鈴木敏文の「統計心理学」: 「仮説」と「検証」で顧客のこころを掴む

著者 :
  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
3.55
  • (12)
  • (29)
  • (50)
  • (0)
  • (1)
本棚登録 : 268
感想 : 30
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (265ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532193201

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ―10種類のおにぎりがあって、そのうち3種類の売れ行きが非常によかったとする。その3種類を中心に品揃えをしておくと、しばらくの間はそれらが上位を占める。そのかわり、おにぎり全体の売り上げは落ちていく。その3種類はすでに飽きられていて、それでも何とか売り上げ上位に入っていたのは、ほかがなくて仕方なく我慢して買うという消極的選択もあったからだ。実は上位3種類が売れている間に、4位、5位の種類が伸びる兆しがあって、そちらの方が新しい売れ筋になるはずだった。
    とかく、人はよく売れた商品をまた揃えようとします。それは「昨日のお客」に対する商売の仕方です。大切なのは「明日のお客」は何を求めているか考える事です。

    セブンイレブンはバイトまで売れ筋、死筋を考えて仮説・検証を立てる風土が根付いているそうだ。店舗毎にここまで客層が違うのであれば、現場の店員を教育する仕組みが不可欠なのだろう。個別の商品の売上高を考えるのではなく、売れる店をトータルで考えないと全体の売り上げも上がらない。

  • 未感想

  • ビジネス選書サマリー。セブンイレブンの鈴木寿史会長の手腕を紹介した本。

    例えば98年秋に「消費税分還元セール」が大ヒットした。これは顧客の心理を刺激したものだ。顧客の心理に“反消費税”という物語を見出し、消費税アップに対する潜在的な不安感を刺激したのだ。経済学の発想なら単なる「5パーセント割引セール」になる。だがこれでは消費者の心理を刺激することはなかったはずだ。

    数字の裏を読むのも鈴木流統計術の特徴だ。一般に公表されるデータを目にしても、額面どおりには鵜呑みにしない。数字の裏の裏を読もうとする。例えば、アンケートなどの調査も疑ってかかるべきだ。社員が街頭で店についてアンケートしたところで面と向かって「良くない」と言える人はほとんどいない。粗品でもあげればなおさらだ。また2~3人連れの女性達に質問すると、その中の発言力のある人の答えに残りの人が追随する。そのため本当のことが出てこない。

  • マクロとミクロ、フィジカルとサイコロジカル。リレーションシップ。

  • 直感、本は読まない。
    なかなか声に出しにくい事でも言っていて凄い。正直共感できる。
    ゼロ秒思考という事だと思う。

  • 天下のセブン&アイグループの総帥、鈴木さんの書籍。
    最近、新版が出ていて読みたいなと思ったら、昔のものがあったので読んでみた。

    最近のデータ分析ブームで色々な書籍があるけれど、本書はその基本的なところをカバーしている良書だと思う。
    特殊なテクニックなどではなく、日々仮説思考を持ってデータと現場に接して試行錯誤を繰り返すという基本に忠実な事例が載っているからだ。
    かなり目から鱗のことが多かった。
    個人的には、現在の日本の消費者は多様性ではなく、極度の同質性であるという指摘がかなり良かった。やはりさすがである。
    自分もそういった独自性を出せるように精進したいものだ。

    目次
    第1章 鈴木敏文はどのように意思決定しているのか
     1 「客観」と「直観」、二つのカンで発想する
     2 鈴木敏文を見ている「もう一人の鈴木敏文」
     3 発想の根本にある「五つの視点」
      鈴木流独自発想の視点1 変化の流れを時間軸で捉えると、今の時代の動きが分かる
      鈴木流独自発想の視点2 時間軸を輪切りにすると本当のようなウソが見えてくる
      鈴木流独自発想の視点3 時間軸で未来に目を向けると、今の時代の顧客心理が読める
      鈴木流独自発想の視点4 脱経験的思考――過去の「常識」は今の「非常識」
      鈴木流独自発想の視点5 陰陽両面的思考――買い手の「合理」は売り手の「非合理」
     4 天才経営者と凡人ビジネスマンはどこが違うのか

