新しい中世: 相互依存深まる世界システム
- 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版 (2003年4月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (362ページ)
- / ISBN・EAN: 9784532191733
作品紹介・あらすじ
相互依存が進む世界はどこへ向かうのか。ヨーロッパ中世になぞらえた「新しい中世」の概念で、冷戦後の世界システムを構想。世界の国々を、国境が薄れた「新中世圏」、国民国家たらんとする「近代圏」、秩序が崩壊した「混沌圏」の3つに分類し、移行期の世界を独自の視点で鋭く分析する。
感想・レビュー・書評
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―2003年4月―
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学部時代ゼミの購読にて。内容はだいぶ忘れてしまった。
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3年前に友達に進められて「読みたい本」に登録したまま、ようやく読めた。
初版は1996年に出版されているので、実に10年も前になるため、冷戦終結後すぐの世界を分析したものであり、その後のテロとの戦いについては見通せていないところがどうしてもあると思う(作者は補論において見通していたと主張しているが)。ただ、そうはいっても冷戦後、アメリカの覇権後、相互依存社会の到来から、国際社会がどのような社会体制になっていくかを実にわかりやすく示していると思う。国が国としての形にこだわった近代から、相互依存と多様な主体が活躍する「新しい中世」へと変化するという話、そして、3つの圏域「新しい中世」「近代」「混沌」に分けて考える手法はなるほどなと思う。今のテロとの戦いは、新しい中世圏域の豊かさが、相互依存によって混沌圏においても認識されやすくなってしまったがために起きているのかもしれない。 -
当時の社会情勢に照らして読めばなかなか刺激的
今の時代にも敷衍して使える内容かと -
社会学の本。
冷戦終結後の世界システムを分かりやすく書いている。新中世圏、近代圏、混沌圏での分類。
1996年代に書かれた本なので少しオールドファッションも感じるが、9.11後についての追記も記載されている。
世界システムというか、経済力の裏には武力や国家戦力(核爆弾)、資源力があるからこそ今の世界がある。
今後の世界システムがどう変化していくか…それを知る手掛かりになるかな。 -
イデオロギー対立の戦場はそれぞれの陣営の間の経済パフォーマンスをめぐる競争であった。
世界が依然として戦争状態だとすれば、世界には対立が続くばかりではないか。冷戦の終焉は無意味な現象なのか?必ずしもそうではない。
冷戦は二極対立であっただけでなく2つのイデオロギー対立の側面を重視したとすれば、冷戦後の世界はどのようにおなるといえるのだろうか。マルクス・レーニン主義の教義は今や自由主義的民主制のイデオロギーと栄光力を競うほどの力は持っていない。
覇権とは一国が国家間関係を制御するうため基本的ルールを維持するのに十分なほど強力であり、しかもそれを維持する意思がある状況と定義したのがナイとコヘイン。
依然として社会科学の世界におけるアメリカの学会の多くはアメリカ人である。経済学や国際政治学において世界を指導する学者の多くはアメリカ人。
レジームの慣性とは一度できあがったしくみはそう簡単には変わらないということ。
相互依存が水平分業的になりグローバルな金融市場、商品市場が機能するようになると、関係が複雑になりすぎて、軍事力で何が達成できるのか全く不明になってしまった。
レジームをきわめて広く解釈して事実上の了解事項や行動パターンが存在すればレジームがあったのだとすれば冷戦もそのようなレジームの一種とみなすことができるのかもしれない。しかしそこには決して明示的な合意は存在しなかった。
現在のシステムは冷戦や覇権の後の時代に入っただけでなく、新しい中世に向かっている。相互依存の進展は新しい中世の特徴を徐々に示し始めていると主張したい。
主権国家の普及によって主体の均質化が進む一方、イデオロギーの側面でいえば、近代世界システムは対立によって特徴づけられてきた。
近代世界システムがヨーロッパ中世と異なる点は経済的相互依存の進展。世界が政治的には主権国家によって相互排他的に分割され、思想的は厳しく対立抗争が続く中、経済的には地球上の各地が資本主義的な市場の中に組み込まれていった。 -
2000年前、都市国家のアテネから見たローマ帝国が、現在の小国に分断されているヨーロッパから見た大国のアメリカと対比が出来るなど、過去から将来起こるであろうことを予測してみせる。
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冷戦後の世界を、新中世圏、近代圏、混沌圏に分類し、世界システムを分析する。先進国に住む国民の帰属意識が多様化し、さながらヨーロッパ中世のように、様々な行為主体が複雑に関係を結びあっているという指摘は面白いし、そうした、新中世圏に属する国家同士は戦争をしないという指摘も妥当であるように思える。東アジアへの分析では、もう少し中国の脅威をクローズアップしても良いのではと思ったことと、全般的にやや規範的な価値に重きをおいている印象を受けた。
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物語的な面白さ、文学的な美しさはない。
けど、面白かった。
なんて頭良さそうな文章なんだと、どきどきした。
会ってみたい田中先生。