伊勢物語 在原業平 恋と誠

著者 :
  • 日本経済新聞出版
3.36
  • (2)
  • (10)
  • (13)
  • (2)
  • (1)
本棚登録 : 128
感想 : 7
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532264451

作品紹介・あらすじ

千百年前から伊勢物語は読み継がれ、ふるくから在原業平はプレイボーイの代名詞だった。業平の「色好み」とはいったいどういうものなのか――多くの読者を獲得している『小説伊勢物語 業平』の著者が自ら小説に紡ぐうちに浮かび上がってきた「雅」という人間力に迫る!

「英雄、色を好む」ということわざがある。現在ではセクシャルハラスメントになりかねないが、長らく続いた男尊女卑の社会では、それをよしとしてきたことを表すフレーズとも言える。英雄ではないにしても在原業平もしばしばこの文脈でプレイボーイの代名詞として人々の口の端にのぼってきた。しかし、業平の「色好み」は単に女性との性愛に執着することとは違うのではないか――見えてきたのは、現代にも通じる豊かな人間関係を構築できる能力だった。そして「雅」とはその能力に裏打ちされた人間的な余裕だとも。社会が多様性を認めることを人々に求める現代人にこそ、その優れたコミュニケーション力を、業平から学ぶところは大きい。
伊勢物語は恋愛の教科書ともしばしば言われる。つまるところ、男はいい女に育てられ、成長した男がいい女を育てる、それも思いを歌に詠むことによって。それゆえに言葉のコミュニケーション力の高さが求められる。その能力は恋愛以外の人生も豊かにするものになるだろう。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 2020/12/22 読了
    業平もだけど、高子、源融の生き様もカッコいい。

    p15 思うに任せぬことの多かった生涯を、思うに任せぬことをも楽しみながら生き抜いた人
    この境地達したい!

    そして、雅について書かれた箇所、
    余裕のある性格、主張の違いに余裕を置いておく、これは人付き合いにおいて、大事なことだと思う。

    P27
    権力、物質の恵みを失った時人は純粋になれ、真の自分を知り、いのちの限りを知る。そこから見える景色は、権力の中にいたときより、いとおしく美しいものになる。

  • ●在原業平。平安のPLAYBOY?
    ●伊勢物語は平安時代初期に成立した歌物語です。歌物語とは、歌それぞれの前後に、その歌が読まれた状況を短く説明する言葉書きが記されていますが、あくまで主役は歌なのです。
    ● 125章段からなる現行の「伊勢物語」は、13世紀に藤原定家が書き写しまとめたもの。「むかし男在りけり」と書き出される章段が多いことから、この男は在原業平だと考えられていますが、確証は無い。
    ●業平は桓武天皇の直系。薬子の変により、皇統が嵯峨天皇の血筋へと移り、父は臣籍降下。やがて天皇の直系男子ではない外戚として権力を伸ばしていく藤原氏への複雑な思いは、屈折したものになったに違いない。
    ●春日野の姉妹。西の京の女。五条の方。蛍の方。紫苑の方。和琴の方。
    ●業平が生涯で最も愛した女性が「藤原高子」

  • 小説を読んだ数ヶ月後、こちらの本を読みました(図書館の順番待ち)。正直、小説の方が面白く、この解説はあまり読まなくても小説でかなり伝わっていると思いましたが、高子のあたりでは、小説を読んでいた時のワクワク感が蘇ってきました。

    こちらを先に読み、作者の人物観察を理解した上で、それが小説ではどのように表現されているかを味わう、というような読み方が好きな方には良いかもしれません。

  • 小説の補足的なものというので後に読みました。物語にそって人物でまとめられた構成になっています。時代背景など織り交ぜ、物語をより理解が深められる解説をされています。一人の人物の生涯を通して和歌(恋)に情熱を注いだ遍歴が美しく描かれていたんだなぁと思う。昔から読み継がれていただけのことはある。物語としては良いが実際に人物で見ていくと、綺麗事ではない複雑な気持ちが沸き上がってきます。それぞれの人物の中で幸せってどこにあるんだろうかと考えてしまいます。

  • まだまだ不勉強だなーと気づく。

  • 小説伊勢物語 業平の追補本。小説を先に読むか、こちらの追補本を先に読むか。いずれにせよ、業平の女性に対するピュアな愛情や、天才的な歌人としての才能に感銘を受ける。

  • 本屋さんのコーナーに小説伊勢物語 業平と並んであったので手をとったのがきっかけ。
    小説の登場人物の設定を読んでみてからにしようと本書から。

    高子、恬子は当時の女性としてはとんでもない人だったんでしょうね。
    高子との関係性が志を共有していく流れ、
    恬子斎王との流れは
    小説で読んでみたいと思うぐらいステキなお二人。

    限られた和歌の余白、古の歌にかけて本心を読み取る想像力に日本人の感性・美意識はSNS時代の今だからこそ大切にしたいと思う。

    小説伊勢物語 業平、読んでみたい一冊になりました。

全7件中 1 - 7件を表示

著者プロフィール

作家
1946年山口県生まれ。80年「その細き道」で作家デビュー。84年「光抱く友よ」で芥川賞、94年『蔦燃』で島清恋愛文学賞、95年『水脈』で女流文学賞、99年『透光の樹』で谷崎潤一郎賞、2006年『HOKKAI』で芸術選奨、10年「トモスイ」で川端康成文学賞。『小説伊勢物語 業平』で20年泉鏡花文学賞、21年毎日芸術賞。著作は多数。17年、日本芸術院会員、18年、文化功労者。

「2023年 『小町はどんな女(ひと)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

髙樹のぶ子の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×