「理工系離れ」が経済力を奪う

著者 :
  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (220ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532260408

作品紹介・あらすじ

技術力があれば日本(経済)は生き残ることができる。その逆もまた真である。そのことに異を唱える人は少ないだろう。では、それを支えるエンジニアの存在は正当に評価されてきただろうか?(金融)経済学の勃興と理工学の地位低下の現実から、我々が直面する問題の本質を描く。

感想・レビュー・書評

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  • ・進振り オペレーションズ・リサーチ(線形計画法)
    ・金融自由化によって金融機関が理工系学生を獲得し出す
    ・大学のレジャーランド化→独立法人化

    過激かつ過度?な経済学部叩き。少し古い本なので、きっと著者は流行りの学際学部など大嫌いだろう。人文科学についてはどう感じているか知りたい。

  • 経済
    社会
    サイエンス

  • 理工系の著者から視た理工系離れに対する嘆きと、理工系の経済学への流出と工学部の実態と課題提起がされています。

    確かに公務員を始めとした「文高理低」の傾向があります。

    自分も工学系でしたから、そのように主張したいお気持ちはよく理解できます。

  •  久々に面白い本を読んだ。読書の楽しみの一つには「知らない世界を知る」ことがあるが、本書で取り扱う「学問の世界」の裏側と本音は実に興味深い。
     現実世界にも大きな影響を持つ「大学」という「象牙の塔」が現在どのようなものなのかがよくわかる本書は、必読の一書だと思った。

  • 内容は題名を表現しているかは分からないが、文高理低の風習はあるかもしれないとは思った。あとがきに書いてある言葉に著者の魂を感じる。僕は理でも文でも納得いくぐらい働いて幸せになれる世ならいいとは思う

  • 今は文系の部署で仕事をしていますが、理工系を卒業した身として、大学での勉学を目指す若い人たちには、できる限り理系を目指して欲しいと思っています。とは言うものの、最終的に昇進する人も文系が多く、生涯給料も文系のほうがかなり多いという現実の前では、理工系離れが進んでしまうのも仕方が無いのかもしれません。

    そのような中で、日本が経済大国になったのは理系の人間が頑張ってきたという趣旨の本は読んでいて気持ちよかったです。

    以下は気になったポイントです。

    ・最近の東大理科一類の新振り(2008年度)では、かつて花形であった電気・電子工学が定員割れし、機械・化学・土木も同様、そして長らく不人気であった、船舶・原子力・精密・資源を改組して作られた「システム創成学科」の人気が上がった(p50)

    ・理系の教授会は時間通りに始まるが、経済学部では時間通りに始まることはない(p55)

    ・理系の学生のエースが経済学部に移る理由として、1)文高理低の構図(理系は文系に比較して不利)、2)新聞雑誌で「製造業立国は古い」とされていること、がある(p82)

    ・理系の人が経営者になるためには、文系知識を吸収して「文転」することが必要である(p72)

    ・最近の理系の考え方が変化したかもしれないという事件として、1)青色発光ダイオード事件、2)2003年発行の理系白書、がある(p78)

    ・専門以外の本を読まない大多数のエンジニアは、毎日自らの専門に打ち込んでいて、バブルに浮かれることなく製造業で働いている(p87)

    ・日本の大学レベルは低いと言われるが、理工系大学は遜色ない、足りないのは、研究費とスペースである(p174)

    ・ハーバード大学は、3.5兆円の金融資産をもち、その運用益のなかから毎年800億円を運営資金として大学に提供している、その額は東工大の2倍の予算である(p181)

    ・日本では自分の出身大学に愛着を持つ人はアメリカよりずっと少ない、例外は慶応、早稲田、一橋大学など(p185)

    ・東大、東工大では募金で目標の半額しか集まらなかったが、アメリカでは目標に対して6割増しの寄付が集まる(p210)

  • 金融どういうものか、どのような仕組みか それがどのように数学や統計と分析に関わりがあるのかどこの研究が有名かロジットモデルはどのようにして扱われるかという簡単な認識をさせてくれます。

  • うーんイマイチ結論で何が言いたいのかわからなかったな、学生の理工系離れを東大理一の例を扱って説明しているのだが結局具体的な今後何をすべきなのか?という主張が弱い気がした。

