小説伊勢物語 業平

著者 :
  • 日本経済新聞出版
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本棚登録 : 144
レビュー : 9
  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532171568

作品紹介・あらすじ

千年読み継がれてきた歌物語の沃野に分け入り、美麗な要望と色好みで知られる在原業平の生涯を日本で初めて小説化。現代語訳ではなく小説に紡ぐことで、日本の美の源流が立ち現れた。これは文学史的な事件である!

歌物語の不朽の名作にして、「恋の教科書」ともいわれることもある「伊勢物語」。その主人公とされる在原業平の一代記を「伊勢」の百二十五章段の和歌を物語の中に据えて大胆に周到に小説化。やまとことばに注目の集まった令和改元をはさみ日経新聞夕刊に連載された本作は、平安時代の古典に、千年かけて培われてきた日本人の情感、美意識を現代小説として吹き込み、活き活きとよみがえらせた傑作長編。連載時に小説に平安の都の風を吹き込んだ大野俊明氏の挿絵もカラーで16点収録。この作品を読んでから「伊勢物語」を読めば平安の「みやび」を五感で味わうことができるだろう

【著者「あとがき」より抜粋】
古典との関わり方として、私は現代語訳ではなく小説化で人物を蘇らせたいと思ってきました。千年昔には身体感覚において、どこかが違う人間が生きていて、私たちは、現代にも通じる部分においてのみ、かの時代の人間を理解しているのではないか。この疑問は、書くことに矛盾をもたらし、文体を模索させました。平安の雅を可能なかぎり取り込み、歌を小説の中に据えていくために編み出したのが、この文体です。味わい読んでいただければ、在原業平という男の色香や、日本の美が確立した時代の風が、御身に染みこんでいくものと信じます。

感想・レビュー・書評

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  • 恋せじとみたらし川にせし禊ぎ 神はうけずもなりにけるかな 
     在原業平

     髙樹のぶ子の小説「業平【なりひら】」は、「伊勢物語」125章段を在原業平の年齢順に配置し、一代記に仕立てた歌物語。綿密な時代考証もなされ、新聞連載時から好評だったという。

     年齢で言うと、業平15歳から、没する50代半ばまで。和歌は五七五と七七を分けて書く2行書き引用され、そのあと、地の文にごく自然に現代語訳があらわれるので、たいへん読みやすい。

     掲出歌は、のちに皇太后となる藤原高子【たかいこ】への恋心をあきらめきれず、惑い乱れる場面の歌である。「もう恋はすまい、との思いで、御手洗川にて禊ぎをいたしましたが、どうやら神様は受け付けては下さらないままに終わってしまいました」と、語り手が歌意を「です・ます体」で説明してゆく。その語りがまるで、耳元でささやかれているようにも感じられ、折々はっとさせられた。嗅覚や触覚など、五感を刺激する文章でもあるからだろう。

     読みどころは、壮年以降の業平の描かれ方。たとえば晩年の業平は、「伊勢」と呼ばれる侍女との歌の交流で、共寝よりも豊かな時間と安らぎを得る。華やかな女性たちとの恋物語以上に、壮年以降の業平像こそ、読者の琴線に触れるのではないだろうか。

     それにしても、何という業平の色香―。「源氏物語」は、明らかに「伊勢物語」の設定を踏襲していたことに気付かされた。秋の夜長は、「源氏物語」読破に費やしてみようか。(2020年9月20日掲載)

  • 寂聴さんがこどものための古典全集で源氏物語を翻訳・翻案したものがありますが、それに近い。すすっと読めます。

    業平のファンです。
    何より屈折した男が好きです。
    歌が上手いですが、百人一首の絵札には必ず武人姿であらわされるこの男は、その姿自体が屈折の象徴です。
    不遇な出生。きらびやかなエピソードはあるけれど、それすらどこまでが本人のものか。
    同じ理由で伊達政宗ファンです。ほとんど偏愛です。

  • 2020.08.07

  • この内容は、なんだろうかと
    最初読み始めたときは、ちょっと戸惑いましたが
    伊勢物語を完全に小説にして、在原業平の半生を描いた
    内容に置き換えて描かれているものと気づいて
    面白く読めました。どこまでが史実で、どこまでが
    伊勢物語にある内容なのかを、ちょっと調べながら
    読み進むと、非常に面白くよめました。

  • もっと『伊勢物語』について深めたい。何を読もうかな。

  • 古典の現代版小説。読みづらいかと思いきや、あっという間の読了。この古典そのものの魅力と作者の腕なのでしょう。中身は、現代の視点からすると、「もう、どーでもいいこと」だらけ。女好きなモテ男の一生の話。当時の社会風俗、通念はよく分かる。都人の奔放な生活。歌の持つ社会的な役割。都人と地方人がそれぞれお互いをどのように見るのがこの時代の社会通年だったのか、等々。他方、これら宮廷人の他の市井の人は貧しい暮らしをしていた時代。なんともはや。おっと、現代視線ではダメですね。要は、羨ましい男、のお話でした。

  • 古典の教科書を読んでるみたいで、せっかくフィクション化したのであればもっとはっちゃけた業平像を見てみたかった。

    それにしても優雅なひと時を過ごさせていただきありがたい。予想とは違った小説でしたが。

  • 在原業平の一生を和歌と共に描く物語。
    印象に残った文章
    ⒈ 男の恋は二つ方向へ向かうもの・・叶わぬ高みの御方への憧れと、弱き御方を父か兄のようにお護りしたい恋と・・いずれも叶うこと難く・・ゆえに飽くことも無し
    ⒉ 百年に一年足らぬ九十九髪 我を恋ふらし面影に見ゆ

  • 『伊勢物語』のノヴェライズ…って元も物語だから違うか。現代版リライトってところ。当然、
    高子との恋物語が中心ではあるが、恬子内親王との絡みにもかなり紙幅が割かれていた。あと、何気に「承和の変」直前、業平へ母を守れとお忍びで忠告しに来る阿保親王がすごい存在感。2度の政変に関わった割には、父親の平城天皇と息子の在原業平に挟まれて、歴史上はかなり地味な扱いの人。良かったねー(?)。あわよくば、業平の生母・伊都内親王との交流も知りたいところ。

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著者プロフィール

作家。1946年、山口県生まれ。東京女子大短期大学部卒。80年に「その細き道」でデビュー。84年、「光抱く友よ」で芥川賞を受賞。『水脈』(95年)で女流文学賞、『透光の樹』(99年)で谷崎潤一郎賞、『HOKKAI』(2006年)で芸術選奨文部科学大臣賞、「トモスイ」(10年)で川端康成文学賞をそれぞれ受賞。09年、紫綬褒章受章。17年、日本芸術院賞を受賞。2018年、文化功労者に選ばれる。20年、『小説伊勢物語 業平』を上梓。その他の著書に『百年の預言』『罪花』『マイマイ新子』『マルセル』『ほとほと』など。

「2020年 『伊勢物語 2020年11月』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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