投資で一番大切な20の教え 賢い投資家になるための隠れた常識

  • 日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (316ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532355395

作品紹介・あらすじ

世界最大級の資産運用会社の創業者が、長年にわたり顧客に送り続けてきたレターを元に、成功する投資哲学を伝授。

感想・レビュー・書評

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  • 勉強になります。
    投資への姿勢を見直すきっかけになった。

  • 雰囲気で資産運用を始めて半年が経ち、そろそろ投資に関する本を読もうと思い始めた。
    「ウォーレン・バフェットがオススメする投資本」みたいなリストをネットで見かけたんだけど、その中でも手に取りやすそうな本書をまず購入してみた次第。

    「20の教え」というタイトルからはライトでポップな内容を想像していたのだけど、良い意味で期待を裏切られた。
    各章で語られる内容は、非常にクリティカルで本質的だと感じた。雰囲気で投資をやっている自分にとっては、時として耳が痛くなるような言葉もあった…笑

    以下、初心者的に学びのあった箇所を一部抜粋。

    - 投資とは未来に対処すること
    - リスクとは資本を失う可能性
    - 本質的な価値を見極めて、それよりも安い価格で買うべし
    - リスクを取るなら、リスクプレミアムを期待するべき
    - リスク回避とリスクコントロールは別物
    - 逆張りとは大衆と違うことをするのではない、大衆の行動に潜む間違いを考察すること
    - 強欲、恐怖、嫉妬、自己欺瞞、うぬぼれと言った、投資に悪影響を与える感情を自覚する
    - 懐疑主義イコール悲観主義ではなく、楽観的に見ることができるのも懐疑主義

    テクニカルな内容は書いてないけれど、投資家としてのメンタルを醸成させてくれるような書籍だった。また折を見て読み返したい。

  •  節約して低コストで分散が効いたインデックスファンドを買う、で満足している自分には難しくて挫折してしまった。
    まずこの本における「成功する投資」とは市場と他の投資家のパフォーマンスを上回ることらしい。その時点でインデックス投資が最適解な自分としては読む必要がなくなってしまった。
    またハウツー本ではなく投資哲学の本らしく話が抽象的で専門用語もよく知らない自分には結局何が言いたいのかわからなかった。
    投資を仕事にしたり、より早くfireしたい等で個別株に手を出す人が基礎的なことを勉強してから読む本なのかなと思いました。

  • 以下、感想と気になったことを記載。
    ☆はじめに

    ①投資を考えるにあたって重要なのはリスクコントロールである。リスクテイクと比べたリターンという概念が大事である。

    ②最も大きな教訓が得られるのは失敗したときである。自分の身に起こった失敗から学んだうえで得られた経験が何よりも尊い。

    ❶二次的思考をめぐらす

    ①投資というものはアートと科学の2面性がある。人間の心理面が大きく作用することから、理路整然と動かない場面も多く、アートの側面が強く出ることを理解する。

    ②他の投資家を上回るパフォーマンスを上げるには二次的思考が必須だ。これは、『この会社の業績は良いから買いだ』とか事実に基づいて単純に考えるのではなく、例えば、コンセンサスと比べてどうなのか?今の株価バリュエーションはどの程度の業績拡大を折り込んでいるのか、きっちり自分なりの意見を持っておくことが大事である。

    ③他の投資家を出し抜くことで並以上のパフォーマンスを得ることができる。考え抜く力を身につけたい。

    ❷市場の効率性(とその限界)を理解する

    ①アクティブ投資の7割がインデックスに勝てないというのは有名な話である。ただし、投資家の感情というのは非効率の典型であり、ここに勝機がある。

    ②ポーカーの世界には『45分たっても誰がカモかわからなければ自分がカモだ』という格言がある。非効率的なマーケットにおいても同じことが言える。

    ❸バリュー投資を行う

    ①本質的価値の測定がバリュー投資の第一歩である。

    ②バリュー投資は『今日の本質的価値』にかける投資であり、グロース投資は『明日の本質的価値』にかける投資である。

    ③リサーチの結果、本質的価値が100だと判断したものが50まで下がるのであれば、バリュー投資の考えであれば当然買いに行くだろう。すぐに100に向かって戻るのであれば良いが、往々にして下り続けることもある。その場合、自分の判断は正しかったのかという葛藤が始まる。正しい見方をしていてもメンタルが弱ければ役に立たない。もっと悪いのは間違った見方をしていた場合で、意固地に自分の見方に固執した場合、もう手がつけられなくなる。

