考える力を伸ばす教科書―ダイアローグと論理で思考力を高める

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  • Amazon.co.jp ・本 (249ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784532491086

感想・レビュー・書評

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  • ◆総合評価
    「考える力」を育もう!それは教育者からマスコミ、政治家から親まで誰でも言う言葉だが、一体だれが、その意味を突き詰めてきただろうか。この本はお母さんでも「考える力」とは何なのか、どうすれば育めるかを、わかりやすく、しかし学術的なレベルを落とさずに知ることのできる、格好の一冊である。
    わたし個人としては、『イシュードリブン』と合わせて読んでもらいたい。
    ◆要約
    <まえがき>
    ・日本の初等教育からは「哲学」が消えている。「なぜ動物は死ぬのか」「なぜ働くのか」といったことが欧米の学校教育ではなされ、現実に根ざした思考の訓練が組み込まれている。
    ・正解ではなく、妥当性を求め、それを説明すること。
    <なせ考える力が必要か>
    ・PISAの結果。
    ・ハーバードへの留学生数の減少
    →語学力、人的ネットワークの構築、グローバルな視点で問題解決できる思考力の育成。
    ・「考える力」=「抽象的な理念ではなく、現状を打開し、発展するための具体的で妥当性の高い目標と、そのための方策を見出し、実行する原動力」=「クリティカル・シンキング」=創造力と類似=新たな視点で多角的に物事を分析し、新たな解決策を複数創造すること。=分析力、推理力、想像力、問題解決力の総合。=知恵のある人=自分単独ではなく、共に考えあう態度を持つこと。自己の思考と他者の思考を往復させる能力
    ・クリティカル・シンキングは、医学、看護学、法律学で早くから注目された。

    <考える力と教育>
    ・今企業が求める人材とは・・・①志と心②行動力③知力=①自律的に思考し、合理的、客観的に問題解決する能力、②対等に議論し、矛盾や対立を許容し、新しい知を生む能力。
    →どのようにやるか→ケースメソッド教育=対話型教育。
    ・考える力には知識が必要。しかし子どもの内に自発的に興味関心がわいてくるのを待っている、というのはダメ。訓育(Discipline)が必要。
    ・「守・破・離」が教育の原点

    <考える力の原点>
    ・思考力は「態度」の問題でもある。
    態度・・①後天的に学習を通じて形成される、反応への準備状態。②態度に基づく反応は常に価値、あるいは好悪の感情を伴う。③いったん形成されると長期にわたって持続する。
    ・思考対象・・外部的環境、自分自身、対人環境
    ・思考力の源・・真実を見つけることへの関心
    ・対話による思考力の研磨が教育の源泉。
    →たとえば、職人は見て盗むとよく言われるが、それは間違いではないか。熱心な弟子にはとことん教え込むのが普通。
    ・モチベーションには、誘因と動因が必要。

    <考える力を高める>
    ・disciplineが考える力の学習基盤
    →体系化された知識、技術、規範などを段階的・実践的に学習する必要。生涯学習し続けること。
    ・謙虚さ、好奇心、挑戦心
    ・読む技術を高める。①速読・・検索読み、斜め読み。②精読・・記憶する、熟読する。③味読
    ・ノートをとる。記憶するためのメモ、キーワード、関連した項目・資料を自分で調べて書く、自分の考えを記述する、要約する、これらを行う。単に記憶するためだけのものではない。
    ・思考の出発点はテシス、テーゼ。論じる内容のフレームから結論までを想定できるもの。つまり「~に関して」とかはだめ。
    ・質問力・・相手から学ぶ態度、共に考えあう、相手に対して誠実、日ごろから自分と異なる考え方をする人と付き合える、相手の立場に立てる、自分の限界を知って、他者に援助を求める謙虚さを持つ、といった態度の問題。
    ・考える方法と考える態度の融合。考える態度に反するものとして、常に懐疑的、知らないことはいいことだ、なんでもいいんじゃない、感情に支配されること、議論ではなく口論をしたがる(議論は真理にたどりつくため、口論は他人を批判するため)、コモンセンスを無視する

