巨象も踊る

制作 : 山岡 洋一  高遠 裕子 
  • 日本経済新聞社
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レビュー : 160
  • Amazon.co.jp ・本 (456ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532310233

作品紹介・あらすじ

IBM奇跡の復活。辣腕経営者がすべてを語る。

感想・レビュー・書評

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  • 以前にブックオフで安く購入したが積読状態になっていたため、今年最初の1冊として先日読了。

    メインフレーム(大型汎用機)事業の成功以来、圧倒的な地位を確立したIBMだが、それがいつしか市場の重要性を忘れさせ、外部から影響を受けない内向きの社風が作り出されていった。
    その後PC市場が急速に拡大。IBMは先駆者ながら心臓部のソフトをマイクロソフト、CPUをインテルに任せてしまったため先駆者利益を得られず、次第に会社は巨額の赤字を計上、泥沼化していった。

    そのような状況でCEOに就任したルイス・ガースナーは「今現在のIBMに最も必要ないもの。それはビジョンだ」とし、実効性の高い戦略と迅速な実行を宣言。
    当時は業界全体に標準規格がなかったため、「断片をまとめて価値に変える」ことこそIBMが果たすべき役割と考え、会社分割はせず、将来のネットワーク社会を見据えた統合ソリューション提供企業を目指し、”巨象”を再び躍らせるために様々な手段を講じていく。

    一番苦労し、時間をかけたのが企業文化の変革とガースナーは語る。
    難しいこと、痛みの伴うことをやらねばならないのであれば迅速に実行すべきであり、具体的に何を、そしてなぜやるのかを周知徹底することが重要。危機に直面している事実を公に認め、社員に認識させる。そのためにはCEOが絶えず社員の前に出て、わかりやすく簡潔でしかも納得できる言葉で話し、組織全体が考え、行動を起こすように促す努力を情熱を持って何年も続けなければならない(幹部や社員に向けての具体的なメール内容が巻末に掲載されている)。

    素晴らしい本であるとは思うが、構成が「戦略」や「企業文化」といった項目に分けられているため、ややストーリーが分断されてしまっている感がある。
    その点で、三枝匡の『戦略プロフェッショナル』『V字回復の経営』、小倉昌男の『小倉昌男 経営学』といった本ほどには引き込まれることはなかった。話の規模が大きすぎるため、読んでいて臨場感があまり沸いてこなかったせいもあるかもしれない。

    しかし、ポーターやハメルらの論理のケーススタディとして、そして「企業文化こそが経営そのもの」というどこか日本的な考え方も含め、大変有用であり教科書になる一冊であると思う。

  • 大企業病をどう克服するかというテーマに近いのかもしれない。今は今で別の問題がありそう

  • 今まで偉大なビジネスマンたちの自伝というものを数多く読んできた。そして彼らのエネルギーや知性に感嘆の声を出していた。著者のガースナーはもちろん知性や実績という面でも申し分ない経営者ではあるがどうやらアルノー、ゴーン、ゲイツといった自分が読んだ自伝の著者たちとは一線を画す経営者だという印象を受けた。崖っぷちのIBMを引き受ける過程での彼の葛藤が、自分は生まれ持ったカリスマ的な経営者ではないという一種の謙虚さのようなものがそれを感じさせる要因だと思う。ガースナーや南場智子といったコンサル経験者は仕事柄、物事を一歩下がってみることを生業としていた為か、自分の立場や会社を客観的にみることに非常に優れている気がする。特にIT企業という物体の特異性について触れる人は今までみたことがない。ゲイツやジョブズ、バルマーたちは要するに奇人変人であり、他の業界にはああいう人たちはいないということを言い切っている。24時間365日仕事の事を考えており市場を支配しなければ気が済まない存在である究極の負けず嫌い、ワーカホリックであると言う。逆にガースナーはそういうタイプではなく自分でもごく普通の経営者だということを十二分に理解している。また本書は経営者らしくあまり脱線することなく必要なことを必要な分だけ書いた無駄のない文章であることが読んでて感じられた。

  • 歴史の生の迫力を感じて面白かった。著者がマッキンゼー出身なのだが、戦略策定だけでは物足りなくなり、現場で実行する側に行きたくなったというのも興味深い。
    特に、マッキンゼーは組織を小さくし、小さい組織の先端、顧客に近い所に判断機能を近づけるという戦略を推奨したが、小さい方が最適で動きが早いと言うのは幻想だという分析をしている。世界、業界の変化が激しい中では権限を分散すると逆に動きが遅くなり変化に対応する事ができないという。納得。

