僕が「プロ経営者」になれた理由 変革のリーダーは「情熱×戦略」

著者 :
  • 日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532321185

作品紹介・あらすじ

HPとコンパックの統合を成功させ、
ダイエーの経営破綻を回避し、
不振のマイクロソフト日本法人を立て直した男が語る、
「プロ経営者」の本質。

「内気で話し下手のサラリーマン技術者」だった著者が、心機一転、ハーバードでMBAを取得。
プロ経営者として次々と成果を挙げてきた。
彼はなぜ、大手企業の技術者という安定した職を捨て、茨の道を選んだのか。
なぜ、再建に成功した企業にとどまらず、次の「問題企業」へ飛び込んでいくのか。
その波瀾万丈な経営者人生から生まれた、血の通った経営論が本書だ。

樋口氏は、鮮やかな戦略で急成長を遂げるのではなく、現場に何度も足を運び、
顧客や社員と腹を割って話すことで、地道に結果を出してきた。
「外資系」「プロ経営者」「MBAホルダー」「元コンサルタント」という肩書きが想起させる
リーダー像とは対極にあると言えるだろう。

そんな彼の言葉は、急激な時代の変化に不安を抱く、普通のサラリーマンにこそ響く。
「挑戦する気概さえあれば、君もリーダーになれる」「変革の時代だからこそ、みんなにチャンスがある」──
自分のキャリアアップについて悩む若手や中堅ビジネスパーソンの背中を押してくれる、メッセージが満載だ。

感想・レビュー・書評

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  • 尊敬する経営者、樋口さんの書籍を久しぶりに読みました。
    樋口さんとは、「愚直論」で書籍上で出会って以来、ずっと応援している経営者です。

    ※愚直論
    https://booklog.jp/users/noguri/archives/1/4478733066#comment

    今回は、マイクロソフト時代までの経営者としてのリーダーシップをまとめた本。
    中盤からの樋口さんの実体験に基づいたリーダー論は、胸が熱くなります。
    まさしく、情熱×戦略の両方を兼ね備えた人。
    中々こんな人にはなれるような気がしませんが、追い求め続けたいリーダー像でもあります。

    マイクロソフトからパナソニックに移られて、
    新しいチャレンジをされている樋口さんですが、
    パナの再生に貢献してもらいたいです。

  • 樋口氏の人生を振り返りつつ、経営について考える、熱い良著。
    示唆多し。

    メモ
    ・自分の大切な時間と人生を注いでいる仕事が自分にとって満たされたものにならない限り再生もない。マネジメントの根幹は従業員の生きがいをいかに創造するかにある。
    ・大規模な設備投資を必要とする産業や業態ではビジネスモデル崩壊時同業と合掌連合して再編するしかない。
    ・外資系企業の日本法人では日本的なウェットな関係性とアメリカナイズされたタフネゴシエイトと両方が必要になる。
    ・マネージャーはルーターのようなもの。
    遅延するかすぐつながるか。
    ・上司の立場では失敗を恐れるなと発破をかけるならば、自分も絡んで連帯責任と言い切るくらいの度量がないと身にならない。上司が絡むからこそ、これ以上やると危ないの部分もわかる。
    ・戦略生と現場力を融合していくために、リーダーには自分の素のキャラクターでやる部分と演じる部分の両方がある。
    ・変革期のリーダーは目指すべきモデルを作っておかなければならない。現状と目標の差分は何か、俺が変えるためのドライバー、取り組みのポイントになっていく
    ・パッションの強さとフォーカスが戦略的に整理されていないと前に進まない。
    ・人を理解するだけでなく、自分も分かってもらえるような気質を育てる点が苦労する部分
    ・hpとコンパックの統合。クリーンルームとアダプトアンドゴー。ポリシーを柔軟に採用し、若手を中心に選ぶ。たすき掛けはいっさい許さない。 
    ・スタートダッシュが効かないようではm&aや合併に踏み切った意味はない。 
    ・企業文化の違いや不安を解消するにはどちらの会社の出身かの痕跡はすべてなくすのが即効的かつ最も重要な取り組みであるのを分かっていた。混乱を当たり前と受け止め、あいまいにせず真っ向からマネジメントの課題として取り組む。ドライというよりリアル。社内政治が入り込む余地を徹底的に排除する。
    ・トップはメッセージを煮詰め、確信を持って発信し、結果を出すまでは絶対にぶれないようにするという姿勢。
    ・メッセージを極限まで煮詰めてから相手に伝える。受け手が納得できるような言葉や表現を納得がいくまで探し続ける。首尾一貫したメッセージを熱い思いで語り続ける。何度も何度も相手が理解してくれるまでぶれずに伝える。
    ・経営リーダーとしての共通する思い。完全なる自由裁量のない中で社員にどのような夢を与え実績を創造するか
    ・今ある力をどのような点に集中していけば全く新しい力として発揮されるのかを示して実感させられるか。これが戦略の実行可能性を担保するということ。
    ・美しい戦略とは何か。参入障壁をどれだけ創り得ているか。自身の強さをどのように認識しているかと深く関わる。

