自由市場の終焉: 国家資本主義とどう闘うか

  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (266ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532354640

作品紹介・あらすじ

中国、ロシア、湾岸諸国が主導する「国営企業による市場支配」を食い止められるか。気鋭の政治学者が、新たな資本主義の実態に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 共産主義の理想郷< 指令経済<< 国家資本主義 自由市場資本主義>>自由市場経済 >リバタリアニズムの理想郷

    これらの両極端の間に現実世界の様々な資本主義が位置する

    〜国家資本主義の由来〜
    主立った採用国は中国、ロシアに代表されるようにリスク回避を強く意識している。数十年にわたり秘密主義と中央集権支配の伝統が形作った国々が、アイデア、情報、人材、資金、財、サービスの他国からの流入が増える状況を受容するに際し、全力でこの流れを制御し、リスク管理に最新の注意を払おうという当然の帰結を得た。

    このような国家資本主義と権威主義政治の自然な結びつきは、君主制を敷くペルシャ湾岸のアラブ諸国(サウジアラビア、UAEなど)にも認められる。

    第一の波(1960年代)
    産油国が互いに協調すれば買い手(欧米の多国籍企業)市場を売り手市場に転換できることに気づいた資源ナショナリズムの台頭によるもの
    第二の波(1980〜90年代)
    新興国における経済の自由化と成長により消費需要が急拡大し、グローバル経済に参加したが、欧米の資本主義からの搾取を防ごうとするもの
    第三の波(2005年頃)
    新興国の成長により世界各地で巨額の余剰資本が蓄積され、SWF(政府系ファンド)の必要性が生まれた。利益、政治的効果を制御するSWFの存在感が高まったものによるもの
    第四の波(2008年以降)
    自由市場資本主義のせいだとされる世界経済のメルトダウンの影響で、欧米の政府でさえも凄まじい規模の経済介入をせざるを得なかったもの

    〜世界が直面する難題〜
    グローバルな商取引の機会は広がるが、機会は依存を育むのであるため、欧米企業や政府が新勢力の経済への依存を強めた場合に、国際的な政治情勢をきっかけとする対立により、脅威的な状況に置かれる可能性もある。

    また、ジャックウエルチが主張した経済効率性最大化のための株主利益を最優先するという考えも、必ずしも株主が長期視点ではなく投機的な所有により短期的思考をもつことが明らかになってくると、同氏ですらその考えを否定し市場介入者の必要性が合意されるようになった。

    では、国家資本主義が今後は加速するのか、それはノーだ。政府が国家資本主義の手段を使うのは政治上の目的を達成するためであって、公共の福祉に方しするためではない。政治上のリスクを最小限に抑えることが狙いであり、経済効率を高めたり公平な配分を実現する手段ではない(中国でも、サウジなどでも、国内の政府への不満解消が重要になっている)

    何をすべきか・・・。
    ①「アイデア、情報、人、資金、財、サービスがますます自由にグローバル取引されるようになると、グローバル経済はより大きな繁栄と開放に導かれる」という期待はしぼむ(自由市場制度と、国家資本主義制度の衝突による摩擦が経済成長の足かせとなるから)
    ②政府が自国や近隣の政治課題に注意を向けることが増え、近年の「世界のどこからでも機会を探して、最大限の効率性と収益性を追求しよう」という感覚が後退する
    ③国家資本主義制度を採用する国が広がることで、グローバル企業はもっとも効率的な手段を採用できない可能性がある

    米国が、世界銀行、IMFなどの国際金融機関への影響力をもち、欧米型の成長をフォローさせるというスタイルから、新興国が資本主義を取り入れ自律的に成長するというスタイルに転換している。そのような中で欧米諸国に搾取されまい・・という動きは出てくるだろうが、保護主義や指令経済に戻ることはない。

