コンピュータが仕事を奪う

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  • 日本経済新聞出版社
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レビュー : 104
  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532316709

作品紹介・あらすじ

人間の仕事を楽にするはずのコンピュータは、爆発的な処理能力の向上により人よりはるかに速く、安く仕事をこなし、私たちの職を脅かしつつある。絶対に人にしかできない仕事とは何か、そしていま私たちは何を学ぶべきか。

感想・レビュー・書評

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  • <読んだ目的>
    コンピュータに奪われない仕事へ移動するために
    クライアント企業メンバーとの情報共有のために
    営業・広報のアンビエント化の概念補強のために

    <内容>
    ◆結論
    ①「なくなる仕事」と「なくならない仕事」、「コンピュータの下働き(低賃金。人間には簡単にできるがコンピュータにはできない仕事。クラウドソーシングによって貧しい国の雇用となる)」に別れる。
    ②データを蓄積した企業とそれをうまく利用した企業に有利な世界になる
    ③コンピュータと人間が得意分野を掛けあわせた新しい「生命体」は生まれないP.202

    ◆前提とする世界観
    人間も天候も、運命の領域とランダムな領域の中間にあり、部分的に計算でき、部分的にサイコロが振られ、残りはその混合物で構成されている。

    ◆なくなる仕事:
    コンピュータがコスト削減や精度向上(統計学、帰納による機械学習・チューニングテスト)につなげられる仕事。限られた探索空間で思考する仕事(しらみつぶし)。身体性が不可欠な一部の第三次産業の他は、第一次・第二次・第三次すべて消える可能性がある。ホワイトカラーは半分弱はなくなる。チェスだけでなく将棋や囲碁もいずれ敗れる。確定申告の数字の羅列から“脱税の疑い”のある書類を選別するベテラン税務署職。文字おこし(手書き、音声)。2~3年日本語を勉強した人レベルの翻訳業。
    計算機が得意な分野(数学的帰納法)の知的活動は5~10年でなくなる。
    パターン、マニュアル対応の仕事。

    ◆なくならない仕事:
    相手を「観察」して「判断」して「対処」する仕事。医師・看護師・保育士・介護福祉士・俳優・接客業など。
    「誰もが暗黙のうちに知ってるけど言語化(抽象化)されていない何か」を売る仕事。デジタル化されないのが望ましい。
    発言者のニュアンスまで訳せる翻訳者(表情や仕草からのメッセージはコンピュータは読み取れないから)。

    ◆仕事を失わないためにすること:
    コンピュータの得意分野に手を出さないこと。
    近未来にコンピュータが人間の力を凌駕する分野が何かを論理的に把握すること。連想は禁物。ヘリコプターがあるならタケコプターもできるはず、はありえない。科学技術(数学)のトレンドを把握(人間の能力範疇のブラックボックスがアルゴリズム・数式化・モデル化された事実)し、ビジネスとの間のコミュニケーション・ギャップを埋める時間を短くすること。トレンドと人間凌駕分野の予想を立てるときに相関関係と因果関係を間違えないこと。
    抽象化の能力向上(コミュニケーション能力、文脈理解、状況把握、洞察力など)。
    抽象化した「思い」をプログラムにモデル化する能力(演繹法)。サンプルデータ等から変数間の関係を読み解く→変数間の関数を式で表現→変数に数値を入力して計算
    ※教育面
    第二言語として数学が話せる能力を身につける。
    コンピュータの不得意なことで、しかもその能力によって労働の価値に差異が生まれるタイプの能力を磨く。
    コンピュータはインタフェースが向上するので使い方を覚えるのは簡単。時間を要さない。ネットワークに繋がって思考が中断されない環境(集中を阻害されない)を確保すること。
    文化的多様性が極めて低い(空気読み過ぎ)日本だから、「ふつうはそうする、みんながしてる」というパターン認識で達成できない(帰納頼り)課題に意欲的に取り組む。「なぜそうなるか?」言語化する機会を増やす。計算と暗記のウエイト下げる。

    ◆コンピュータの強み・得意なこと:
    演繹(三段論法)と帰納のどちらかを瞬時に選んで(または組み合わせ)問題解決を図ること。手順どおりの作業。大量データから傾向をつかむ。暗記と計算とパターン認識。
    未来予測すること①規則的な運動は、微分方程式P.158②ランダムな動きは、ブラウン運動P.163③規則、不規則のどっちつかずの運動は、確率微分方程式P.166

