鈴木敏文の「統計心理学」: 「仮説」と「検証」で顧客のこころを掴む

著者 :
  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (265ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532193201

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  • 営業マンとして、漠然とした暗黙知を何とか形に出来ないものかを思案しています。理論・実験に裏打ちされた開発の同僚と研修を共にした時、営業としての知識を語るのが難しく、経験則的な話に傾倒していることに焦りを感じたのです。そこでまず営業的なモノの考え方に、数字を積極的に裏付けに使っていこうという思いに達しました。そこで闇雲に手に取った本。統計という部分に何かしらのヒントが無いか?
    製造業と小売りの違いはありますが、数字の捉え方には参考になる部分がありました。
    以下は自分の気づきを元に、構成をまとめてみました。

    ◉はじめに
    ・変化の時代に必要なのは、論理思考力を身につけた上で、一歩突き抜けた発想力だ。
    ・「A=B」と思っている内は、自己差別化は出来ない。
    @一粒百行
    (いちりゅうひゃっこう)
    ‥‥一粒の米を作るにも百の手間がかかる。
    ⇨ひとつの事を成功させるには、百の努力が必要である。
    ・一つの一貫性を持った努力と創意工夫の積み重ねは必ずやブレークをもたらす。

    ◉第1章:
    鈴木敏文はどのように意思決定しているのか?
    ◎客観と直観の一体化した発想が独創性の源。
    直観‥‥物事の本質をいきなり直接的に見抜くこと
    直感‥‥物事を瞬間的に心で感じ取ること
    @メタ認知‥‥認知に対する認知。
    ◎5つの視点
    ①時間軸で変化の流れを大きく捉える視点
    ・短期的な動向や目先の動きもを中長期的な視点で捉える
    ⇨日本は、短期的な動向にマスコミが過敏に反応し、社会全体に波及する傾向が強い
    ②時間軸を輪切りにして、断面を見る視点
    ・多様化と画一化
    ⇨商品のライフサイクルが激しくなった現代では、当たり前のように『多様化』が叫ばれているが、断面から捉えると『画一化』の時代だと言える。
    ③ 時間軸で未来から見て今を位置づける視点
    ・現在が安定していると、未来に不安を持つようになる。
    安定を維持したいからである。
    ④脱経験的思考
    ・人間は苦境になるほど、過去の成功体験にすがる
    ・常識を破らないと感動を伝えられる仕事はできない
    ⇨制約条件固定型‥‥出来ない理由を列挙して結論づけるタイプ
    ⇨制約条件解放型‥‥出来るためには何が必要かを仮説していく
    ⑤陰陽両面思考
    ・流行とは飽きられるという裏の面をもつ
    @ABC分析‥‥商品管理手法。売れ行きをA、B、Cランクに分類する手法。
    ・売り手の合理は、買い手の不合理。
    @米国の心理学者・ボーリングのだまし絵。
    ‥‥多義図形。同じ絵でも見る人によって受け取り方が違うことを示す
    一つの絵に若い女性と、老婆が隠れている。
    ・過去の経験や常識は、ラーニング(学習)すると同時に、アンラーニング(学習の仕直し)の対象になる。
    ◎人間は誰しも自分に納得しやすい話を作りたがる
    ⇨自分に厳しく、客観的な視点を訓練しておく必要がある。
    @マーケティング
    ・井戸モデル‥‥自分であればこういう商品が欲しいと掘り下げていくマーケティング手法
    ・川モデル‥‥顧客は川の向こうにいるものとして、標的めがけてうつマーケティング手法

    ◉第二章:
    商売は「経済学」ではなく「心理学」で考えろ
    ◎人間の消費は経済合理性だけで動いているわけではない
    ⇨モノ不足の時代には経済学で考えれば良かったが、モノ余りの時代は心理学でのアプローチが必要である。
    @人間の捉え方
    ⑴ホモ・サピエンス(英知人)
    ‥‥人間の本質は知性や英知にあるとする。
    ⑵ホモ・ファベル(工作人)
    ‥‥ものをつくり自己を形成する創作活動にあるとする。
    ⑶ホモ・ルーデンス
    ‥‥歴史学者・ホイジンガが提唱した「遊び」こそ人間にとって最も本質的で独自なモノ。
    ⑷ホモ・エコノミクス
    ‥‥経済合理性に基づいて活動する
    ◎現代社会の競争力の源泉
    スピードの経済、規模の経済を追求する時代であると考えられているが、鈴木氏は心理学の経済こそ、追求すべき課題であるとしている。
    ◎心の糸(琴線)が共鳴すれば
    財布の紐(金銭)が緩む
    ・変化対応する体質が重要であり、その為には商売に余裕がある事、つまり利益が確保されているか、である。
    ◎日本の商品ライフサイクルは世界一短い
    ・富士山型ではなく、茶筒型。
    一気に売れて、一気に売れなくなる。
    ・現代では、“思いつき”が大切。
    仮説と検証で形にしていく。
    @閾値(科学。いきいち)
    ‥‥あるフェーズでの連続的な変化が一定のレベルに達すると、次のフェーズへと突然転換していくときの境目。
    ex.水の沸点、ガラスの溶解温度

