戦後経済史: 私たちはどこで間違えたのか

著者 :
  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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本棚登録 : 103
感想 : 8
  • Amazon.co.jp ・本 (401ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532198947

作品紹介・あらすじ

●「1940年体制史観」を打ち出したことでも知られる野口悠紀雄氏が、2015年6月に東洋経済新報社より刊行した『戦後経済史』を文庫化したものです。
●本書では、1940年生まれの著者自身が経験した東京大空襲の際の地下防空壕への避難の場面から始まり、リーマンショック後までの70年にわたる日本経済の移り変わりが、さまざまな事件や出来事、そして著者自身のパーソナル・ヒストリーを通じて、絵物語のように展開されます。登場人物も大物官僚はじめ、ビートルズ、三島由紀夫、吉田茂、田中角栄、三重野康等々とカラフルで、歴史読み物として楽しめる内容になっています。
●本書の特色は、「われわれはいま、どこにいるのか」を明らかにすることをねらいに書かれていることです。何が起こったのかを順序立てて記述する一般的な歴史書とは異なります。現代に大きな影響を及ぼした事件、事象を中心に、その事実、背景を読み解くというユニークなスタイルをとっています。そのために著者が重視した視点が二つあります。
●一つは、「地上の視点」=「犬の目」を通して見ることで、「犬の目」となった著者の体験を通じて、読者は、物語として、日本の経済の変化を面白く読めるようになっています。もう一つが「空からの視点」=「鳥の目」である「1940年体制史観」を通して日本の社会と経済の変遷をとらえることです。そこからは、著者の国家への不信感、さまざまな出来事を通じての違和感が浮かび上がってきます。
●「1940年体制史観」とは、戦時期に成立した国家総動員体制が戦後にも引き継がれ、高度成長をもたらしたとする著者独自の見立てで、日本経済の見方に大きな衝撃を与えたものです。著者によれば、この国家主導の体制で石油危機も乗り切ったが、その後もはやその体制が必要でなくなったにもかかわらず維持されたことでバブル経済が生じたのであり、安倍内閣の政策(アベノミクス)は「戦後レジームへの回帰」だと位置づけられます。
●このような著者独自の視点は、平成時代が終わって昭和時代が遠景に退き、グローバルな視点から戦後日本が客観的に評価されるようになる今後も注目され続けることになるでしょう。

感想・レビュー・書評

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  • 第1章 戦時体制が戦後に生き残る
    第2章 なぜ高度成長ができたか?
    第3章 企業一家が石油ショックに勝った
    第4章 金ぴかの80年代
    第5章 バブルも40年体制も崩壊した
    第6章 世界は日本を置き去りにして進んだ

    戦後日本の繁栄は40年代に築かれた国家総動員体制であるという歴史認識のもと、高度成長時代には機能した40年体制が、80年代以降金融や情報産業が発展し水平分業が主流となる中で機能不全に陥る一方、古き良き謙虚に勤勉する美徳がJapan as No. 1の時代に失われたことが今日の日本の停滞感の元凶であるというのが本書の主張である。幼少期に戦争を体験し、戦後日本の歩みと軌を一にして官僚・経済学者としてキャリアを歩んだ筆者の経験と共に執筆されており、迫力がある作品といえる。

  • 史観について、非常にわかり良かった。
    ・高度経済成長の基盤は戦時中1940年に完成していた。戦後のGHQの介入で日本は変わったのではない
    ・1980年代のバブルは、1940年体制が無用の長物になっていたにも関わらず、それに金融面含め固執した結果起こった

  • 私たちはどこで間違えたのか
    https://www.shinchosha.co.jp/book/603596/ ,
    https://www.noguchi.co.jp/

  • とても面白かったし、著者の持論については(本人も認める通り)一般的な戦後の経済史観とは異なるものの、強い説得力を感じた。

    戦後の復興から経済成長を経て世界的な経済大国になったものの、バブル後の長い不景気を経験する日本。依然立ち直れない現状は日本自身が抱える根本的かつ構造的な問題点に由来すると説く。

    戦時中、総力戦のために整えられた産業体制が実際には戦後も続き(その体制が高度経済成長を支えた重工業、製造業等に何より上手く適用し得るものだったことも相まって)、長年の日本経済に対する認識として醸成されたという見解は、日本人がともすれば半ば硬直的に前例踏襲に拘ったりや既存ルールに固執してしまう問題の1つの答えを与えてくれたように思う。

    また、バブルの異常な状態について、真面目に付加価値を出そうと勤勉に働く人が馬鹿を見る状態が長く続くはずはないという考えや、今の日本の産業について、国際市場の変化に向き合えず過去の幻想に縛られているという指摘には、ビジネスパーソンという立場で社会・産業の一端を僅少ながらも担っている者としては、「そうならないように・・」と身が引き締まる思いをもった。


