世界全史

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  • 日本実業出版社
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  • Amazon.co.jp ・本 (406ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784534052438

感想・レビュー・書評

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  • 数年前から全く成果の上がらぬ世界史の学びなおしをしているわけだが、本書は遂に出会った「学びなおしのための最適な一冊」だと個人的には思う。

    一言でいえば、世界史をあらすじで辿っているわけですが、そのような試みをしている類書は山とある。
    本書が違っているところは、このような言いようが許されるのであれば「世界史のメインストリーム」に的を絞っているところが、成功の要因である。
    世界史入門と銘打った類書でよくあるのは、単に高校世界史をまんべんなく切り詰めて短くし、文章を平易にし、図解を増やして何となく見やすくしただけ。というか、薄味にしただけのものが殆どで、書いてあることは分かるが結局何も残らないというのが殆どだった。

    本書は違った。
    どのようにして現代の世界が作られてきたか?という観点で最も影響の大きかった時代の流れに的を絞っていること。更にそれを構造化し、大きな歴史の流れの枠組みを提供していること、そして常に前後の「流れ」に力点を置いて、あたかも一本の大きな大河のように連続した物語として歴史を読めるようになっていることが、圧倒的に類書より優れていた。
    世界史をどう語るか?は無論、論者の数だけパターンがあると思うが、本書は、これから様々なパターンの世界史を学んでいくにあたり、あるいは各時代の詳細な歴史を学んでいくにあたって、最初に備えておくべき基本形として最適なのではなかろうか。
    私個人でいえば、ようやく自分の中で軸となる世界史理解が本書で形成されたと感じており、なぜ早くこの本に手を伸ばさなかったのかと悔いているくらいである。

  • 読了。
    よく纏まっているのだが、どっかで読んだことある感が拭い切れず、ちょっと教科書っぽいトンマナで、エンタメとしてはイマイチ楽しめなかった。
    ただ、ヨーロッパ史に中国史を付け足して強引に近現代に持って行くレガシーな世界史観ではなく、ユーラシア大陸史を中心として全体を俯瞰したイマドキの歴史観で纏められているため、受験生が世界史全体の流れをつかむ…とかの用途には非常に有用だと思う。

  • 世界の歴史がざっくりわかった。自分的にはここで興味を持った歴史を深く調べたいと思う。

  • 人類誕生から21世紀までの世界史を1冊で解説するという野心本。世界史における35のキーポイントを設定し、それにしたがって、時代を読み解く構成。

    あまりに急ぎ足なので、なんとなく世界史を知ってみたいというレベルの読者はついていけなくなる。が、そうでない人なら読み応えあり。世界大戦後や、欧州などに偏ることなく、どの時代も地域も均等に説明しているのが好感。

  • 偶蹄類(ヒツジ、ヤギ、ウシ、ウマ、ラクダ)はオスの周りでメスが群居する。オスが少なければ飼育しやすい。牧畜の始まり。
    ブタは草では飼育できないため、農耕社会で飼われた。

    中華思想は殷から周への交代期に作られた。自らを天下の中心と考える閉鎖的な世界観。

    馬と戦車で帝国が生まれた。貧しい遊牧民が大河の流域の豊かな農耕地帯を征服し、寄生するために築いたのが帝国。
    ローマ帝国、アケメネス朝ペルシャ、マウリア朝、秦帝国。

    土地の公有制=均田制は強力な権力を生み出した。民衆には過酷な制度。

    ヴェルサイユ体制で、ドイツがアメリカからお金を借りて英仏に賠償金を支払い、それを戦時中のアメリカからの借金の返済にあてた。これでアメリカの経済覇権が確立した。
    アメリカの利上げで、資金の流れがアメリカに集中して、ヨーロッパ経済が疲弊した。

    1929年の経済危機では3年後に株価は最高値の15%になった。
    通貨切り下げ競争とブロック経済化が世界大戦の引き金。

    ファシズムの台頭=政治的経済的見識を持つ議員が大切。

    太平洋戦争=1941~1945.石油とくず鉄の輸出禁止が引き金。

    戦後のユーロダラー=アメリカに還流しないドル=ばくち的な金融取引の資金となった。

  • 世界史をただの時系列ではなく、地政学や関係値でまとめながら解説し、読み解き方のポイントを示唆してくれる。歴史の裏側の意味を理解することができるが、ストーリー性に欠けるため入り込みにくい。政治的な歴史に並行して、経済の歴史の成り立ちにも触れている点が良い。

