- Amazon.co.jp ・本 (298ページ)
- / ISBN・EAN: 9784532190101
作品紹介・あらすじ
「国と国とが競争をしているというのは危険な妄想」「第三世界の成長は第一世界の繁栄を脅かさない」-いま最も注目される経済学者が、巷にはびこる経済学的俗説を一刀両断!アジアの経済危機を予言した話題の論文「アジアの奇跡という幻想」も収録。
感想・レビュー・書評
-
本書から記されてから二十年くらい経つが、残念ながらグルーグマンの言う俗流経済学はまだまだ幅を利かせているように思う。
もっとも私にはどちらの理屈が正しいかよく判断はできないが・・・詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
著名な経済学者によるトンデモ経済理論ぶったきり本。
主に貿易に関する話、保護貿易といったことに対する経済学理論の啓蒙活動。
国際競争力といった言葉を多用し、国と国が利益を奪いあう時代になったという主張に真っ向から反論し、いかにそのような考え方が馬鹿げているかを丁寧に解説している。
「産業によっては国などによる規制で保護をしたほうが国のためになる」
そういった内容の論文で名を上げた人物なのだが、この本の内容は保護貿易とか馬鹿いうなといった内容。
それは自分の発表した理論を理解しないだけでなく間違った用法で用いる人達が多いことに怒り、正しい経済学知識の啓蒙がまずは必要と感じたかららしい。
こういった本を多く出している人だけあって、間違った解釈に対しては容赦無い内容。
グローバル化といった言葉に踊らされることのないよう、しっかりとした知識を身につけたい。 -
著者は言わずと知れたノーベル経済学賞受賞学者。
刊行は20世紀の終わりと古いが、当時アメリカではびこっていた保護主義的な世論に対して「それは違うんじゃないか」と一石を投じた本。
2019年の今、この書籍で予想されていたことと異なる世界になっているが、それでも理論武装して大勢を批判する姿勢に頭が下がる。 -
既存の経済学者についての批判が主となっていますが、
比較論を用いて、なるほどと思わせるポイントが多いです。
しかし後半の人工知能やITの普及、
更にはアジアの発展に関しての予想展望については、
少し違っている点も見えますが、
古く時間が経過した本とは思えない内容であり、
参考になった点が非常に多かったです。
工業が新興国に奪われていくことの
世界経済全体でみた場合の影響力。
この点について、数字を並べて説明を受けると、
そういうことなのか!!
という気が付きは特に新しく自分にとって新鮮でした。 -
失業率が下がると輸出に不利なのか、有利なのか。貿易の自由化が促進されると賃金は上がるのか、下がるのか。
経済学を専門としない人間にとっては一見してわかりにくい事項であっても、経済本においては当然の共通認識として注釈も入れられず、多数の疑問を置いてけぼりにされることがままあるが、心配する必要はない。
本書は『貿易とは国と国との競争だ』という、いまだに聞くことがある俗説を否定することのみに全章をついやしているので、論点は明確だ。
商品には差があり、商売は比較され、企業は競争しているという実感は誰しも日々感じているからこそ、国に関してもその延長線上にあると錯覚するのは正常な感覚だろう。
しかし、世の中は直観で感じとれるように出来ているわけではない。
欧州のように福祉国家の運営のために失業給付と最低賃金を高く補償すると失業率は高くなるが、米のように低賃金の職により失業率を抑えると、格差は広がる一方となる。
構造的に明確にならない問題の解答を、『競争力』という全員の努力の結果ということに任せてしまえば、誰も責任を負うことなく「みんながんばってるけど他国が成長してるから仕方ない」「もっとがんばって他国と戦おう」という全体へのスローガンに帰着出来てしまう。
貿易赤字は国の負債を示す値ではないし、世界貿易が各国の生活水準に及ぼす影響は多く見積もっても数パーセントだし、低賃金労働力に対する投資は長期的には均衡する。
そして悪貨は良貨を駆逐する。本書の刊行は1997年であるが、未だにテレビや書店では、刺激的な言葉で日本経済の先行きを憂うか、楽観的に日本経済の偉大さを讃えるのみの、わかりやすいだけ、いや、聞きたい言葉を聞かせてくれるだけの言説が多く見られる。
初めの一歩をわかりやすいところから入るのは間違いではないが、聞きたい言葉を聞いて終わるのは、ただのストレス解消程度の意味しかない。
なにかを知ろうとするならば、両論手に取るところからはじめよう。
本書は『<a href="http://mediamarker.net/u/akasen/?asin=4478017832" target="_blank">この世で一番面白いマクロ経済学</a>』の次に読むべき自由貿易主義派の一冊目として。 -
分かりやすいと評判の本ですが、結論部分は簡潔明快な反面そこへ至る説明は(自分の頭では)なかなか難しく感じました。本書のような「俗流国際経済論」の打破をテーマとした本は、後発本が色々出てます。例えば、菅原晃の『高校生からわかるマクロ・ミクロ経済学』は、本書の主張の核となるISバランスや比較優位についてより分かりやすく説明しているので、こうした概念を知りたいならこちらをお勧めします。
-
経済学者クルーグマンが書いた、15年前の「国際競争力」についての本。主旨としては「国際競争力」という分かりやすいが、全くデタラメの主義主張に異を唱えている。非常に分かりやすいし、基本的には納得出来るとこばかり。ただ、15年経っても未だに「国際競争力」は人々の意識の中に根付いたままである。
-
著名な経済学者ポール・クルーグマンが10年くらい前に既存の経済学の考え方に反旗を翻す様な格好で出版した一冊。アメリカ経済の話題が中心になっているのはやむを得ないが、出版からこれだけの時間が経つと納得が行く部分も逆にそうでない部分もある。でも、なんだかんだ一般に報じられたりしたり顔で評論家が書いっていることを鵜呑みにすると真実を見失いがちになるということだけはきちんと理解できるわけで。
-
「国際競争力」の虚妄を懇切丁寧に打ち砕くエッセイ集。これが書かれて15年以上経っているが、状況は何も変わっていない。