    ❹価格と価値の関係性に目を向ける

    ①投資は『良いもの』を買うことではない。『ものをうまく買う』ことで成功する。

    ②どんな良いものでも高すぎる値段で買ってしまうとわるいものになってしまう。

    ③短期的には心理面とテクニカルの要因によって動く。投げ売りする人から買うのが最良であり、逆側になってはいけない。そうならないように長期的な資本と強いメンタルが必要になる。

    ④本質的価値を算定する際は分析力が必要だ。価格と本質的価値の関係性を理解するうえでのカギは主として投資家の心理を読むことである。短期的には、投資家心理はファンダメンタルズとは関係なく動きうる。

    ⑤投資は一種の人気投票である。最も危険なのは人気の絶頂にある資産を買うことである。ピーク時にはあらゆる好材料が折り込まれ、それ以上の価格で買う買い手は現れない。
    最も安全なのは買い手が誰も現れない資産である。

    ❺リスクを理解する

    ①投資を一言でいうと未来に対処することである。未来のことなど誰も分からないから、リスクは避けられない。リスクに対処することが投資の必須要素である。

    ②教科書的には『リスク=ボラティリティ』であるが果たして正しいのだろうか?『ボラティリティが高いのが恐いから、もっと儲かるものが良い』というより『損するのは恐いからもっと儲かるものが良い』という表現の方が自然ではないか?要するに、リスクとは損する可能性(損が発生する確率についての不確かさ)と考えた方が良いと思う。

    ③損失リスクは必ずしも脆弱なファンダメンタルズから生じるわけではない。ファンダメンタルズが良くなくても、安く買うことができれば充分に利益が出る可能性はある。

    ④マクロ環境が悪くなくてもリスクは存在しうる。傲慢さ、リスクに対する無理解と無配慮、それにちょっとした材料が組み合わされることで大きな混乱が起こる可能性はある。

    ⑤リスクは楽観的過ぎる心理とそれに伴う行き過ぎた価格となって現れる。投資家は夢のあるストーリーに熱狂し、また直近の高パフォーマンス資産に群がる。目先は良いかもしれないが、この状態は良い事のほとんどを既に織り込んでいる。

    ⑥リスクの捉え方は十人十色であり、計量化できない。機械的に判断されるものではないのである。

    ⑦市場が良い時に、最も高いリターンを上げるのは、最も高いリスクをとった者であることが多い。では、この人間は狙ってこのリスクを取ったものなのか?何も考えずにとった行動がたまたまうまくいったのか?
    短期的には誰にも分からない。

    ⑧確率と結果の間には大きな違いがある。いつだって起きそうなことは起きず、起きそうもないことが起きる。オプションなどのデリバティブは正規分布に基づいて作られているが、しばしば例えば3シグマ以上の外れ値の起こりそうもない事態が頻発する。

    ⑨リターンの質を判断するうえで取ったリスクの評価が大事であるが、リスクは計量できない。リスクを評価できるのは二時的思考を持った人間なのである。

    ⑩予測は過去の常識の範囲内で立てられる傾向がある。ほとんどの場合、過去の延長線上で物事を判断し、大きな変化を軽視するのである。

    ⑪人はリスクを計測し、全く経験したことのないメカニズムを理解する自分の能力を過信する。例えば、膨大なマーケットデータがある中で、過去の延長線上で物事を捉えてしまい、現在そこにあるリスクを軽視してしまう。