    ◆コンピュータの弱み・不得意なこと:
    人間でもどう解決したらいいかわからないこと。言語化され、数式化されないことには動けない。
    事象から意味を抽出すること。抽象化。写真に写っているモノの判別(セマンティックギャップ)。五感(見る・聞く・感じるなど)を使った情報処理。
    論理と言語を駆使して高度に思考し表現すること。
    データマイニングにより「あなたは将来、中学英語で躓くでしょう」と忠告できても「だから☓●してください」という処方箋は出せない

    • kuwatakaさん
      19年3月現在では、将棋も囲碁もあらゆる完全ゲームは人類では勝てなくなり、五感も『見る』『聞く』については凌駕された。日常業務からコンピュー...
      19年3月現在では、将棋も囲碁もあらゆる完全ゲームは人類では勝てなくなり、五感も『見る』『聞く』については凌駕された。日常業務からコンピュータが提供するサービスに移行させる事をオススメします。
      2019/03/25
  •  帯には、「ホワイトカラーの半数が消える!」と大書されている。この惹句と書名だけを見ると、「コンピュータにはできない独創的な仕事をするスキルがない奴は、早晩失業するぞ。だから、いまのうちに○○のスキルを身につけろ」と煽り立てるような、よくあるビジネス書に見えてしまうだろう。

     しかしこれは、そんな薄っぺらい内容ではない。
     たしかに、コンピュータが人間の仕事を奪うことに警鐘を鳴らす記述はあるし、「今後、どのようなスキルを身につければコンピュータに仕事を奪われずにすむか?」も示唆されてはいる。その意味で広義のビジネス書ではあるのだが、それは本書の魅力のほんの一面でしかないのだ。

     本書は、“そもそもコンピュータとは何か?”を本質次元から解説した一級の科学啓蒙書であり、コンピュータを基礎づける数学がどのように文明を進歩させてきたかをたどった数学史の概説書でもある。そしてまた、これからコンピュータと数学がどのように世界を変えていくかを展望した未来予測の書でもある。さらに、これからの数学教育はどうあるべきかを提言した教育論でさえある。

     数学の本でもあるという性格上、数式も少し出てくるのだが、私のような数学オンチにも難なく読みこなせる。正直に言えば数式の中にはちんぷんかんぷんなものもあったが、読み飛ばしても著者(国立情報学研究所教授・社会共有知研究センター長)の主張を理解するのに支障はないのだ。

     面白いエピソードや雑学をちりばめ、巧みなたとえ話も自在に用いて、著者は本書を数学オンチにさえ楽しめるものにしている。本書の内容は、理系の人には「何をいまさら」な話がほとんどなのかもしれないが、文系人間の私には目からウロコが落ちまくるものだった。そして、本書を読んで初めて「ああ、そういうことか」と得心のいった話が山ほどあった。

     たとえば、第1章の冒頭で、著者はIBM社のコンピュータ「ディープ・ブルー」がチェスの世界チャンピオンを打ち破った事件(1997)を、コンピュータ史の大画期として取り上げる。そして、この事件の意味を解説することを通して、コンピュータに人間の真似をさせるための手順が平易に説明され、コンピュータは何が得意で何が苦手なのかも読者に理解させてしまう。見事な導入部である。

     その後も蒙を啓かれる記述の連続で、最初から最後まで知的興奮に満ちている。理系の人よりも、むしろ私のような数学嫌いこそ読むべき本だと思う。数学についてのイメージが覆ること請け合いである。「もっとしっかり数学を勉強しておくんだった」と、私はしみじみ後悔した。 

  • 「数学は言葉」等の著作をもつNIIの新井教授の本。本書では、数学史、科学技術史、コンピュータ史を紐解きつつ、人工知能の主な分野における技術解説をしている。さらにコンピュータが発達した場合、現在のホワイトカラーの半数近くが職を失うと主張し、そうならないために一般人はどのような能力を鍛えればいいのか、ということについて持論を述べている。著者の結論は、一言で言うと、「もっと演繹の能力をつけるべく訓練しましょう」ということ。これにより、数学者やコンピュータ科学者と会話ができるようになり、自分のアイデアを実現することができるようになるとしている。
    著者は、米国の大学院で数学と論理学を専攻していたこともあり、日常生活や数学、科学などの各分野における「演繹推論」と「帰納推論」の役割分担についての洞察が非常に鋭い。私が長年モヤモヤしていたところの大部分を解決してくれた点で、私にとっては大変素晴らしい本であった。私が確率・統計をどうしても好きになれないのは、数学のほとんどの分野が「演繹」による世界の理解を目指すのに対して、確率・統計だけは「帰納」による世界の理解を目指しているからだと納得できたことは大きい。

