朽ちるインフラ―忍び寄るもうひとつの危機

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  • 日本経済新聞出版社
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レビュー : 31
  • Amazon.co.jp ・本 (289ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532354596

作品紹介・あらすじ

老朽化する道路・橋、学校、水道管…もう先送りは許されない。更新投資毎年8兆円という巨額の"隠れ債務"の存在を明らかにし、少ない予算で効果をあげる知恵・先進事例を解説する。

感想・レビュー・書評

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  • 少子高齢化で使用可能な予算が減少する中、今後加速度的に過去のインフラに対する維持更新投資が必要になってくるという危機感およびそのための処方箋を提言した名著。危機感とともに、問題の先送り・見て見ぬふりに対する筆者の静かな怒りも伝わってくる。

    公民館や図書館など、「必要か?」と問われれば必要と答えるだろう。「欲しいか?」と問われれば「欲しい」と答えるだろう。だが「学校の耐震工事を犠牲にしてでも必要か?」と問われたらどうする?
    公民館はほとんどが一部のサークル活動に使用されるのみ。パブリックオピニオンを募集すれば「賛成派」は高らかに必要性を訴え、「特に欲しくない派」は沈黙するのみ。
    図書館も、私自身もちろん必要だと思うし活発に利用しているが、本の貸出1件に1000円掛かる(総費用を貸出件数で割る)という実態を聞けば、少なくとも現状維持ではなく、予算を削減し他の安心安全に関わる案件にリソースを回してほしいと思う。

    結局のところ、「私でない誰かが負担している」(P.176)という公共投資にありがちな錯覚が問題の矮小化を引き起こしてしまう。

    いま団塊世代が引退して行っているが、これまで日々事業に携わり財務書類もよく理解できるこの引退企業戦士の知恵を活用するという案は面白い。聖域主義をとらない・予算配分だけでなく効率UPや先端技術などの知恵も資源として活用できる等々。

    なお、お役所では貸借対照表や損益計算書の概念がないというのは最近知った驚きの事実。現金主義、いわばキャッシュフロー計算書しかないようなものらしく、それでどうやって投資判断を行っているのか、びっくり・・・

  • 公共施設やインフラの老朽化に警鐘をならした書として、意義の大きい本である。最初の未来予測のシナリオは流石に少しオーバーな気はしたが、公共施設やインフラの老朽化が将来の日本にとって大きなリスクになるという問題意識には強く共感した。
    施設仕分け(統廃合)や公共施設の多機能化といった具体的な処方箋についても方向性として間違っていないと思う。
    現在、本書の発刊もきっかけとして、国・地方自治体あげて公共施設・インフラの老朽化対策への取組みが始まっているが、本書で指摘されているように、公共施設マネジメント白書等による「見える化」によっていかに住民を納得させ、本書で示されたような処方箋を実行できるかが問われていると思う。

  • 公共投資に無理がある状況ということは話には聞いていたけど、実際に自分でも事態の深刻さとその対策を押さえていく必要があると思って読んでみた1冊。公共施設の維持管理、古民家や古い建物がいいと言う人も増えたりしているけど、耐用年数を越えた建物やインフラを使い続けることのリスクはどこまで考えられているだろう。そして、スケルトン・インフィルによって機能を落とさず施設を統合することはかなりのメリットが期待できるのかなと思いました。
    それと、この本の中でのインフラは主に建物や橋梁、上下水道というものだったけど、電線や電話線、通信回線についても社会インフラとしてあるべき姿は知っていかないといけないかなと思いました。いずれにしても、「推測するな、計測せよ」が大切ですね。

  • インフラの老朽化について警告。
    今後数年のうちに、国内におけるインフラ施設が老朽化で問題になることが示されている。
    対策としてただ補修に金をかけるという単純な方策ではなく、複数の事業の統一化、施設の統廃合を進めることなど、今後収縮してゆく社会を見据えた対策に思えた。

  • インフラの設計に従事して、耐用年数の考え方にはいつも違和感があった。本書の指摘は起こるべくして起こる事象であり、官民の意識ベクトルを一致させて取り組む必要がある事は、疑う余地なしだ。更新時期のシミュレーション方法を提案しているところが、実務者には役立つ内容である。
    ただ、公共建築物の事例が中心のため、著者のプロローグでの警告がボヤけてしまっているのが残念。

  • 笹子トンネル事故の前にインフラの経年劣化の問題を指摘した。都市計画の視点が不足している、PFIやPPP等の見通しが甘いなどの課題はあるものの、経済の側からインフラの劣化問題を社会に大きく提示した。東日本大震災前の情報に基づくもので、一般向けであり、状況がすでに大きく変わったところもあるが、それでもすべての工学系、とりわけ社会基盤、都市工、建築系には必読。(都市工学専攻)