  • 世界史の流れを、わかりやすく解説した書。現代とのつながりも併記されているため、歴史を学ぶ意義も感じられる。

    図で見る世界の歴史と地理
    第1章 世界史の始まり
    第2章 四つの河川文明の出現
    第3章 地域ごとに並び立つ帝国の時代
    第4章 ユーラシアが一体化して起きた文明の大交流
    第5章 再編されていくユーラシア
    第6章 世界史の舞台を大きく拡張した大航海時代
    第7章 大西洋が育てた資本主義と国民国家
    第8章 イギリスがリードした「ヨーロッパの世紀」
    第9章 地球規模の時代へ

  • 世界史の一連の流れを一冊にまとめた本。紙幅の関係上、深い部分まで掘り下げている訳ではないですが、どのような歴史を辿って現在があるのかを把握するのに十分な一冊となっています。
    世界史の全容を手軽に学びたい方には打ってつけの書籍かと思われます。

  • 人類の出現から21世紀の現代までの世界史がまとまった一冊。
    ただ年表の説明ではなくて、“後にどのような影響を与えることになったか”などのポイントも書かれているので、わかりやすかった。

  • 逆説シリーズの井沢氏のおかげで、日本史については部分的ではありますが、歴史とはつながっていることを理解できるようになりました。

    それに比べて、世界史とは、日本以外のすべての国が対象になるので、「通史」に関する本は書くのが難しいのだろうな、と思っていて過ごしてきました。本当は以前から出版されてたのかもしれませんが、私の興味が向いてきたのと、私が通っている本屋さんが、よく見えるところに取り上げてくれた縁もあって、この本に出会うことができました。

    この本の帯に書かれている、「歴史は先生である、これからおきることも、世界史から読み解ける!」に惹かれました。35の鍵を歴史の道筋をたどる道標として設定して、それを軸に解説してくれている素晴らしい本です。

    以前、世界史と言えば、テストのために覚えることを目的にする読書でしたが、今では自分の興味を満たすための読書ができる幸せを噛み締めながら読みました。

    以下は気になったポイントです。

    ・一般の人が知っておくべき歴史は、専門家を育成するものではなく、歴史の道筋・ダイナミックな変化・それらが現代に及ぼしている影響、そしてこれから世界がどう動いていくかを予測する力をつけることが大事(はしがき)

    ・最後の氷河期が終わると乾燥が激しくなり、草原だったサハラ地方が、砂漠に変わるのは4000年ほど前、そのため乾燥に強い麦類を食料にした。9000年前に起きた農業革命(p46)

    ・オスの周りでメスが群居する性質をもつ、ヒツジ・ヤギ・ウシ・馬・ラクダなどの偶蹄類の動物を群れとして飼育する牧畜が普及した、オスは優先的に食用にされ、不要なオスは去勢された。繊維質の草では飼育できなかった豚は、もっぱら農耕社会で飼われた(p48)

    ・エジプトでは、民衆に備蓄用も含めて収穫の2割の現物税を課した、麦が貨幣の役割をした(p54)

    ・殷では、10個の太陽(甲乙丙丁・・葵(き))が一日交替で大地を照らすと考えられた、太陽が一巡する10日間が生活の単位とされて、旬とされた。10の太陽は、十干(じっかん)とされ、西アジアから伝えられた「十二支」を組み合わされて、時間・方角を表す「干支」となった(p61)

    ・主な古代帝国は、西から、ローマ・ペルシア(アケメネス朝)・マウリア朝、秦帝国、西の3帝国はつながりがあるが、秦帝国は孤立していた、世界史を帝国の時代から、ユーラシア帝国の時代に導いたのは、乾燥地帯のペルシア帝国(陸の帝国)と、その周縁に成立したローマ帝国(海の帝国)である(p77、80)

    ・前1628年にエーゲ海南部のティーラ島の噴火による大地震と150メートルの高さの大津波で、クレタ文明は衰亡。それを引き継いだミケーネ文明も、前1200年の海の民の略奪で滅亡した(p86)

    ・ローマ軍は農民の重装歩兵が中心で騎兵はあくまで軍団の両翼を援護する補助部隊、ウマの機動力を利用した、ペルシア、インド、中華帝国とは異なる勢力拡大の道をとった(p93)

    ・ローマから地中海周辺への市民移住が進む中で、212年カラカラ帝の勅命により、属州の全自由民に市民権が与えられ、ローマの地位が相対的に低下(p99)

    ・コンスタンティヌス帝は、325年にニケーアにて、イエスを神とするアタナシウス派(神・キリスト・聖霊を一つとする三位一体説)を正統とし、イエスを人間とするアリウス派を異端とする決定をした(p100)