  •  研修で企業訪問をすることになったため、事前学習のために購入。経歴は、阪大工学部→パナソニック(溶接機→サーバー→MBA(ハーバード)→映画)→BCG→アップル→コンパック、HP(事業統合)→ダイエー→マイクロソフト→パナソニック。HP時代から社長を務め、複数の企業で事業再生を牽引してきた。本書執筆時点ではマイクロソフトの会長。華々しい経歴の割に、目の前の目標を一つ一つ達成していく愚直な姿が共感できる。
     本書のメインテーマは、事業の変革を牽引する「プロ経営者」について、事業変革の方法や経営者の要件を深堀している。叩き上げやオーナー経営者とは、良し悪しではなく役割の違いであることに注意したい。本書で言うプロ経営者は、社外から来た経営の知識・スキルと実行力の両面を備えた専門家で、社内人材では難しい変革の実行を主として担う。
     20代・30代の社会人生活の送り方(→市場価値の高め方)についてのアドバイスもある。自身のこれまでと照らしても共感できる内容だった。プロ経営者は叩き上げと比べると、より精神的なタフさや経営手法のバリエーションが求められそうであるが、それだけに達成感も大きいものだろうと思う。
     以下、まとめきれていないが、参考にしたいポイントをメモ。
    ■市場価値の高め方
    ・20〜30代前半は、知識・スキルによる個人の生産性向上。目の前のことに集中してやりきることで鍛える
    ・30代後半からは、社内外の人に関するマネジメント能力による集団での価値最大化。スキルの転換点であり注意が必要。多様な環境に身を置きさまざまな人と仕事をする中で、言葉で表すのが難しい人間の厚みが鍛えられる
    ■人口オーナス期の組織力に重要な要素
    ※人口オーナス期とは、人口構成の変化が経済にマイナスに作用する状態のこと。激しい変化に伴い、構造改革や事業再生が繰り返し求められる
    ・1つめに必要なのがダイバーシティ&インクルージョン。老若男女が共同して働くために必要。多様性を受け入れるだけでなく、新たな価値創造へ繋げることが必要
    ・2つめに必要なのが戦略と実行。戦略の転換でビジネスモデルが変化すると、各人の果たすべき役割も変わる。各人が腹落ちしなければ変革は進まない
    ■組織変革に必要なリーダー像
    ・メッセージを煮詰め、確信を持って発信し、結果を出すまでぶれない。熱い思いで、繰り返し伝える
    ・目指す姿とそのための具体的な仕事を用意し、リーダーが率先して実績をつくる
    ・会社の進路を大きく変えるときはトップから担当へのダイレクトコミュニケーションが有効。職制を通じた上意下達による落とし込みは難しい
    ・優先順位づけ。社長のスケジュールは勝手に埋まる。忙しくても仕事をした気になってはいけない
    ・身体を張って得た経験が人を動かす
    ・素の顔と演技の使い分けも必要
    ・ほめることでモチベーションを高める。優秀な集団ほど重要
    ■戦略的思考
    ・戦略にはビッグピクチャー(大局観)が必要。将来にわたる競争環境や社会環境を想定。戦略のレベル差は視点の高さの差そのもの
    ・戦略を練る訓練は経験が必須。まずできるのは「会社が何のために存在しているか」を考える習慣をつけること
    ・自社の強みを活かそうとすると、必ず過去に固執してしまう。自社の生態系の外から戦略の検証が必要
    ■その他
    ・外資系企業の日本法人では、日本市場の中でウェットな合わせ技でやる部分と、本社に対してアグレッシブでロジカルにやる部分の両面が必要。これは日本企業がグローバル化を進める上でも必要な能力

