危機と人類(上)

  • 日本経済新聞出版
3.72
  • (25)
  • (74)
  • (51)
  • (5)
  • (3)
本棚登録 : 874
感想 : 87
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532176792

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 観光でしか訪れたことのないフィンランド、チリ。ナショナルアイデンティティという視点から国の在り方や国民性が分析されるとは。銃・病原菌・鉄にも劣らず日本の明治の動きも記されており、興味深く読み進められた。

  • 2019I236 361.5/D1
    配架場所:C2

  •  ある国家の危機を、個人的な危機になぞらえて、各国がどのように危機を乗り越えてきたのかを分析し、現代の危機克服のヒントを探ろうとしている本。とても読みごたえがあった。
     対象となっているのは著者が滞在したり深く関わった国で、フィンランド、日本、チリ、インドネシア、ドイツ、オーストラリア、アメリカが取り上げられている。このうち日本だけ幕末編と現代編の2回取り上げられている。

     上巻では、ソ連という外圧の危機に立ち向かったフィンランドの章がもっとも興味深かった。ムーミンを生んだ北欧の国くらいの印象しかなかったが、突如としてソ連に征服されそうになったフィンランドが、幾度も強い愛国心と柔軟な妥協性を発揮して最後まで占領されなかった希有な国であることを初めて知り驚いた。
     フィンランドが数々の危機に対処できたポイントを著者はいくつも挙げているが、やはり過去の苦い経験から学んで、小国である自国を正当に評価して行動したことがいちばん大きいのではないか。
     同じように外圧の脅威にさらされた幕末の日本の章は、日本人にとっては日本史の復習に近い内容だったが、著者の挙げた危機への対処ポイントに沿ってひとつひとつ語られると、より整理されて頭に入ってきた。また明治維新の功罪というか、日本人があえて語りたがらない部分も客観的に説明してくれており、歴史的事実を多面的に見ることの大事さにも気づかされた。

    《個人的危機の帰結にかかわる要因》(P.55)
    1.危機に陥っていると認めること
    2.行動を起こすのは自分であるという責任の受容
    3.囲いをつくり、解決が必要な個人的問題を明確にすること
    4.他の人々やグループからの、物心両面での支援
    5.他の人々を問題解決の手本にすること
    6.自我の強さ
    7.公正な自己評価
    8.過去の危機体験
    9.忍耐力
    10.性格の柔軟性
    11.個人の基本的価値観
    12.個人的な制約がないこと

    《国家的危機の帰結にかかわる要因》(P.69)
    1.自国が危機にあるという世論の合意
    2.行動を起こすことへの国家としての責任の受容
    3.囲いをつくり、解決が必要な国家的問題を明確にすること
    4.他の国々からの物質的支援と経済的支援
    5.他の国々を問題解決の手本にすること
    6.ナショナル・アイデンティティ
    7.公正な自国評価
    8.国家的危機を経験した歴史
    9.国家的失敗への対処
    10.状況に応じた国としての柔軟性
    11.国家の基本的価値観
    12.地政学的制約がないこと

  • 銃・病原菌・鉄の大陸間の緯度経度で、民族の発展が大きく異なるって考察がとても参考になったので。

    上巻はフィンランド、日本、チリ、インドネシアの国家的危機について。
    国家的危機を個人的危機に当てはめて考察する本書のテーマは新しいと思う。

    上の書籍もそうだけど、この人は個別の問題を一つのフレームワークに落とし込むので、誰でもわかりやすいし比較もしやすい。

    まだ下巻を読んでいないので結論は言えないけど、少なくとも日本以外の危機はあまり日本人に知られていない知識で、知れただけでも大きいかな。

  • 全般的に読みやすい文章。フィンランド、チリ、インドネシアの政治体の歴史経緯は各々が特徴的。

  • 取り上げられているのは、第二次世界大戦前後のフィンランド、明治維新期の日本、ピノチェト独裁政権下のチリ、スカルノとスハルトが大統領だった頃のインドネシア。日本はともかく、ほかの3か国については知らないことばかりだった。日経サイエンス2020年3月号ブックレビュー。

  • 日本について多く言及されているので、興味深い。
    特に前半上巻での、明治時代の日本の「選択的変化」についての言及は納得感が高い。
    つまり、ペリー来航を機に変えるもの(封建制度)と買えないもの(マインドセットや天皇制)をうまく選び取った稀有な例であると。

    あとはフィンランドの対ロシアの弱腰外交を評価しているのも興味深い。
    つまり感情的なネトウヨは、なんでアメリカの言いなりになっているのか!弱腰外交クソだ!
    みたいなことを言うが、感情的にならず国力を考えて、現実的な判断をとるのが大事だと言うこと。

  • 歴史は勉強になるが、アプローチが…

  • トランプ元大統領が引き起こしたアメリカ分断の危機。この本を読めばわかるかも。
    国内分断が、国家的な危機を招く。

    個人的危機から国家の危機を簡単づけてわかりやすい。
    統計的な判断ではないが、著者の関係の深い国フィンランド、日本、チリ、インドネシア、ドイツ、オーストラリアの事例と危機後の国民の向き合い方の違いがわかる

  • 第2章
    なぜフィンランドが豊かで、世界トップクラスの科学・教育リテラシーがあり、社会民主主義国家なのか
    そこには大国ソ連と長い国境を接する地政学的理由があり、類稀な愛国心があり、人口600万という小国ならではの綱渡り外交があった
    真田三代みたい!

    第3章
    鎖国日本に対する西洋からもたらされた危機に江戸明治の日本がどう対応したのか
    海外の知の巨人が書く明治維新は新鮮だが、概ね「まあそうだよね」って感じ
    明治維新と、太平洋戦争時の日本の指導者の対比は興味深く読んだ。正確な自己評価の違い。

全87件中 21 - 30件を表示

著者プロフィール

1937年生まれ。カリフォルニア大学ロサンゼルス校。専門は進化生物学、生理学、生物地理学。1961年にケンブリッジ大学でPh.D.取得。著書に『銃・病原菌・鉄:一万三〇〇〇年にわたる人類史の謎』でピュリッツァー賞。『文明崩壊:滅亡と存続の命運をわけるもの』(以上、草思社)など著書多数。

「2018年 『歴史は実験できるのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

ジャレド・ダイアモンドの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×