    ❻リスクを認識する

    ①投資で必要なのはリターンを生み出すこととリスクコントロールの両方が必要だ。そして、リスクコントロールにはリスクの認識が必要である。

    ②上昇トレンドが出来ると、人々はリスクに対して鈍感になっていく。リスクをとって、その結果リターンが出たら、より強欲になり、リターンを繰り返す。相場で痛みが出るまで、ポジティブフィードバックは続く。リスクがなくなったと思い込みが価格を押し上げ、期待リターンを劇的に下げてしまうのだ。

    ③うまい例え話がある。登山専門家曰く『登山者が安全装備を充実すると、よりリスクを冒してしまい、かえって安全性が低下してしまう』とのことだ。金融市場にも同じことが言える。データ分析がより高度になって、どんな相場も分析できると思い込んだ結果、リスクに対し無理解になってしまうのだ。

    ④現在の資本市場線は切片や傾きが非常に低いものになってしまった。リスクリターンが低いものになってしまい、かつ過去のリスクをとった投資がうまくいっていることもあり、人々はリスクに対して鈍感になっている。(債券のイールドカーブを考えるとわかりやすい?)

    ⑤リスクの実態は複雑怪奇である。人はリスクを認識する自身の能力を過剰に評価する一方で、リスクを回避する行動を過小評価する。(要は損切りできない)
    こうして必要以上にリスクをとってしまっている。これを改善すべく二時的思考が必要だ。

    ⑥皆がリスクが高過ぎるというもの程、潜在リターンが高く、皆がクオリティが高いと評価しているもの程、潜在リターンが低くなるというパラドックスが生じる。問題はクオリティではなくいくらで買うかである。大事なのはいくらで買うのではなく安く買うことである。コスパである。

    ❼リスクをコントロールする

    ①すぐれた投資家は優れたリターンと同様にリスクコントロールも優れている。

    ②すぐれたリスクコントロールというのは良い相場の時は分からない。損失はリスクと良くない出来事が重なった時に起こる。損失は起こった後にしか認識できないからである。

    ③リスクは身近に潜んでいる。極端に振れるマーケットは稀にしか起こらない。こうした凪の相場が続く程、人間はリスクに対して鈍感になる。すると、レバレッジをかけるなど、どんどん貪欲になってゆくのだ。特に、今のマーケットは資本市場線の傾きが以前と比べて低くなっている。よりレバレッジをかけてリターンを得なければいけない誘惑に駆られやすい。

    ④インデックスと同じリスクで高リターンを上げるよりも、リターンをより低いリスクで出せるものが優れた投資家である。

    ❽サイクルに注意を向ける

    ①ほとんどのものにサイクルがあるという認識は必要不可欠である。

    ②利益や損失を生み出す大きな機会は皆が物事にはサイクルがあることを忘れた時である。

    ③サイクルの中でも特に重要なのが信用サイクルである。不可避で極端で順応した投資家に大きな利益をもたらす意味で押さえておきたい。

    ❾振り子を意識する

    ①全てが順調でうまく行っている時、投資家は慎重さを忘れて買いに殺到する。一方で、市場が混乱に陥った時、投資家はリスクを取る意欲を失って売りに殺到し、バーゲン品が生まれる。

    ②強欲と恐怖のサイクルはリスクに対する投資家の変化によって起こる。強欲が優勢になると、投資家はリスクを取ることと、それに伴うリターンに心地よさを抱く。一方で、恐怖が蔓延するとリスク回避志向が強まる。

    ③投資家のリスク許容度が高い時はリターンが低くなることが多く、一方で投資家が過度にリスク回避的な時はリスクに見合うリターンが得られることが多い。

    ④『賢明な人間か最初にやること、それは愚かな人間が最後にやること』である。

    ⑤多くの場合、崩壊は価格の調整を引き起こす特異なことが起こっているのではなく、それまでのブームが行き過ぎたせいで起きると思った方が正しい。

    ⑥振り子は一方向に進み続けることはないし、一端にとどまり続けることもない。

    ⑦上げ100日下げ3日という相場の格言があるが。それはこの振り子の論理をよく表していると思う。上昇の期間と幅が大きければ大きい程、下げの幅と日数も広くなる。

    ➓心理的要因の悪影響をかわす

    ①儲けたいという感情、儲け損なった時の感情、他人が儲けていると聞いた時の感情、様々な感情は複雑に絡まり合って投資家の心理やマーケットに影響を及ぼす。その結果、人は間違うのだ。