  • 流れ
    理工学離れ

    工学部と経済学部の違い

    工学部理財工学科という構想

    保守化する工学部


    『89年春には、東工大卒業生の29.8%が、
    そして東京大学機械系三学科では約半数の学生が、
    金融機関(銀行・証券・保険)に就職した』(P. 10)
    理系は報われない。
    そういう情報が理系学生の中で流れていました。
    それは、、文系に比べて、理系は生涯収入が5000万円も低いという
    調査結果が報告されていたからです。
    (毎日新聞編「理系白書」参照)
    http://www.amazon.co.jp/gp/product/4062117118?ie=UTF8&tag=ezweb443-22&linkCode=xm2&camp=247&creativeASIN=4062117118

    そのために、理系学生の中には、
    給与の高さに惹かれて、金融やコンサルタントなどの分野に
    多くの学生が流れていったのです。

    この時、工学分野以外に流れた学生が、
    いわゆる落ちこぼれだったなら、誰も気に留めなかったのでしょうが、
    金融を志した学生の多くが、優秀な成績を修めていたそうです。
    そのためにメーカーは危機感が出たのでしょう。


    『”きけんで、きつくて、きたない工学部”と、
    ”回数券を余らせても卒業できる経済学部”』(P. 13)
    日本は技術立国ですが、それは理系学部で学生がみっちりしごかれてるからです。
    学生は遊んでいる、という人がいますが、
    その人は、まず間違いなく理系じゃないでしょう。
    理系学部は本当に忙しいです。
    一部にそうでないところもあるかもしれませんが、
    全体的にどこも忙しく、毎日が実験、レポート、テストで大変です。
    それなのに、文系よりも生涯収入が少ないと言われたら、
    文転しようかなぁ、なんて考えたりもしますよね。
    総合大学の理系学生なら経済学部の学生の生活を横目で見てると思いますが、
    まず学力で負ける気はしないでしょう。
    それなら、文系分野に就職して文系出身者と出世争いしてみようかな、
    と思っても不思議ではありません。

    私の友人は、あいつらが4年で勉強してることを、
    俺なら一年でやってやる、と豪語してました。
    でも、それは彼が自信過剰でもなんでもなく、
    実際に文転したら優秀な彼なら本当にやってしまうでしょう。


    『経済学者は何事でも経済学(だけ)で片付くと思っている』(P. 67)
    これは著者による批判ではなく、シカゴ大学のアラン氏による批判です。
    理系は自分の分野が、他の分野で必ずしも通じるとは考えていません。
    それは状況が異なれば、それに従ってルールが変わることを熟知しているからです。
    同じ事象の研究でも、ちょっとした条件の違いで
    モデルが異なり、したがって適用する式が変わることがよくあります。
    ですから、他の分野では、それはもう相当違っていると考えるべきで、
    下手に口を出すと、恥をかくことになるので
    理系の人は、自分の専門以外のことに関して寡黙であることが多いです。

    しかし、経済学者は何にでも口を出してくるといいます。
    私の知り合いの経済学部出身者には、
    幸いにしてそんな出しゃばりな人はいませんが、
    米国のアレン氏が批判するくらいですから、
    やはり頻繁に口出ししてくる例が多数あるのでしょう。


    『理系の人が経営者になるためには、文系知識を吸収して
    「文転」することが必要なのである』(P. 72)
    全般的にものを見渡せて、経営もできるとなると、
    さっきの私の友人ではありませんが、
    文系に理系科目を履修させるよりも、
    理系に文系科目を履修させた方が絶対に早いです。

    『経済学部には、数学や計算機に強い学生は少ない。
    その上彼らは、地下鉄の回数券を余らせてしまうほど不勉強だから、
    金融技術の使い手にはなり得ない。
    機械系学生の半数が金融機関に就職する事態が発生したのは、
    これが原因である』(P. 96)
    きちんと履修しているなら文系理系関係なく問題はないのでしょうが、
    数学が苦手で文系を選択した学生が、何故か経済学部にいたりします。
    (皆さんがご存じのとおり、欧米では経済学部は理系学部です。)
    それなのに数学を勉強せずに遊んでしまって
    専門分野の経済がろくに使い物にならない学生も多数いると聞きます。
    これはもう、一部のきちんと勉強している文系学生だけでは、
    入社枠の定員が割れてしまうのは確実です。
    それなら優秀な理系学生を引きぬいて、一年で経済を叩き込もう、と
    私が金融関係の人事担当社員であっても、そう思ってリクルートしますね。

