昨日までの世界(上) 文明の源流と人類の未来 (日経ビジネス人文庫)

  • 日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532198282

作品紹介・あらすじ

「現代社会を深く考えるための必読書」――養老孟司
「ダイアモンド文明論の決定版的集大成」――福岡伸一

■600万年におよぶ人類の進化の歴史のなかで、国家が成立し、文字が出現したのはわずか5400年前のことであり、狩猟採集社会が農耕社会に移行したのもわずか1万1000年前のことである。長大な人類史から考えればこの時間はほんの一瞬にすぎない。では、それ以前の社会、つまり「昨日までの世界」の人類は何をしてきたのだろうか?
■領土問題、戦争、子育て、高齢者介護、宗教、多言語教育……人類が数万年にわたり実践してきた問題解決法とは何か? ピュリツァー賞受賞の世界的研究者が、身近なテーマから人類史の壮大な謎を解き明かす。全米大ベストセラーの超話題作、ついに文庫化!

「本書はひとりひとりの人生や生活、日々の選択といった個人の興味関心に直接関係するテーマを扱っており、私の著作のなかではもっとも生活に身近な内容になっている」(「日本語版への序文」より)

感想・レビュー・書評

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  • 著者の本は、豊富な事例をもとに細かく書かれているので内容が濃く、とても面白いです。

    この本は、昨日までの世界(伝統的国家)と現代的社会とを多角的に比較、分析しています。

    どちらが良い悪いというのではなく、互いの違いを明らかにし、現代社会に役立てるものはないか❕という視点で書かれており、とても参考になります。

    ぜひぜひ読んでみてください。

  • ジャレドさん、3冊目。今回は、現代で確認できた伝統的社会の生活における習慣や文化から、つい昨日までの人間の過ごし方を振り返り、今の生活との違いをみる。

    始めの舞台はニューギニア。著者が研究のために訪れていた場所だ。そこでは、少数の血縁的な集団が集まっています。明確な領土はなく、行き来はできるものの、それぞれにルールがあってそれを犯して侵入すると攻撃の対象となる。この小規模血縁集団の人にとって、見知らぬ人は敵である。今の世の中で、見知らぬ人に会うことは脅威ではない。この後、西洋人とニューギニア人のファーストコンタクトの話しになり、取り引きにおける現代人との違いを考察する。そこはあまり興味をそそられなかったので、割愛します。。。

    次に子供の死に対する意識について書いています。パプアニューギニアで小さな子供が飛び出しで車にぶつかり亡くなってしまった。しかもこの小さな子供と運転手は敵対している部族同士だった。もし、ここで運転手が車を降りて何かすれば、周りにいる子供と同じ部族の人々に殺される心配があるので、こうしたケースでは車を降りずにそのまま立ち去るそうだ。そして後日、賠償の相談に行く。ニューギニアではこうしたことが起こると、係争前の人間関係を回復することに主眼がおかれる。損なわれた人間関係を回復するときに最も重要な要素は、相手側に敬意を払い、相手側が精神的に被害を被った事実を認めること。この要件を満たすことで、相手側が当然感じているだろう怒りを鎮めて以前の人間関係を回復することができる。そのことを確約するために賠償金が支払われることになる。ニューギニアでは自分の周辺との人間関係が死ぬまで続く。一番おそれることは人間関係が崩壊すること。個人の利得が優先されないのだ。

    現代の国家社会において、紛争解決は国家に属する人々が紛争があっても私的な暴力に走らないようにするための仕組みである。なので、当事者の精神的苦痛を無くすことが目的にはなっていない。国家のルールで犯罪者が裁かれることにより、自分が暴力をふるわなくても国家権力がその犯人をこらしめてくれるので自分が手を下さなくてもいいと思い込ませることである。

    次に戦争の話しが書かれているがあまり頭に残らなかったので割愛する。。。

    その次は子供と高齢者だ。
    小規模社会では、子供は産まれた後、欲するままに母乳を与えられるようだ。今日のように母親の都合で母乳を与えるものとは異なっている。また、子供の母親以外の親族が良く面倒をみるようだ。これも核家族化が進んだ現代ではほとんどないことだ。

    高齢者は社会のお荷物とみられていた小規模社会では遺棄されたりすることがあったようだ。狩猟採集を行う民族では役に立たないと思われていたのだろう。ところが、高齢者を敬う民族もいる。たいていそうした民族の高齢者は何かしらで若い世代の役に立っている。例えば孫の子守をするなど。しかしながら、そのような小規模社会では、そもそも高齢まで生きている人が稀である。なので、今日の社会のように高齢者がおびただしく生きえている中で、社会の役に立つと認めてもらうことは難しいだろう。アメリカなどでは高齢者より若者を礼賛する文化があるが、中国、日本、韓国などは儒教の教えもあり、高齢者を敬う精神が文化的に醸造されている。