    ②他の人間と差をつけるには過ちを犯す方ではなく見極めて利用する側にならなければいけない。

    ③大半の人間は感情に左右される。データを分析できる人間はたくさんいても、物事をじっくり見極めた上でメンタルを揺さぶられずに判断できる人間は少ない。

    ④強欲と楽観主義が組み合わさった時はリスク量に比べて潜在リターンが小さいにもかかわらず、リターンを追求すべく行動する。過大評価されてても、皆が買っていればまだ上がると思い込んで買う。確証バイアスが強く働く。

    ⑤恐怖と悲観主義が組み合わさった時はリスク量に比べた潜在リターンが大きくなる。論理的に説明出来ないほど安く放置されることもしばしばある。

    ⑥投資家の心理として、たとえおかしいと思っていても多数に同調してしまう心理がある。この同調効果と強欲の組み合わせが幾度も人々の主体性と懐疑主義を奪い、リスクに対する感覚を鈍らせてきた。

    ⑦人間は社会的な生き物なので、どうしても他人と比較してしまう。他人が儲けているとそこに嫉妬してしまうのは人間の性である。嫉妬が大きければ大きい程有害になる。

    ⑧自惚れも危険な心理である。特に物事がうまくいっているとき、うぬぼれは強くなる。うぬぼれは自分の分析力を鈍らせ、しいてはリスクリターンの捉え方を間違うの危険な状態に導いてしまう。

    ⑨強欲と心理的要因により、材料が過度に重視されて皆が買っている時に買わないこと、逆に、恐怖と心理的要因で暴落している時に売らないことが重要。暴落している時は買い向かうのである。

    11)逆張りをする

    ①周りが意気消沈して売ろうとしている時に買い、周りが浮かれて買おうとしている時に売るという行為は最も難しく、最大限の努力が必要だが、最大限の利益が得られる。

    ②逆張りは難しい。まず、本質的価値から乖離したものを選ぶことが必要である。加えて、自分の正しさが証明されるまでピークや谷底を過ごせる時間とメンタルが必要である。そうでなければ、市場の犠牲になってしまう。

    ③皆が儲かると思っているアイディアは既に期待リターンが折り込まれており使い物にならない。誰もが値打ちがないと思っている資産で、価値が見直された時に大きな利益が生まれるのだ。

    ④価格が超お買い得といえるタイミングは悲観の極限に近い状態にあり、メンタル的には間違いなく居心地が悪い恐怖感たっぷりのタイミングで買いにいかなければいけない。買う時に恐怖がないときは既にお買い得な買い物はできない。

    12)掘り出し物を見つける

    ①最良の機会はたいてい周りのほとんどの者が気づいていないものの中から見つかる。

    ②優良なものを見つけることはできる。優良なもので本質的価値から乖離したものを買わなければいけない。

    13)我慢強くチャンスを待つ

    ①市場は融通の利く機会ではない。欲しがってもその時に高いリターンをもたらしてくれるとは限らない。

    ②こちらから資産の価格を追いかけるより、資産の方からこちらへ来るのを待った方が往々にして良いパフォーマンスが出ることが多い。

    ③機会損失を怖がって、むやみやたらに動くと実現損が増えるだけ。

    ④儲かる機会を逃すことは損する投資に手を出すよりマシである。

    ⑤リターンの追求というのはまずい行動である。予想リターンが低い中で無理してリスクを取りに行くといいことにはならない。リスクは皆が避けている時に取りにいくべきもので、皆が取りたがっている時に取るものではないのだ。

    ⑥危機時の投資でカギになるのは売りを迫るマイナス要因から身を遠ざけて買い手の立場をとることだ。こうなるにはメンタルが何よりも大事であり、資産の本質的価値を見極めて、我慢強くチャンスを待つことである。