  • ”「第III部 企業文化」と「付録A 社員に送ったメール」にはリーダーとして実践すべき内容が例示されており、企業やチームの規模にかかわらず参考になる。社内読書会の課題本になっているため、この題材をもとに対話するのが楽しみ。

    <目的>
     勤め先に適用できる実践アイデアのヒントを得る

    <質問>
    1.企業愛にあふれたメールが飛び交う背景にはどんな出来事があったのか?
     → 就任6日目に全社員宛に送ったメール(pp.112-114)が分岐点。
    CEO自らが「何かが変だ。やり方を変えるべきなのでは」だと語る。と同時に、感謝し、ねぎらい、同意し、「話し合いたい」と伝えたことは、社員に対して大きなインパクトを与えたはず。それに対する社員からの反応で、今後もメッセージを直接語ろうと考えたのではないか。
     ⇒ 自らの考え・思いを投げかけよう。そして、行動で示していこう。

    2.経営者の経営哲学だけで企業文化は変えられるのか?
     →変えられない。
      できるのは、企業文化が変わる条件を作ることだけ。
     (社員に、みずから文化を変えるよう招待するだけ)
     ⇒ だから、参加の機会をつくろう。そして呼びかけよう。
      (チャレンジTFだって、うまく使えるはず!)

    3.再建への歩みを確信したのはいつか?
     →1994.8.11付け(就任から1年4ヶ月後)の社員向けメールで「どのような尺度で測っても前身であり、勢いがついてきた」との発言あり(3四半期連続の黒字、新製品の発表、売上高増加、利益率向上、経費削減)。
      と同時に、「もどることはできない」「(まだ変革に参加していない人に)乗り遅れるな」と発破をかけている。
     ⇒ 一部の人の変化であっても、それを喜び、参加へ感謝し、繰り返し参加を促すメッセージを発信する。


    <読書メモ>
    ・何万人、何十万人ものIBMの人たちが経営陣の呼びかけにこたえ、懸命に努力し、この偉大な企業を再建する苦しい旅、ときにはおそろしい旅、しかしいつも痛快だった旅で活躍してくれた。その全員に、この本を捧げたい。(p.11)
    ・いま必要なのは事態を掌握して、行動に戻るよう活を入れられる経営者だ。つぎの指導者がまず取り組むべき課題は戦略と企業文化の変革であり、アメリカン・エキスプレスとRJRナビスコでやってきた点とかなりの部分で重なっていると、マーフは繰り返し主張した。(p.33)
    #マーフ=トム・マーフィー(選考委員。キャップ・シティABC のCEO>
    ・必要なのは指導力と、目指すべき方向が明確で勢いがついているとの感覚だ。わたしからだけではなく、ここにいる全員からこの感覚が得られるようにしなければならない。滅亡を言いたてる予言者が何人もいるような状況は望まない。望むのは、短期的には勝利を求め、長期的には興奮する動きを求めるやる気のある人材だ。(p.41)
    #最初の本社経営会議にて。
    ・経営哲学と経営方法(pp.42-43)
     ●手続きによってではなく、原則によって管理する。
     ●われわれがやるべきことのすべてを決めるのは市場である。
     ●品質、強力な競争戦略・計画、チームワーク、年間ボーナス、倫理的な責任の重要性を確信している。
     ●問題を解決し、同僚を助けるために働く人材を求めている。社内政治を弄する幹部は解雇する。
     ●わたしは戦略の策定に全力を尽くす。それを実行するのは経営幹部の仕事だ。非公式な形で情報を伝えてほしい。悪いニュースを隠さないように。問題が大きくなってから知らされるのは嫌いだ。わたしに問題の処理を委ねないでほしい。問題を横の連絡によって解決してほしい。問題を上に上にあげていくのはやめてほしい。
     ●速く動く。間違えるとしても、動きが遅すぎたためのものより、速すぎたためのもののほうがいい。
     ●組織階層はわたしにとって意味をもたない。会議には地位や肩書にかかわらず、問題解決に役立つ人を集める。委員会や会議は最小限にまで減らす。委員会で意思決定する方式はとらない。率直な意見交換を活発に行おう。
     ●わたしは技術を完全に理解しているわけではない。技術を学ぶ必要はあるが、完全に理解するようになるとは期待しないように。部門責任者は、技術の言葉をビジネスの言葉に翻訳する役割を担わなければならない。