  • 表題通り。

    コンピュータが進歩してきて、
    人間が取って代わられる、という危機について、
    具体的な近況を紹介している。
    さらに、
    コンピュータに代わられる仕事とそうでないものの違いを分析するために、
    コンピュータの特徴とは何か、という展開から、
    省みて「人間らしさとは何か」の追求に帰着するところが、
    アンドロイド研究と共通していて興味深い。

    やや数学寄りだけど、
    物事を厳密に記述する数学ならではの、
    論旨をぼやけさせない文体がよい。

    帰納と演繹、という両アプローチについても、
    面白い議論が沸き出している。

    さらに、数学や科学技術全般について、
    「暗記と計算で追いついた日本」を取り上げている。
    「なぜ」その論理や学問が生まれたのか、という、
    必然性を伴わない学問の弊害と、
    今後望まれるイノベーションにも言及している。

    「まだ言語化されていない『何か』を言語化する」
    これが、コンピュータにはできない、
    人間の目指すべきイノベーションだ。

  • ・コンピュータによって代替可能とは
    ・コンピュータに何かさせる人はコンピュータは何が得意で何が不得意かをざっくちとでも知る必要がある
    ・不得意な分野
     ※計算量が指数爆発をおこすもの
      巡回セールスマン・ナッシュ平衡・素因数分解
     ※解決しつつある計算
      形態素解析(言語処理)
    ・人間がやるべきこと
     誰でも知っている暗黙知をわかりやすく表現すること

  • 科学エッセイという感じで読める本だが、内容はとても深い。
    猫と犬を区別するには、何を比較したら良いか。毛は生えているし、目も口もある。人が見間違えることはないが、コンピュータはかつてうまく区別できなかった。それがなぜ区別できるようになったのか。帰納と演繹のうち、帰納はコンピュータが得意だが、演繹はできない。人間は演繹の部分を磨くべきだ。そのためには数学を第二の言語にすべきだ。とても明解な論理展開でわかりやすいないようである。
    先日ビッグデータの専門家に、今困っていることはなにかと聞いたら、何を分析するかだと聞いた。手法も計算技術もあるらしいのだが、何をという部分がないのだそうだ。
    答えは書いていないがヒントは書いてありそうな本デスね。おすすめです。

  • 図書館で借りた。

    コンピュータができる仕事、できるようになっていくであろうと考えられる仕事はなにか、また仕組みの上でできないことは何かを説明している。

    犬と猫を見分ける、という仕事をコンピュータにやらせる場合、事前にこの写真は犬、これは猫、と人間が判断した大量の写真を用意し、それをコンピュータに学習させる。次にまだ使っていない写真をコンピュータに渡して判断させ、結果を人が評価する。
    大量の写真を用意すればこの程度の仕事はできるらしい。ただ、写真が豚の場合は、必ず犬か猫に分けてしまうため、見分けられないとのこと。
    大量の写真を事前に人間が判断するのは時間も人も大勢使うが、今はクラウドソーシングという、外注を利用できる。単純労働なので1件判断した金額が数セントと安い。
    何ができるのかを具体的に言ったあと、その限界を説明するため読みやすく分かりやすい。

    コンピュータは数学で表現できることしか実行できないため、実行する内容が高度になればなるほど数学の知識が必要になってくる、とも書いてあった。

  • 良書。
    的確に、解りやすく工夫しておられる。
    コンピューターに出来ること、出来ないこと。不得意なこと。
    人間がこれからすべき事。
    数学が大事な事。
    にしても、先が読めない。これから何をすべきか。
    どうなってもいいように、勉強を続ける事が大事だと思う。
    勉強出来る気力・体力は整えておきたい。
    コミュニケーション。一対一の。人間にしか出来ないことを考える。

  • Aiやコンピュータが不得意で人間しかできないものは、仕事として残る。
    その内、誰でもできる仕事は、最低の賃金しか貰えないものになる。
    ホワイトカラーの仕事の真ん中が、aiに取られ、上と下に分断される。

  • コンピュータが仕事を奪う

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著者プロフィール

新井 紀子(あらい のりこ)
1962年、東京都小平市生まれの研究者。国立情報学研究所社会共有知研究センター長・教授。専門は数理論理学、遠隔教育。東京都立国立高等学校、一橋大学法学部を経てイリノイ大学数学科に留学し、同大学数学科大学院修士課程に進学。1990年に修士号を取得。帰国後の1994年に一橋大学法学部を卒業、専業主婦を経て広島市立大学情報科学部助手に着任。1997年東京工業大学博士。2006年から国立情報学研究所教授。
代表作に『AI vs.教科書が読めない子どもたち』。同作で2018年日本エッセイスト・クラブ賞、山本七平賞を受賞している。

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