    第2章 商売は「経済学」ではなく「心理学」で考えろ
     5 顧客は「経済人」でなく「心で動く人間」である
     6 顧客の心理を読む「琴線と金銭」の商い
     7 鈴木敏文は顧客の心理をこう読む
      鈴木流顧客心理の掴み方1
       「富士山型」発想を捨て「茶筒型」に転換せよ――「昨日のお客」より「明日のお客」
      鈴木流顧客心理の掴み方2
       海辺の店でなぜ、梅おにぎりが大量に売れるのか――「先行情報」と「経験情報」
      鈴木流顧客心理の掴み方3
       あいさつ一つで顧客との距離感を縮める――「無意識」は「無視」と受け取られる
      鈴木流顧客心理の掴み方4
       なぜ、高密度多店舗出店戦略なのか――顧客心理の変化がもたらす「臨界点」
      鈴木流顧客心理の掴み方5
      商品の陳列は顧客の目線で考えろ――「合理的」より「目につきやすさ」

    第3章 半歩先を読む鈴木流「統計術」の極意を学ぶ
     8 鈴木流経営学の原点は隠れた大学院時代にあった
     9 なぜ、「現場主義」ではなく「データ主義」なのか
     10 データや情報を読み解く「五つの極意」
      鈴木流統計術の極意1 売り手から買い手へ、視点を変えると別のデータが見える
      鈴木流統計術の極意2 統計データは鵜呑みにするな、その背景や中身を突きつめろ
      鈴木流統計術の極意3 同じデータ、情報でも「分母」を変えると意味が逆転する
      鈴木流統計術の極意4 なぜ、モノが売れないのか、心理抜きには統計は読み切れない
      鈴木流統計術の極意5 仮説・検証で初めてデータが生きる、WHYとWHATの問題意識を常に持つ
      鈴木流統計術の極意中の極意 自分の都合のよいように、数字のつじつま合わせをするな

    第4章 鈴木流「場のつくり方」を学ぶ
     11 徹底してダイレクト・コミュニケーションにこだわる
     12 繰り返し伝えることにより基本を「血肉化」させる
     13 共有化のための「場」を大切にする

    第5章 現場の社員たちはどのように鈴木流経営学を実践しているか
     14 社員のコミュニケーション能力を重視する
     15 仮説・検証を店舗経営に活かす
     16 自分の仕事で「物語」をつくれるかどうか
     17 顧客の共感を呼ぶ「場」づくりにこそセブン-イレブンの強さがある

    おわりに
    鈴木敏文氏の金言集

  • もう少し早く読めばよかった。要は、現代は売り手市場ではなく買い手市場なので売り手の過去の成功事例や栄光にしがみついてやるものではないということ。直観が大事だが、そのために問題意識を持ってデータを読み解き、常に疑問を持つこと。「他店見学してはいけない」は大胆。やはり成功するには過去との決別と大胆な行動、そしてその覚悟が必要ということか。

  • 鈴木社長礼賛本に近い内容となっている。タイトルに「統計」という文字も入っているが、さほど統計に言及した内容も多くない。
    しかし、鈴木氏が大事にしている「仮説検証」は多くのケースで語られているため、その他のビジネス書にも多く書かれている「仮説検証」を抽象から具体へと理解を深めるのに役立つ一冊。

  • ■マーケティング分析

    A.鈴木氏の発想の根本には、次の5つの視点がある。
    1.今の時代の動きを把握するために必要な、時間軸で変化の流れを大きく捉える視点。
    2.世の中の潮流の中に潜む本質を読み取るための、時間軸を「輪切り」にし、その断面を見る視点。
    3.顧客心理を読むために必要な、未来という時間軸から見て今を位置づける視点。
    4.過去の常識は今の非常識になるという脱経験的思考。
    5.買い手の「合理」は売り手の「非合理」という陰陽両面的思考。

    B.同じ25℃という気温(室温)でも、夏なら「寒い」となり、冬なら「暑い」となって売れる商品が変わる。このように同じデータ、情報でも「分母」を変えると意味が逆転する。

全30件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

ジャーナリスト
1952年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退後、フリージャーナリストとして経済・経営分野を中心に執筆。企業組織経営・人材マネジメントに詳しい。

「2020年 『共感経営 「物語り戦略」で輝く現場』 で使われていた紹介文から引用しています。」

勝見明の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×