    自由資本主義(米国型/欧州型)と国家資本主義の綱引きのなかで、繁栄を支えてきた原則を遵守する姿勢が問われている。

  • 表題で誘って、実は国家資本主義の終焉だった。

  • 最高。現代版世界史の教科書と言える。データが豊富。保存版。

  • 静かなる大恐慌、で見たのかな?
    新進気鋭の経済学者、と聞いたが、はて。あまり新しい視点は得られない。

    今のアメリカの軍産複合体やグローバル企業群と、ロシア、中国の国有企業群と、果たして何の違いがあるのか?
    彼らの歩んできた歴史や文化の違いとしか思えない。Eトッドの方が的を射ている。
    多分、この本が教えてくれるのは、イデオロギーとして自由市場を盲信する人々が少なからず現存する、ということだろう。レトリックとして賞賛、称揚するのは悪くない。
    が、本気で信じて国体を弱体化する愚を冒してはならない。

    「国会資本主義は、グローバリゼーション、すなわち何億もの人々を貧困から救い、グローバル規模で中産階級を勃興させている仕組みを、おおもとから壊すのだろうか?」
    このフレーズは、本気で著者の良心を疑う。かと言って、No Bland、は嫌いだが。

  • 【政治】イアン・ブレマー

  • 日経新聞にも時折コラムが出ている、ユーラシアグループ代表で「Gゼロ時代」などの著書でも有名なイアン・ブレマー氏の著書。

    中国やロシアのような「国家資本主義」の国々と「自由市場主義」の国々との比較、そして世界中に展開している民族主義や利己主義などの幅広い情報を詰め込んだ良書。

    特に新興国(中国の記述が多いが)が今後、グローバル市場の中でどのような勢力になっていくかを鋭く切り込んでいる本。

    難解ではあるが、非常に示唆に富む良書。

  • 国内の不満や圧力が高まってくると、非常に分かりやすい形で隣国をはじめ国外に政治問題を吹っかけてくるのは、よく見る手法のひとつであるが、結局そのような方法を採る背景には、国家が国民感情はじめ向かうべき方向を先導し、あるいは国外に下駄を大いに預けてしまう姿勢に疑問を持たない考え方が現われているのだろう。

    本書のいう国家資本主義とは、民間の競争にあって、共産主義の再来ともいえる大きな(大きすぎる)政府による国内産業保護を指す。

    先月訪問したコスタリカであった、巨額のコスタリカ国債が中国により購入されたため親台湾の姿勢に変化があったという話に本書でも触れられている。競争相手間においては壁を築き、一方でシンパを築く点にも余念がない。

    情報化の波のなかにあって多面的な戦略ともいえる国家資本主義の適者生存は、成立するとすれば市場経済のあり方を根底から変えていくといえる。

  • 歴史軸と地理軸で多岐に渡って情報が多い為、メモが意味をなしていませんが、とりあえず以降は本からの引用メモです。気になったら再度読めばいっか。//多国籍事業 世界の経済産出量の1/3を上位100社が。国営の巨大エネルギー。重商主義...富国強兵を目指す経済ナショナリズム。国家資本主義、自由市場資本主義。資源ナショナリズム。政府系ファンドswf。サウジアラビアの王室、ロシアの権力者層、中国の共産党幹部…。デカップリング。

  • 足で裏取りする天才が書いた地球のこれからは、フロリダ著「クリエイティブ・クラス」の様にホントに残酷だ。こうすればといいんだ、というサンプルが見当たらない。でも、だから、考えられる。

  • 国家資本主義台頭の経緯とその本質を整理、理解するのにとても良い本。日本を含む先進国の人口構成と移民政策など、様々な切り口で示唆に富んだ内容。

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著者プロフィール

ユーラシア・グループのプレジデント及び創業者。
スタンフォード大学にて博士号(旧ソ連研究)、フーバー研究所ナショナル・フェロー。コロンビア大学、東西研究所、ローレンス・リバモア国立研究所を経て、ニューヨーク大学教授。現在はコロンビア大学国際公共政策大学院にて教鞭を執る。1998年、地政学リスク・コンサルティング会社、ユーラシア・グループをニューヨークに設立。毎年発表される「世界10大リスク」でも定評がある。 主な著書に『「Gゼロ」後の世界』『対立の世紀』がある。

「2022年 『危機の地政学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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