    14)無知を知る

    ①予測家には2つのタイプがある。無知な予測家と自らが無知であると知らない予測家である。

    ②マクロ経済が将来どうなるか知ることは難しい。未来に対して優れた知見があり、それを投資に活かせる人間がどれだけいることか。より狭い範囲なら優れた知見を持つことは可能だろう。ただし、全部をわかった気になってはいけない。

    ③投資家はいま現在、サイクルがどの位置にあるか、振り子がどの位置にいるかの把握に努めるべきである。そうすれば、将来の動きが分かるわけではないが、どうすべきかはわかってくるはずだ。

    ④専門家の未来の予想は、大抵は過去の延長線上にある。時として未来は過去とは全く違った様相になることを折り込んでいない。

    ⑤投資をするうえで限界が見えた場合、無理に前進しても仕方ない。それを受け入れて対処すべきだ。

    ⑥将来、何が起こるか分かると思っている投資家程、積極果敢な行動をしがちである。相場の動きを断定して、集中して時にはレバレッジをかけて投資する。

    ⑦相場には、いつでも謙虚に行動すべきだ。初心者ほど自信過剰に行動しがちである(ダニエルクルーガー効果)

    15)今どこにいるのかを感じとる

    ①この先どうなるかはわからないが、今どこにいるかは知っておくべきだ。

    ②市場サイクルは避けられず、パフォーマンスもその位置に大きく左右される。そのサイクルの期間、タイミングも予測不可能である。

    ③自分の周りで何が起きているかを観察して、自分がどの位置にいて、どのような振る舞いをすべきか考えるべきだ。

    16)運の影響力を認識する

    ①時として、こんなこと起こるはずがないということに賭けた人間が天才と賞賛されることがある。それは実力ではなく幸運によってもたらされたものだと認識すべきである。

    ②投資の世界はロジックだけで動くことはない。むしろ、運に大きく左右される世界だと認識すべきだ。

    ③歯科医が汗水垂らして稼いだ1万ドルと宝くじで当たった1万ドルは同じ価値だろうか。後者は明らかに運(ランダム性)の要素が大きい。『今とは違う歴史』があったら実現していないものだ。

    ④確率論に基づいて物事を考えるなら、ある1つの事実というものは『様々な選択肢から選ばれた1つ』であり、歴史はその選ばれた選択肢が連続したものである。

    ⑤短期の投資の成功はたいていの場合、然るべき場所でしかるべきタイミングによってもたらされたものである。問題は成功を続けることであり、これはスキルも併せ持たないと難しい。

    ⑥最も高いリターンを得た者は大抵は最も高いリスクをとった者であり、それはスキルによってもたらされた者ではない。

    ⑦我々は物事がうまくいっている時、それを自分の実力によってもたらされたものだと感じるし、偶然起こった出来事も因果性があて起こったものだと感じる。

    ⑧短期的にはランダム性そのものがパフォーマンスを左右する。ごく短期の変動も全て読めるマネージャーではない限り逃れることはできない。

    ⑨選んだ選択と結果は必ずしも望んだものになるとは限らない。正しいと思う選択をしてもうまくいかないことはあるし、間違った選択をしても結果としてうまくいくこともある。未来への選択をするために、結果から全てを判断をすると間違うことがある。

    ⑩確率論的なアプローチをする者(知らないことを知っている者)は結果はある意味神頼みであることを知っている。そのうえで、自分の力量の限界も知っている。

    11未来はどうなるかはわからない。判断の拠り所は己の資産の本質的価値を見極める力である。また、正しい判断をしても望まぬ結果になる可能性も考慮して行動すべきだ。

    17)ディフェンシブに行動する

    ①経験豊富な投資家がいる。大胆不敵な投資家がいる。しかし、経験豊富で大胆不敵な投資家はいない。

    ②然るべき場所と然るべきタイミングが合えば誰でも大儲けできる場合がある。(金融相場の初期であれば誰でも勝てる)一方で、結果を出すのが難しい局面で無理をしてリスクをとって退場してしまうこともある。

