- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784532263720
作品紹介・あらすじ
☆不祥事が起こると必ず言われるのが、「社風、企業文化に問題があった」。では、社風って一体何なんだ? と問われると、なぜか明快に答えにくい。本書は、数多の文献や具体例を紹介しながら、「社風、企業文化」の正体を解き明かし、それが組織にとってどんな影響を与え、未来の企業文化はどうなっていくのかを解説する。
☆「就職」ではなく、「就社」をする日本人にとって、「社風」の影響は非常に強い。他国に比べて、男性中心的、集団主義的、リスク回避的というのは本当なのか。京都、名古屋など、地域によって、さらには業界によって社風に違いはあるのか。イノベーションを生み出す会社と、ブラック企業、不祥事企業は何が違うのか……。
☆多くの実例、また先行研究などを参考にしながら、つかみにくい「社風、企業文化」の真髄に挑む。
感想・レビュー・書評
-
きわめてあいまいな概念でありながら確実に存在する、各企業の「社風・企業文化」――。それは具体的にはどのようなことを指し、経営にどのような影響を与えるのか?
「社風・企業文化」の正体・内実を、著者の経験や既存の文献から解き明かしていこうとした本。本の企画として卓抜だと思う。
引用される文献がたいへん豊富で、〝企業文化について考えるためのブックガイド〟として読むこともできる。
「企業文化に関する実証研究は、文化を数値化することが難しいため、そう多くはない」(202ページ)――そんな一節があるが、著者自身、数値化が難しい企業文化の正体に迫るため、かなり悪戦苦闘している。
したがって、本書を読んでも「なるほど、企業文化とはそういうものか」とスッキリするという感じではない。
むしろ、社風・企業文化について読者それぞれが〝考えるためのヒント〟が集められた本、という印象だ。
そもそも、社風・企業文化というもの自体が、各国の文化、業界の文化、経営者のパーソナリティなどたくさんのパラメータがからむ〝複雑系〟であり、単純な数値化を拒む〝生き物〟のようなものである。
社風・企業文化というと、歴史の長い企業であればあるほど、「長年の間に培われてきたものだから、いまさら変えようがない」と思い込みがちだ。
しかし、著者は〝企業文化は時代の変化に応じて変えられるし、変えなければ生き残れないケースも多い〟と指摘する。ただし、一度できあがった企業文化を変えることは大変な困難を伴う、とも……。
この「企業文化は変えられる」というメッセージこそが、本書の核だろう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
帯は、
-------------------------
御社の「企業文化」は大丈夫?
パワハラ体質、
イノベーション企業、
何が違うのかー―。
-------------------------
これも2018年ごろ買ったんだと思うんですが、
読み始めてからめちゃめちゃ時間がかかりました。苦笑
そしてこのタイトルを選んでいる当時の私の悩みを思い出しました。苦笑
結構、強烈な会社で働いていたと思います。
本書は、いろいろな角度から、
こんな文化、あんな企業、こんな歴史、地域性もあるのでは、というように参考文献や事例を紹介してくれています。
論文というかレポートを読んでいる気分で、
読み進めるのに時間がかかりました。苦笑
結局、「社風=明確な答え」というのは定義されておりませんが(されていたら私の理解不足なので、どなたか教えてください。苦笑)、
会社が掲げる方針や、
誠実だと従業員(働いている側)が思えるか、
社員にどの程度権限を与え、
リーダシップを発揮させるか等々、
時間をかけて定着をはかることが社風となっていく、
という感じかと思います。
私が以前いた会社は、
完全に社長のトップダウン、
社長の理想を実現していくことが社員の役目、
ということが全面に出ていたため、
方々で矛盾が発生していたり、
法令違反では…ということもありました。
会社は利益を上げていく場所というのは理解しますが、
かなり退職者も多く、それもこの本でいくと社風ということになるのかなあと。
業績の良い企業は、
従業員が会社に誠実さがある、と感じている企業だと統計が出ていると本書内に書かれており、
なるほどな、と思いました。 -
企業文化の研究の歴史は知れたが、あまり具体的なことがあんまりわからなくてわたしの目的とはあっていなかったようです。
-
結局、正体は「企業文化」と理解してよいか。
今さらという感じ。
それならば、文中の引用・参考文献を読んだほうがよい。
著者はこれらの文献を読んで、こう考えるのかということが思索のための参考になる。 -
タイトルに期待して読んだが、企業文化についての先行図書の引用の羅列で、学生の論文のようだった。
-
“社風”の正体 植村修一著
学際的分析で「可変論」を説く
2018/7/14付日本経済新聞 朝刊
イノベーションを生み、大きく成長する企業の文化がどのようなものか、誰でも知りたいものだ。一方で、不祥事があるたび、企業文化や組織の体質が問題になる。企業で働く人に「あなたの会社の文化とは?」と聞けば、何らかの答えは返ってくる。しかし、そもそも文化を定義したり、発生の仕組みを解明したりするのは簡単ではない。どうすれば文化を変えられるのかは容易ならざる問題だ。
そのような中で「企業文化とは何か」に迫ろうとするのが本書である。経営学、経済学、心理学、社会学などの学説も参照し、「文化」「風土」を考える材料や語彙、概念を多く提供している。国内外の企業文化の成功、失敗の事例を多彩に取り上げる。
日銀出身で今は大学で教える著者は、実務経験を盛り込みながら、学際的に企業文化を分析しているので、多角的な視点が得られる。例えば、日銀時代に企業に聞き取り調査をしたとき、役員が独りで応える場合と、たくさんの「お付き」を連れてくる場合とがあり、後者は著名な経済団体でよく名前を見るタイプの企業群だったそうだ。企業文化の明らかな違いに触れた生の経験から生まれる観察だろう。
現状への批判精神も旺盛だ。ブラック企業やセクハラ問題を考える際、安易に風土や文化という用語を使うと、責任の所在が曖昧になると懸念する。経営の不作為の言い訳となり、根本的な原因に迫る前に思考停止しているとの主張には説得力がある。大学には経営や機会費用という概念がなく、ガス抜きを目的とした長い会議が横行する、といった指摘もある。
企業文化の多様性を認識し、その重要性について問題意識を深める点で本書は有用だろう。では各企業はどのような文化を目指すべきなのか、どう風土を変えられるのか。この難問には確たる答えは見いだされていない。企業文化をアルゴリズムとして捉えることが提案されているが、これは現状把握の方法論だと考えられる。むしろ本書の意義は、企業文化を固定したものと観念せず、変転する環境に適応して企業文化も変わっていくべきだという「企業文化可変論」を打ち出したところにあるのではないかと思う。
《評》早稲田大学教授
川本 裕子
(日経プレミアシリーズ・850円)
うえむら・しゅういち 56年福岡県生まれ。大分県立芸術文化短大教授。日本銀行勤務を経て現職。