明るくて面白かったのは「食客ひだる神」。疎んじるのではなく、ひだる神を肯定し、共存する関係性が好ましく、珍しく楽しい話。
    「おくらさま」は、ルールを逸脱したところが目新しい。去る者、加わる者。おちかの変化の兆しを感じる。
    「迷いの旅籠」は、ことがおこるまで長かったものの、落とし前のつけ方にグッとくる。

  • おちかが聞き手を務める怪談シリーズの第四弾。
    どれも面白かったが「食客ひだる神」が白眉。語り手のとぼけた人柄がなんとも得難い親しみとおかしみを生み出し、おちゃめで憎めないひだる神との距離感が絶妙。「三鬼」のような藩の失政や百姓の貧困を根底に敷いた陰惨な話は、他の作家(京極夏彦あたり?)でも頑張れば書けそうだが、あやかしとの掛け合いのちょうどいい案配は宮部みゆきにしか書けない。
    だるま屋の主人が最後の決断に至ったのは、夫婦ともどもひだる神を手のかかる子供のように思っていたからじゃないか……と想像を逞しくした。
    子供であり仲間であり相方でもある、身近に馴染んだ人ならぬ存在が突如離れていったら、張り詰めていたものが萎んでしまうのも無理からぬ話だ。

    以下簡単に感想。
    「迷いの旅籠」
    村の奇祭にちなんだ話。まずあばら家を巨大な行灯に仕立て上げるという発想と、その光景が絵的にとても美しくうっとり。
    水子の塚を花畑さながら埋め尽くす極彩色の風車など、収録作の中で最も視覚に訴えてきた話。
    語り手のおつぎもまっすぐな気性が愛らしく応援したくなる。
    死者が集う家の話だが、子や伴侶に先立たれた親の悲哀や、道理を弁えながらも一度未練がぶりかえすと、ありえないもしもに縋ってしまう現実が切ない。
    後半は貫太郎の存在感が際立っていた。死者一人一人にかける言葉の優しさにじんときた。

    「食客ひだる神」
    ひだる神に憑かれた仕出し屋の話。
    次々と登場する江戸グルメがめちゃくちゃおいしそうでお腹がすく。鰻の蒲焼にひつまぶしに青菜のまぜご飯、三島屋の三色弁当店……ああ食べたい!
    この話に出てくるあやかしは怖くない。どころか色々とツキを運んでくれる上におちゃめでかわいい。だが美味い話には裏があって……
    「あんじゅう」しかり、こんなふうにあやかしと共存する人たちがいてもいいと思わせられる。

    「三鬼」
    収録作の中では最も陰惨。
    バケモノ怖い系にあらず、生きてる人間が一番怖い。そして哀しい。
    三島屋シリーズはレギュラー陣はもちろん、一回限りのゲストである語り手も非常にキャラが立っていて魅力的なのだが、清左衛門の高潔な人柄と朴訥とした優しさ、その妹の純粋な心根に惹きつけられた。
    それだけに志津を襲った事件の惨さと、犯人の卑劣さに憤りをおぼえた。おちかが「黒白の間で聞いた生きてる人間の仕打ちの中で一番酷い」と絶句するしかない心情も頷ける。
    読後にわかる「三鬼」のタイトルが深い。ありえない村、いるはずのない三番目の鬼……本当に怖いのは、鬼に落ちるまで人を追い詰め、そのことを省みない同じ人間の無理解と残酷さかもしれない。
    嫌なヤツだと思わせて実は……な利三郎も好き。ラストの「ぴかりと光る幸せ」にはこちらも笑顔になった。

    「おくらさま」
    香具屋という風雅な商売の描写に心惹かれた。今回から三島屋の次男坊・富次郎が加わって賑わいを増す。おくらさまが次の娘を匂いで選んでる、のくだりでぞくり。もしおちかと富次郎に聞かせる為に話したのだとしたら、家を早くに出された彼女が、なんで初代のおくらさまの話を知ってるのか疑問だが、死の床にある「小さな神様」なら見通せたのだろうか。
    彼女の言う通り呪いだとしたら、家中に満ちた清浄な気の描写と齟齬が生じるので、美仙屋を祟ってる元凶とは別に代々の娘たちの加護もあったのかな……と思ったり。

    舞台は江戸時代だが、庶民の心情や世相など、現代との思いがけぬ相似にハッとさせられる。
    たとえば貸本屋が商う江戸の名店を紹介する本だが、お金の金を出した店ほど扱いが大きく、いかに良い店でも必ずしも正しい評価をされるとは限らない。
    格が下がるのを敬遠して掲載を断る店もあるというのは、現代のレビューサイトや口コミ雑誌にまんま通じて感慨深い。

    「弱い者いじめは世の常だ。上士なら平士へ。金持ちなら貧乏人へ。男なら女へ。大人なら子供へ。
    やるせなく煮えるばかりの怒りや、身を腐らせる倦怠をいっとき忘れるために、人は弱い者を打ち、いたぶり、嬲る。」

