ブロックチェーンの未来 金融・産業・社会はどう変わるのか

制作 : 翁 百合  柳川 範之  岩下 直行 
  • 日本経済新聞出版社
3.68
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本棚登録 : 96
レビュー : 10
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532357368

作品紹介・あらすじ

■本当のところどうなのかを解説
仮想通貨を支えるテクノロジー、ブロックチェーンが注目を集めつつある。技術は未熟な面があるが、通貨、金融サービス、契約・取引、IoTなど、経済社会の広範な分野に破壊的なインパクトをもたらす可能性があります。
■豪華な執筆陣がわかりやすく、包括的に解説。実務的・学術的関心にも応えます。
本書は、金融・フィンテック事情に詳しい翁百合氏、柳川範之氏、岩下直之氏の3氏をはじめ、経済学、法律、銀行、証券、ITなど各分野の実務担当者、官庁の担当者が一堂に会して、ブロックチェーンの可能性を解説します。本書にはつぎのような特色があります。
★わかりやすさ:本書は、ブロックチェーンを技術面から解説するのではなく、その特徴やメリット。その分類、課題や実践例などを平易に解説し、広く社会への影響をとらえるものです。
★包括性:ビットコインに代表される仮想通貨、国際送金などの金融サービス、企業のサプライチェーンへの応用、電子政府への導入など、さまざまな応用事例を具体的に、包括的に紹介。日本の実証実験の状況はじめ、海外の事例を豊富に取り上げます。
★実務的な関心に応える:各分野でブロックチェーン応用の実証実験に取り組んだ当事者が、執筆に参加しています。そのため、実務に即して何が課題なのか、どのような可能性が開けるのか、実践的観点に役立つ内容になっています。官庁の担当者も執筆に加わっているので、日本政府の姿勢もわかります。
★学術的な関心にも応える:金融政策や金融規制、金融システムとの関連、法的な枠組みとの関係、経済学の契約理論からどのように説明できるのかなど、学術面も含めたより深い知的な関心にも応えるものです。
★ブロックチェーンが社会を変えていく様を展望した「未来年表」のほか、用語解説集も盛り込み、充実した内容になっています。

感想・レビュー・書評

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  • ブロックチェーンに関する本を今年はたくさん読んだ。いくら読んでもしっくりと来なかったからだ。
    本書はとにかく具体的な事例が紹介されていて、イメージを実感するにはよい本だったかもしれない。特に金融系の実証実験の取り組みについては、実際の関係者が執筆者にも多く参考になるだろう。なかなか真面目な本である。

    ダイヤモンドの取引をブロックチェーン上で管理するエバーレジャー、貿易金融をブロックチェーンを使った台帳で管理する、エストニアでの電子政府の取り組みの中でのブロックチェーンの活用、などビットコイン以外でも一部の領域ではブロックチェーンの活用が進められている。エバーレジャーは、ダイヤモンド取引というかなり特殊な市場においてブロックチェーンの情報の非対称性を低下さえるという特長をうまくとらえてビジネス化している。他の宝石類や絵画・美術品などの高額商品にも適用できるかもしれない。

    現状、特に金融分野でのブロックチェーンは、合意形成アルゴリズムの技術的限界もあり、プライベート型もしくはコンソーシアム型が主流だが、将来的には技術的な課題が解決されることを期待して、パブリック型の可能性を追うべきであるとの議論はおそらく正しい。問題は、スマートコントラクトを実行させるにあたっても十分に実用的でスケーラブルな合意形成アルゴリズムがいつ実装されるかどうかであろう。またプライバシーの課題についても当然懸念される点はある。暗号化により情報の閲覧権限を限定することも可能だが、暗号化されているとはいえメッセージは広く共有されているため、少なくとも暗号解読の機会を従来より多く与えることになり、また一度暗号が解読されるような事態になったときには取り返しがつかないことになるリスクがあるという指摘もいずれ深く考慮しなければならないだろう。特に金融資産を扱ったり信用情報を扱うような場合にはますますそのリスクには慎重に取り組まなくてはならない。