    <考える力の原点としてのダイアローグ>
    ・ダイアローグ「他の人のために何かを行うことではなく、他の人と一緒に行い、人々と一緒に思考し内省する方法であり、流れてやまない探求の経験」ウィリアム・アイザック博士。
    ・コミュニケーションは、すでに知っているアイデアや情報を他者に正確に把握させることだが、ダイアローグは、それだけではなく、目標に向かって人々の間で共有できる新しいことを一緒に創造すること。
    ・ダイアローグの際には、相手が単語をどのような意味で使っているのかを把握することが必要。また、聞く力、質問する力、観察する力、プロセスを観察する力が必要。

    <分析する技術と問題解決する技術>
    ・問題解決へのプロセス→①問題把握②問題分析③問題解決
    ・PDCAサイクル
    ・意志決定プロセス→空、雨、傘
    ・問題とは、あるべき姿と現状のギャップ。
    ・ゼロベース思考
    ・問題分析とは:もれなくだぶりなく、事実を基本に、Why soとSo whatが相互に矛盾のない分析であり、分析目的から常に外れないこと。
    ・ロジックツリーを使い、テシスを分解していく。その際のフレームワークとしては、3C、7S、4Pなど。
    ・問題解決:イシュー・ツリーを使う。こちらはHow。5W1Hがフレームワークとして有効。仮説思考やシナリオ・プランニングもできる。
    ・解決策は複数用意する。


    ○思慮深い市民、相互信頼、問題意識を持って柔軟な思考、成長、グローバルな視野、社会的な責任を自覚、考え抜く力、前に踏み出す力、チャレンジ、古典のを読むことで忍耐力が涵養され、現在の社会が求めている考え抜く力の訓練に通じるし、古典から学んだ思考力は問題可決の基本になる。古典に書かれている、種々の経験則はなぜを考えることで問題解決の参考になるだろう。古典は時空を超えて対話することであり、非常に幸せなこと。

  • 論理的思考の重要性についての記述ばかりで、具体的な思考法や問題解決法に関しての突っ込んだ内容がなく、大変物足りない

  • 実務能力の教育の基本となる対話(ダイアローグ)
    ビジネススクールでの対話型教育の方法として、ケースメソッドが確立されたが、
    例えば私の携わる領域である「企業内人材育成」「デジタルメディアリテラシー」「デジタルコンテンツマネジメント」では、
    どんなカリキュラムを理想とすることができるだろう。

    アカデミックがまとめた「教科書」だけあって、
    参考文献リストが充実している。
    各章の参考文献のうち、これから読もうと思うものをリストアップしておこう。[more]


    1. 伊勢田哲治『哲学思考トレーニング』ちくま新書 2005年 (1章)
    2. 世阿弥/竹本幹夫訳注『風姿花伝・三道』角川ソフィア文庫 2009年 (2章)
    3. 小関智弘『仕事が人をつくる』岩波新書 2003年 (3章)
    4. 堀井秀之『問題解決のための「社会技術」』中公新書 2004年 (3章)
    5. 田尾雅夫『複雑さを増す、社員のモチベーションにどう向き合うか』リクルートワークス研究所 Works101 2010年 (3章)
    [more]





    【読書メモ】
     ・ もうひとつ従来型の学校教育の中で軽視されてきたものに「〜力」という実務能力がある。「思考力」「実践力」「実行力」「創造力」等の力に関する能力の育成である。一方、知識については「知識量」とは行っても「知識力」とは言わない。 p43
     ・ 本来の教育は知識と「〜力」の訓練のバランスがとれることが重要である p43
     ・ 知識にとどまらず、学ぶため、考えるため、さらには社会に生きるための基礎・基本つまり原則、言い換えれば、子どもたちがさらに学習し発達し、力を身につけるための基礎となる知識、理論、技術は子どもたちの好き嫌いに関係なく、身につけられるようにしなければならない。身につけていくことで興味や関心がわき、意味を理解できるよう教育するが教師の役目である。そのような教育が土台となって内発的動機が生まれる・その意味で特に基礎と基本を学ぶ発達段階の教育は一種の訓練と言い換えることができるであろう。基本から順に積上げていくことで、さらなる学びに関心が持てるようになるからである。 p56
     ・ 「態度」とは、心理学では、個人あるいはある部類の対象や状況に対してとる特有の反応傾向または準備状態を指す包括的な概念……

