先を見よ、今を生きよ: 市場と政策の経済学

著者 :
  • 日本評論社
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  • Amazon.co.jp ・本 (292ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784535552944

感想・レビュー・書評

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  • 2002年に書かれた本でありながら、現時点で読んでも現下の経済情勢を考えるうえで示唆的な内容が多く含まれていた。それだけ筆者の議論がしっかりとしたロジックと現実に対する視点を持っているからであろう。

    景気回復と財政再建のあいだの二者択一の議論や、金融緩和、財政再建が景気対策として活用されているのか構造改革のために使われているのかが曖昧なままで進められているといった状況は、2000年ころも現在もある程度変わっていないように思われる。

    景気対策という名目のもとに金融緩和や財政出動を行っても、その本来の影響は違ったところに現れてくるということ、本来求められているマイルドなインフレによる産業の構造転換を実現させるためには、どのような政策が必要となるのかといったことが、順を追って議論されていた。

    本書で触れられている金利リスクの日銀への移転はある程度実現化されているが、現時点ではまだインフレの状況は起こっていない。財政政策の方は、根本的な転換はなされず、景気対策としての短期のカンフル剤的な取り組みにとどまっているようにも思える。適切な政策が総合的に組み合わされなければ、マクロ経済に対する効果が発現しないのかもしれない。

    約15年を経た現時点での筆者の分析も聞いてみたい気がする。

  • 経済に関わる人なら必読。

  •  この本はテーマどおり、一貫して「将来の着地点を想定した経済政策」の重要性を説く。日本経済の課題がどこにあるのかをひとつひとつ突き詰めて、合理的期待形成を導入したマクロ経済モデルを繰り返し説明に用いて説明されている。安易な帰結に妥協することなく、問題の本質を見極めて少しずつ糸口をほぐしていく論理的思考が気持ち良かった。ただ、シンプルな数式さえ理解できない箇所があったことが非常にショックだった。

     著者である一橋大学の斉藤誠教授は、レトリックを駆使した平易な政策提言で人々の心をつかむことを厳しく批判し、どんなに面倒であってもきっちりした分析手続を踏んで論理的な整合性を保ち、実証的な検証結果に対して謙虚であれと説く。この本から学ぶことは多く、こういう骨太な学術書はこれからも読んでいこうと思った。

  • 今のマクロが実際とどのように対応しているかがわかりやすい。

  • 定価1800円から7割引

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著者プロフィール

1960年愛知県生まれ。1983年京都大学経済学部卒業。1992年マサチューセッツ工科大学経済学部博士課程修了(Ph.D.)。住友信託銀行調査部、ブリティッシュコロンビア大学経済学部助教授、京都大学経済学部助教授、大阪大学経済学研究科助教授、一橋大学経済学研究科教授などを経て、2019年より名古屋大学大学院経済学研究科教授。
日本経済学会・石川賞(2007年)、全国銀行学術研究振興財団賞(2010年)、紫綬褒章(2014年春)。

著書
『新しいマクロ経済学』(有斐閣、1996年、新版2006年)
『金融技術の考え方・使い方』(有斐閣、2000年、日経・経済図書文化賞)
『資産価値とマクロ経済』(日本経済新聞出版社、2007年、毎日新聞社エコノミスト賞)
『原発危機の経済学』(日本評論社、2011年、石橋湛山賞)
『震災復興の政治経済学』(日本評論社、2015年)
『危機の領域』(勁草書房、2018年)
Strong Money Demand in Financing War and Peace(Springer, 2021年)他

「2023年 『財政規律とマクロ経済』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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