    また、日本ではかなり早い段階より金融機関を中心に為替取引、KYC、勘定系システムなどの領域で実証実験が数多く行われている。この本でもJPX、住信SBIネット銀行など具体的に紹介されているので、そのあたりの理解には役に立つ。R3コンソーシアムの活動もこの本が書かれた時点ではアクティブであるようだ。著者らは、金融系のブロックチェーン実証実験に深くかかわってきた方々が多く、この辺りの情報については内容が豊かで参考になる。金融機関で単一の台帳を共有するようなことが可能になるのであれば、市場全体でのコストを大幅に下げることが可能となるであろうということだが、その実現性はどこまであるのだろうか。

    また一般論として中央銀行のブロックチェーンへの対応というのも大きなテーマのひとつとなる。中央銀行がデジタル通貨を発行するということについても、「中央銀行サークルでは...議論自体はごく普通に行われるようになった」らしい。政府の公的記録を、改ざんできないブロックチェーンの特性を活かして実装するということも試みとしては正しい方向のように思われる。この点ではこの世界では偉大な先行者であるエストニアの取り組みが直接参考になりそうである。本書ではそのエストニア政府の事例説明も詳しい。

    現状のビットコインについては、現状では決済通貨としての機能はほぼ果たしていない現状において、現行通貨を置き換えるようなことは近い将来においてはないだろうといわれている。ビットコインのナイーブな問題についても言及されており、こちらの行方もブロックチェーン界隈には大きな影響を与えそうである。

    一般論としてブロックチェーンによる台帳管理およびスマートコントラクトのメリットとしてまとめられた次のリストは常に意識をする必要がありそうである。逆に言うと、次のメリットが得られないような形での設計になっている場合には、あえてブロックチェーンを利用しなくてもよいとも言える。

    ①取引当事者のほかに帳簿管理者の存在を想定しなくてよいことににより、取引の複雑性を減少することができる。
    ②取引当事者が帳簿の更新を行うことできることにより、取引処理のスピードを上げることができ、資産の効率的な活用に資する。
    ③複数の帳簿記録インフラ間の帳簿の突合の必要性が減る。
    ④取引の帳簿記録の透明性の向上を図ることができる。
    ⑤分散型のデータ管理によりネットワークの強靭性を改善することができる。
    ⑥プロセスが削減され、第三者に一元的に帳簿を管理させる必要がなくなることにより、オペレーショナルリスクを低減することができる。

    また、スマートコントラクトによる自動実行は便利である反面、法律上の契約行為における整理は必要となるだろう。

    一方で現状シリコンバレーでの盛り上がりに欠けるが、それは技術的にはまだ未成熟であり、有望なディスラプティブなビジネスモデルの実現までまだ遠いと判断されていることの証左かもしれない。しばらくは地道に見ていくということが必要なのかもしれない。




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    今年(2018年)読んだブロックチェーン関連本一覧
    『決定版 ビットコイン&ブロックチェーン』のレビュー
    https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4492681434
    『新事業企画・起業のための 実践ブロックチェーン・ビジネス』のレビュー
    https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4820726617
    『ブロックチェーン イーサリアムへの入り口 第二版』のレビュー
    https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/B073TRC78W
    『信用の新世紀  ブロックチェーン後の未来』のレビュー
    https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/B078JKKXP3
    『ブロックチェーンの活路は人工知能との連携にあり DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー論文』のレビュー
    https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/B078T7DK6J
    『1時間でわかるイーサリアム入門 ~ビットコインに次ぐ仮想通貨をゼロから学ぶ~』
    https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4909288104
    『いまさら聞けない ビットコインとブロックチェーン』のレビュー
    https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4799320157
    『ブロックチェーン・レボリューション ――ビットコインを支える技術はどのようにビジネスと経済、そして世界を変えるのか』のレビュー
    https://booklog.jp/users/sawataku/archives/1/4478069964

