ヘッジホッグ: アブない金融錬金術師たち

  • 日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (422ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532352400

感想・レビュー・書評

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  • "Hedgehogging" by Barton Biggs

  • いいとこ取りの情報によって人の財産を集め
    それを元手に合法的賭博をする人達の
    危ない実話を内部告発したものだから滑稽で面白い
    しかし半分も読めば十分
    いかにバカバカしい浮ついた生活で人生を無駄にしているかを
    証明してくれるし
    それを支えている法律がいかにあてにならないものか見出すことができる

    お金という道具の変貌をあらためて見ると
    自給自足から余剰生産物を可能にして物々交換が始まる
    物々交換のための連鎖的評価を可能にする道具とした約束事である貨幣から
    貨幣の貸し借りが始まり利息のシステムがつくられ
    資本と投資に発展し金融システムへと進む
    更に乗っ取り吸収合併脅しゆすりタカリ詐欺リンチの道具に仕立てられて
    あらゆる生活の基盤を奪う暴力を使った支配を可能にしてきた

    武力と知力(情報力・宗教力)の恐怖心を併せることで
    士農工商奴隷ペットと言う縦社会をつくる道具となる
    この内生産にたずさわらない者は人のフンドシで相撲を取る武士・商人・ペット
    ペットのなかには職業的芸人・詩人・絵描き・楽士・健闘し・娼婦・・がいる

    貨幣は物質や生産から離れ権利を得る契約書となり
    その約束を武力と植え付けたモラルによって守ろうとする
    比率の片寄った賭博は詐欺であり
    金融システムは詐欺を合法的にするためのシステムであるようだ
    利息をベースにした金融システムは
    エントロピーが支配する物質界にあり得ないものだし
    土地や自然界に対する権利の主張など傲慢の極みでしかないし
    人間を確保したり
    未来を保証するなどの不可能なことを商品に見せ掛けることは
    まさに詐欺でしかない

    一方的な借り物でしかない所有権で社会を牛耳ったところで
    それは部分的な歪みでしかない
    部分的歪みという作用の結果は反作用を伴う
    大きな力で押さえつければ大きな反発力が蓄積される
    この侵略はまさに相対の中の部分的絶対主義(独裁・帝国)でしかない

    力によるすべての縄張り(ボーダー・差別・区別・掟・契約)は
    侵略である
    我々のすべては地球に属し宇宙に属し相対関係に属しながら
    ネゲントロピーなる全体観につながっている
    より広い部分を利用してより小さい部分に取りすがろうとすることは
    生命にとって逆行することになるのだろう

  • ヘッジファンドの物語。ビッグスの体験談は面白い。ただ、表現が気に食わない。

    ビッグスはサブプライム危機を見抜けなかったみたいだ。

    ケインズ、偉大な男だ。だが、ゲイだ。

  • ファンダメンタル・スイング~中期・投機に関する、
    バートン・ビッグスの自伝である。

    構成としては、ほぼ筆者の体験談を綴っている。

    他の本と違うところは、
    ・ヘッジファンドは思ったより割の良い商売ではない
    ・損失を出したときの精神状態
    ・他人と逆をやるときのつらさ
    ・かわいがった部下の離反
    などなど、決して華やかではないヘッジファンド業界の内幕を
    描いたものである。

    気に入ったのは
    第20章 ウォール街 世にも不思議な物語
    で、ありえないのだが、本当にありえそうな話が展開されていて、
    なかなか面白かった。

    運用業界は奇人変人の集まりであるのは、私も同じ業界なので
    なんとなくわかるが、
    筆者はそのような世界がとても好きなようで、業界を批判し、
    厳しい意見を見せながらも面白い部分を書いていたと感じる。

    なかなかこれほど金融業界で生き残っている人はいないので、
    貴重な本だと思う。

  • ヘッジファンド立ち上げにまつわるの話を中心に、この世界の奇人変人から凄い人までを生き生きと描き出す。投資コラムっぽい話も満載で、投資の世界に興味のある人なら間違いなく楽しめる。内容を忘れかけた頃にもう1回読みたくなる一冊。

  •  レバレッジとデリバティブを最大限有効に活用しながら、己の才覚とギャンブル勘で市場から大金を生み出すヘッジファンドの世界。本書では大手投資銀行で経営陣にも加わってきた優秀な投資家である筆者が、この極端な世界に生息するおかしな奴らの生態についてユーモラスに描いていく。

     本書が書かれたのは2005年の終わり頃なので、ここ数年の金融危機については触れられていない(さらりと、住宅価格バブルについては言及があったが)。原書にはない副題である「アブない錬金術師」というフレーズは本来登場人物の人格面を指してのものなのだろうが、いまとなってはかれらの仕事それ自体がまさに「アブなかった」ようだ。ご承知の通り、リーマン・ブラザーズは大爆煙で周囲を巻き込みながら吹っ飛び、ワシントンではポピュリズムとロビイストの妥協的産物として大辞典のごとき金融規制法案が成立した。

     だが、「ウォール街は己の利益ばかりを追い求めて、世界中を不幸のどん底にたたき込みやがった悪魔みたいにねじ曲がった野郎どもだ」という金融危機後の意見もまた、短絡的過ぎる。本書に登場する人物はみな、「ウォール街でふつうんひとが知らんような金額の金を扱っている」という一点を除けば、それほどエキセントリックな奴ばかりというわけではない。お調子者もいれば真面目すぎて精神を壊す奴、他人に厳しすぎる上司に悲観的な黙示録主義者。ちょっと周囲を見渡してご覧なさい、今あげたような人間がきっとあなたの周囲にもいるはずだ。