    以下、参考になった点のメモ。
    ◆一般の戦後史観:戦後の民主主義が経済の復興をもたらし、戦後に誕生した新しい企業が高度経済を実現した。
    ・1945~59「戦後民主主義と平和国家による日本の再建期」
    ・集中排除法→企業の民主化。ソニー、ホンダ等
    ・労働組合の成長→企業経営への影響増、組合・経営両面からの民主化
    ・占領軍(ニューディール派)による推進
    ・その後のニューディール派からのGHQの右旋回(共産主義に対する防波堤としての役割)→産業力の強化

    ◆「1940年体制史観」:戦時期に作られた国家総動員体制が戦後経済の復興をもたらし、戦時期に成長した企業が高度成長を実現した。(その後の石油ショックでも重要な役割を果たす)
    ・GHQは日本経済について無知
    ・日本のテクノクラートが占領軍の権威を利用して改革を実現。
    ・農地改革、企業別労働組合も戦時体制下で準備されたもの。
    ・戦後復興期は、市場の価格メカニズムによる資金配分を許さず、政策的見地から資金配分をしたことで生産力が回復。
    ・これらは戦時期の総力戦に向けた経済システムだった。
    ・戦争遂行のための経済システムが戦後で目的変更(軍事力→経済力・生産能力の増強)


    ◆高度成長期に生じた課題
    ・大企業は中小企業を下請けとして低賃金をコスト面で利用。景気悪化の際のクッションに利用
    ・1957年 経済白書「我が国雇用構造においては一方に近代的大企業、他方に前近代的な労使関係にたつ小企業及び家族経営による零細企業と農業が両極に対立し、中間の比重が著しく少ない」

    ◆1980年後半~1990年代
    ・貿易自由化、資本自由化、石油価格の高騰→挙国一致体制ではねのける
    ・石油ショックを含め、1980後半から90年代にかけて世界経済の基本的な条件が転換していく際に、戦時的な体制への無条件の礼賛が、日本経済が大きな環境変化に適切に対応できなかった原因を作った。

    ◆バブルの特異性・異常
    ・転換社債:株式に転換できる権利付き社債。
    →投資家にとっては株価が上がれば儲かるメリット。その価値で普通社債より利率が低い。
    →企業は低い金利負担で資金調達が可能
    →転換社債で調達した資金を大口定期預金に預け入れて、信用力のある企業は高い定期金利で利ザヤを稼ぐ。

    ・土地の買い占め
    「日本の経済成長で東京がアジアの金融中心地になる」という期待
    →東京中心部にオフィスを持ちたい企業が集中
    →86年ごろ、「地上げ」「土地ころがし」転売の繰り返しで地価が暴騰

    ◆バブルの後遺症
    ・円安信仰
    「円さえ安くなれば日本が繁栄した昔に戻る」
    →日本の製造業が環境変化に対応できず、一時的な利益回復を求める
    *著者にとってみれば、国際分業が進む中で「世界の亀山モデル」は違和感でしかなかった

    ・高齢化社会に対する備えのなさ
    →「金融緩和をして円安になればつらい思いをしなくても日本経済が良くなる」という幻想
    →女性の高齢者の労働参加を実現するには政策的な裏付けが必要だがそういったものはない。

  • NY2b

  • 官僚として学者として第一線で長年活躍してきた著者だからこそ書けた本。東京大空襲を生き延びたことが人生の原点であるということが印象的だった。昭和元禄と呼ばれる高度経済成長の黄金時代、オイルショック、金ピカの80年代、バブル崩壊と著者の人生史とともに歩んできた日本経済のサイクルを味わえる読み応えのある一冊だった。

  • 戦時体制の継続との観点から歴史を再構成する前半から、後半は筆者自身の人生も絡めた語りの要素が強くなっていく。戦時体制と金融構造については、統計や欧州との比較など分析も欲しかった。他の本に出ているのかな。

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著者プロフィール

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授などを経て、2005年4月より早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。著書は、『情報の経済理論』(東洋経済新報社、1974年、日経経済図書文化賞)、『財政危機の構造』(東洋経済新報社、1980年、サントリー学芸賞)、『土地の経済学』(日本経済新聞社、1989年、東京海上各務財団優秀図書賞、不動産学会賞)、『バブルの経済学』(日本経済新聞社、1992年、吉野作造賞)、『リモート経済の衝撃』(ビジネス社)等多数。

「2022年 『円安と補助金で自壊する日本』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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