  • ①ブロックチェーンは中央集権的な組織や国に依存しない取引の実現を目指したものである。
    ②ビットコインで使われているPoWでは、データの整合性と処理効率のバランスから十分ごとにブロックが生成できるように調整されており、即時性が必要とされる取引には向かない。
    ③ブロックチェーンの仕組みを正確に利用するためには、周辺アプリケーションの機能開発が重要になる。

    スマートコントラクトとはプログラムに基づいた自動的に実行される契約のこと。


    XRoad

    DAO DAC

  • 2017/10/18 初観測

  • ブロックチェーンによって、金融・産業・社会はどう変わるのか。3人の著者によって書かれてある。

    知らなかったこと。
    ・ダイヤモンド産業は、所有履歴がその商品の価値を形成している点が際立った特徴。
    ★ブロックチェーン技術が進呈すれば
    ①今までコストをかけて記録していた取引履歴がより安価かつ確実に記録できる可能性があること。
    ②そして不十分なかたちで記録されてきたものについても、より完全なかたちで取引履歴が残せるようになることが明らかになった。
    ③さらには、今まではコストがかかるなどの理由で、履歴が記録されてこなかった取引についても記録がとられ、安心感を利用者が得られるようになること。
    その結果
    ④いままで成立しなかった、あるいは予想もしなかったビジネスの成立を促し、新しいビジネスを成り立たせる可能性がある。
    ⑤また、情報の非対称性の構造が変化することにより、今までのビジネスモデルの構造が変化し、競争力の構造が変化する可能性がある。

    巻末にはブロックチェーンの未来像が年表としてまとめられてあることもいい。

    絶対に消せない技術の問題点も生じるだろう。

  • ブロックチェーン、分散型台帳技術者、スマートコントラクトなどについて、翁さん、柳川先生、岩下先生の編著でさまざまに検討するもの。仕事柄、スマートコントラクトと法について関心がありますが、うーん、具体的にどうするのか、なかなかしっくりこないところ。

  • ブロックチェーンは中央集権的なシステムに比べ、改ざんされにくい、システムダウンしにくい、というメリットから、セキュリティやバックアップにかかる費用を下げる効果がある。ただしデータベースの技術であって、アプリケーションは個別に開発する必要があるし、アプリケーション障害は起きる。
    またレスポンスにはunpermission型の場合、問題がある。

    現在、各社はアプリケーションなどが対応している前提でブロックチェーンの効果や課題を検証する実証段階が多い。金融部門では国際送金など、実際に手数料や時間がかかる部分への適用を目指している。この場合の法的な影響についても国と協力して整備している。

    エストニア政府はブロックチェーンが世に出る前から電子政府を進めてきている。x- roadは、インターネット上に構築され、セキュリティサーバーを経由して、繋がっている各システムのデータを取ってくることができ、同じことを国民に二度と聞かない、同じデータを複数のシステムで持たない方針。これには電気、通信の事業者も接続が許されている。

  • ★特に面白かった章
    第Ⅰ部 ブロックチェーンは社会をどう変えるか 翁百合
    第Ⅱ部第4章 仮想通貨のこれまでと未来 加納裕三
    第6章 銀行の勘定系システムのブロックチェーン実証実験:成果と課題 吉本憲文
    第Ⅲ部 産業インフラとしてのブロックチェーンの可能性 柳川範之
    第13章 経済学的にみたスマートコントラクト:不完備契約との関係について 柳川範之
    第16章 エストニア電子政府の取り組みについて 林祐司

    ★住信SBIネット銀行の実験実験は実用的で驚いたし、エストニアの取り組みもそこまで進んでいるのかと驚いた。

  • 東2法経図・開架 338A/O52b//K

  • 現時点でのブロックチェーンの可能性と問題点をコンパクトにまとめている。何かの時に参照するのによい。

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