     結局、人間どんな世界でどういう風に生きようが同じようなもんであろう。挫折と失敗、成功に浮かれ、満たされない感覚との取っ組み合い。その意味で、本書の最後の二章は象徴的だ。ひとつは長年冴えなかったある男が翌日の新聞を買うことが出来る不思議な力を手に入れて一挙に成り上がりカリスマとなるが、最後は自分の訃報を見た後死んでいく話。もうひとつは、ケインズについての伝記を簡単に再構成した物である。若いときから天才の誉れ高かったケインズも学生時代はホモ・セクシャルと悪ふざけにあけくれ、その人生で三度の破産の危機を経験した。そんな彼も最愛の妻に出会うことでその鋭すぎる精神に落ち着きが生まれ、一連の業績へと繋がっていく。

     市場の神様は多くの場合、そこに生きる者達に一生恩恵を与え続けるなんてことはしない。ヘッジファンドの平均寿命は三年。今日も多くが退場し、明日には出戻り組含めて新しい愚か者がまたまたどっさり現れる。厳しく、数字が全ての虚しい世界に生きるかれらの姿は、想像がつかない大金を扱う「強欲者のお伽の国」のはずなのに、どこか平凡な我々にも重なる。だからこそこの本は金融や経済の話を抜きにしたって十分すぎるほど「面白い」のだ。お勧め。

  • 338.1/B42

  • 著者はモルガンスタンレーに30年間勤務し、経営陣にも加わっていた、いわゆる「エライ人」である。モルガンでは、ヘッジファンドなどの資産運用業務に主に従事していたようである。この本の内容としては、バイサイド(金融業界における買う方)の偉人、変人を21章にわたり取り上げていくというもの。400ページあるが文学的滋養に富んでおり、飽きることはない。

    とくに面白かったのが、第8章のヴィンス。彼は、終末予言者として面白おかしく描かれている。以下、引用。

    「それだけじゃない。バブルがもう1個破裂するぞ。ファニーとかフレディが金を出すもんだから、中古住宅価格は年7%から8%上がってきた。パーク・アヴェニューもビヴァリーヒツズも、サザンプトンもアスペンも、高級不動産はみんな暴落だ。金融バブルがはじけた後は、あらゆる種類の金融資産がみんな消えてなくなるんだ。ああいう資産は何もないところからつくられるだろ。だから風が吹けば霧みたいに吹き飛ばされるんだよ。1990年に120万ドルしてた東京の高級マンションが去年25万ドルになったってよ。1930年代には芸術品の価格が80%も下がった。東洋の穀物の値段も暴落だ。遅れてくる反動の影響はいつも同じだ。今回は違うなんて道理があるか。二次的影響が現れるのには何年もかかる。中央銀行が利下げして金融システムを流動性でジャブジャブにしてるならとくにそうだ。でもそんなことしても先延ばしにできるだけだ、逃げられるわけなじゃない。3年以内にアメリカは不況、S&P500は500ポイントになる。アメリカで革命が起きるかもしれない。1930年代のドイツみたいなファシスト革命かもしれんぞ」

    著者は彼をその時(3年くらい前)は鼻で笑ったらしいのですが、今、見返してみると、怖いくらいに当たっている。やはり、バイサイドには変人が多いと感じた。

    この人以外にもたくさんの人間的に魅力的な人がたくさん登場するので、一度は手にとってみたらいかがでしょう。

    今回の金融危機で著者のバートン・:ビッグス氏はおぼれることなく、しっかりと生き残っているのだろうか。本書にも何度も示唆されているが、資産運用業界で生き残っていくのは、至難のわざである。

  • さてさて、ちょっと読みたかった本が手に入ったので
    読みました。
    The investment bankいわゆる純粋な投資銀行である
    モルガン・スタンレーのパートナー、ストラテジストを経て
    現在はヘッジファンドを運営されている方が書いている
    ヘッジファンドに関する本です。

    感想としては、わくわくして面白いです。
    すごい非現実世界であったヘッジファンドがさらに
    非現実的に見えて来ます笑

    個人的に面白く感じたのは二つ。

    ・ヘッジファンドはどんなにマーケットが悪くてもリターンを出さないといけない。
    通常運用の会社というのはインデックスを相手に評価されます。
    インデックスとはTOPIXとかS&P500とかのその株式市場の平均です。
    例えば、大暴落が起こって、TOPIXが50%減っていたとしたら
    運用会社が55%で運用していれば良いのです。
    ところが、ヘッジファンドは違って、いくらマーケットの状態が
    悪かったとしても常にリターンを出さなければいけません。

    ・儲けすぎると客は離れる
    ものすごい偶然か優秀なトレーダーのおかげで80%とかの
    利益を叩き出したりしたら、客は増えるかと言うと
    ヘッジファンドの世界は違うらしく、逆に離れていくみたいです。
    顧客達はリターンが高すぎる会社も敬遠するようです。
    なんでかちょっと考えて見たんですが、リターンを高く出した
    っていう事は分散から考えて翌年は失敗しそうだからでしょうか。
    運用する人達の気が抜けてしまうと考えるからでしょうか。
    後者だったら、分からないでもないですが
    前者だったら、イロジカルですよね。
    だって、大きなリターンを出す前と全く状況は
    変わっていないですからね。
    でも、世の中って結構そういう考えに縛られています。

    例えば、毎回5%の確率で当たるスロットに対して
    おばちゃんが遊んでいるときに
    「もう500回も回しているから、次こそ当たるはずだわ」
    って思うのと一緒ですよね。
    だって、結局一番最初にプレイした時と当たる確率は変わらないんですから。


    最近、本を買う時は目次と筆者の経歴を初めに見るので
    ここで目次も紹介する事にしました。

  • ヘッジファンド業界について色々な例が書かれている。収益評価やアルファに対するストレスは相当なもの。資金を集めるところとケインズの話は秀逸。

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