    以下、下巻に続く。。。

  • 個人的にはジャレッドダイヤモンド4作目。面白い。今回は、伝統的社会と現代社会を比較しながら、その相違点や類似点を探していき、最終的に現代社会の課題解決の提言をしていく作品になっている。伝統的社会があまりに現代と違いすぎる部分があり、ある意味自分達の価値観も現代社会の仕組みの中で出来上がっていったものだと気づかされる。
    以下、個人的に面白いと思ったこと。
    ・現代は車や電車、飛行機などで遠方に行けるし、街中で見かける人はほとんど見知らぬ人。だけど伝統的社会の人々は人生をほとんど自分たちの周りで送り、見知らぬ人と会う機会も少ない。それ故の問題解決の仕方、争いの仕方などがある。
    ・現代は子供の行動は教育と遊びで完全に分けられているが、伝統的社会では子供は集団の中で、遊びながら学んでいくことが多い。そしてその利点もある。
    ・文字がない伝統的社会において、老人たちは歴史や知識の伝達者として重要な役割を果たしている。

  • 赤ちゃんがいるので、とりあえず第5章の子育てのみ。素晴らしく面白く興味深い。この著者の本ははずれなしです。

    スリングなどで常に抱っこ(スキンシップ)、泣いたら10秒以内に誰かが反応、一緒に寝る、集団で育てる、何をしても個人の自由(適者生存)、異年齢の遊び集団、大人の模倣の遊び、勝敗を競わない

    フランスの子育ての本を読んだばかりで、色々違う点も面白かった。
    今日で0歳四ヶ月だけれど、狩猟採集民の子育てと、フランスなどの現代的な子育ての、良いところどりをできたら嬉しいし楽しい。

  •  二度目だからなんとかなるだろうと再チャレンジしたが、やはり無理だった。話がしつこすぎて私の脳細胞と合わない。というより、彼の脳細胞に私がついていけないのだ。
     最初に読んだ時も我慢して最後まで読んだ。アンダーラインが引いてあるのに、全く記憶がない。丁寧にノートを取りながら読み進めていたが、無理だ。私の興味はジャレド・ダイヤモンドと全く異なる。
    「銃・病原菌・鉄」はとても面白かった。「人類と危機」も最高に良かった。同じ著者なのに「昨日までの世界」と「第三のチンパンジー」は最後まで読めない。再読で中に入っていけないのだからもうやめよう!時間が勿体ない。

  • 読みにくい

  • 著者が著者だけに期待したんだが、とにかくリズムが悪く読みづらいので、テーマに引き込まれない。戦争・紛争・係争・子育てと、面白い主題なんだから、もっと生き生きダイナミックに展開できそうなもんだけどな。上巻3分の2で挫折。

  • 人類学の碩学が取り組んだ意欲作。
    高度先進工業社会が置いてけぼりにした「昨日までの世界」=伝統的社会こと未開文化にある風習を観察することで、現代の課題解決を探る。
    ジャレド・ダイアモンドは、タヒチに憧れたゴーギャンやアフリカの情熱に魅せられたピカソのように、忘れられた文明の底力に取りつかれたのだろう。

    子育て、高齢化社会。社会保障のモデルを先進国に探す前に、考えるべきことはあるのではないか。

  • 『銃・病原菌・鉄』で有名なジャレドダイヤモンドの著作。どちらかと言えば文化人類学寄りの内容から現代社会で当たり前と思ってしまっていることへの課題提起をされている。
    上巻は訴訟や戦争の話や子供、高齢者に関するテーマが主だったが、とりわけ高齢者の話は現世に残る(姥捨山のような)リアルなエピソードが結構衝撃的だった…読めば背景は納得できるが…

    おそらく著者が指摘されている点、課題については今後も考えなければならない点も多い。

  • 背ラベル:389-ダ-1

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著者プロフィール

1937年生まれ。カリフォルニア大学ロサンゼルス校。専門は進化生物学、生理学、生物地理学。1961年にケンブリッジ大学でPh.D.取得。著書に『銃・病原菌・鉄:一万三〇〇〇年にわたる人類史の謎』でピュリッツァー賞。『文明崩壊:滅亡と存続の命運をわけるもの』(以上、草思社)など著書多数。

「2018年 『歴史は実験できるのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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