    1. 後天的に、学習を通じて形成される反応の「準備状態」……
    2. 一定の状況または状況に関連して形成されるものであり、常に主体−客体関係、すなわち、自己対他の存在という関係を含んでいる
    3. 感情的属性を持つ
    4. 持続的
    5. ……極めて広範で多様な対象に対して起こる個人の一般的な行動傾向である場合が多い

     p65

     ・ 「モチベーションの問題はいたってシンプルで、その本質は『個人差』に尽きる」 p81
     ・ dischiplineの概念

    1. 人には、自分をコントロールする力がある。行動の主体は自分である
    2. 人には従うべき規則や規律がある
    3. 自己統制力を育成するためには、その規則や規律を学習・鍛錬する必要がある
    4. 規則・規律も知的領域とともに、個人にとって、行動(思考や研究も含まれる)の土台、基準、価値、準拠枠となる点で共通している。言い換えれば、規則も、知識もともに個人にとって事象を考えるときの視座となっている

     p85

     ・ disciplineは弟子を意味するdiscipleと語源を一にすることからも明らかなように、「自己統制力の獲得には、先人が積み重ねた知識や義樹ツンお世話になっております。体系を訓練・学習することが必要である」ことを意味している。 p87
     ・ ……(ディシプリンは)学習し習得すべき理論及び技術の総体であり、実践されるべ課題である。ひとつのディシプリンは、一定の技能ないし能力を身につけるための発達の通路である。……ディシプリンを実践するとは、生涯学び続けること」 p86
     ・ 7S(Strategy, Strucutre, System, Skill, Staff, Style, Shared value)主に組織分析と組織設計に対応

    * Strategy 組織が実現する戦略の定義
    * Strucutre 組織構造と職務分掌の定義
    * System 組織を運営するための意思決定プロセス、人事評価、人材教育等のシステムの定義
    * Skill 組織が持っている能力(組織の強み、弱み)
    * Staff 組織を構成している人員数、人材のスペック、構成人員の能力等
    * Style マネジメントの手法(トップダウン、ボトムアップ、意思決定の早さ等)
    * Shared value 組織が共有する文化、ミッション、企業理念、行動規範等


     組織について、7Sで現状分析できれば、現状はほぼ完全に把握可能である。 p199

     ・ シナリオは、現状の経営環境の変化要因を認識して、変化に適応するのを助けることが目的である。そのために、将来の経営環境の変化について複数の異なった道筋を立て、それぞれの道筋において必要な対応を見出す方法がシナリオ・プランニングなのである。 p209

    【目次】

    1. なぜ「考える力」が必要なのか
    1. 日本経済停滞の原因は「考える力」の不足?
    2. 「考える力」を定義しよう
    3. 論理的に考える力と創造力は違う
    4. 人間は「考える葦」

    2. 考える力と教育

    1. 時代が必要とする人材の要件
    2. 思考力の訓練が遅れている日本
    3. 学校教育の現状と新たな方向性
    4. 新たな方向:「知識注入を中心とする教育から考える力と問題解決力を育成する教育へ」の対応
    5. 教育の原点としての「守・破・離」

    3. 考える力の原点

    1. 思考力は知識の量か?
    2. 人間の心理から見た考える態度
    3. 「考えるkと」は対象に働きかける行動
    4. 「真実を見つけることへの関心」が力となる
    5. 考える力とは知識、スキル、精神的ゆとりの結合
    6. リフレクションを通して自分の枠を広げること
    7. 職人はどのように自分を育てたか
    8. 組織の知恵が企業価値を創造する

    4. 考える力を高める

    1. 基盤としての「discipline(訓育)」
    2. 「謙虚さ、好奇心、挑戦心」
    3. 読む技術を高める
    4. 古典を読むことの重要性
    5. 思考の出発点としての「thesis」
    6. 他者と対話できる力
    7. 質問力を高める
    8. 「考える方法」と「考える態度」の統合
    9. 論理的思考を妨げる「態度」

    5. 考える力の原点としてのダイアローグ

    1. ダイアローグとは
    2. ダイアローグの多様な形態
    3. ダイアローグを成功させるには
    4. 上手なダイアローグ

    6. 論理の基本

    1. 論理の基本的な約束
    2. 演繹法と帰納法
    3. 因果関係
    4. 目的と手段

    7. 分析する技術と問題解決する技術

    1. 問題解決へのプロセス
    2. 問題とは何か
    3. ゼロベースの思考
    4. データは正しいとは限らない
    5. 問題分析とは何か
    6. ビジネス分析の方法
    7. 問題解決の方法