    (第?部 企業文化)
    ・IBMでの約十年間に、わたしは企業文化が経営のひとつの側面などではないことを理解するようになった。ひとつの側面ではなく、経営そのものなのだ。(p.241)
    ★企業文化は命令で変えることはできないし、何らかの仕組みで変えることもできない。
    できるのは、企業文化が変わる条件を作ることだけだ。(略)結局のところ、経営陣が文化を変えるわけではないのだ。経営陣は社員に、みずから文化を変えるよう招待するだけである。(p.249)
    ・「ノー」の文化がとくに奇妙な形であらわれたのが、悪名高い同意拒否制度だ。IBMの人間は、組織の方針に同意しないとき、同意拒否を宣言できる。(中略)
    正式な同意拒否であれば、少なくとも周囲に対して正当性を主張しなければならない。ところが同意拒否は黙って行われることの方が多いのだ。
    #このあとのガースナー氏の社内メモが強烈な皮肉になっていて痛快!
    ・IBMの新しい企業文化の基礎になる八原則(pp.267-270)
     1.市場こそが、すべての行動の背景にある原動力である
     2.当社はその核心部分で、品質を何よりも重視する技術企業である
     3.成功度を測る基本的な指標は、顧客満足度と株主価値である
     4.起業家的な組織として運営し、官僚主義を最小限に抑え、つねに生産性に焦点を合わせる
     5.戦略的なビジョンを失ってはならない
     6.緊急性の感覚をもって考え行動する
     7.優秀で熱心な人材がチームとして協力し合う場合にすべてが実現する
     8.当社はすべての社員の必要とするものと、事業を展開するすべての地域社会に敏感である

    ・IBMの指導能力(リーダーシップ・コンピテンシー)(pp.280-281)
    ・「勝利、実行、チーム」だ。この三つの言葉で、わたしが求める姿勢を要約できた。
    ・終わりがなく休みのない自己変革(pp.285-286)
     一見矛盾する性格を併せもった企業の先駆けになる立場に立つ

     ……規模が大きく、しかも動きが速い。起業家精神があり、しかも規律がある。科学を重視すると同時に、市場主導型である。世界規模で知的資産を作り出せるとともに、それを個々の顧客に提供できる。新しい種類の企業であり、つねに学び、つねに変化し、つねに自己変革を行っていく。強固で、事業を絞り込んでいるが、新しいアイデアをいつでも受け入れる。官僚主義、偽善、駆け引きを嫌う。実績に報いる。そして何よりも、活動のすべてで人材と情熱を求める。

    (第?部以降)
    ・好業績を育む企業文化(略)を認識するのはそれほどむずかしくない。(p.300)
    経営陣はほんものの指導者であり、自立した人物だ。社員は組織の成功のために働く熱意をもっている。製品は最高品質のものだ。全員が品質に注意している。競争相手に負けるのは、大きな戦いであれ小さな競い合いであれ、全員にとってショックであり、全員が腹を立てる。凡庸さは許されない。卓越さが称賛され、大切にされ、報いられる。
    ・象が蟻より強いかどうかの問題ではない。その象がうまく踊れるかどうかの問題である。(中略)
    IBMが踊りを取り戻す際に決定的になった点に触れておきたい。大企業での権限集中と権限分散の問題である。(p.319)
    #権限分散は俊敏さを持つ意味で正しい。ただ、行き過ぎると部門最適になる。それを統合するのは新たな意味での権限集中が必要だ、ということ。


    <きっかけ>
     2011年9月の社内読書会の課題本。ちょうど社長が新任管理職に薦めていたのもあってチョイスされた。”

  • IBMを立て直した経営者が,企業経営を語る本。理図書 007.35||G36 12038773

  • 『成功はすべてコンセプトから始まる』木谷哲夫 著 ダイヤモンド社 参考文献

  • "IBMを瀕死の重賞から立て直した人物の経験談。
    印象に残ったところ

    オフィスに掲げている標語

    世の中には四種類の人がいる
    ・動きを起こす人
    ・動きに巻き込まれた人
    ・動きを見守る人
    ・動きが起きたことすら知らない人

    "

  • 気取らずに淡々とやるべき仕事をこなした結果、IBMは業績回復した、という印象。

  • IBMを死の淵から、救ったこの人に前々から興味があった。ゴーストライターを使っていないという断りどおり、確かに物書きの文章ではない。が、非常に歯切れのいい文書で読んでいて、著者の頭の良さがうかがい知れる(もしかすると訳がよいのかも)。その彼の主張が展開されているのがこの本であるが、その主張のうち、最も良いと思うのは、「プロセスではなく、原則による管理」。我が社では、「なんで、そんなことしてるの?」という質問に、いい年したおっちゃんが「昔から、しているから」となんのテライもなく答えることしばしば。「プロセスに従うのではなく、原理原則からの行動を決める」文化が非常に重要であることは明らか。私と同じ悩みを持つ人に勧める。

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