自壊の病理: 日本陸軍の組織分析

著者 :
  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (319ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532176204

作品紹介・あらすじ

●名著『失敗の本質』の著者による昭和陸軍論
本書は、『失敗の本質』『戦略の本質』のメンバー戸部良一氏による本格的昭和陸軍論。
「戦前の陸軍は権力をほしいままにして対英米戦争に突入した」というステレオタイプな歴史記述に異議を申し立て、歴史家としての事実に基づいた分析を行う。「東条英機は縦割り組織に縛られリーダーシップは発揮していなかった」「大正期の肩身の狭さの反動が昭和陸軍暴走の遠因だった」「陸軍が主導した日独同盟は英米戦を視野に入れていなかった」など、従来の歴史書では得られなかった新たな発見が得られる知的興奮の書です。

感想・レビュー・書評

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  • 「失敗の本質」のシリーズ本 当初の作戦レベルから国家レベルへ深化しつつある
    一方で、読後感は嫌悪感を増している
    この国に「国家の負託」を自覚しているリーダーは存在するのだろうか
    ことごとくが「小手先」グランドデザインを構想している者はいない
    ⇒「現実を直視しないこの国」本質は全く変わっていない 芹川洋一(日経)

    日華事変の顛末ストーリーだが、最悪 国家としての意思も算段も欠いて
    石原莞爾の満州事変をパクろうとして、本人は同じようなつもりで起こした事変だが
    事は全く別で、中国固有の領土で起こした事変は、中国全域を征服しなければ終息しない

    東條英機を典型例として、オペーレーションのエクセレンシーは見いだせるが
    国家全体を見据えた戦略家は全く見当たらない
    これはどういうことか?

    一体誰が、戦争を意思決定し、終息条件のイメージを持っていたのか?
    恐ろしいことだが、その当事者は存在しない
    陸軍は、リーダー不在のままで、政治に横車、政治的責任は負わない(28)
    特定の分野で有能でも、大局観や政治的英知を具備しているわけでは無い

    戦争目的 自存自衛論か、アジア解放論か
    多くは前者だが、後者の理念が大事「重光葵」
    この理念があると、隊の規律は守られる
    東條英機もオペレーションの人
    イニシアティブを取らなかったのは、ヴィジョンが無かったから
    ヴィジョンがなければ、精神論を語り、部下の意見具申を待つ

  •  論文集なので割と読みやすかった。東條英機は「独裁者」とは言えず、細かな秀才型・実務型官僚、という漠然とした知識はあったが改めて確認できた。今の日本の各界指導者でもどれだけの人間が戦略ヴィジョンを持っているかというと疑問だが、戦時の戦争指導者としては戦略ヴィジョンの欠如は「重大な欠陥」と著者は述べている。
     辻政信については、彼が追求した「積極果敢」「必勝の信念」といった理念は日本陸軍自体の理念でもあり、それ故に異能ではあったが決して異質ではなかったと指摘している。著者は別の本で、インパール作戦での牟田口廉也にも類似の評価をしている。となると、彼らの指導が生んだ犠牲の責任は組織全体の責任でもあるということになるだろう。
     また、諸悪の根源のように見られがちな統帥権の独立が、元々明治期には軍人の政治化防止のための制度だったと指摘している。明治期にはそれでも政治と軍の指導者の情勢認識や出自が似通っていたので柔軟な対応が可能だったが、政党勢力の伸長に対する軍の警戒や軍人の専門職化により軍が自らの勢力拡大のために統帥権独立を使うようになったという。

  • 平時における陸軍のガバナンスの崩壊など目新しい。過去の論文集的な位置づけもあり、第1章では昭和の軍人の専門職化が進行した弊害を解く一方、後半の章では政治化した故に専門職化していないという見解も挙がるなど、やや一貫としていない箇所もあるが、様々な研究もベースに検証されており、非常に興味深い。

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著者プロフィール

国際日本文化研究センター名誉教授

「2020年 『戦争のなかの日本』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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