ミクロ経済学 戦略的アプローチ

  • 日本評論社
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感想 : 15
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  • Amazon.co.jp ・本 (324ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784535552029

作品紹介・あらすじ

本書は、80年代から90年代の経済学の進展を背景とした戦略的行動という観点から書かれた、ミクロ経済学の「教科書」です。

感想・レビュー・書評

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  • 東2法経図・6F指定:331A/Ka22m/J.Ishikawa

  • この本はタイトルの通りミクロ経済学の入門的な内容を戦略的アプローチ、すなわちゲーム理論的なアプローチで解説した本である。
    私のミクロ経済学の知識は伊藤元重『入門経済学』のミクロ経済学の部分ぐらいなので、標準的なミクロ経済学の入門書と比べてどれだけ内容が異なるのかはいまいち分からない。
    ただ標準的と思われる他の入門書の目次と見比べると、余剰の分析や一般均衡分析といった、いわゆる需要・供給曲線を用いた分析の扱いは薄いという印象を受ける。
    一方、恐らく他の本ではゲーム理論を用いずに解説される様々な経済学的な現象に対し、それをゲーム理論的に定式化し、その均衡概念をナッシュ均衡やサブゲーム完全均衡として説明するのは特色だろう。また早い段階からゲーム理論の一般的な道具立てを導入しながら話が進んでいくので、一般論を具体例を通じて体得でき、加えて、個別のモデルが統一的な方法によって扱えることも実感できる。これは他の標準的なテキストで観られるような、後半でゲーム理論を導入し、いくつか具体的なモデルを扱うという方式に比べて、ゲーム理論への体系的理解と習熟において効率的であるように思う。

    総じて、ミクロ経済学の典型的知識を得るという目的に対しては、ややずれるかもしれない。しかし、ミクロ経済学の研究や発展的な教程においてはゲーム理論的な考察が主となるとどこかで聞いたことがあるので、その意味では、単に標準的なミクロ経済学入門書の補足的な本というのではなく、相互補完的な本として有用な本と言えるのではないか。

    以下、印象に残った個別的な点。

    ・7章の集団意思決定に関するメカニズムデザインが面白かった。集団の意思決定におけるフリーライダー問題に戦略的行動の側面が存在するのは自明だが、各人が自らの評価を正直に述べるインセンティブは無く、衆愚的な状況は避けがたいように思える。しかしそれがメカニズムデザインにより(リスクもあるとはいえ)改善できるとは驚いた。

    ・14章のエージェンシー問題の分析について。能力給制における給料の提示額の決定が多段階ゲームとして定式化される。均衡の導出はバックワードインダクションを通じて、条件付最大値問題へと帰着し、均衡における利得はプレイヤーのリスク選好に応じて影響を受ける。
    この分析の流れは、この本でこれまでに学んできた内容の集大成的であり達成感がある。また比較的単純な道具立てで、これだけの分析ができるということに感心した。

    ・各チャプターは導入となる挿話から始まる。これがシンプルながらも意外に物語自体としても良かった。変に気取ったところがなく、あくまで添え物としての慎みがありながらも、ピアス、新米先生、済子、パン屋の店主などの庶民的な人生模様が描かれており群像劇的な味わいがある。
    しかし何よりよくできているのは、単に挿話としても楽しめるのみならず、この庶民的な物語を通じて経済学やゲーム理論的な側面が我々の日常的な側面に遍在していることを身に染みて教えてくれる点である。

    ・練習問題のレベルが適切。どの問題も高校数学レベル程度の数学的素養があれば解けるようになっており、また既に解説した内容を応用すれば解けるようになっている。それでいて、きちんと手を動かしたり、本文を改めて見直したりしないと解けないレベルのものも多く、適度にチャレンジングなものになっていると思う。これは演習問題には当然望むべき性質とはいえ、適切になされることは意外に少ない。大抵の問題には解説が載っているのも初学者には嬉しい。

  • ☆信州大学附属図書館の所蔵はこちらです☆http://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BA45591504

  • 分かりやすい!……が定期的に読んでないとまた分からなくなるっ…!

  • やっぱりゲーム理論とミクロの本でこれは面白く整理されていて良いと思う。情報の非対称性を考えながらモデルを記述しようとする時に参照するのに良い。

  • NDC分類: 331.

  • ゲーム理論をベースにミクロ経済学の入門教科書を構築しようという意欲的な構成の教科書になっている。普通のミクロの教科書であれば、完全競争下での価格理論から始まって、独占、寡占ときて、ようやくゲーム理論が紹介される。これを完全にひっくり返して、ゲーム理論で寡占や独占を考察してから、一般的な価格理論に向かおうというのがこの教科書。

    あまりに一般的なミクロの教科書とは違っていて多少の戸惑いはあったけれど、読み進めてみれば確かにこのアプローチはありかも、と思える。

    価格理論で最初に出てくる完全競争下のプライステイカーという考え方は、あまりにも現実の状況からかけ離れているように思えるから、初めてミクロ経済学を学ぶ人にはイメージがしにくい。それよりは、お互いの出方を考慮しながら行動を決定するゲーム理論の方が取っ付きやすいかもしれない。それに、ゲーム理論はいまではほとんどミクロ経済学の必須概念になっている割に、価格理論に時間をかけすぎてゲーム理論はおまけ程度で教えている教科書や授業が少なくない。それならいっそ、ゲーム理論から教えてしまうというやり方も悪くないと思う。

    もちろん、従来型の価格理論を始めにやってゲーム理論に移る教科書もやはり一定の意義があるとし、その方が理解しやすい部分もある。だから、従来型の教科書と併用して補完しながら理解していくのが賢い使い方のように思う。

  • ミクロ経済学をゲーム理論の視点から記述した本。
    経済を学んでいない方にもオススメする1冊です。

  • ゲーム理論の勉強し始めよう(勉強し直しとは胸を張って言えない(ノ_<。))ということで、ブックボックスの中から引っ張り出したのが本書。
    読み始めました。
    ゲーム的センスのないボブには習得が難しいのか?
    乞うご期待!

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著者プロフィール

京都大学経済研究所教授
1963年生まれ。1986年、一橋大学経済学部卒業。1991年ハーバード大学大学院卒業。ペンシルバニア大学助教授、筑波大学助教授、大阪大学教授等を経て現職。専攻は理論経済学、情報の経済学など。 著書に『戦略的思考の技術』(中公新書、2002年)などがある。

「2017年 『昔話の戦略思考』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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