    配架場所:工14号館図書室
    請求記号:AC:N

    ◆東京大学附属図書館の所蔵状況はこちら
    https://opac.dl.itc.u-tokyo.ac.jp/opac/opac_details/?reqCode=fromlist&lang=0&amode=11&bibid=2002979603&opkey=B147995756323117&start=1&totalnum=1&listnum=0&place=&list_disp=20&list_sort=6&cmode=0&chk_st=0&check=0

  • 備忘録的に内容を箇条書き。


    地方分権の美名のもと、交付金の使い途が、「ハコモノ」に。
    老朽化した公共施設の改修は必要だが、使われそうもない「〜センター」などの公共施設の着工が相次ぐ。


    各自治体における橋の老朽化
    公共施設の老朽化問題
    ・各都道府県で老朽化問題を抱えるが、特に大都市圏で深刻な問題になっている。


    水道管の老朽化とその問題
    ・築30年以上
    ・水道管の破損による道路の陥没
    ・地方で深刻(地方では80%以上のところも)→神奈川は30%→各地方団体の水道管理者の方針による


    莫大な経費がかかる。いっぽう予算もとりつけられない現状。


    「認識不足型」
    ・公共投資は充分してきた。これからは教育・福祉
    ・交付金は別のものに有効に使うべき
    「国家責任転嫁型」
    ・国の責任ですべきという考え方
    ある議員「国が地方に公共投資をさせたのだkら、国の責任だ」
    「首長責任転嫁型」
    ・主権者である市民の希望に応じた結果が公共投資、そして財政の肥大化を生んだ、つまり、首長がわるい→更新投資は選挙の票にならない(しかし、ハコモノはつくる)
    我々住民の問題でもある。監視すべきもの


    社会資本老朽化問題に取り組むためには、客観的な情報の把握が必要。
    客観的な情報、つまり数字を提示し、マネジメント(実行)することが必要である。

    情報公開と市民参加
    民間提案を活かす
    全体最適の観点からの「集中と選択」



    「国全体で、将来多額の社会資本の更新投資が必要になるのは、少し考えればわかったはずた。我々は、わかったはずのことを放置して、自らを困惑させ、矛盾した状況に追い込んでいるのである」(『朽ちるインフラ』より)」

  • アメリカでは1970年代後半から2000年代にかけて老朽化した橋の崩落事故が相次ぎ、国民を震撼させた。1929年に起こった大恐慌。その経済と雇用を下支えした公共投資によって建設された橋の老朽化が放置されていた結果である。
    同様の社会問題が、30年遅れて日本に現れつつある。日本のインフラ(橋だけでなく、学校、図書館、病院、公民館、上下水道、ごみ処理場といった公共施設を含む)は東京オリンピックや大阪万博開催を臨んだ1960年代に集中的に建設されているため、2010年代に一斉に耐用年数の限界を迎えることになる。これを放置すれば、危険な事故が続発するようになってしまう。
    すでに使用規制や中止が必要なほどに老朽化した橋が、実は全国で1,764箇所。そして、橋は全国に68万あるが、日常的に点検・管理されているものはごく少数で、そもそも38%の自治体は定期検査すら行なっていないという事実。
    東日本大震災で、建築基準法が要求している耐震基準を大幅に下回る揺れにもかかわらず崩壊した建物群、そして昨年末の笹子トンネル崩落事故。

    もう先送りを許されない現在の各インフラの状況、毎年計上される巨額の更新投資(債務)の存在、現状を打開するための先進事例、建設手法やマネジメント手法を、豊富なデータとともに論じる。

  • 現状に対する警鐘と、著者のグループが開発した現状把握のための作業手順の紹介。

  •  老朽化が進むインフラへの危機感を覚えることは少ない。本書では、インフラの整備、更新、統廃合の必要性とその具体的な手法を述べている。自治体関係者向けの本だが、この本が普通に市民の手に回る社会こそ、著者が望んでいる社会像だ。拡大を続けたインフラは30~40年が過ぎ、まさに更新の時期を迎えている。人口の拡大に合わせて作られた公民館、図書館、道路、水道などの設備更新費は膨大で、一斉に取り替える財力はない、という認識を等しく持たないと、ここで書かれている「崩壊のシナリオ」を歩むことになるらしい。
     プロローグに書かれている「崩壊のシナリオ」では、インフラの更新・改修を訴え続ける国会議員たちが「そんなことは起こりえない」と一蹴され、やがては国の財政破綻へとつながっていく。そんなことは起こりえない、というのはたやすいが、実際にトンネルの天井が崩落した凄惨な写真を見たら、起こりえないことはないこと嫌でもわかる。
     楽観論や感情論はデータで排除すべし、という主張は、強烈かもしれないし、自治体職員は「それは無理でしょう」と中間に陥りそう。まあ、そうなれば、やっぱり崩壊のシナリオを歩むのでしょう。今、公共投資が活発になりつつあるけれど、その投資の方向性を精査する必要があるし、危機感を覚えるべき。

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