  • 36ページ
    他社との協業の状況、他者へのインパクト、他部門への協力などいずれも1口ですぱっと表現したり評価しにくいものだが、難しさはあってもそのような評価を確立していこうとしている

    41ページ
    若い人にとって魅力的な職場でなくてはならないし、若い人に対して民主的な職場にならなくてはならない

    54ページ
    今求められているのはマクロでもミクロでも構造的に起きている変化に対応するための基礎的なリテラシーとしてのリーダー論であり、誰もが共有して自身の資質として身に付けなければならないリーダー論だからだ。
    ここの従業員が変革のリーダーとしての自覚と資質を備えて環境の変化に向かい合わなければ、個人にも企業にも持続的な成長がもたらされない。

    58ページ
    老若男に男が、共に働き、生産性を高めて短時間で稼ぎ、それらのために多様な価値観を認め合う。ダイバーシティーは人口オーナス期の社会にとって絶対に必要不可欠な価値観である。

    97ページ
    こうした企業文化の違いや不安を解消するにはどちらの会社の出身かの痕跡を全てなくすのが即効的かつ最も重要な取り組みであるのをわかっていた。

    109ページ
    夢を与え実績を創造する=社員に目指すべき状態とそのための具体的な仕事を用意しリーダーとしての素の姿を見せながら一緒に実現する

    121ページ
    関係者が集まって談論風発侃々諤々の議論を楽しむことの大切さ。
    たとえ無駄話の連続のように思えても、そこから何かしらが出てくる。そうしたものにこそバリューがあった。

    130ページ
    戦略とは事業のあり方をどのように考え、どのような方向を目指すのかを示しているものだ。
    戦術とは戦略をいかに実行するかの策である。
    言葉を変えればビジョンも戦略でビジョンの実効策が戦術となる。

    131ページ
    将来にわたる競争環境や社会環境などをきちんと想定した絵柄でないと精度の高い長期的意思決定はできない。
    絵柄がどれだけ鮮やかにイメージできるかによって戦略の精度や有効性が決まってくる。

    135ページ
    会社は何のために存在しているのかと言う根幹を常に考える。

    136ページ
    正解がないからこそ根幹部分が大事であり、意識し、そこから戦略を見出していく。
    戦略がどれほど子理論的に素晴らしく、男として美しくても、その実行可能性が担保されていなければならない。

    137ページ
    さらに成功するまでやりきる姿勢が実は戦略を戦略たらしめている。

    162ページ
    だからこそキーリーダーはチアリーダー的でなければならない。
    「やろうよ世界を変えるんだ」「これいいね、やってみようじゃないか」などと部署間の枠を超えた議論を促していく。

    184ページ
    社長直轄プロジェクトで各部門の社員を集め議論してもらうと、まず各部門の事情や言い訳が先に立つ。幹部は決して一線を越えようとしない。
    それをゴリゴリと責め合わせていくと圧力の力で枠が溶けていき、相手への理解と自分ができることへと関心が移っていく。それをぐいぐいと押し出すのは経営トップである社長の役割だ。

