証拠法の心理学的基礎

  • 日本評論社
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784535525313

作品紹介・あらすじ

アメリカ証拠法を、法学と心理学に精通する著者らが心理学の基礎的研究を紹介しつつ分析・解説。文化や慣習を超えた人間行動の法則が理解できる。

感想・レビュー・書評

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  • 裁判における証拠ルールの多くは人間心理に対するルール作成者の信念の産物であり、立法者のみならずルールの解釈適用する裁判官もルール作成者としてアマチュア心理学者としての役割になっているという前提から、心理学者が米の連邦証拠規則を中心に証拠ルールの根底にある心理学的知見を検証する。日本では伝聞証拠や目撃者や被害者証言について、人間の認知構造が理由づけとされるのみが、米では人間の認知メカニズム、意思決定の構造、利益衡量におけるメタ認知、反対尋問や宣誓の効果、科学証拠についてまでも心理学的知見が議論されている。面白く、新鮮な議論が多く一気読み。心理学的な基本概念については訳者が原著よりも基本概念を増やして解説してくれており、理解が促進される。また、アメリカの裁判制度の説明や連邦証拠規則が付録としてついており、本文中もアメリカの証拠ルールの基本的な視点が説明されるところも多く、アメリカの証拠法の勉強にもなる。裁判官が「アマチュア心理学者」としての役割を担っているという指摘はもっと日本でも認知されるべきであり、特に多用されがちな比較衡量判断においては、証拠価値と弊害の判断のみならず、その証拠から裁判員を含む事実認定者がどのような認知プロセスを経るかという予測(メタ認知)をしなければならないという点に心理学的アプローチが有用である点や、裁判官も裁判員も判断の誤りを犯す可能性の高さは同じでありむしろ裁判官の方が有罪方向での間違いが起きやすいという指摘は、「裁判員は素人であるから偏見を持つ危険が高い」といった議論がされがちな日本には特に示唆的。日本の裁判員裁判は裁判官と裁判員が一緒に評議するからこそ、裁判官が自己のメタ認知をしなければならない。裁判官が心理学的知見から自己の認知メカニズムを学ぶべき理由になる。

  • 裁判で何を証拠と認めるか、その扱いはどうするかというルール、「証拠法」。日本では体系的な証拠法は存在しないが、米国では英米法系の長い伝統の下で、多くの経験に基づいたルールが作成されている。
    そして、証拠法は人の認知に深く関わるものであり、人物に対する判断は社会的認知やパーソナリティ心理学の知見なくしては妥当なルールを作ることはできない。
    本書の原著者は法務博士号(J.D.)と心理学の博士号(Ph.D.)をもつ、法学と心理学の双方に通じた専門家であり、アメリカ連邦証拠法を素材に、アメリカの法律家及びルール作成者がいかなる経験を積み上げてきたかを紹介する。
    裁判員制度施行後10年経過し、体系的な証拠法が求められている日本で参考にすべき知見の詰まった1冊。

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