    ③投資家がとるリスクは当人の追求するリターンによって変わる。ポートフォリオに安全の要素を組み込むということは、潜在リターンをどの程度諦めるかによって決まる。正解はない。

    18)落とし穴を避ける

    ①大きな過ちを犯さない限り、投資家が正しく行わなければいけないことはほとんどない

    ②1回の負けで多くを失う例を数多と見ている。極端な例だが9勝1敗でも負けの1敗が大きすぎたら負けなのだ。

    ③過ちは分析や知識面での間違いと、メンタル面での間違いと2つある。

    ④サイクルが極端にふれているとき、振り子が端にきている時ほど同調と降伏を群集心理は強いてくる。ここに抗うことが投資で成功するために必須となる。そのために、以前に述べた自分が今どの位置にいるかを把握することが大事だし、資産の本質的価値を見極める力が拠り所になるのだ。

    ⑤投資家は当然リターンを期待して投資をする。その過程で、起こりそうもないマイナスの可能性を無視してはいけない。最近の金融危機のほとんどは、この起こりそうもないことが起こって、必要以上にとっていたリスクとレバレッジが想定外のことを引き起こしているのだ。

    ⑥市場が過熱しているときはカネは革新的な性能を謳ったものに流れる。(最近だと、アークETF、フィンテックなど)多くは市場が反転した時に耐えられない。強気相場の時は、我先にと投資をして上手くいかないことなど考えない。知らず知らずにリスクをとった結果、大きな損失を出すことになるのだ。

    ⑦資金調達が簡単になると、間違いなく流れてはいけないところにカネが流れる。それは市場が反転した時に耐えることはできない。

    ⑧長期的には価値の創造はファンダメンダルズによってなされる。ただし、短期的には資産の需給に影響を及ぼす投資家心理やテクニカル要因に影響される。投資家の信頼感は時として予期せぬ事態を招く。

    ⑨ボラティリティと折り合いをつけて人より冷静さを保つことができると過信していると(たいていがそうである)投資家は谷底で過ちを犯しがちである。谷底で損切りして、その後の反転上昇をとれなくなる恐れがある。

    ⑩ディフェンシブな投資の1番の利点はマーケットが売られている時に発揮する。ポジションを多く持った投資家は振り子が激しく振れると、それだけメンタルがやられることになる。精神的な余裕を持つことによって、客観的に自身の位置を把握して行動することができるのだ。それがあってはじめて資産の本質的価値と乖離した資産を見出して買うことができるのだ。

    19)付加価値を生み出す

    ①付加価値を生み出す投資家のパフォーマンスは非対称である。下げで被るマイナスより上げで享受するリターンの方が高い。これを実現させるのがスキルである。

    20)全ての極意をまとめて実践する

    ①投資を成功に導くにあたって土台になるのが資産の本質的価値である。投資家は買いを検討している資産にどれだけの本質的価値があるかをしっかり検討しなければいけない。

    ②価格と本質的価値の関係は短期的には心理的要因とテクニカルに左右されうる。その影響により、過ちを犯してしまうこともある。過ちを犯さずに利益を実現するには、これらの要因にしっかり対処しなければいけない。

    ③強気であれ弱気であれ市場は時として行きすぎるところがある。その場面で、早く気づけた者は得するが最後に気づいた者は痛い目を見ることになる。『賢明な人間が最初にやること、それは愚か者が最後にやることである』

    ④逆張りは常に儲かるアプローチではない。絶好の買い場や売り場は極端なバリュエーションの時に現れるので日常的にやってくるものではない。また、市場のセンチメントに反した行動をするので決して居心地が良いものではない。割安とすぐに反転することは同義ではない。急ぎ過ぎは失敗も同然である。然るべきタイミングが訪れるまでポジションを堅持する忍耐も大事である。

    ⑤投資を成功させるために必要不可欠な要件が無知を知ることである。自らのシナリオを過信せずに確率論的なアプローチを前提に行動すべきである。

  • 最良の投資方法とは、暴落時にどんな価格でもとにかく売らなければならない人から買い、ファンドの資金流入により、価格に関係なく買わなければいけない人に売ること!