    216ページ
    CIOが経営視点でITを議論できるようにならなければならないし、CEOは事業におけるITの位置づけを自ら描いて見せなければならない。

    217ページ
    経営レベルのIT理解とは、経営を支えているITの構成や、それに伴うリスク等について考えが及んでいることだ。

  • 過去のお高く止まっていて馴染みにくい印象のあったマイクロソフトから、現在の馴染みやすい雰囲気のマイクロソフトに変革するに至ったのは、樋口さんの影響なのではと考え手にとった書籍。
    ダイエー社長時代の再建からコンパック社長時代のHPとの合併、日本マイクロソフト社長時代までの実体験が記されている。
    樋口さんは社長という職位にありながら現場や現場の社員を第一に考える現場主義者であり、またそのような方としっかりと会話や議論などのコミュニケーションを行う。結局はたらいているのはヒトであるため、そのヒトにフォーカスする必要があるという。そのため、それらのヒトを先頭に立って導けるようにビジョンを示して実行し、ダメな場合は責任をとるといった言葉にしたら普通だけれども実際に行うのは難しい様式が備わっているとひしひしと感じられる。
    マイクロソフト変われたのは樋口さん以外にも要因がある。それはグローバルCEOであるサティア・ナデラ氏だ。ナデラ氏は、ビル・ゲイツ氏、スティーブ・パルマー氏といった成功してきた創業者のプロダクトや役員を否定することからはじめ、一部プロダクトのオープン化に舵をきることでまた成功をおさめている。成功体験のない企業は成長しない。しかし、企業の成長を阻み、改革を阻む要因もまた成功体験であるといったジレンマに屈さなかった格好である。
    一方否定された側のゲイツ氏やパルマー氏についても否定されているのにも関わらずナデラ氏に口出しすることはしない。企業の成長のためを思う彼らの行動にも相当な倫理観がある。
    日本マイクロソフトは外資系企業であるがゆえ、個人主義である。それが部門間の隔たりを生み、馴染みにくいという印象を与えていた。しかし、人事評価制度においても部門の垣根を越えた活動やチームとしての行動が評価されるよう変更されたこともあり、ワンチームとしてのマイクロソフトが実現されつつあるようだ。
    ITリテラシーすなわちITを使いこなす力が経営者に求められるようになっている昨今において、その経営者の経営をITの側面から支えるパートナーとしてのワンチームであるマイクロソフトに今後も目が離せない。

  • 自分でキャリアを切り開いていく、キャリア戦略を実行していく姿がかっこいいと思った。もっとちゃんと読めば良かったと少し後悔。

  • 松下電器→(MBA)→BCG→アップル→ダイエー→HP→Microsoft→Panasonic とキャリアを重ねた著者の変遷と経営に対する考えをまとめた書。
    『よくある成功物語ちゃうん?』と、やや斜めから読んでいたが、思いのほか、よかった。MBA由来の理論と、経営現場の浪花節が相まって、非常に腹落ちする。

  • この本を読んで感じた事は2つある。
    第一に海外MBAを取ることがその後のキャリアを大きく発展させると言うことである。
    この著者は海外MBAを取ったことでパナソニックからbcgへ進んでいる。
    第二にサラリーマンが最終的に行き着く能力としてマネジメント能力があるということがわかった。

  • 樋口さんの多様なキャリアをもとに自分のキャリアを考えるきっかけとなりました。
    特に印象的だったのは、経営者は一分野だけでなく他分野に精通している必要があるとの考え。例えば、技術系のトップは経営的な視点を欠いていて優秀な参謀にそれらを任せているケースが非常に多い。その逆も然り。とはいえ、各分野を極める必要はなく、話を聞いた時に理解できるくらいの素養を備えることが大切。

  • 松下電器の技術者からスタートし、いくつもの転職を重ね日本マイクロソフト会長という経験があるからこそ見えてきたものを読者に伝えてくれる。

    当時は転職=ネガティブなイメージが強かったはずだが、現在容認されつつあるように、自分のキャリアを磨くために転職する。ということを積極的におこなっていた。
    経歴を見ると、エリート中のエリートのような人物であるが、単純な天才でなく努力する天才だということが本書から読み取れる。
    「決して現状に満足しない姿勢」「企業のポリシーや理念を尊敬し、自分に落とし込む」「リーダーとしてブレない軸」など、仕事で成功するための肝心なキーワードを教えてくれる。

    転職に悩む人、これから経営者や上司として成長を目指す人に読んでほしい本だと思います。

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著者プロフィール

パナソニック コネクト株式会社 代表取締役 執行役員 社長・CEO。1957年兵庫県生まれ。80年大阪大学工学部卒業後、松下電器産業株式会社(現パナソニック株式会社)入社。91年ハーバード大学経営大学院(MBA)修了。92年ボストン コンサルティング グループ入社。94年アップルコンピュータ株式会社入社。97年コンパックコンピュータ株式会社入社。2002年日本ヒューレット・パッカード株式会社との合併に伴い、日本ヒューレット・パッカード執行役員に。03年同社社長就任。05年株式会社ダイエー社長、07年マイクロソフト株式会社に入社し、08年マイクロソフト代表執行役社長就任。11年2月日本マイクロソフトに社名変更、15年執行役員会長就任。17年4月パナソニック株式会社に入社し、専務役員そしてコネクティッドソリューションズ社社長就任。同年6月代表取締役専務執行役員就任。22年4月より現職。

「2022年 『パナソニック覚醒 愛着心と危機感が生む変革のマネジメント』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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