Who Gets What: マッチメイキングとマーケットデザインの新しい経済学

  • 日経BPマーケティング(日本経済新聞出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (339ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532356880

作品紹介・あらすじ

愛、臓器、人気企業への就職、有名大学への進学…世の中には「お金」では買えないものがある。互いが互いを選ぶ「組み合わせ」が必要なのだ。最適・効率的な「組み合わせ」は、どうすれば実現できるか。マッチメイキングとマーケットデザイン研究で世界をリードするノーベル経済学賞受賞者が、従来の経済学が扱わなかった新領域をわかりやすく解説。

感想・レビュー・書評

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  • マッチメイキングとマーケットデザインの経済学の本。
    学校で習った、需要と供給のみで価格が決まる市場ではなく、それ以外の要素が絡む市場、たとえば臓器移植のドナーと、臓器提供を待つ患者のマーケットを、いかに厚みのある市場にデザインするか?
    という研究について知見が深まった。

    が、私の読解力が足りていないのか、読み終わるのにかなりの忍耐力と時間が必要だった(^_^;)
    英文の日本語訳を読むのはどうも苦手だ…

  • 今まで漠然と、概念として知っていたこと。
    どうしたらもっと良くなるのだろう。
    そういった疑問の幾つかを、この本は解決してくれた。

    「一人の臓器提供者から、臓器を求める複数の人たちに提供する方法。」

    「合コンパーティーのような形で、男女が互いに、第一希望第二希望・・・第N希望を出し合った時、誰もが納得する方法」

    この方法の素晴らしいところは、パソコンに「この方法でマッチングを行う」と、予め入力さえしておけば、参加者が自分の希望を出し次第、直ぐに処理してくれる。
    とにかく早いのだ。世の中には無駄なマッチングで溢れてる。そのせいで不幸になる多くの人がいる。
    今後、様々なケースに適したマッチング方法が確立され、広がっていくことを予感させる、未来が楽しみになる本だ。

  • 商品などを購入する、されるではなく、カップルのような個々の組み合わせに関する経済学の話。自分には難解な話だった。
    構成としては、腎臓移植の話から始まり、学校の入学や研修の話だったり、馴染みがないのかイマイチイメージ出来ず。そして、それらの問題点、タイミングが合わない、抜け駆けだったり早すぎたり、混雑して正しく組み合わせが出来ないなど。
    最終的に解決策として保留式などが挙げられる。確かに第一希望に殺到して、あぶれた人がスムーズに第二希望に行けるイメージはない。
    世の中こう言った市場もあるのだなと思った。

  • マーケットデザインのお話。
    著者の研究内容と事例のまとめが多岐にわたり、刺激的で読みやすい。
    さまざまな他の入門書と違い、実際にデザインした立場人だからなのか理解しやすい。
    まだまだ進化していく分野として期待したい。
    オークションのベストと言わなくてもベター案が見えてきたし、
    市場には適切なルール作りが不可欠なため、見抜く力もいると見れた。

  • 本書は2012年にノーベル経済学賞を受賞したアルビン・ロス氏によるマッチメイキングとマーケットデザインの入門書になります。価格の調整だけですべての参加者が納得するような市場はコモディティ市場と呼ばれていて、小麦などがその例になりますが、多くの市場では価格という「見えざる手」だけでは売り買いを調整できない市場がたくさんあり、そこではマーケットをデザインする(エンジニアリングする)必要があるのです。つまり市場の失敗を、人間の叡智で解決していこう、という実践的な領域だと言えます。本書では、「市場の厚み」「混雑への対応」「安心そして簡単に利用できること」をマーケットデザインの要諦としていて、これは最近のプラットフォーム企業にとっても非常に重要な視点だと思いました。