    ・6世紀のユスティニアヌス帝は、一時ゲルマン諸族を征服し、地中海周辺の旧ローマ帝国領の回復に成功、しかし6世紀中にペストの流行で人口の約半分が死亡して地中海統一の野望は果たせなかった(p101)

    ・輪廻からの解脱を説く「仏教」は、思索的で民衆との結びつきが弱く、創始者であるブッタはやがてビシュヌ神の化身とされて、ヒンズー教に吸収された(p108)

    ・県は、首都に懸かる、の意味であり、官僚が地方の有力者の協力の下で、税の徴収や治安の維持に当たった(p114)

    ・漢帝国では、皇帝の直轄領と、諸侯が支配する自立した領域からなる、郡国制が実施され、封建制によって周辺部を帝国の直接支配から切り離された、緩やかな連邦制がとられた(p116)

    ・中国において、部下の武人との関係は私的なもので一代限り、日本のように私的な主従関係が世襲化され、武人が「武士」として階層化、土地の支配権が世襲される封建制度は育たなかった、なので日本と中国・韓国の歴史はまったく方向が異なる(p124)

    ・メッカは長い間、ローカルな都市に過ぎなかったが、ペルシア帝国(ササン朝)と、ビザンツ帝国(東ローマ帝国)が戦争をして、双方の軍が首都の、コンスタンティノープル、クテシフォンを相互に攻撃し合う6世紀末になると、商業ルートが延びてメッカが商業都市として栄えた(p133)

    ・イスラム教徒の進出により起こされたキリスト教勢力の後退が、現在につながる西ヨーロッパ世界の形成を促した(p140)

    ・ゲルマン世界の分割相続制により、フランク王国は早期に分裂、843年のヴェルダン条約、870年のメルセン条約で、現在のフランス(西フランク)、ドイツ(東フランク)、イタリア(中フランク、ロタール)に分かれた。分裂後、東フランクのオットー1世が962年に教皇から加冠されて、神聖ローマ帝国の皇帝になった、ナポレオンにより解体される1806年まで続く(p142)

    ・イスラム文明では、人工的に金、銀をつくる錬金術の実験が繰り返され、副産物として、花の香りの成分をとりだす水蒸気蒸留法、アルコール製造技術が開発、香水、西のウィスキー、ブランデー、東の焼酎は、この技術による(p146)

    ・十字軍は、重装歩兵の一騎打ちで戦ったが、イスラム側は、軽装備の騎兵の集団戦で対抗した(p153)

    ・農業革命の結果、それまで播種量(種をまいた量)の2-3倍に過ぎなかった麦の収穫量が、それまでの倍になった。西ヨーロッパは、11世紀になってやっと年貢が取れる普通の農耕社会となり、人口も増加。原生林が伐採されて、畑ができた(p155)

    ・チンギスは、乾燥と冷温、烈風にくるしむモンゴル高原の中、シルクロード・草原の道の商業を管理下におき、商人から税を取り立てることで経済的困難から脱出しようとした(p159)

    ・モンゴルの20万人の騎馬軍団を支える60万頭の馬が帝国の原動力であるが、それほど多くの馬を飼える牧場は、中華帝国にもイスラム帝国にもなかった(p167)

    ・火薬の西伝が、鉄砲・大砲の発明、普及をもたらして農耕民の軍事力を強めて、遊牧民の覇権を終わらせた、羅針盤が欧州海の時代につながり、活版印刷術が知的勃興につながった(p173)

    ・モンゴル帝国は、ティムールの死後、分裂して、東地中海のオスマン帝国、イラン高原のサファヴィー朝、インドのムガル帝国、東アジアの明帝国の4帝国となった(p178)

    ・清は、朝鮮・琉球・ベトナム、タイ、ビルマを従属国として支配していた(p190)

    ・1340年には、中国の雲南地方の風土病ペストが、東地中海経由でイタリア半島から欧州全域に広がり、人口の3分の1が死亡した、これにより労働人口が減少、領主の力が弱まった(p196)

    ・100年戦争が長期化したのは、一因として、当時の騎士が1年間に40日程度の従軍義務がなかったこともある(p196)

    ・フランスのカルバンは、教皇を否定して聖書にもとづく新しいキリスト教(プロテスタント)を提唱、神と個人が直接結びつく、ヨコ型社会の提唱。この動きは、フランドル地方、ドイツ、北フランス、イギリスに広がり、宗教改革となった(p201)

