資本主義の再構築: 公正で持続可能な世界をどう実現するか

  • 日経BP日本経済新聞出版本部
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感想 : 15
  • Amazon.co.jp ・本 (363ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532358693

作品紹介・あらすじ

〇資本主義は歴史上、最も成功した経済システムです。だが、いまやそれが、資本主義そのもの、そして世界を破壊する危機に直面しています。大規模な環境破壊、経済格差、信頼できる社会的な仕組みの崩壊という現代社会の大問題の解決のために、企業や個人はどのような役割を果たせるのか。
〇著者は、株主価値最大化のみを追求することそのものが問題を生み出していると指摘、共有価値の創造、共通の価値観に根差した目的・存在意義(パーパス)主導によるマネジメント、会計・金融・投資の仕組みの変革、個々の企業の枠を越えた業界横断的な自主規制、政府や国との協力が必要不可欠であることを説き、こうした行動には企業に利益をもたらす経済合理性があることを明らかにします。また、政府と市場は互いを必要とし、企業は民主的で自由な社会を支える包摂的な仕組みを強化するために積極的な役割を果たすべきだと提唱します。
〇15年にわたり強い危機感をもって問題解決に取り組んできた著者が、資本主義を創り直すための体系的な枠組みを提示します。

感想・レビュー・書評

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  • 資本主義経済体制の改革論
    「株主価値最大化」至上主義の誤り
    外部経済・不経済への対応が大きな課題
     環境破壊・経済格差・社会基盤の崩壊
    ハーバードのNo1講義「資本主義の再構築」
    本書の頭では切れが伺えない 残念

  • 翻訳が原因な気がするが、自分には読みにくかったなあ。でも色んな示唆があった。特に、企業の利益にはその企業が与えている環境への負荷/ダメージが含まれていない、といった考えは納得感あった。良い意味でも悪い意味でも、環境への影響を数字にする枠組み作りが今後求められることなんだろうなと思った。

  • ■資本主義は効率的な経済を創造し、人類に豊かさをもたらした。
    ■今、その資本主義の行き過ぎが指摘されている。気候変動も、患者の足元を見て薬の価格をべらぼうに値上げをする輩の存在も、その帰結だ。
    ■その主因は、ミルトン・フリードマンの「企業の唯一の社会的責任は、その資源を活用して、利益を増やす活動に従事することである」という考え方である。
    ■本の題名は、資本主義の行き過ぎをどう修正、再構築するか、という意味である。
    ■内容としては理想的だ。でも、共有価値の創造、目的・存在意義(パーパス)主導型の組織など、今流行のキーワードが出てくる。しかも、その事例も記載している。これに興味のある人は一読の価値があるだろう。
    ■全般に読みにくいと感じた。最後の最後で、とても読みやすいところがあって星4つ。

  • 気候変動による社会生活の影響が顕在化し、持続可能な社会への変革が迫られている今、必読なんじゃないですかね。いち早く変革を行った企業には、プラスのレピュテーションのみならず、実利的な利益も伴っているというのは興味深い。100年前だったら、こうはいかなかったかもしれないけど、今なら可能。っていうか、やらないと、世界が持続しないという事なんだと思うけどね。

  • 環境保護と経済の(質の)成長による公平な社会の確立、を両立させる思考と方法、課題がさまざまな事例とともに著者の思いも併せて紹介されている。

    経済学やスキームが主題のようにも思えるが、一人一人が思考→思想→信念→行動へと移していくと、やがて人々の総意は全体へ伝播していくことを伝えたかったのではないかと、巻末の家族への想いから感じた。

    事例と専門用語(ググれば分かる)が多いので、途中少し心が折れそうになりますが、ベットサイドに置いて自分が1日した事などを振り返りながらチマチマ読むスタイルがマッチした本でした。

  • 株式会社に属する中で、株主利益の最大化を命題とする働き方に違和感を覚え、担当レベルの一社員として何ができるのか勉強したいと手にとった本。日本の大企業はすでに重要性はわかっていつつも実践に落とせてないことが書かれているなあという印象。主張には同意。