    この部分など、インターネットや当時は発達しきってなかったマスメディアが膨張した分、より陰湿に屈折した形で浮かび上がる社会問題の核心を突いている。
    恋愛面では利一郎の身に起きた出来事など、おちかがもう一歩踏み出すかと期待したのだがちょっと残念。霊験お初シリーズでもじりじりしたのを思い出したが、時代背景や当時の価値観を鑑みても奥ゆかしすぎる……せめて手を握る位のあれそれはあってほしかったなあ。

    話変わるがざっとレビューを見て、最も好きな話が人それぞれなのが面白い。
    それだけ個々の話の完成度が高く、語り手もただの端役におさまらない個性を獲得し、全体的に遜色ない出来に仕上がってる証拠だ。みんなちがってみんないい。

  • シリーズ4作目。
    百物語聞き手のおちかの心の傷が、聞き取ってきた怪異譚と彼女を取り囲む心優しい人達によって癒されてきて全快も近いのではないかと思わせる読み心地が漂う。
    特に最後の一話「おくら様」に、傷を抱えたまま居着いてはいけない、前に向かって進まなければ幸せになれないと、おちかを思う人々のメッセージが込められている。
    貸本屋の貫一の「生身の人の語りは、血が通っていて面白いが生物だけに、時にはあたる」
    でも「読み物は生身の人からは離れている。どう間違ってもあたらないし障らない。気散じにはうってつけの上、読み物を通して知識が増えれば肝っ玉が強くなり一石二鳥」という意味の言葉が刺さる。
    小説ばかり読んでいる私は、一体お楽しみだけを求めるこんな読書に意味があるのかと大げさに言えば悩んでいたことがこの言葉で少し楽になった。

  • 図書館より。

    ヤバイ、面白すぎて一気読み。やっぱり宮部みゆき先生の本は読みやすいし面白いなぁ。
    そういえば、ちょっぴりコイバナもあったかな?と思いつつ(笑)、ラストでは別離。この人は本命じゃなかったと言うことか。あまり恋愛要素は求めていないんだけど、あったらあったでいいスパイスになるから、やっぱり面白い!(笑)
    続きも読めることを楽しみにしています。

  • 「聞いて聞き捨て、語って語り捨て」の三島屋シリーズ第4弾。

    今回も切なくなったり泣いてしまったりと感情を揺さぶる話ばかり。
    特に「食客ひだる神」は弁当屋の亭主と食い意地のはった「ひだる神」さんとの温かくて微笑ましい交流がとても良かった。

    今回も亡者や鬼、憑き神等が出てくる、ちょっと恐ろしくて忌まわしい話をおちかを通して聞くことになった。
    そこには語り手と話の中で語られる人達の悲しみや辛さだけでなく、人の温もりや優しさも込められていて相変わらず心地好い。
    そして今回はおちか自身の心を揺さぶる出来事が…。
    でも身を案じて背中をそっと優しく押してくれる人達がいる限り大丈夫!

    いつか一歩を踏み出し、自分の道を選ぶ日がきっと来る!と願いながら第5弾を待つことにしよう。

  • 三島屋百物語第四弾。「迷いの旅籠」では死んだ人一人一人に言い聞かせるやさしさに胸が打たれた。「食客ひだる神」ではひだる神のために夏の商いを休むという面白い話。表題の「三鬼」は貧しい洞ヶ森村での出来事が息もつかせないくらい迫力でせまってきて人間の醜さ、おろかさを痛感した。「おくらさま」も呪いと引き換えに受けていた守護も消えてしまう最後にどきどきした。最後に聞き手のおちかは時を止め、悔恨に打ちひしがれ昔を恋うて懐かしむだけの老女になってしまう。さもなきゃおくらさまになると言われることから次回の聞き手はおちかではなくなるのか?趣向がかわるのかと思ってしまった。このシリーズは続いてほしい。

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著者プロフィール

宮部 みゆき(みやべ みゆき)
1960年、東京都生まれ。1987年に「我らが隣人の犯罪」でオール讀物推理小説新人賞を受賞し、デビュー。1992年『龍は眠る』で日本推理作家協会賞、1999年には『理由』で直木賞、2002年『模倣犯』で司馬遼太郎賞、2007年『名もなき毒』で吉川英治文学賞など、数々の文学賞を受賞。大沢オフィス所属。日本推理作家協会会員。日本SF作家クラブ会員。直木賞、日本SF大賞、小説すばる新人賞、河合隼雄物語賞など多くの文学賞で選考委員を務める。『模倣犯』や『ブレイブ・ストーリー』など、多くの作品がドラマ化や映画化などメディア・ミックスされており、日本を代表するエンターテインメント作家として人気を博している。2019年7月10日『さよならの儀式』を刊行。

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