    ・バスコダガマの航路はマゼランのよりも長く、乗組員170人のうち帰国できたのは60人以下という過酷なもの。しかし彼らがもたらしたコショウは、ポルトガル王室に、航海費用の60倍の富をもたらせた。毎年船団を率いて、インドに向かったカブラルが、ブラジルを発見した(p215)

    ・16世紀の70年間、欧州人が新大陸に持ち込んだ、天然痘などの疫病により、先住民はのべ1億人程度死亡した。彼らは免疫を持っていなかったので(p232)

    ・新大陸の銀は銀価格を暴落、物価を3-4倍に押し上げた。それまで金を貸して利子をとることは忌むべきこととされていたが、資産を増やすための投資投機が一般化するようになった(p234)

    ・イギリスは航海法を制定し、中継貿易とイギリスの羊毛に依存するオランダ経済に打撃を与えた、1652年に英蘭戦争となるが、オランダはイギリス(及びフランス)に完敗し、衰退する(p248)

    ・イギリスは戦争の際に発行した赤字国債を償還するため、イギリスが行った植民地に対する本国地並み課税への猛反対がおき、アメリカ独立戦争が起きる(p252)

    ・資本主義経済は、カリブ海域でのサトウキビの大量栽培から始まった(p257)

    ・天然痘によるカリブ海での先住民の激減、ブラジルなどでの狩猟採集社会に起因する人口不足のため、サトウキビプランテーションは、商品としての黒人奴隷の労働力に依存していた、合計、1500万人の奴隷がアフリカから新大陸へ運ばれた(p259)

    ・オランダ商人は、生のコーヒー豆を手に入れ、ジャワ島・セイロン島でのコーヒー栽培を開始、価格競争で敗れたイギリス東インド会社は、コーヒーを紅茶に切り替えた。清で生産された茶葉に、カリブ海の砂糖を入れ、清の磁気のカップに入れて飲むという喫茶スタイルを作り出した(p262)

    ・紅茶販売を巡る紛争でイギリスから独立したアメリカは、紅茶文化圏から離脱、薄いコーヒーを愛飲、そこでブラジルのサンパウロが開拓された(p262)

    ・18世紀に奴隷貿易を主導したのはイギリス人、奴隷の大量輸送方式を開発し、安価な輸送で他国の奴隷貿易商人を引き離した。ただし、ブラジル向けのみは一貫してポルトガル商人がリードした(p264)

    ・イギリスの奴隷貿易は、10倍近い利益を上げた(2-3ポンドで購入、30ポンドで売却)、3分の1は輸送中で死亡、300年間で1000万人の黒人奴隷が連れ去られた(p264)

    ・インドの鉄道、港湾から放射線状に伸びる奇形の鉄道、国としての望ましいネットワークを形成するには至らなかった(p276)

    ・イギリスは国際金本位制を確立しようとした、そのとき、ブラジル、カルフォルニア、アラスカ、オーストラリア、南アフリカで金が見つかり、金に裏打ちされた通貨ポンドにより世界経済の主導権を握れた(p292)

    ・イギリスの綿製品、インドの綿花・アヘン、清の紅茶が循環する、アジアの三角貿易がつぶれることを 恐れたイギリスは、アヘン戦争に踏み切った(p302)

    ・アメリカの南北戦争は、1865年、アメリカ連合国の首都リッチモンドが陥落し、戦争は北軍の勝ちに終わった。両軍あわせて約62万人の死者を出した大変な内戦であった(p323)

    ・ブレトンウッズ会議にて、ドルは金と唯一交換できる通貨となり、1ドル=1.504グラム、日本円は1ドル=360円となった(p366)

    ・ニクソンショック(1971)とは、1)金ドル交換の停止、2)輸入品に一律、10%の輸入課徴金を課すことであった(p373)

    ・1980年には1オンス850ドル(かつて35ドル)だったが、2011年には、1920ドルとなった(p374)

    ・毛沢東は、土地を固有化し、戸籍を都市戸籍と農村戸籍にわけて農民を安価な労働力として活用、清の統治法をひきついで、個人档案(共産党が一元管理する個人記録)で民衆を管理する体制を整えた(p390)

    2015年7月19日作成

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著者プロフィール

1942年,東京生まれ.東京教育大学文学部史学科卒業.
都立三田高等学校,九段高等学校,筑波大学附属高等学校教諭(世界史担当),筑波大学講師(常勤)などを経て,現在は北海道教育大学教育学部教授.
1975年から1988年までNHK高校講座「世界史」(ラジオ・TV)常勤講師.

「2005年 『ハイパワー世界史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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