    目的主導型事業が利益を生み生産性をあげる、企業だけの頑張りでは不足だが民間セクタへの期待値は大きい等の主張がふんだんな事例をもって約300ページ説明されている。
    急いで要点だけ把握したい私にとっては、途中で何の話がしたいのかわからないほど事例紹介が多かったので星4だが、経営者にとっては事例から学ぶものが多いと思う。

  • 大規模な環境破壊、経済格差、社会の仕組みの崩壊といった現代の主要な課題解決には、企業が株主価値の最大化ばかり考えていてはダメで、資本主義を再構築しないといけないということ。単純に資本主義を諦めたり、脱成長を掲げていないところに共感できる。著者は実現可能と信じているが、再構築には5つのピースが必要で相当大変だなと感じる。それでも、今なにかをやる気にさせてくれる良本。

  • ハーバード大学の経済学の専門家による、これからの資本主義の話。資本主義では利益を追求するため、それも短期での収益を求められるため、社会の持続可能性を考慮する余裕がない。結果として地球環境に負荷がかかり、社会を危機的状況に陥れているのであるが、資本主義の新たな姿として、地球や経済的弱者に配慮しつつビジネス的にもインセンティブを保つことができると訴えている。実際、多くの企業が脱炭素や持続可能性を宣言することによって、多くのお金を集め、投資家や顧客の賛同を得るとともに、政府からの支援も得ている。ピケティが『20世紀の資本』で述べた経済格差の拡大を、どのように解決していくかの道筋について、実際の取組を例として挙げつつ述べた良書。記述が学術的で正確、かつ分かりやすく理解しやすかった。説得力があり、よくまとめられていると思う。

