日本〝式〟経営の逆襲

著者 :
  • 日本経済新聞出版
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本棚登録 : 78
感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (266ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532324100

作品紹介・あらすじ

「世界標準の経営理論」というけれど、リーンもアジャイルも「両利きの経営」も源流はすべて日本――でもなぜアメリカに勝てないのか?

本書は、古き良き日本の素晴らしさを語って、現実の厳しさを忘れようとするものではない。すなわち、日本企業の素晴らしさを一方的に語ることを目的にしてはいない。もちろん日本企業は最近いわれるほど遅れてはいないし、遅れているとばかり認識する弊害も多い。しかしその一方で、日本の産官学が反省すべき点は確実にある。
ひとつには「コンセプト化」に阻害要因が存在してきたという弱みである。
 日本の産官学が持つこれらの弱みがいかなるデメリットを生んだのか、またこうした弱みを克服することでどのような実際的なメリットがあるのか、日本の産官学の反省点は何か、については本書の後半で詳細に考えていく。
 コンセプト化・パッケージ化が弱かったのは日本企業だけではなく、筆者含めた研究者や、日本政府も同様である。ようするに日本の産官学全体の問題であった。この点も、現状で思いつく限りの処方箋らしきものを本書において探索していく。本書は、こうした反省によって未来を切り開こうとする、未来志向の本である。

感想・レビュー・書評

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  • 「メモの魔力」との親和性高いかも。

  • 切り口は面白いが、大学教授やコンサルによる大学教授かコンサルのための本、という感じ。企業での意思決定に理論を役立てるという観点はないように思いました。

    ・『もともと日本にある経営技術がアメリカで概念化され、日本で逆輸入されている』『それなのに日本の経営は悲観論が蔓延している』という観点は新しく面白い切り口に思う。そしてたしかにそう感じる部分もあるし、それは面白くない。
    ・ただ本書の中で指摘されているこの状況の具体的なデメリットは、コンサル費用のようなコストと、悲観的なメンタル。どちらもそのとおりと思う一方、捉えている問題がズレているように思う。切り口の面白さに比べて、深みがなく構造を正しく捉えられていないように感じる。
    ・これは、日本の経営がいま良いレベルなのか悪いレベルなのか、筆者の立場が示されておらず、日本の企業はどうあるべき、というメッセージがないからに思う。
    ・筆者のメッセージは『日本式経営の良いところをコンセプト化していくべき』ということだが、これによる企業のメリットは前述の裏返しなだけで、外部内部の価値を高めるための理屈は特にない。

    例えば、コンセプト化された経営技術をうまく活かせる企業が少ないのは、文脈依存型でしか経営技術を高められないことにひとつの理由があり、概念化をする能力を高められれば、概念化された経営技術を活用する能力も高められる、、、とかそういう話があると、より活用度の高いな切り口になるのではないか。

    なお最後に筆者は、この本は研究書ではなくビジネス書を志向している、というあとがきがある。大学教授かコンサル向けのビジネス書ってことならそうなのかもしれません。

  • 日本企業内における経営ノウハウ等は優れた部分が多分にある一方、経営のコンセプト化で他国に遅れを取っている。これは経営学を修了し、現在コンサルティングファームで働いている立場からしても、非常に納得感のある主張であった。
    一方、企業の立場からすると日々の経営に手一杯であり、コンセプト化する誘引が少なく、またアカデミックの世界においても「十分に日本で食べていける」状況故、積極的に海外へ発信する旨味が少ない部分はあるのではないかと感じた。この状況を良しとするのではなく、何かを変えなければならないのは間違いないが、まずはこの危機意識を持った人材の総量を増やしていくことが肝要であり、絶えず自分自身及び他者に対し、問題意識の投げかけを行なっていくべきと痛感。

  • 米国発信の“世界標準の経営理論”は、日本に源流があった?経営技術は優れているが、うまく概念化できない日本の弱みを解明し、日本の経営が再び世界で輝くためのヒントを示す書籍。

    近年、ビジネスの世界では「両利きの経営」や「リーン・スタートアップ」、「ティール組織」などの概念が流行している。これらの経営コンセプトはアメリカ発とされるが、実は日本企業の経営技術にもとづいて生まれたものである。

    日本の経営技術がアメリカ発のようになるのは、同国の産官学には「コンセプト化」という強みがあるからだ。例えば、ホンダの米国市場での成功は次のようにコンセプト化された。
    ・ホンダは、試行錯誤の中から、小型バイク市場というニッチを発見した。そして、これまでバイクに乗らなかった層に向けた広告を打つなど、次々と施策を打ち出し、成功した。
    ・チャンスをつかんだらその都度、戦略を練り、修正する。このホンダの経営戦略は、アメリカで「創発的戦略」という概念でとらえ直され、世界の経営実務界・学界から受け入れられている。

    アメリカの産官学は、日本の経営技術の中から有望なものを見つけ、論理モデルに変換する。この抽象度を高められたコンセプトは、一見、源流にある日本の経営技術とは思えない。よって日本に逆輸入されると、すでに自社が保持する経営技術を自ら捨てかねない。その結果、現場が混乱し疲弊する。

    経営技術の逆輸入という状況が発生してしまう原因は、次の2つである。
    ①外国からもたらされたコンセプトに触れた時、「すでに日本の現場でもやっているのではないだろうか」と考えない。
    ②日本の産官学がコンセプト化にあまり積極的でなかった。

  • 日本式経営という言葉の意味がわかった、経営方法のコンセプト化が弱い日本の産官学の変化を望む。日本の根拠なき悲観論をぶち壊せ。

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著者プロフィール

明治学院大学専任講師

「2019年 『イノベーションを生む“改善”』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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