    経済学を理論経済と実証経済という風に2つに分類することありますが、本書の内容は両方を網羅していることになります。つまり、まず仮説(理論)を構築し、それを実際に導入してうまくいくかを見る、ダメなら仮説を修正して再度実践する、というスパイラル的な動きです。その意味では、工学分野のエンジニアのように経済学者も世の中に役立つのだ、ということを示す領域だと言えるでしょう。リーマンショック後、混乱を引き起こした諸悪の根源として経済学をみるような風潮も生まれましたが、経済学すべてが悪いわけではなく、人間理解を深める中で経済学の知識を正しく使えば、本書で示されているように人々の生活を向上させることができるのです。

    さすがにノーベル賞を受賞した方だけあって、各所に含蓄を感じましたし、初心者にもわかりやすいように本書は書かれていると思います。一番印象的だったのは、著者が市場を言語のアナロジーとして議論している点です。市場も言語も、人間の社会生活をスムーズに進めるために人間が生み出したもので、時代が変わればそれに適応するように変わっていく必要があるのでしょう。

  • ミクロ経済学による制度デザインの草分け的な一般書。

  • 市場自体がそもそもマッチングなのでトートロジー

  • アルビン・E・ロス『Who Gets What and Why』(櫻井祐子訳、日本経済新聞出版社、2016年)は、マーケットデザイン(取引制度設計)の第一人者による同分野の啓発書である。本書の主張は、成功するマーケットの裏には理屈があり、その理屈を応用して取引制度設計や調整を行うことで社会全体の利益を拡大させられる――というものだ。

    たとえば小麦はコモディティ(匿名化された財)と考えられている。売り手も買い手も好きなときに好きなだけ取引が行える。だが、これは決して「自然」な姿ではない。小麦の品質がバラバラであれば買い手は小麦を評価しなければならず、実際に過去の小麦市場は見本市のようだった。現在の仕組みは、シカゴ商品取引所が品質等級を導入することで達成されたものだ。同様のコモディティ化は、コーヒー豆においてはエチオピア商品取引所の開設(2008年)によって今世紀に達成されている。コモディティ化は、制度設計の1つの方向である。

    ところが、コモディティ化できない取引もある。たとえば住宅は一般に個別性が高い。婚姻や就職など人と人とを結びつける取引(マッチング)も、そうである。このような性質をもつ財でマーケットを成立させるには、何が重要か。著者は①厚み、②混雑の解消、③安全性、④簡便性が必要だと説き、腎臓交換プログラム、研修医マッチング、公立高校選択制など実際に携わった制度をもとに、失敗したマーケットを改善する様子を描いている。

    私はニューヨーク州の公立高校選択制度の事例に膝を打った。かつての制度では、マッチングに失敗し入学直前に事務局が一方的に進学先を割り振る生徒が毎年3万人出ていたのだという。また、生徒が「第一志望」として表明した高校が第一志望ではないケースもあった。安全策をとって志望校のランクを落とすのだ。新制度で採用された「受け入れ保留アルゴリズム」では生徒の志望順位に関係なく選考が行われるため、生徒が本心のまま志望順位を書けるようになっている。理論的には「安定マッチング」といい、ゲールとシャプレーによって1962年に証明されている。

    なお、理論的に正しい制度が常に採用されるとは限らない。まず、既存の制度には既得権を有する者があり、そうした関係者との利害調整が必要になるためだ。また、ある種の取引(麻薬、臓器売買、売春など)は、取引自体を不快とみなす人間の感情もある。では、不快なものを一律に禁止すればよいかというと、そう単純ではない。闇取引が横行し、反社会勢力が利益を得る結果に陥ることを、米国は禁酒法で経験している。著者は言語を引き合いに出し、既存の市場の改善が容易ではないとしても、機会をとらえて設計・改善していくことが可能だと締めくくる。

  • マーケットデザインの分野で2012年にノーベル経済学賞を受賞したアルビン・E・ロスの本。臓器の交換移植や学校選択のアルゴリズムが紹介されている。ゲール・シャプレーメカニズムはNHKのオイコノミアでも紹介されている。

  • 経済

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