    「世界の企業を変えるのは生やさしいものではない。世界の社会制度や政治制度を変えることは、もっと難しいだろう。だが、できないわけではない。周りを見回せば、すでに変化が起きつつあることに気づくはずだ」p11
    「現状に異議を唱えることはむずかしく、気が滅入り、孤独なものだ」p12
    「10年前でも、企業が世界を救える可能性があるという考えは、およそばかばかしく思えた。それがいまや説得力があるだけではなく、絶対的に必要なことになっている」p20
    「私たちが直面している問題の主因は、企業の唯一の義務が「株主価値の最大化」であるとする根深い考え方にある。ミルトン・フリードマンは、こうした考え方を広めた最も有力な学者だが、かつてこう語ったことがある。「企業の唯一の社会的責任は、その資源を活用して、利益を増やす活動に従事することである」。長期を重視したり、公共財を重視したりすることは、不道徳で違法である可能性があるばかりでなく、およそ実行不可能であるという考え方は、この発言からそうかけ離れてはいない」p20
    「2015年9月、2つの製品しかない小さなスタートアップの製薬会社チューリングは、ダラプリムのジェネリック薬の価格を、1錠=13.5ドルから750ドルに引き上げると発表した。5000%近い値上げだ。ダラプリムは、エイズの合併症の治療に広く使われていた。1錠当たりの製造コストは約1ドルで、競争はなかった。ダラプリムがほしければ、チューリングから買うしかない。この発表を受けてメディアは大騒ぎになった。チューリングのCEOマーティン・シュクレリは、メディアで面罵されたが、悪びれる様子はなかった(株主の利益を増やすことが私の義務であると主張した)」p21
    「自分に有利になるようにゲームのルールを変えるためにカネを使うのは、効果的な金儲けの手段になりうる。それが自分以外に多大なコストを負わせることになるにしても(例:ディズニー社がロビー活動を行い、ミッキーマウスや白雪姫など、著作権有効期間を延長するよう法律を変えさせた)」p33
    「公共財を重視しすぎると、市場を円滑に機能させる血液ともいうべき起業家のダイナミズムを殺してしまう。他方、経済的自由を重視しすぎると、社会や自然を破壊し、市場の均衡を保っている制度は着実に侵食されていく」p37
    「(ベテランの反対)業界では前からこのやり方だ。誰もがやっている。オスロの愚かな連中は違うやり方ができると言うが、違うやり方ができるわけがない。財務的にできないし、そもそもうまくいくわけがないからだ」p45
    「公正かつ持続可能な経済の構築には創造的破壊が必要で、それを遂行するのは並大抵のことではない」p50
    「投資家を説得して正しいことをする企業を応援してもらうには、正しいことは儲かることだと示す指標を開発するにかぎる」p51
    「協力して公共財を生み出すことについては、誰もが公共財の恩恵を受けるにもかかわらず、それを構築したり維持したりするコストは他人任せにして、「ただ乗り」の誘惑にかられる、という問題がある」p54
    「家庭、軍隊、暴走族、教会、スポーツのファン、大学などの集団では、集団の一員であることを意識して、組織のためになることならなんでも喜んでしようとする。じつは、現代心理学では、人間は「利己的」であるのと同じくらい、生来「集団主義的」であることが示唆されている」p55
    「変革は生易しいものではない。キャリアの最初の20年、私はコダックやノキアといった企業に経営のやり方を変えるように説得にあたってきたので、見ないふりをする理由、変化を無視する理由、来期の業績を重視する理由がごまんとあるのは知っている」p58
    「物事のやり方を変えるときは、ほぼ常に不確実性が高く見える。そして、ほぼ常に既存のやり方より儲からないように見える。だが、それを認識していれば大いに報われ、モトローラのように否定してしまうと、悲惨な結果になる場合が少なくない。20年にわたる研究が教えてくれたのは、変わることができた企業には変わらなければならない理由があった、ということだ」p59
    「世の中で事を起こそうという企業を経営するには、強心臓でなければならない。知り合いの成功している目的主導型のリーダーは、ほとんど分裂症ではないかと思うくらいに、容赦なく最終利益を追求する一方で、「大いなる善」を熱心に唱道している」p60
    「正しいことをすると約束した企業の経営は、従来型の企業の経営以上にむずかしい。有能なマネージャーであると同時に先見性のあるリーダーでなければならない。冷徹に数字を重んじると同時に、より広い世界に心を開かなければならない」p60
    「(電力会社CLP)われわれの事業には100年以上の歴史があり、2050年にも事業を継続していたい。だが、それには、2049年になってから行動を起こすようでは遅すぎる。この路線に従って世の中の動きを先回りする必要があるのです」p86
    「デジタル技術によってコダックは破綻に追い込まれたが、コダックがその脅威に気づかなかったわけではない。じつはコダックは、当初からデジタル写真技術に多額を投資し、この分野でいくつも画期的な発見をしている。(技術の変化に気づいてはいたが、適応できなかった)」p99
    「イギリス軍では戦車の指揮を騎兵隊に委ねたが、騎兵隊の関心は新兵器ではなく、馬に向いていた。馬は騎兵の生活の中心であり、プライドや喜び、存在意義の源泉だ。戦車を軸に陸軍を再編した敵国に対し、イギリスは準備するどころか、無防備のまま第二次世界大戦に突入したのだ)p100
    「大手自動車メーカーで、ドアのハンドルの設計を担当するとしよう。来る日も来る日もハンドルの設計で頭がいっぱいだ。ドアのハンドルの会議に出席し、ドアのハンドルの動向を追いかける。自動車業界全体がどう変わっていきそうかは、ほとんど考えないのだ。世界はどのように動き、その中では何に注意すべきで、無視しても大丈夫なのは何かを教えてくれる、メンタルモデルを身に着けるものだが、それぞれが独自のメンタルモデルに囚われてしまう」p101
    「現行のシステムでうまくいっている企業は、変化する必要がない。変化する必要があったとしても、経済的なメリットを明らかにする論拠がない。そして、論拠があったとしても、目の前のビジネスに忙しく、それどころではない、と主張するだろう。変化とはそういうものだ」p102
    「企業が社会問題や環境問題の解決に貢献したくても、目先の利益確保を求められ、身動きが取れないのだ。問題は投資家だ。投資家は短期的成果しか頭にない。四半期の収益目標を下回ることになるような長期の投資など到底できない」p151
    「(アマゾン)ナスダック上場後の最初の5年で、累積損失が30憶ドル弱にのぼったが、5年目に投資家が同社につけた価値、つまり株式時価総額は70憶ドル強だった。14年後、同社が初めて黒字を確保したときの時価総額は3180憶ドルにまで膨らんでいた。利益はわずか6憶ドルに過ぎなかったのだが」p154
    「日本の多くの経営幹部は地位がしっかり守られているため、業績不振で追放されるプレッシャーや、新たな機会を発掘するプレッシャーを感じていない」p169
    「ベビーブーマーの死亡に伴い、今後25年で約68兆ドルの資産の保有者が入れ替わると見込まれているが、資産の大半は親世代よりもインパクト投資に関心の高い若い世代に引き継がれるだろう」p181
    「ほとんどの日本企業では、今でも経営陣の支配力が強く、不振事業からの撤退に時間がかかり、新しい事業機会の探索になかなか乗り出せない」p190
    「企業に行動を促す経済的インセンティブを与える、あるいは、すべての当事者が正しいことをせざるをえない規制を行う政府の存在が必要だ。良き政府と自由な政治がなければ、自由な市場は存続できないのである」p244
    「グローバルな経済発展を主導したのは、成長を促進する自由市場のパワーを極端に重視した世界観である「ワシントン・コンセンサス」だった。そのコンセンサスのもとで世界銀行やIMFなどの有力金融機関は、動力としての自由な資本流入の認可を迫った。これらはいずれも、現地の政治体制や社会体制の健全性にとくに目配りしたものではなかった」p250
    「アメリカでは、過去20年でLGBTQに対する見方が大きく変わった。「同性愛を受け入れるべき」とする見方は、民主・共和両党の多数派を含めて人口の70%にのぼり、1994年の46%から上昇している。さらに同性婚を支持する割合は61%で、2002年の38%から上昇している」p260
    「(モーリシャス)実質GDPは1970年から2009年の間に年率5%以上で成長した。2018年の一人当たりGDPは969ドルで、ポーランド、トルコ、コスタリカはすぐ目前だ(ジニ指数も低い)」p290
    「現行の体制下でうまくいっている人たちほど、今後の変化の速さに気づくのが遅れるだろう」p301