    ◉第三章:
    半歩先を読む鈴木流「統計術」の極意を学ぶ
    ◎経営とはマクロで見てミクロの数字に落とし込んでいくこと
    ・現場主義に偏りすぎると、マクロを見逃す事になる。
    ◎データや情報を読み解く「5つの極意」
    ①売り手から買い手に視点を変えると別のデータが見えてくる
    ・データを記録として見るのとマーケティングに使うのでは読み方が違う
    ⇨完売は売り手から見ると、成功だが買い手から見ると機会ロスになる。
    ②統計データは鵜呑みにしない
    ・調査・アンケートは誘導的、恣意的に作成しやすいモノ。
    ⇨統制調査はサンプリングの仕方によって中身が全く異なる。
    ③同じデータ・情報でも分母を変えると意味が逆転する
    ・気温25℃という情報でも、分母が真夏か真冬かで意味が全く異なる。つまり打ち手がかわる
    ④心理抜きにしては統計は読み切れない
    ⑤仮説・検証で初めてデータが生きる
    whyとwhatの問題意識を持つ
    ・問題意識無く見たデータからは新しい文脈・意味は生まれない
    ⇨問題意識の原動力は何故か?何をすべきか?を問うこと。
    ◎自分に有利な数字の辻褄合わせをしない
    ・経済が成熟してくると過去のデータはそのままでは通用しない
    ⇨数字の辻褄が合いすぎるのは逆におかしい

    ◉第四章:
    鈴木流「場のつくり方」を学ぶ
    ◎情報の共有・統一に、ダイレクト・コミュニケーションに勝るものはない
    ・情報は鮮度が命だが、人の手を経れば経る程、加工される。
    ◎反復こそ基本を血肉化させる唯一の方法である。
    @企業の持つ成功の型の一つ
    【限りなく理想を追い求める執拗さ】・・・野中郁二郎教授
    ⇨理想に向かって、しつこく努力を重ね続ける。それが持続的競争優位をもたらす。

    ◉第五章:
    現場の社員たちはどのように鈴木流経営学を実践しているか
    ◎コミュニケーションは自分で情報を持つことから始まる。
    ◎自分の仕事で「物語」をつくれるかどうか
    @アフォーダンス
    afford=〜を与えるから造られた造語。
    「環境が動物に与える価値」という認知科学の用語から、「モノ自体がそれをどうやって取り扱えばいいのかメッセージを使い手に対して発している」という意味に転じた。
    ◎経営とは過去の成功体験を壊し、新しいモノを創ることである

  • セブン・イレブン会長あgどのように考えて経営をしてきたかの本。
    仮説と検証を繰り返し、顧客の目線を徹底するトップがいたら、なかなか業界トップの座は動かないだろう。
    愚直なまでに対面のコミュニケーションにこだわり、上の意志を下までしっかり通していることがやはり強みか。

  • 「おいしい=そのうち飽きるもの」など、鈴木敏文さんの鮮やかな「逆転の発想」集。

  • 小売業に携わっていた人間にとって鈴木敏文氏の考え方は
    常に勉強になります。

    鈴木敏文氏の本から本当に多くのことを学ぶことができました。

  • 過去の経験や世間の常識にとらわれない自由な発想。そして自分の『直観』と『客観』、『仮説』と『検証』言葉で言うのはできますが…。常日頃からの心がけが大事ってことでしょう。過去の経験にとらわれずこちらの都合の良い考え方でなく、客先の欲することを見極めて実践することが相手に喜んでもらえる。建設業界でも同じこと。今までは流通、小売業界とは事情が違うと勝手に逃げていたかも知れない。

  • セブンイレブンの成功の秘訣、またその裏に隠された顧客の心理を追求し、また「検証・仮説」の重要性を問う一冊である。どこまで顧客視点を追求し、情報の裏に隠された顧客心理、また潜在的ニーズへの認識、またそれを実行に移し成果をあげるかの重要性が、著鈴木敏文さんの金言と共に説明されている。
    個人的に鈴木さんの信念、信条、考え方等には読む価値があるが、しかしやや著者の思考次元が低く、2人の間に思考レベルの乖離が発生し、本来の鈴木さんの真髄が本書に現れていないのではないかとの懸念・心配が個人的にある。

  • 統計学と心理学。大学時代にも興味を持ったテーマについてセブンイレブンの経営視点からその考え方を知ることができた。小売や流通業に興味があるのは統計や心理的な要素でマーケティングをすることができるからなのだと思う。実際に仕事としてやるのは大変そうだけど、興味の対象として見ていくのは面白い。

  • 私のバイブル。

  • Kodama's review
    2002年に出版されたものが、文庫になりました。鈴木敏さんのお考えは、本当に勉強になります。たっくさん、線を引かせてもらいました。
    (06.3.28)
    お勧め度
    ★★★★☆

  • 仕事で

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著者プロフィール

ジャーナリスト
1952年生まれ。東京大学教養学部教養学科中退後、フリージャーナリストとして経済・経営分野を中心に執筆。企業組織経営・人材マネジメントに詳しい。

「2020年 『共感経営 「物語り戦略」で輝く現場』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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