    『理財工学科構想』(P. 130)
    『金融機関は金融技術の担い手を求めている。
    そういう人材を教育できるのは、理工系大学だけである』(P. 131)
    海外にいけば、経済学部が
    理系に分類されているのにお気づきになられると思います。
    実は、経済学部が文系に属しているのは、
    主要国では、日本と中国くらいなものらしいのです。
    ゆえに、金融機関が理系学生を欲しがるのも、
    金融技術の担い手を輩出できるのは理工系大学のみだ、という著者の主張も
    世界基準で見たら正しいと言えるのです。


    『60年代のように、工学部があまりに多くの才能を吸引することには問題が多い。
    その一方で、”優秀なエンジニアの卵”の工学部離れは、
    絶対に防がなくてはならない』(P. 192)

    日本は技術立国ですから、理系離れが進むと人材に厚みが無くなって
    早晩、先進国の座から滑り落ちることになると著者は心配しています。
    私は、研究に関しては、学生の質はそれほど問題にはならないと思います。
    というのも、ものづくりに携わっている人たちの全てが
    必ずしも大学を出ているわけではないからです。
    (岡野雅行氏著「人生は勉強より「世渡り力」だ!」参照)
    http://www.amazon.co.jp/gp/product/4413042042?ie=UTF8&tag=ezweb443-22&linkCode=xm2&camp=247&creativeASIN=4413042042

    もちろん論理を追及する人もいなくてはいけませんが、
    そういう人ばかりでなくても良いのです。
    重要な点は、理系に一定数の人が集まるかどうか、です。
    優秀な技術者がみんな東大卒レベルかというとそんなことはないのです。
    それよりも、理系に必要なのは、熱意と根性なのです。
    逆に、熱意と根性がないなら、どんなに入試の成績が良くても
    良い技術者や研究者にはなれないと思います。
    だから、学歴のみを基準に「優秀な」学生を金融に取られたくない、
    と頑なに拒絶するよりも、
    優秀な人には、各分野に散らばってもらって、
    その業界をリードしてもらった方が
    日本のためになるのではないでしょうか。


    『経済評論家は、
    インドや中国から優秀な技術者を連れてくればいいと言うかもしれない。
    それも一つのやり方だろう。
    しかしはっきりしているのは、これではアメリカには勝てないということだ。
    トップクラスの技術者は、日本ではなくアメリカに流れるからだ』(P. 219)
    アメリカには、世界中から優秀な技術者が集まります。
    だから、アメリカ人の大半が勉強してなくても、
    あれだけの工業力を有していられるのです。
    しかし、著者の言うとおり、日本には海外から人が集まりません。
    それは、アメリカのように技術者が
    相当の対価を受け取ることができないからです。
    青色発光ダイオードを開発した中村修二氏を見たら、
    それが分かると思います。
    中村氏は、米国で「スレイブ(奴隷)ナカムラ」と言われています。
    それは、米国で開発していたなら数百億の富を手にしていたであろうに、
    日本で開発した当時は報奨金の二万円しかもらえなていなかったからです。
    (その後、法廷で職務発明の相当の対価として
    日亜化学に6億円の支払い命令がでました)
    どうせ同じことするなら、経済的に裕福になれる方がいいに決まってます。
    だから、海外の優秀な人材はアメリカを目指して日本にはきません。
    ゆえに、日本は自国で人材を育てるしかありません。

    ところが、実は日本の技術者もアメリカなどにすでに流出しています。
    (世界情勢を読む会編「07年版 タブーの世界地図帳」参照)


    このまま、日本が技術者に相当の対価を払わない状況が続けば、
    どうせ工場も海外に移転してるし、研究機関も・・・、
    となって、日本がますます空洞化していくことでしょう。
    危惧するとすれば、そこです。
    理系に行くと損をする、そう思われているから
    従来のように理系に人がこないのです。
    それが理系離れの主要要因です。
    理数科目が難しいからではありません。
    理数が難しくたって、
    将来高収入が得られるイメージの強い医学部では、
    今でもたくさんの優秀な学生が受験します。
    特許をとることで相当の対価が払われて、
    年収一億円を超えるようなスター研究者、スター技術者が多数現れたら、
    子供たちは理系を目指して一心不乱に勉強すると思うのです。

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著者プロフィール

中大

「1992年 『数理決定法入門』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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