    自分が投げ売りする側にならないよう、最悪の時期に資産を売らずに済むよう、長期資本と心理的な強さを持つ!

    投資の世界で最も重要な学問は会計学でも経済学でもなく、心理学だ!

    最も安全で、最も高い収益性が見込まれる投資をするには、誰も欲しがらないものを買えば良い。時間と共にその資産の人気や価格が変わるとしても、上にしか行かないからだ!

    市場は「より高いリスクをとれば、より高いリターンを得られる」ように価格を形成する。しかし、市場は何時もそのように動くわけではない。高いリターンが得られるのであれば、それはリスクの高い投資ではないからだ!

    大抵の場合、資産価格は割高でもなお上昇中、あるいは割安でもなお下落中、のどちらかの状態にある。知的で教養がある投資家も、可能な限り自分の信念を貫き続けるが、経済的、心理的な圧力が高まると、ついに「降伏」する。これはサイクルの最後の方に決まって現れる!

    強欲と人的ミスの結果、生じた好材料が闇雲に高く評価され、悪材料が無視されている時に、その輪に加わらない決断をすること。これが、バブルで損失を出さずに済むためのカギ!決して簡単ではない!

  • 投資スキルではなく投資哲学を著した良書。著者は世界最大級の投資運用会社「オークツリー・キャピタル・マネジメント」の共同創業者兼会長。
    本書で示されている投資哲学は、ディフェンシブな投資スタイルである。人間の心の弱さを取り上げ、「周りに流される」「上昇相場では強気になる」ことから、市場サイクルで下げ相場に振り子が振れた時に大損する人々(投資家)が多いことを指摘している。
    まさにその通りだと思う。我々は、未来は予測できず、また過去の経験は1つの参考値に過ぎないことを肝に銘じなければならない。そのうえで「誤りの許容範囲」を設定する。自身のデッドラインを定めることが大きく損をしないコツと言えるだろう。
    ギャンブルでは負けた分を取り戻そうとしようとし、雪だるま式に負けが膨らむ場合がある。投資も同様のことが起こりうるが、ギャンブルと異なり、投資は情報が多い。「投資先の企業は今後成長するか」「この企業の株は割安か」などを周辺の情報を収集し、予測や判断を行っていける。ただ、その予測や判断は必ずしも当たるわけではない。長期的視点に立てば、必ず「外れる」ことがある。著者はその時に大きな損をしないことの重要性を読者に伝えたいのだろう。
    本書は具体的な投資スキルを身に付ける本ではないので、この本を読んで実行に移せるわけではない。あくまでも「投資の心構え」として捉えるべき一冊である。

  • Newsサテライトで注目!
    世界最大級の資産運用会社の創業者が、長年にわたり顧客に送り続けてきたレターを元に成功する秘訣を伝授。

  • 即効性のある話は少ない。また、、本書を読めば直ぐに投資で大儲けできると言う本ではないので、それを求めている人は別の本に当たった方がいいでしょう。

    私としては、著者の投資に対する姿勢や考え方には共鳴するところも多い。最近投資信託の商品としては、インデックスファンドで十分との声が大きいような気もするが、著者の様な人が動かすアクティブファンドであれば購入してみたい。

  • 投資をする上での心構えを学べました。内容が濃く、とてもいっぺんには吸収できるボリュームではないので、実際に投資をして、また何かのタイミングで読み返しながらこの教えを学んでいきたいと思います。

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著者プロフィール

オークツリー・キャピタル・マネジメント共同会長兼共同創業者。
オークツリー・キャピタル・マネジメントの共同会長兼共同創業者。オークツリー・キャピタル・マネジメントの運用資産は1200億ドル以上。ウォートン・スクールにて金融を学び、シカゴ大学にてMBAを取得。ニューヨーク市在住。

「2018年 『市場サイクルを極める』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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