    8. 表現する技術とコミュニケーションする技術

    1. 考えるための図解技術
    2. 図解技術のための道具
    3. その他コミュニケーション技術
    4. ファシリテーションと関連手法

  • 個人または集団での論理的思考力の伸ばし方を教えてくれる本。
    大学教授2人が共同執筆しているからか、扱う分野が幅広い。論理的思考力の重要性の説明から始まり、個人での論理的思考力の高め方や集団での高め方、問題解決の具体的な手法などをアカデミックな文体で書かれている。またたびたび言葉の定義がなされ、読書の正確な理解を促したり、章末問題が出でくるさまはまさに教科書だ。
    ダイアローグの方法も記載されているものの、この本だけで誰もが実践できるレベルではなさそうだ。
    そもそもダイアローグのファシリテーターはビジネスリーダーが行うものらしい。とはいえ本書を熟読し、態度と方法を学び、それを実践すれば論理的思考力は高まって行く様に感じられた。
    会議でモヤっとする人にオススメです。

  • クリティカル・シンキングについての実践的なメソッドが豊富に書かれており、難しい内容のはずが、非常に読みやすい好著でした。私たちが考えているコミュニケーションは実はダイアローグであり、お互いに話し合いながら、自らを振り返り、自分の考えと比較検討し、新たな視点で自分の思考を発展させることが考えを深めていくことがリフレクティブだ、という考え方が大変よく理解できました。そしてダイアローグは自分自身とも行っていくものなのですね。この著者が書いているビジネスマンにとっての考える力とは「抽象的な理念ではなく、現状を打開し、発展するための具体的で妥当性の高い目標と、そのための方策を見出し、実行する原動力」ということは私自身の反省としても鋭い言葉です。

  • 多くの気づきがあった。ビジネスに応用できる!

  • 思ってたのと違う。
    ほんとに教科書、
    これからを担う子どもたちを教える先生にぜひとも一読頂きたい。

  • 夏の暑い日、ジョナサンのドリンクバーで長居しながら読み、ずいぶん読み進んだ。
    さておき、論理思考の本として新しい視点で書かれている判りやすい本だと思う。 何冊が論理思考の本を読んで、いずれにも、その方法論、so what, why so やいくつかのフレームワークが書かれているが、それはこの本では漏らさない代わりに、サラッと概略が触れられていて、詳しく解説はしていない。 
    この本の特徴は、その前に論理思考をするに当たっての態度や、ダイアローグについての解説があることだと思う。 論理思考を解説する他の本とあわせてこの本を読むと、テクニックだけにとらわれない論理思考の大枠が何となく、ストンと自分の中にはまり込んだような気がした。  判りやすい、読みやすい良い本だと思う。

  • 思考関係の理論やメソッドについて、整理するにはいい

  • 「(ビジネスパーソンにとっての)考える力とは何ぞや」を説いた本。
    この本では考える力は伸びません。

    一体誰が読めば得をするのか今一つ分からない本。
    そもそも「考える力」とは何か、なぜ日本人に「考える力」が足りないのか、「考える力」の原点とはそもそも何か・・・。
    本書の前半では、系統立てて「考える力」について根本から説明されている。

    後半は、ダイアローグ、クリティカル・シンキング、ロジカル・シンキング、ファシリテーションなど、多くの類書で紹介されるスキルやフレームワークの簡略な紹介に留まっており、これ一冊で実践に資するものではない。

    確かに本書一冊で「考える力」について、現在の流れをよくよく整理しているなあ、と感心はする。
    でも役に立たない。

    古今東西の「考える力」に関する書籍の概略をよく整理してあるだけなので、俯瞰するのには持って来いだが、俯瞰する必要性をあまり感じなかった。
    それより本書の参考文献に挙げられているような本に直接あたったほうが効用は高かろう。

    役に立つ部分があるとしたら、各章末の参考文献リストくらいかしら。

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著者プロフィール

筑波大学名誉教授,同大学研究センター客員研究員。筑波大学教授,同キャリア支援担当特命教授,立教大学大学院特任教授を経て現職。ペンシルバニア州立大学大学院博士課程修了,Ph.D. 取得(カウンセリング心理学・カウンセラー教育専攻)。著書:『リハビリテーション・カウンセリング』(監修、ナカニシヤ出版、2010年)、『キャリアの心理学―キャリア支援への発達的アプローチ』(編著、ナカニシヤ出版、2007年)

「2018年 『新版キャリアの心理学[第2版]』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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