  • 株主資本主義みたいなことを散々やった挙げ句に急にこんなことを言われてもな、と日本人としては鼻白むのだが、向こうのMBAでこんな授業をしているのね。世間の流れはよくわかった。しかしまあ、ワタクシ自身は温暖化対策とか必要だと思うのだが、こういったのに「けっ」と言いたくなるあちらの保守派の気持ちはわからぬでもない。

    なんだかんだ言ってボトムラインとしては企業の取組だけでは無理で政治が大事だとなるのだが、だからといって企業が何もしなくてよい訳ではないという。一個人としての市民の政治参加が大きな力を持つのは難しい一方で、大きな企業の持つパワーは無視できないからだろう。実際に、アメリカではトランプ政権になっても実業界での温暖化対策などの流れは決して大きくは変わらなかったと感じる。

    いろいろアネクドートというか事例が盛りだくさんなのだが、パーム油のケースはよく調べられているようで面白かった。

  • 2021.02.21 この本を読んでいると少しずつ再構築が進んでいるように感じる。確かに紹介されているような注目に値する事例は多数あるのだとは思う。しかしながら、それ以上にひどい実態が生まれており、格差や環境悪化などますます進んでいると感じてしまう。再構築は本当に難しい問題だとつくづく思う。

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著者プロフィール

ハーバード大学ジョン&ナッティ・マッカーサー・ユニバーシティ・プロフェッサー。ハーバード・ビジネススクールでも経営論、戦略論の教鞭を執る。ハーバード大学の中でもごくわずかな教授にしか授与されない最高位の名誉称号「ハーバード・ユニバーシティ・プロフェッサー」をもつ。ハーバード・ビジネススクールで高い評価を得ている講義「資本主義の再構築」を受け持つ(同スクールのMBAコースでは最近5年間で最も成功を収めている)。
NBERリサーチフェロー、英国学士院および米国芸術科学アカデミーのフェロー。マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン・スクールで21年にわたりキャリアを積む。同スクールで「年間最優秀教員」の栄誉を受け、イノベーションの経済学、大組織の自己変革について重点的に研究を行う。
アカデミックなキャリアを重ねるとともに、企業のマネジメントにも深く関わる。アムジェン、アイデックスの取締役をそれぞれ8年間、15年間にわたり務める。2019年にフィナンシャル・タイムズ紙が選ぶ「傑出した取締役」3人のうちの1人に選ばれる。

「2020年 『資本主義の再構築』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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