昨日までの世界(上) 文明の源流と人類の未来 (日経ビジネス人文庫)
- 日本経済新聞出版 (2017年8月2日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (512ページ)
- / ISBN・EAN: 9784532198282
感想・レビュー・書評
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『銃・病原菌・鉄』で有名なジャレドダイヤモンドの著作。どちらかと言えば文化人類学寄りの内容から現代社会で当たり前と思ってしまっていることへの課題提起をされている。
上巻は訴訟や戦争の話や子供、高齢者に関するテーマが主だったが、とりわけ高齢者の話は現世に残る(姥捨山のような)リアルなエピソードが結構衝撃的だった…読めば背景は納得できるが…
おそらく著者が指摘されている点、課題については今後も考えなければならない点も多い。 -
我々は1万1千年をかけて現代文明を醸成してきたが、「現代文明」を1万1千年前と変わらず過ごす人々がおり我々の「現代文明」に遭遇したとすれば何を感じるか、非常に興味深い考察がこの本に書かれている。「もしタイムマシンがあったら」というSF古典が実際にニューギニア高地で起こり、そこから伝統的社会と国家社会の比較が可能になったのは事実は小説よりも奇なり。
『銃・病原菌・鉄』同様、ジャレド氏の洞察は極めて優れたものだが、ニューギニア高地を基にした小規模伝統的社会と国家社会の対比は千載一遇の(そして二度とない)機会であったことが分かる。上巻は領土権、戦争含め調停制度、子どもや高齢者の扱いについて分析しており、国家社会の「現代文明」に生きる我々からすると特に嬰児殺しや高齢者遺棄など残酷に思うがそれは生存と秩序を実利で兼ね合わせた結果だということが理解できる。
国家社会の「現代文明」と伝統的社会の「現代文明」は異なれど、冒頭の空港の風景は人間の環境への適応性を感じさせる一幕である。